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大罪人もう一度  作者: 御神大河
序章
1/36

0.灯火の景色

 (何を間違ったのだろうか?)


 雲一つない晴天の中、男は処刑へのカウントダウンを執行人に導かれ一歩また一歩と昇っていく。

 処刑台の頂上に立った男の眼前には何万もの群衆が犇めいている。


「「人でなし!」」

「「化け物が!」」

「「さっさと死ね!殺人鬼!」」


 大気を揺らすほどの罵詈雑言の中、男はまるでキリストのように磔にされ高く掲げられていく。

 男を吊るす柱が止まると祭服を纏い分厚い経典を抱える老人が男の下に立ち、群衆に向かってスッと手を掲げる。

 それが合図となり前方から波を打つように処刑場が静まり返る。

 静寂から一拍のち神父と思わしき老人が高齢とは思えない大きくハッキリとした声で男に問う。


「最後に言い残すべきことは?」


 その場にいる全員が世紀の大罪人から発せられるであろう言葉を聞き逃すまいと耳を傾けている。


「……」


 決してパニックや絶望で頭が真っ白になっているわけではない。

 男はこれから処刑されるという状況にも関わらず不気味なほど冷静であった。


 (誰よりも理不尽を憎み、誰よりも平和を願った。だからこそ、ただ文句を垂れるのではなく行動に起こした。そうして生きた25年の結果がこれか――)

「くだらないな」


 ため息のように無意識に吐き捨てる。


「「ふざけんな!!」」

「「反省しろ!!」」

「「人の命を何だと思ってんだ!!」」


 処刑台に立った時とは比較にならない群衆から発せられる音の波が処刑場を包み込む。

 先ほどまで徹底して澄ました態度を心掛けていた老人や執行人たちも、まるで悪魔を目の前にしたかのように驚愕と嫌悪で表情が歪んでいる。

 しかし、いまだ怒りのままに荒れている群衆とは違い、深呼吸とともにすぐに平常に戻る。


「以上でよろしいですか?」

「……」

「では、お願いします」


 その言葉とともに執行人の持っている2本の槍が横っ腹に迫る。


『勿体ないな~。せっかく面白そうなのに』


 突如、男の頭の中に声が響く。


 グシュ。


 混乱を整理する間もなく、味わったことの無い痛みが男を襲う。

 横っ腹から首にかけて心臓を通過するように十字に2本の槍が男の体を貫き、口から鮮やかな血が溢れ出す。


『君の選択を期待してるよ!僕の世界……』


 激痛の中、最後まで耐えることができず意識が消える。

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