11.ウル・ドゥニージャ
見習いの女の子は目の前に立ってるルクスを見上げる。
ルクスは拳を軽く拭うと、安心させるように再度優しく話しかける。
「大丈夫?」
「えっ、あの……」
「あーあ、折れてるね」
そう言うとルクスは倒れている女の子を抱きかかえる。
まだ幼さの残る少年によるゴブリンの瞬殺劇。
予想だにしなかった突然の出来事に、騒がしかった戦場の空気が静まり返る。
「ルクス様!」
再び空気を動かしたのは、ルクスを追って馬車を飛び出してきたウェーネ。
そして、状況をいち早く呑み込んだドゥカスであった。
「この勢いで刈り取れ!!」
ドゥカスの号令を皮切りに冒険者たちが一気に攻勢に出る。
ゴブリンたちは予想外の強者であるルクスの登場に完全に引け腰になってしまっている。敗色が濃くなったことを悟り、攻撃の意志が弱まり逃げ出す者も出始める。
馬上にいた冒険者たちはもちろんトックも戦闘に加わり、掃討戦が始まった。
ルクスは女の子を抱きかかえたまま、頭部に投擲を受け落馬した冒険者の下へと向かう。
倒れて動かない冒険者の側に女の子を下ろすと首筋に指をあて、脈を確認する。
女の子も不安そうに覗き込む。
「その人……」
「息はある。気絶してるだけだ。防具に救われたな」
息があることを確認したルクスは、手早く頭を覆う防具を破壊し呼吸を確保する。
「ね、ねぇ、スタルトも助けることって……」
そう言われルクスは最初にゴブリンにやられた冒険者の方へ目をやる。
スタルトはゴブリンに放置され、目を開いたままピクリとも動かない。
「残念だが……もう……」
「そ、そう……」
そうしてる間にも劣勢となったゴブリンたちは冒険者により次々と駆逐されていく。
「できるだけ逃がすなよ!!繁殖されると厄介だ!!」
「潜んでる奴がいるかもしれん!!気を抜くなよ!!」
その後はあっという間であった。
逃げるゴブリンの背に刃を突き立てる簡単な作業。
護衛任務であるため『フィールムベイス』は馬車を離れるわけにはいかない上、罠も考慮し深追いはしない。それでもかなりの数討伐した。
戦いが終わった冒険者たちは汗を拭いながら道の真ん中でへたり込み、互いに労いながら談笑を始める。
みな、窮地を脱し切ったいい表情である。
「お……お前たち……ハァ……気を、抜くんじゃない」
そう注意するドゥカスも疲労で息絶え絶えである。
「ドゥカスだっけ?あんたも休んだら?見張りならオレがやっとくし」
助けた見習い冒険者を抱きかかえたルクスがドゥカスにも休むよう声をかける。
「そういう訳には……いや、もう助けられたわけだしな、甘えるとしよう。それよりフェミナは!?」
「フェミナ?」
「ゴブリンの投擲にあった俺の娘だ!」
不安な表情で辺りを確認する。
ドゥカスの発言に冒険者たちの談笑もピタリと止まる。
「ああ!あの人のことか。さっきウェーネが馬車に運び入れたよ。心配ない、生きてる」
「……そうか……そうか」
ドゥカスは安堵しその場に崩れる。
他の『フィールムベイス』のメンバーも安堵の表情を見せ、自分たちのリーダーであるドゥカスを囲む。
ウェーネが生きていたことを知り、トックもスタルトの生死を聞こうと口を開く。
しかし、声を発する前にルクスに抱きかかえられた女の子が首を横に振る。
「おい!見習いもこっちに来い!疲れたろ!」
「は、はい!」
『フィールムベイス』は仲間を失った見習いたちを労わりながら仲を深めてゆく。
ルクスはその輪に入らず、馬車の方へと歩く。
馬車からフェミナを運び終わったウェーネが降りてくる。
「ルクス様、流石でございました」
「別に大したことはしてない。頑張ったのは冒険者たちだ。それと、その様ってやつ好きじゃないんだが?」
「申し訳ございません。しかしながら敬称なしというわけには参りません。ご容赦ください」
「そっ」
ウェーネは休んでいる冒険者たちを一瞥するとルクスの意向を確認する。
「出発させますか?」
「いい。休ませてやりなよ」
「では、休憩後、道中を急がせます」
「必要ない。向こうがどうか知らないが、オレは別に急いでない。冒険者たちのペースで行かせてやれ。それともウェーネには何か急ぐ理由でもあるのか?」
「いえ、出過ぎた真似をいたしました」
ルクスは見張りのため馬車の屋根に座る。
下では冒険者たちが和気藹々と会話し、見習いたちにも笑顔が戻ってきている。
「よーし!出発だー!気合い入れろお前ら!」
「「おう」」
ドゥカスの号令に、休息を取った冒険者たちが気合い満々で応える。
精神的にも肉体的にも完全に疲労が取れたわけではないが、日が既に傾き始めている。
ドゥカスはウェーネの下へ駆け寄ると頭を下げる。
「すいません、休憩いただいてしまって。到着がだいぶ遅れちまいそうです。急ぎますんで!」
「構いません。ルクス様は気にしておられないので」
「ありがとうございます」
出発の準備が始まったことを確認して、ルクスは馬車の屋根から飛び降りる。
一行は公爵家までの道を急ぐ。疲れているからこそ野営は避けたいというのが全員の共通認識であった。
一方、ルクスは初めての乗馬にご機嫌である。
乗馬に際し、ウェーネと一悶着、二悶着あったがルクスがわがままを通した結果であった。
ルクスの後ろに乗馬している見習いの女の子が話しかける。
「ル、ルクスだっけ?私アネル、よろしくね」
「ん、よろしく、アネル」
アネルが何か喋ろうと口を開いた時、ドゥカスが馬をルクスの隣につけ並走させてくる。
「礼が遅くなっちまった。ありがとう、ルクス。助かった」
「いいよ、別に。オレだってあんたらの仕事にケチ付けちまったし」
「いや、あれは俺の判断ミスだ。プライドを捨てて最初からお前に頼るべきだった」
「じゃあ、お相子な」
ドゥカスはキョトンとした顔をした後、声を上げ豪快に笑う。
「あーーーくそっ!俺も小せー男だな!」
「急になに?」
「まぁ、なんだ……魔道士ってのは選ばれた存在なんだ」
チラリと馬車の方を確認すると、少し音量を絞って話を続ける。
「普通、魔力を持ってる奴ってのは俺たちみたいな持ってない奴を見下してる。大概の奴がそうだ。でもお前は違った。態度はでけーが見下してはない。それはわかる」
「?」
「つまりな……魔道士に見下されてるんだって俺が勝手に俺を見下してたって話だ」
「さっきからでてくる魔道士って?」
「え?えーとな、魔の道をゆく者だっけ?……要は魔法を使える奴らだ!……あれ?でも資格がいるんだったかな?」
「じゃあ、オレは魔道士ではない?」
「どうなんだろうな?魔道士でいいじゃねーか?それにしても、俺も初めて見たんだがよ、やっぱ魔道士ってのはすげーんだな!たった一人で戦況を変えちまう」
「大したことしてないだろ。ゴブリンとかいうのを1匹殺しただけだ」
「いやいや、お前にはわからんかもしれんがゴブリン1匹倒すのも俺たちにとっては命懸けなんだ。魔道士には一般人がどんだけ束になろうが敵わないなんて聞いてムカついていたが、意味が分かったよ」
「そう……ならオレはもっと強くならないと……」
パトリア村での出来事を思い出し、ルクスは決意に満ちた暗い表情をする。
「そうか……色々あるんだろうが理由は訊かん。俺もお前に負けんように精進するさ!改めてみんなを救ってくれてありがとな!」
ルクスの表情を見たドゥカスはあえて明るい笑顔を見せ持ち場へと戻る。
ドゥカスがいなくなると今度はアネルがお礼を言う。
「あのさ、私もありがと。助けてくれて……」
「どういたしまして」
アネルは落ち着きなくもじもじしており、まるで不審人物である。
その様子はルクスも流石に気になる。
「なに?」
「へ!?えっ、えーと、ウェーネさん……ってどんな人?」
「さあ?今日会ったばっかだしよく知らん」
「そうなの!?……ど、どう思ってる?」
「?……めんどくさい。……なに?やっぱ冒険者はウェーネ苦手なの?」
「そうじゃなくて……ルクスって何歳?」
「たぶん14」
「たぶん?って14!?……わかってたけど、年下…………。そ、その~……年上とかってどう思う?」
「?別に。年とか気にしたことないけど?」
「ほんとに!?そっか……そうだよね!私ね──」
その後、ルクスは目的地であるウル・ドゥニージャに着くまでアネルの自分語りに付き合うことになった。
日が沈み、灯りが必要になった頃、ルクスたち一行は公爵家があるウル・ドゥニージャの裏門の前に到着する。
ウル・ドゥニージャはこの一帯を治めるドゥニージャ公爵が住んでいる都市であり、魔族からの襲撃に備え都市全体を高さ5メートル程度の木柵の防壁で囲っている。
「お~お!」
高さ5メートルになる巨大な鉄の門を、ルクスは体をのけ反らして見上げる。
一行は門の前で一度止まる。
ドゥカスが馬車の横へ寄り、ルクスにこっちへ来るようにジェスチャーする。
「ウェーネ殿、ウル・ドゥニージャに到着しました」
「そうですか」
「ルクス、馬車の中へ入ってくれるか?お前をあまり人目に晒したくない」
「なんで?」
ルクスは眉を寄せる。
「公爵様からの依頼でな、あまり人目に付かぬようにと……まぁ、公爵様も断られた場合のメンツがあるからな。従ってくれると助かる」
「わかった」
ドゥカスにそう言われルクスは素直に従う。
「すまんな。狭いだろうが我慢してくれ」
「その必要はない」
馬車の中から声がするとフェミナが出てくる。
「フェミナ!?お前平気なのか?」
「問題ない。ルクスくんだっけ?馬を替わろう」
ルクスはフェミナと交代で馬車へ入る。
アネルは少し残念そうにしている。
ルクスが馬車に入ったことを確認して、先頭の冒険者が門へ向けて灯りで合図を送る
すると門の横に設置された守衛室から門番が出てくる。出てきた一人が、ドゥカスに気付き手を挙げる。
ドゥカスも手を挙げ返すと、隊をその場に留めさせ一人で門番の下へ馬を進ませる。
「開門ー!!」
しばらく待つと門番の声とともに巨大な門が開き始める。
街に入ったルクスたちは再び待たされることになる。
『フィールムベイス』のリーダーであるドゥカスが渋い顔をして馬車の扉をノックする。
カーテンを閉めたままウェーネが応える。
「どうしました?」
「そ、それがその~……衛兵長のプラレスという男がいるのですが……そいつに顔見せがいるみたいでして……」
ウェーネがカーテンを開ける。明らかに不機嫌である。
「なぜですか!?」
「ルクスはこの街に滞在しますよね?その場合、見慣れない人物は治安確保のため、衛兵に事情聴取されます。その際、衛兵長と顔見知りであれば面倒が減ると思うんです」
「ルクス様のためだと?」
「そうなりますね」
「わかりました。それで?どれくらい待たせるつもりですか?」
「それは、その~公爵様の客人であることは伝えてますんで、すっ飛んでくるとは思うんですが……」
「はぁ~」
ウェーネは自分のせいではないとルクスにアピールするため大きく溜息を吐く。
ドゥカスは公爵と街の治安に板挟みにされ非常に苦い顔をしている。何度も天を仰いだり頭を掻いたりして苦悶した後、意を決して提案をする。
「あの~よろしければなんですが、我々の冒険者ギルドに寄っていただけないでしょうか~……」
「はあ!?」
ウェーネが蟀谷に血管が浮き出る勢いで威圧する。
ドゥカスはまるで客先を怒らせた営業マンのように下手にでながら理由を話す。誇り高きレギュラー冒険者のリーダーの姿は形無しである。
「もう夜も遅いので、公爵様もお休みになられているかもしれないですし……その~一応ギルド長に顔を見せとしておくと、衛兵長同様に後々都合がいいかと……」
「あのですね!こんな時間になったのはあなた方がノロノロしていたのが原因ですよね!?それに、ギルドに来い!?挨拶ならそっちからルクス様の下に来るのが筋じゃなくて!?」
「いや、おっしゃる通りで……」
衛兵や冒険者ギルド、そして目の前のドゥカスのルクスへの対応に、ウェーネの怒りは臨界点に達し、徐々にお淑やかさが薄れていく。
ウェーネの態度に、冒険者たちはドゥカスを不憫に思うと同時に鬱憤が溜まっていく。
「だいたい、あなた方冒険者は──」
「なぁなぁ、冒険者ギルドって何?どんなとこ?」
ウェーネの説教が続くと身構えたドゥカスであったが、救いの手が差し伸べられる。
ルクスはウェーネを越えるように身を乗り出す。
「ルクス様!?」
「えーとだな、冒険者ギルドってのは俺たち冒険者が情報を共有したり、依頼を受けたりする場所だ。冒険者ってのは基本どっかのギルドに所属してるんだ。じゃねーと仕事がねーからな。興味あるのか?」
「おい!!」
ウェーネは冒険者ギルドへ誘うドゥカスを怒鳴ると、にこやかな表情でルクスを諭そうとする。
「いけませんよ、ルクス様。冒険者は粗野で粗暴な者ばかりです。冒険者ギルドなど──」
「ウェーネ」
ウェーネの発言をルクスが遮る。
ルクスが発した圧によりその場にいた全員が口を閉じ動きを止める。
静寂の中、誰かの生唾を飲む音が聞こえる。
「冒険者がどんな奴らで冒険者ギルドがどんな所かは、この目で直接見て決める」
「畏まりました」
「それと──」
ルクスの圧が更に上がる。
「お前がドゥカスたちをどう思おうが別に構わんが、表には出すな。不快だ」
「……はい……申し訳ございません……」
ウェーネはルクスに怒られ、まるで子どものようにシュンとする。
ウェーネ同様、ルクスの圧に押されていたドゥカスがルクスに確認を取る。
「じゃ、じゃあ冒険者ギルドに向かうってことでいいか?」
「ああ」
「わかった」
ドゥカスは公爵家と冒険者ギルドに一人ずつ伝令を飛ばす。
タイミングよくプラレスが走ってきた。
「遅いぞ、プラレス」
「すまん、待たせた。それで公爵様のお客人というのは?」
「こちらです」
ルクスの代わりにウェーネが答えると、ルクスのため馬車を開けて外で待つ。
プラレスはウェーネが公爵の客人であると勘違いし、深々と頭を下げ丁寧に挨拶する。
「夜分遅くに大変お待たせいたしました。私、ミラリアム王国ドゥニージャ公爵領ウル・ドゥニージャの衛兵長をしております、ナーワー・プラレスと申します。以後お見知りおきを」
「公爵様の客人は私ではございませんが?」
「へ?」
顔を上げたプラレスの前でルクスが馬車から出てくる。
「子ども?」
「お前もそうなるよな」
自身と同じ反応を見てドゥカスは嬉しそうにする。
「あ~これはこれは失礼いたしました。えー、私は──」
「はっはっはっ。なんだそれ。ルクス!こいつはここの衛兵長のプラレスだ。この街の衛兵に何か聞かれたらこいつの名前を出すといい。こちらがルクスとウェーネ殿だ」
「よろしく」
「よ、よろしく……お願いします」
「だから固いって!すまんなルクス、こいついいとこの出だから生真面目なんだ」
「いいよ。気にしないし」
ドゥカスに揶揄われプラレスは恥ずかしそうに咳払いをする。
「んんっ。それで、これからどうするんだ?公爵家に行くにしてもさすがに時間が遅いだろ?」
「とりあえず冒険者ギルドに来てもらおうと思ってる。マスターに話を通しておきたいし、今晩の寝床も提供できるだろうからな」
「なるほど。馬車はどうする?」
「馬車?」
「公爵家の馬車が冒険者ギルドの前に停まってたら夜遅いとはいえ目立つだろ」
「それもそうか」
確認を取るようにドゥカスはウェーネを見る。
「ルクス様?」
「オレは何でも構わない。どうせこの街を歩いて回ろうと思ってたし。ウェーネは?」
「私ですか!?私はルクス様に従いますので、どうぞご随意に」
「だとよ」
「そうか。では、馬と馬車は我々の方で公爵様に返しておこう。ルクスくん、ウェーネ殿お先に失礼します」
プラレスは部下と御者に指示を出しその場を立ち去る。
「では我々も行きましょうか!お前たちはどうする?」
「はい!俺たちもギルドに戻ります」
見習いたちも一緒に冒険者ギルドへと行くことになった。
ウル・ドゥニージャはパトリア村とは比較にならないほど発展している。
街は区画整理され、家と家の間隔も狭く道路も石板を敷いて舗装されている。各建物の入り口には灯りが吊るされ夜でも街はほんのり明るい。
田舎を飛び出し森で生活していたルクスにとっては目に付くものが多い。首を振りながらキョロキョロしている。
「そうしてると年相応だな。そんなに見るものあるか?」
子どもらしいルクスの様子に皆ほっこりする。
するとルクスが止まって首をひねる。
「どうした?」
「なんか……懐かしい感じがする」
「懐かしい?ルクスはこの辺の出身なのか?」
「どうだろ?違うと思うけど……似たような景色を見たことある気がするんだ。ドゥカスは?どこ出身?」
「俺はタミナス村っていう辺境の村出身だよ。お前のいたパトリア村と似たような所さ」
「ふーん」
「なぁなぁ」
トックが会話に混じる。
「ルクスはしばらくはこの村にいるんだろ?だったらさ、アネルに街を案内してもらうといいよ」
「ふぇッ!?」
唐突なトックの提案にアネルが変な声を出す。
「アネルはこの街出身なんだ。道案内には適任だと思うけど?」
「ッちょっちょっと、トック!──」
「わかった。頼らせてもらうよ、アネル」
「!?う、うん」
アネルに街案内の約束を取り付けたルクスは冒険者ギルドに到着する。
「ここが我らが冒険者ギルドだ!」
3階~4階建てくらいの高さがあるのに、天井が高いのかどう見ても2階建て。入口の扉もかなり大きく威圧感がある。
が、周りの家々に比べやけにボロく、修繕の跡が残っている。
大きな横の扉には「依頼者様用」と書かれた通常サイズのドアが付いており、そこだけ何故かキレイに保たれている。
ドゥカスは扉の前に立つと両扉を押し開ける。
冒険者ギルド内は眩しいほど明るく、ルクスは目を細める。
「お待ちしておりました。ご安心ください。人払いはしてあります」
冒険者ギルドの中では、スキンヘッドに白い無精髭を蓄えた大柄で筋骨隆々な老人がルクスを出迎える。
他には先に冒険者ギルドに走った人しかいない。
「あっし、当冒険者ギルドでギルド長をしております、シダ・アーギンと申します、ルクス様に置かれましては──」
「「ハッハッハッハッ!!」」
冒険者たちが一斉に笑い出す。
「何がおかしい!?」
「何かっこつけてんだ!」
「らしくなさすぎるぜマスター!」
「そうだよ。普段通りでいな!」
冒険者たちからヤジが飛ぶ。
冒険者たちを代表してドゥカスが説明する。
「すまんなルクス。俺たち冒険者は公爵様には良くしてもらってんだ。だもんで、公爵様の客であるお前への挨拶もどーも気合が入っちまってんだ」
「お、おい。ドゥカス……」
ドゥカスのルクスに対しての気さくな態度にアーギンは慌てる。
「大丈夫だって。なぁ、ルクス?」
「ああ、公爵とやらに呼ばれただけでオレは別に偉くない」
「いや、しかし……公爵様に呼ばれた魔道士様なのでしょう?」
「オレは別に凄くもない」
「な?」
「そ、そうか……じゃあ改めて、ジダ・アーギンだ。ここでギルド長をしている。何かあったら遠慮なくここを頼ってくれ!公爵様には世話になってんだ」
「わかった。よろしく」
ルクスはアーギンから差し出された手を取り握手する。
アーギンはウェーネにも手を差し出そうとするが、会釈を返されるだけであった。
一通りの顔合わせが終わり、ドゥカスが本題に入る。




