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大罪人もう一度  作者: 御神大河
大切な人・二つ目の楔
21/36

20.知らぬ間に

「ペトラ。ペトラ」


 翌朝、ペトラは肩を優しく叩かれ目を覚ます。

 目の前にはルクス。

 ペトラは寝顔を見られたことに恥ずかしさを覚え、布団で口元を隠す。


「おはよ、ペトラ」

「お、おはよぅなのじゃ」

「朝飯出来てるから起きて来い」

「うん」


 小さな机の上には簡単な朝食が並んでいる。


「おお~」


 嬉しそうにはしゃぐペトラをルクスは椅子を引いて座らせる。

 ペトラが席に着いたことを確認して、ルクスは飲み物を用意する。

 ペトラはルクスが座るのを待っている。


「先に食べ始めていいぞ」

「待つのじゃ」

「そうか」


 飲み物をペトラに渡しルクスも席に着く。

 ペトラは嬉しそうにパクパクと食事を口に運ぶ。


「なんか機嫌いいな」

「ほ、ほんなことはないのじゃ」


 実際ペトラは表情が崩れるほど、嬉しくて堪らなかった。

 誰も来ない薄暗い部屋の中で朝か夜かもわからず目覚め、いつの間にか置かれている冷めた食事を一人寂しく食べる。そんな生活が当たり前であったペトラにとって今日という日の朝は特別であった。

 ゆっくりと時間が流れていく。


「さて、魔力をコントロールする練習を始めるか!」

「よろしく頼むのじゃ!」


 ルクスとペトラは広場に出ると特訓を始める。


「改めておさらいだが、魔力の基本操作には循環・圧縮・放出・帯纏の4つがある。ただ、帯纏は難易度が高めだと思うから、まずは循環・圧縮・放出の3つをマスターしてもらう」

「わかったのじゃ!」

「じゃあ、今の状態も知りたいし、魔力の循環をやってみてくれ」

「むぅ」


 ペトラは魔力を循環させようと全身に力を入れる。

 だが、全くと言っていいほど変化はない。いまだに感知が苦手なルクスにもわかるほどの魔力を垂れ流している。


「どうじゃ?」

「全然だな」


 ペトラはシュンとしてしまう。

 ルクスはどうすればコントロールできるようになるかユーリスとの修行を思い出す。そして、手をポンと叩く。


「ああ!そうだ!」


 ルクスはペトラに近づくと屈み、ペトラの腹に触れる。

 腹を触られたペトラは動揺しながら後方へ飛び退く。


「なななっ、何するんじゃ!?や、やはり、いっ、一緒に寝たから子どもができてしまったのか!?」

「違う違う。少し気になってな」

「なんじゃ、ワシはあまり太ってないと思うのじゃが……」


 不安そうにペトラは細い体を擦る。


「そうでもなくて、ペトラは自分の中の魔力を感じたことがないんじゃないかと思ってな」

「お腹に触ると魔力を感じ取れるようになるのか?」

「たぶんな」


 ルクスはペトラに手招きする。

 ペトラは恥ずかしそうに服を捲くると腹を出す。


(別に直接である必要はないんだが……まぁいいか)


 ルクスはペトラのきめ細かい白い肌に触れる。


「ひゃん!?」

「おい、動くなよ」

「くっ、くすぐったくするのが悪いんじゃ!」

「いてっ」


 ペトラは恥ずかしさからルクスの頭をペチンと叩く。


「じゃあ、ほら、手出してるからペトラの方から触れに来いよ」

「ふん!最初からそうすればよいのじゃ!」


 そう言うとペトラは腹を出してルクスに近づく。


(なんかこっちの方が恥ずかしい気がするんじゃが……)


 ルクスの手に触れる直前でペトラは照れから躊躇してしまう。


「ペトラさ~ん」

「わっ、わかっておるのじゃ!」


 ペトラはギュッと目を瞑るとゆっくりとルクスの手に自らの腹を合わせる。


「じゃあいくぞ」


 ルクスは魔力でペトラの魔力を刺激する。


「のぅルクス、くすぐったいのじゃが……」

「いいから魔力に集中しろ」

「うむ」


 ルクスの真剣な顔にペトラはルクスが触れている付近の魔力に意識を向ける。


「うっ!ぐあああああああああああああああ!あっあっあっああああああああああああああ!」


 ペトラは以前のルクス同様、体を捩って魔力の濁流に苦しみ始める。のたうち回るペトラはルクスにすがるように手をバタつかせる。

 ルクスには手を握ることしかできない。

 ペトラは激痛に耐えきれず失禁する。数時間後には喉が潰れ、叫ぶことができなくなる。痛みは気絶することすら許さず、ペトラは逃れようと頭を打ち付けようとする。

 一日が経ったところで、ペトラは意識が朦朧とし、悶える力もなく小さく呻るだけとなった。

 3日3晩続いた苦痛から解放されたペトラは静かに気を失う。


「お疲れ様」


 ルクスはペトラの体をきれいにするとベットの上に寝かせる。



 ペトラが目を覚ましたのは、それから何日も経過してからだった。

 ペトラはゆっくりと体を起こす。


「おっ、気が付いたか。体調はどうだ?」

「大丈夫なのじゃ」

「魔力の感覚はどうだ?」


 魔力という言葉にビクンと肩を跳ねさせたペトラは不安そうにルクスを見る。


「大丈夫。きっとうまくいってるさ」


 ルクスの言葉でペトラは覚悟を決めて自身の中に巡る魔力に集中する。


「なんか変な感じ?」

「そうか。よかったな。もうちょっとで普通の生活が送れるぞ」

「本当か!?」

「ああ」

「そうか……そうか……」


 ペトラは嬉しそうに目の前の事実を噛みしめる。


「飯用意するからちょっと待ってろ」


 ルクスにそう言われペトラは腹を擦ると、自分が空腹であることに気付く。

 食事の用意をしようとしたルクスはペトラに呼び止められる。


「ル、ルクス……」

「どうした?」

「ちょっと……来てほしいのじゃ……」


 モジモジとはっきりしないペトラを心配しながらルクスは横に座る。


「おっと」


 ペトラがルクスに抱き付く。


「ありがと…ありがとなのじゃ……」


 ペトラはルクスに顔を埋めたままお礼を言う。

 ルクスはどうしたらいいかわからず困惑する。


「まだ頑張らないとだけどな……というか、なんか長い眠りから覚めて性格変わったか?」

「ワシはワシじゃ。変わってなど──」


 そこまで言ってペトラは顔を上げる。


「長い眠り?……ワシどれくらい寝っとたんじゃ?」

「さあ?数えてなかったから正確にはわからないけど、結構長かったと思うぞ。──おっわ」


 ペトラはルクスを突き飛ばすと自分の匂いを嗅ぐ。


「あれ?匂わないのじゃ……」

「当たり前だろ。毎日きれいにしてやってたんだから」

「毎日?……ルクスがか……?」

「……他に誰がいんだよ」


 事態に気が付いたルクスはスッと目を逸らす。

 ペトラの顔がだんだん紅く染まってゆく。


「わ…わ、ワシの裸を見たのか?」

「まぁ、じゃねーと洗えないからな」

「ルクスのアホーーーー!」

「しゃーないだろ!汚いままにしておくわけにはいかねーし!」

「ちょっとくらい大丈夫なんじゃ!」

「おもらしはちょっとじゃねーだろ!」

「おもら……にゃあああああああああああああああああああああああああ」


 ペトラは恥ずかしさのあまり布団に包まってしまう。


「そんだけ元気なら大丈夫そうだな」


 そう笑うとルクスは食事の準備へと戻る。

 準備が終わってもペトラはベットで丸くなったままであった。


「ペトラー。飯できたぞー」

「……」

「拗ねてないで出て来いよ」

「……拗ねてないのじゃ…」


 ペトラはチラッと顔を覗かせる。


「ふふふ」

「なっ、何がおかしいんじゃ!?」

「そうしてると最初を思い出してな」


 観念してペトラがベットから出てくる。


「ルクスはずっと意地悪じゃ」

「ペトラもずっと生意気だろ」


 お互いが席に着き久しぶりに2人で食事をとる。

 ルクスはペトラの容体を気遣い、ペトラは恥ずかしさもあってチラチラとルクスの様子を確認するため食事中に2人は何度も目を合わせたが特に会話をするわけでもなく、落ち着いた時間が流れた。


「さて、もう自分の中にある魔力を感じ取れるはずだ。こっからはその魔力をコントロールできるようにするぞ」

「わったのじゃ!」

「循環からな。ゆっくりと指先まで行き渡るように体全身に魔力を流すんだ」


 食事が終わるとルクスとペトラの特訓が再開された。



 ルクスとペトラが修行に明け暮れてる最中、モンディーナ村では問題が起きていた。

 冒険者とドワーフとで揉め事が起こっていたのであった。


「だから山に入るなと言っとるだろうが!」

「てめーらが山から戻ってきたのを見たって奴がいんだよ!入ってんのはてめーらだろ」

「テキトー言うな!」

「こっちが嘘ついってるって言いてーのか!?」

「こちらにそのようなことをする奴はいない!」

「はっ!てめーらドワーフは山が閉鎖されて乞食に落ちたんだろ?そんな奴らの言い分が信用できるわけねーだろ!」

「調子に乗るなよ、ニュート!」

「やんのか炭鉱チビ!」


 事の起こりはルクスたちがマーガス鉱山から帰って来た時、ある冒険者チームがその姿を目撃したことであった。

 マーガス鉱山の閉鎖は、ドワーフのみならずモンディーナ村の住人全員に経済的被害を及ぼしていた。そのため、マーガス鉱山に入れるなら誰もが入りたいと思う状況であった。

 マーガス鉱山から下山してきたルクスたちを目撃した冒険者たちは当然、自分たちも山に入りたいと思う。だが、マーガス鉱山への立ち入りは禁止されている。他に山に入っている冒険者がいないか時間をかけ慎重に調査し、誰もいないとの結論に至った。

 それでも、やはり下山して来た存在が気になり、冒険者チームはこっそりと入山しようとした。

 しかし、そこを何故か山を見張っていたドワーフたちに見つかり止められてしまう。

 大事にするわけにもいかず、冒険者たちはドワーフたちに交渉を試みる。


「なぁ、見逃してくれないか?俺たちが山が安全か確認してきてやるよ」

「必要ない」

「そんな事ねーだろ。あんたらだって山が戻ってきた方がいいだろ?」

「必要ないと言っているだろ」


 ドワーフたちの頑なな態度に冒険者は違和感を覚える。


「なんで必要ねーんだ?山はドワーフにとっては命なんだろ?…もしかしてもう誰かに交渉されてんのか?」

「お前たちには関係ない」

「チッ、なんだよ!やっぱ山に入れるんじゃねーか!」


 冒険者たちはマーガス鉱山に入ろうとする。

 それをドワーフたちが止める。


「山に入るんじゃない!」

「うるせー!てめーら山を独り占めししようとしてんだろ!」

「そうじゃない!山は皆のもの、それは我々の鉄の掟だ!お前たちも知ってるはずだ!」

「だったら退け!」

「そういう訳には行かんのだ!」


 マーガス鉱山の前に立ちはだかるドワーフを冒険者は無理矢理退かそうとする。

 そうして激しい言い争いとなっった。

 言い争いが激化し、お互いが胸ぐらを掴み合い一触即発となった時


「やめなさい!何をしているの!」


 モンディーナ村冒険者ギルドのマスターであるリーエルが仲裁に入った。


「マスター!?」

「リーエル殿!?」

「何事ですか?」


 リーエルは双方に説明を求める。

 冒険者側は「ドワーフの仲間が下山してくるのを見た。山の利益を独占する気だ」と主張。

 ドワーフ側は「そのような事実はない。冒険者が山に入ろうとしたから止めた」と主張した。

 双方の言い分を聞いたリーエルは魔力を放出し、威圧感を増す。


「お互い噓偽りなく答えなさい。この案件はこの村にとって何よりも重要な事。それはお互いわかっていますよね?」


 リーエルの圧に押され、冒険者もドワーフも黙って頷く。


「では、偽りを述べたらその時点で殺します。いいですね?」

「「……はい…」」


 リーエルは冒険者の方を向く。


「ドワーフの方々の仲間がこの山より下山して来た。そのことに間違いはないですね?」

「仲間かどうかはわかんないですけど…誰かが下山してきたのは見ました!それは間違いないです!」

「そうですか」


 リーエルはドワーフの方を見る。


「あなた方の仲間は山に入ってない。間違いないですか?」

「当然だ。我々は少なくともここ最近は山に入っておらん」

「……最近、誰かが山から下山した。そのことをご存じでしたか?」

「……」

「答えなさい」

「知っとった」

「ほら見ろ!!」


 冒険者が声を上げる。


「黙りなさい!」


 リーエルは一喝する。

 声を上げた冒険者は慌てて口を押える。


「あなた方は下山して来た人物に心当たりがありますか?」

「……」

「心当たりがあるんですね。誰ですか?──答えなさい」

「……」


 ルクスを裏切れないと質問に答えていたドワーフは口をつぐむ。

 その様子を見てリーエルは口を噤んだドワーフに歩み寄る。


「ぐぉ!?」


 リーエルはドワーフの首を鷲掴みにすると持ち上げる。

 持ち上げられたドワーフは体が宙に浮き、足をバタつかせる。


「この村にとって最重要であると言ったはずです。この人が答えないなら他の人に答えてもらう」


 リーエルはドワーフを締め付ける。

 ドワーフの顔は紅潮し、空気を求めるようにもがく。

 見かねたドワーフの子どもが飛び出す。


「こ、公爵の人が!山に入ったのは最近この村に来た公爵と関係ある人だよ!」

「公爵の!?」


 驚いたリーエルはドワーフを落とす。


「公爵様関係ってことはルクス様か……何か聞いてますか?」

「何も…詳しくは辺境伯様に聞いてくれ……おそらく何か知っとる」

「ゲミニ辺境伯か……。冒険者に告げる。マーガス鉱山は依然立ち入り禁止。他の奴にも伝えて!私は辺境伯様と話してくる」

「了解です」


 リーエルと来ていた冒険者はリーエルの指示を受け、冒険者ギルドへと走る。

 だが、山に入ろうとしていた冒険者たちは納得しない。


「なんで山に入っちゃいけないんですか!よそ者が勝手に入ってるんですよ!」

「公爵様の遣いは一度ギルドに顔を出してる。こちらが受け取ってないだけで正式な依頼の可能性がある。それに、貴族といざこざを起こしたくはないだろ?」

「それは……」

「とにかく、お前たちも冒険者ならばギルドの意向に従いなさい」


 冒険者たちは納得のいかない様子で渋々従う。

 いさかいを止めたリーエルはその足でゲミニ辺境伯家へと向かう。

 伯爵家の鐘を鳴らすとメイドが対応する。


「リーエル様、アポイントのない突然の来訪は困るのですが……」

「火急の用です。辺境伯様にお目通りを願いたい」

「ですから──」

「今回のことははのらりくらり躱せるようなものではないですよ」


 リーエルは一気に圧を上げる。


「リーエル、その辺にしてもらえるかな?」


 リーエルの迫力にメイドが怯えていると、中からゲミニ辺境伯が出てくる。

 ゲミニ辺境伯に対し、リーエルは膝まづいて挨拶する。


「お久しぶりです、ゲミニ辺境伯。唐突な来訪申し訳ございません。火急の用につき、今からお時間戴けますでしょうか?」

「こちらも今ちょうどバタついているんだがね……と言っても引き下がる気はないといった様子だね」

「もちろんです」


 リーエルは辺境伯家に通される。


「それで何用かな?」

「冒険者の中にマーガス鉱山から下山して来た者を見たとの報告がありました。調べると入山したのはドゥニージャ公爵様と親交のあるルクス様であるとか…辺境伯、ご存じでしたよね?」

「うむ」

「マーガス鉱山の閉鎖は先代の辺境伯がお決めになったはずですが?それに私どもも何も聞いておりません。ご説明願えますね?」

「あまり大事にしたくはないのだが……」

「内容次第です」


 リーエルは一歩も譲らない。

 ゲミニ辺境伯も観念する。


「今回のことは君も言った通りドゥニージャ公爵様の意向だ。マーガス鉱山閉鎖の経済損失はこの村だけではなく、ドゥニージャ領全体に及んでいる。当然公爵様も気にする。そういう訳で今回、公爵様手動でマーガス鉱山の探索が行われることになった。公爵様の意向だ、こちらが口を挿む余地はない。メンバーはルクス殿とトック君がリーダーである『白妙の光』というチームだ」

「ええ。ギルドにも挨拶に来ました。内容は聞いていませんでしたが」

「だろうな。この村の冒険者を差し置いて他所の冒険者が山に入るのだから」

「事情は理解しました……。結果はどうだったんですか?戻って来たんですよね?」

「全員生きて帰っては来た」

「でしたら──!」


 マーガス鉱山開放の可能性にリーエルは前のめりになる。


「2名が重傷だ。それに1名は君と同じ魔力持ちだ」

「え!?」

「山でゴーレムに遭遇したそうだ。それも複数」

「ゴーレムが!?しかも複数……ってことは魔道士が!?他所の国ってことですか!?」

「残念だがまだ何もわかっていない。ただ……」


 ゲミニ辺境伯が発言を悩む。


「どうしました?」

「公爵様が魔道士を派遣して山を占拠している者を排除する。排除が完了したらマーガス鉱山は以前同様我々に任してくださるそうだ。ということで今は静観していてもらいたい。我々にできることはないんだ」

「そうですか……。まぁ、魔道士の方の気分を害すわけにはいきませんものね……。ご説明いただきありがとうございます。冒険者には私から言っておきます」

「頼む」


 リーエルは冒険者たちにどう説明したらいいかと悩みつつも、一応は納得して辺境伯家を後にする。

 だが、事態はリーエルの予想よりも早くあらぬ方向へと進んでいた。


「マジだって!あいつらの仲間が下山して来たのを見たんだって!実際、マスターと問い詰めたら認めたし!」

「本当だったら大問題だろ」

「マスターはどうしたんだよ?」

「辺境伯に事情を聴きに行った」

「ならガチっぽいな」

「今から山に行ってみればいいじゃん!それでもしドワーフたちが止めてきたらマジってことでしょ?」

「確かにー」

「よっし行くか!!」


 山に入ろうとした冒険者チームがドワーフの仲間が山に無断で入っていた、そして冒険者は入れないようにしていると吹聴し、そのことが経済的に困窮していた人間の冒険者たちに火をつけた。

 人間の冒険者たちは山に雪崩れ込もうとする。

 それをドワーフが止める。


「またあんたらか!山には入るなと言っただろ!」

「ほーら!嘘じゃないでしょ!」

「こんの裏切り者がー!!」


 ドワーフたちが山に入るのを止めたことで、噂が事実であると確信した人間の冒険者がドワーフを攻撃し始めてしまった。

 冒険者をしていたドワーフは裏切り者として袋叩きにされる。

 そんなことをされて当然、ドワーフ側も黙ってはいない。人間に反撃する。

 争いが争いを生み、人間とドワーフとの間に埋まらない亀裂ができた。

 ゲミニ辺境伯が仲裁を取ろうとしたが両陣営聞く耳を持つ者は少数で、結局リーエルとリーエルに賛同する者たちによって争いは力尽くで鎮静化させた。

 最終的に、ゲミニ辺境伯並びにリーエルの許可が下るまで誰一人としてマーガス鉱山へ足を踏み入れることが禁止。破ったものは死刑もあり得るとなった。

 互いに信頼し協力して生きてきたモンディーナ村の人間とドワーフは、最終的に居住区を分けて生活することとなってしまった。


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