10.門出
一台の馬車がパトリア村に向かっている。
重装備の冒険者が10人、一定間隔を保ちながら広範囲に展開して護衛している。
会話は少なく、非常に物々しい雰囲気。
全員が騎乗しているものの、辺りに細心の注意を払っているため行軍速度が遅い。
「うわっ!?」
先頭にいた冒険者が声を上げる。
全員が同時に足を止め、各々の武器を構える。
即座に隊の陣形が馬車を中心に縮小する。
目配せで互いに異常がないことを確認すると、冒険者のリーダーであるドゥカスが小声で状況確認をする。
「どうした?」
「いや、すまん。前方に魔獣の死体が……」
「──!?場所と数は?」
「場所はパトリア村全域、数は……不明。……ただ……」
「なんだ?」
「かなり数かと……」
「「!?」」
隊全体が驚愕と不安に包まれる。
「お目当ての魔力があるという人物なんて本当にいるのか?」
「魔獣が大量に死んでいるなら、そもそも生きてないかもしれないんじゃ?」
「その人が魔獣を殺したのかもしれないだろ」
「それはそれでそっちの方が危険では?」
「見間違いの線は……」
「……ドゥカス……」
ドゥカスはぐるりと隊全体を見渡す。
警戒よりも士気の低下の方が後々足を引っ張ると判断したドゥカスは部下の不安を取り払うため、声を抑えることを止め、隊を鼓舞する。
「この先山道を抜ける!俺たちはこのままの陣形でパトリア村へ入ることとする!為すべきことは変わらない!総員、改めて気を引き締めろ!」
「「おう!」」
外の雰囲気が変わったことを察した馬車に乗っている人物が、外の様子を確認しようと内側からノックする。
辺りを警戒し慎重にドゥカスがノックで返す。
「ドゥカスさん、どうかしましたか?」
「仲間の一人が魔獣の死体を視認いたしましたので一時停止を」
「死体なのですよね?」
「はい。ですが、相当数あるようで……魔獣の死体の山を築ける者……やはり危険かと……」
「そうですか……ですが……」
「わかっております。レギュラー冒険者の誇りにかけてお任せを」
「お願いしますね」
士気を上げた部隊であったが、村の前に来た頃には多くの冒険者の顔が蒼くなっていた。
大量の汗をかき、呼吸が浅くなっていく。
目の前には数える気も起きない魔獣の死体。冒険者たちにとって、ここはこの世の光景ではなかった。
隊の異常を感じ取ったドゥカスが歩調を強め先頭に立つ。
「怯えるな!腰が引ければ後手を踏むぞ!不安ならば私語も許可する!」
ドゥカスが先頭に立ったことで再び覚悟を取り戻した一団は、唾を飲んでパトリア村に踏み入る。
村は無残に破壊され、100を超える魔獣の死体が至る所に転がっている。
死体は全て焼けており、焼け焦げた匂いが辺りに充満し、腐臭は特に感じない。
「誰かいるかー!!」
「おーい!!」
反応がないか呼びかけながら村を一団で探索する。
「この数……どうなってんだ!?」
「……まさに地獄だな」
「こいつらが生きてた方が地獄だろ」
「ちげーねー」
自らを勇気付けるために冒険者たちは務めて明るく振舞おうとする。
それでも不安が拭い切れるわけではない。
「……けど……この地獄を作り出した化け物がいるってことですよね?」
「この世のどこかにはな!ここにいるとは限らん!」
「いたとしても我ら人類の味方であること願うぜ」
そんことを言い合いながら、一団はわずかに建物の形状を残している孤児院の前で足を止めた。
「ここがラストですね」
「ふー、どうやら生きている魔獣はいないようっすね」
「最後まで気を抜くな。まだ任務完了じゃない!」
ドゥカスが一歩踏み出る。
「誰かいるか!!」
ルクスはドゥカスの声で目を覚ます。
気怠そうに体を起こすと、声のした方へと元気なく歩き出す。
足取りがフラフラしており、散乱している瓦礫に躓く。
カラン
孤児院の中から聞こえた物音に冒険者たちの緊張感が一気に高まる。
一時の静寂。
だが、冒険者たちにとっては平静を保つことが難しい長い静寂。沈黙に耐えきれなくなった数名の冒険者たちが武器を構える。
「武器を下ろせ!刺激になったらどうする!!」
ドゥカスが慌てて振り返り命令する。
「誰だあんたら?」
全員の注目が逸れてしまった時に声をかけられた結果、冷静だったドゥカス含め全員が反射的に戦闘態勢に入ってしまった。
孤児院から現れたルクスは当然その殺気を感じ取る。
「あ゛?」
先日、地獄を経験したばかりのルクスは不機嫌を露わにする。
「……子ども……?」
冒険者たちは声をかけてきたのが子どもだとわかり安堵する。
気を抜いた冒険者たちを窘めつつ、ドゥカスが一歩前へ出る。
「済まない。我々も気が張っていた故、許してくれないだろうか?」
「…………それで何の用?」
「我々はドゥニージャ公爵に雇われたレギュラー級冒険者チーム『フィールムベイス』、俺はこのチームのリーダーをしているドゥカスという者だ。」
「レギュラー級?何それ?」
聞きなれない言葉にルクスは首を傾げる。
「知らないのか……レギュラー級とは冒険者のランクの一つだ。
冒険者は[ビギナー][レギュラー][エース][レジェンド]の4段階にランク分けされてて、それぞれのランクに合った依頼を受けることが出来るんだ」
「じゃあ下から2番目?」
「否定はしない。
ただ、レジェンド級はその名の通り伝説で一応用意されてるだけだそうだ。だから基本は3階級だと考えてくれ。
それにエース級は王都にしかいないからな、レギュラーでも結構凄いんだぞ。
この辺なら1番だと思ってくれていい」
「ふーん」
「それで君、名前は?」
「ルクス。で──」
ルクスが名乗ったところで、『フィールムベイス』に囲まれていた馬車の扉が開く。
ゆっくりと開く扉にルクスは言葉を止め、警戒するように目を細める。
馬車からは若い女性が現れた。
白い肌に後ろできれいに纏められた黒い髪、黒いロングの修道服に身を包んでいる。
しかし、何よりも目を引くのは女性の目が紫色の布に覆われていることであった。
女性はまるで見えているかのように『フィールムベイス』を避けてルクスの前へと歩み出ると、跪く。
「わたくしはエカトール・ウェーネと申します。ウェーネとお呼びください。
お目にかかれて光栄にございます。選ばれし御子、ルクス様」
ウェーネが跪いたことに『フィールムベイス』全員が驚く。
ルクスもウェーネの発言の意味を理解できない。
「御子?どういう意味だ?」
「神にお会いになられたのでしょう?」
「何のことだ?」
「私の目は少々特別でして、神に選ばれたかそうでないか判別できるのです」
「……」
『フィールムベイス』はいまだ信じられないといった様子でお互い顔を見合わせる。
「……で……では、こちらの子どもが依頼の人物で……?」
「ええ、ルクス様で間違いないでしょう」
「依頼?どういうことだ?」
話が見えずルクスは首を傾げる。
そんなルクスにドゥカスが答える。
「先ほども少し話したが我々はドゥニージャ公の依頼でこの村に来た。
依頼内容はこの村にいる魔道士をドゥニージャ公の屋敷に招くことと道中の護衛だ。
ここにいるエカトール殿は魔法を扱える者を判別できるとのことで今回ドゥニージャ公に雇われ、我々に同行している。だから、エカトール殿の護衛も我々の任務に含まれている。
という訳なのでルクス君、ドゥニージャ公の屋敷まで同行してもらえないだろうか?」
「いいよ」
「「…………!?」」
「?」
即答したルクスに全員が停まる。
「そ、即決していいのか?」
「?なんで?会うだけだろ?」
「いやいやいや。貴族に会うってことはその後出されるであろう依頼、というか命令だな、それを受ける意思があるってことに他ならない。
向こうも立場があるからな、断らせるわけにはいかん。力づくで依頼を遂行させるということも考えられるんだぞ?」
「そうなの?まぁ、いいよ。この村にはもう何も残ってないし、ちょうどよかったよ」
「……そうか……なら準備してこい。でき次第出発するぞ」
「準備するものなんてないよ」
「なら、出発だ。帰還するぞー!!」
ドゥカスの号令で『フィールムベイス』が一斉に配置につく。
ルクスはウェーネに手を取られ馬車に乗り込むとパトリア村をあとにする。
ルクスを乗せた馬車はあっという間にパトリア村を抜ける。
公爵家へと向かう一行は行きとは違い足取りが非常に軽快である。
特にパトリア村より二回り大きな村で補給をした後は、『フィールムベイス』は土地勘があるため、ほどよく肩の力が抜けている。
会話に花を咲かせながらも時折、同時に同じ方向を警戒する様は手練れの冒険者チームといった様子である。
行きには閉められていた馬車のカーテンと小窓も、ルクスの要望により開け放たれている。
「……きれいだな」
ルクスはポツリと呟く。
深い緑の平原に黄と白の小さな花が咲き誇っている。
爽やかな風が駆け抜け、小さな生き物たちが活発に動き回っている。
パトリア村とはまた違ったのどかな景色。
人の往来も多いのだろう、踏み固められ平らになった土は幅5メートル以上であり道として完成している。
馬車の振動がかなり少ない。
「全体減速ー!」
先頭の冒険者から号令が飛ぶ。
それに合わせ隊列を狭めながら全体がゆったりと減速する。
「どうしたー?」
「前から武装した一団!他の冒険者かと!」
「了解!武装状況は?」
「完全武装です」
「全体一旦停止!」
ドゥカスの停止指示により、ルクスを乗せた馬車は道の端へ寄り停止する。
「すみません。安全のため停止します」
ウェーネが馬車から身を乗り出し、警戒した様子で前方から来る冒険者たちを目視する。
つられてルクスも反対の小窓から確認する。
遠目に見える冒険者たちは5人、10代後半の男女という非常に若いチームである。
若い冒険者たちはルクスたちに気付きより慎重に周囲の様子を探っているが、チーム全体の動きがぎこちなく経験の浅さが露呈している。
ルクスは興味を失い、馬車の中に引っ込む。
ウェーネも同じ感想を持ち、ドゥカスたちが停止したことに疑問を持つ。
「減速ではなく停止ですか?」
「ええ、完全武装の冒険者が来たら情報を交換するのが鉄則です」
「なるほど……」
「それにどうやらあちらはやけに周囲を警戒しているように見えるんですよね……こちらも完全武装なんですが、あちらは隊列を狭めませんし警戒状態を解く気がないんでしょうね」
「敵対の可能性が?」
「どーでしょ。ないとは言えませんね。新人とは思いますが、あれが演技なら相当なもんですね……」
ルクスたちが停まり敵対意思がないのを見て、前方の冒険者たちは不用心にも手を振りながら小走りでパタパタと近づいてくる。
その様子に『フィールムベイス』は互いに顔を見合わせ、呆れたように肩を竦める。
「こいつは……」
「どう見てもド新人だな」
「お前ら一応気を抜くなー」
そう仲間を注意するドゥカスも頭を抱えてため息をつく。
「止まれー!」
マニュアル通り『フィールムベイス』が武器を構える。
完全に気を抜いた緩慢な動きであるにも関わらず、若い冒険者たちは驚いて両手を挙げる。
「あ、あの!俺たちは怪しい者じゃなくて──」
「我々はレギュラー級冒険者。私がリーダーのドゥカスだ。見ての通り現在護衛任務中である。そちらは?」
「へ?あっはい!俺た、我々は冒険者見習いで、え~っと……お、俺はリーダーのトックです!」
しどろもどろになりながら自己紹介するトックにドゥカスは冒険者の先輩として優しく応対する。
「そうか、トックか。ここでは何を?」
「はい!俺たちはギルドの任務でこの辺りの調査に来ました!」
「完全武装でか?」
「はい!最近この辺に魔物らしきものが出るそうなので!」
「魔物?」
ドゥカスは確認のため仲間へと視線を送る。
ドゥカスの仲間の一人が答える。
「確かにここ1年ほど魔獣及び魔族の動きが活発化しているという情報はギルドから伝達されてはいた。……けど魔物相手に新人を送り込むとは……」
ドゥカスは視線を見習いに戻す。
「今ギルドはどうなっている?他の奴らは?魔物相手なんて調査であっても見習いの仕事じゃないだろう?」
「はい!なんか王都付近でも魔物が暴れたとかで、大半の先輩たちは王都に出稼ぎに行きました。他の人も各地の魔物騒動に対処しなければならないそうで、調査偵察は今俺たちみたいな見習いが請け負ってます」
トックの言葉に『フィールムベイス』がざわつく。
「王都でも!?」
「どうなってんだ?」
周囲の動揺の中、一人の冒険者が目の端で動く影を捉え、腕を横へ伸ばし全体に静かにするよう指示を出す。
その後小声でドゥカスに指示を仰ぐ。
「リーダー!?」
「わかっている。目視できたか?」
「いや、正確には。恐らく赤だと思う……」
「トック!周辺調査してたよな。この辺の草木の高さは?」
「え?はい!1メートルないかと……あ、あの何が?」
「全体!即時警戒態勢!推定小鬼!数不明!」
ドゥカスの号令とともに『フィールムベイス』は一斉に行動を開始する。
「馬車を道の中央に!」
「見習いは俺たちの中に入れ!」
統率の取れた『フィールムベイス』は瞬く間に隊列を完成させる。
馬車が停止して以降、暇となり中でうつらうつらしていたルクスは、周囲の気配が変わったことに気付き外へと身を乗り出す。
辺りを見回すと近くにいた見習いに話しかける。
「なぁ、どうしたの?」
「きゃ!?」
緊張状態の中、急に話しかけられた女の子は尻もちをつく。
「大丈夫か?」
「へ?あ、うん」
「それで何があったの?」
「ゴブリンがいるかもしれないんだって。危ないから隠れてた方がいいわよ」
「ゴブリン?」
女の子の言葉にルクスは首を傾げる。
「え?きみゴブリン知らないの?倒せたら一人前と言われている魔物なのよ」
ルクスがゴブリンについて詳しく聞こうとした矢先、ドゥカスから号令がかかる。
「見習いは近くの馬に乗れ!一気に撤退する!」
ドゥカスは撤退の判断を下す。
相手の正体も数もわからいない状態はかなり不利である。
その上、今回の任務は護衛である。任務成功のためには危険はできるだけ避けることが鉄則である。
更には見習いという重荷の存在。
ドゥカスの撤退の判断は正しいものであった。
しかし、撤退しようとしたその時、相手から引け腰の雰囲気を感じ取ったゴブリンが一体草むらから姿を現す。
「ギィギィギィギィ」
注目を集め挑発するように棍棒をかざし、声を上げる。
当然、ルクスの視線もゴブリンに注がれる。
「あれがゴブリン……」
赤くブツブツとした皮膚に不格好な小さな角。目と鼻が大きく耳は尖っている。背が低く基本痩せているのに腹だけがポッコリと出ている奇妙なシルエット。
鞣していないごわごわとした皮を腰に巻き、石でできた棍棒を手にしている。
「あれを殺せれば一人前だ!」
挑発に乗せられた見習いの一人が短刀を構えると、ゴブリン目掛けて走り出す。
「やめろ!行くな!」
「待て!スタルト!!」
ドゥカスとトックが同時に止めようとするがもう遅い。
スタルトが草むらの中へ突っ込み棍棒をかざしたゴブリンに迫った瞬間、草むらに隠れていたゴブリンたちにより足を折られ倒れる。
ゴブリンたちは倒れた獲物を逃がさない。
スタルトから短刀を奪い取ると逃げられないように片足を切り落とし、殺さないよう頭を避けて一斉に殴りかかる。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
見習いの一人が取り乱して弓矢を構える。
「よせ!それは──」
護衛たちが止める間もなく見習いは矢を射かける。
矢はゴブリン目掛けて正確に飛ぶ。
しかし、矢が刺さったのはゴブリンではなかった。
「ギャッギャッギャッギャッ」
ゴブリンたちは瀕死のスタルトを盾に、その後ろで嘲るように笑う。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
目の前で行われている仲間へ対しての残虐な行為に見習い4人はパニックを起こす。
特に矢を射かけた子は絶望に飲まれ、弓矢から手を離し頭を抱えてしまう。
恐怖は伝播する。
見習いの恐怖に中てられ『フィールムベイス』の顔にも焦りの表情が浮かぶ。
その表情をゴブリンたちは逃さない。
馬車を取り囲んでいた20匹近いゴブリンたちが一斉に姿を現し、数匹が馬車の行く手を阻むよう道へと出てくる。
「「ギャーギャーギャーギャー!!」」
ゴブリンたちは一斉に鳴き、冒険者たちを威圧する。
「なんだこの数!?どっから湧いた!?」
「最初から伏せてたんだろ!?どーすんだ!?」
「リーダー!!」
「ぜっ、全員落ち着け!!」
声をかけているドゥカスも状況の飲まれ、まごつく。
そこにルクスが声をかける。
「なぁ、このドアってどうやって開けんの?手伝うよ?」
「いけません!ルクス様!」
ウェーネが慌てて止める。
ルクスに声をかけられたことで冷静さを取り戻したドゥカスもそれに賛同する。
「不甲斐ない所を見せたがもう大丈夫だ。ウェーネ殿の言う通り馬車の中にいてくれ。君の護衛が我々の任務だ。君に助けられていたら、今後の依頼に支障が出てしまうのでな」
ドゥカスは一つを息をつくと、全体に指示を飛ばす。
「撤退は変わらないが引け腰にはなるな!前方に戦力を集めろ!前の数匹を殺して強行突破する!」
パニックになっていた冒険者たちも、流石はこれまで数多の依頼をこなしてきた冒険者。ドゥカスの指示を聞き速やかに行動を開始する。
ドゥカスを含めた『フィールムベイス』6人が馬を降り前に集まる。他の4人はそれぞれ見習いたちを自分の馬に乗せると、6人の馬を預かる。
「準備はいいな!行くぞ!!」
「「おう!!」」
先頭の6人が前方を塞ぐゴブリンに突っ込む。
ゴブリンたちは急に立ち直った冒険者たちに怯み後手を踏む。
「さぁ行け!!」
ゴブリンたちを道の端まで押し込み、ドゥカスが御者に先に行くよう指示を出す。
馬車と見習いを乗せた4人はゴブリンが敷いてた包囲網を突破する。
ゴブリンたちは獲物を逃がすまいと、殿となった冒険者を狩れる最低限の戦力を残して馬車を追う。
「あの人たちは!?」
ゴブリンと交戦に入った6人を気にしてトックが護衛を受け持った『フィールムベイス』のメンバーに聞く。
「黙ってろ!舌噛むぞ……」
護衛は苦虫を噛み潰した表情で返答する。
その声色からトックは察する。そして、祈るように後ろを振り向く。
その時であった。
ゴブリンが投擲した斧が最後方を追走していた冒険者の頭に当たり、冒険者が落馬する。
驚いた馬は暴れる。
乗っていた冒険者見習いの女の子は馬を御すことが出来ず、投げ出されてしまう。
経験の浅さから急に対応できるはずもなく、着地に失敗し足が折れて動けない。
「ギィギィギィギィ!!」
最も近くにいたゴブリンが嫌な笑みを浮かべ女の子へと一直線に走り出す。
涎を垂らしながら持っていた武器を投げ捨て、無防備な相手へ迫る。
パーンッ!
女の子の前でゴブリンの頭が弾け飛ぶ。
「大丈夫?」




