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コンコルドの嘆願4




「やることヤッて、夕方まで寝てスッキリした結果、思うことがある」


「……はい」


「やっぱり寝不足で判断力が鈍っていてかもしれない」


「……同感です。冷静であれば、こんな流れに任せた行為はしなかったと……思います」


 シーツで身体を隠しつつ、由良は頷くのであった。

 事後であった。

 言い逃れようのないR18の後であった。

 賢者というべきか、若干の自分に対する呆れを覚えつつ、空気を変えるべく武蔵は咳払いをする。


「先にシャワー浴びてきてくれ。俺は色々片付けておく」


「はい……お先に、失礼します」


 武蔵と由良は理数系だった。実地検分せねば気が済まない質であった。エアレーサーなんてリア充スポーツに傾倒する人種であるからして、とりあえず首を突っ込んでから後悔する人種であった。

 というわけで先人にアドバイスを受けて、2人は武蔵宅でやってみた。

 否、ヤッてみた。

 学校から帰宅した信濃は、兄の部屋で寄り添って眠る2人を壁の穴から戦慄と共に見守っていた。


「あたた。慣れない体勢で腰痛めそうだ」


「ほとんど……レスリングでした」


 行為自体はなんとか完了したものの、やはり問題は浮き彫りとなる。

 初体験ということで不備は多々あるが、最大の問題はどちらも攻め属性であることだった。

 ソーセージの奪い合いである。


「戦訓は大切だ。やっぱり実戦でないと判らない改良点ってあるよな」


「色々と……準備すべきでした」


「お兄ちゃんが、お兄ちゃんがサラッと大人になっちゃった……!」


 戦々恐々としつつも、3人分の夕飯を作る信濃。

 妙に夕飯の時間が遅くなったのは、それだけ信濃のショックも大きかったからである。


「てっきりお兄ちゃんの初めての相手はアリアちゃんか妙子先輩だと思ってたよ!?」


「あの2人は正統派美少女だからハードルが高い」


「男同士だとハードルが低いって発想が凄い。ほらお兄ちゃん、お皿食卓に運んで」


「あ……手伝うよ。……由良ちゃん、これ何?」


「エリンギとゴーヤのあんかけだよ」


 食卓についた3人は、とりあえず総評に入る。


「どっちもオフェンスだから、割と収拾つかなかったな」


「まさに……ドッグファイト」


「身長差があるから互いに、ってのも難しいし」


「なんか……色々と間違ってる、気はしました」


「ねえ、妹の前でそういう話やめない?」


 流石にいたたまれなくなった信濃が2人を制止する。

 日頃素っ頓狂な発言ばかりしている彼女にしては、異様なほど常識的なツッコミであった。


「でも思った以上に良かったぞ、お互い男の体を知り尽くしているからかな」


「異性だと……こうはいかないかも、しれません」


「続けるんだ、猥談」


 大きくため息を吐く信濃。

 彼女としては大いに不満があった。それはもう、とんでもなく不満であった。


「こんな可愛くてお兄ちゃんラブな妹がバッチコイで甲斐甲斐しくお世話してるのに、どうして他の人に靡くかなぁ」


「お前だって肉親だからハードルめっちゃ高い方だろ」


「別にお兄ちゃんのハーレムに男が入ってるのはいいんだよ? でも、お兄ちゃんの周囲一連の流れが物語だったとしたら、致命的にこの展開はおかしいよ。主人公は男相手に処女童貞喪失するし、妹は共産主義かぶれの学生運動だし、メインヒロインっぽい転校生は影薄いし、兄貴分なハカセはワニワニしてる!」


「お前って、変なところで冷静になるよな」


 そもそも界隈の奇妙な人間関係を構成する一翼を担っているのは、間違いなく信濃だ。

 むしろどう考えても、信濃こそがトップクラスにやべー奴である。それと比べれば兄がホモ許容など些細なことであろう。


「俺はハーレムを築く、そして全員と肉体関係を持つ。その覚悟は前々から表明していただろう」


「にしても、どうして由良ちゃんなの? 物理的に難易度高いでしょ、そういう意味で難易度一番低いのはたぶん妙子先輩だよ? ガバってるよ?」


「物理的言うな」


 あの人は頼み込めば喜んで股開くだろうし、と信濃は付け足す。

 だが武蔵は首を横に振った。


「お前はあのおっぱいの面倒くささを理解してない」


 ハーレムに加えようと武蔵がアプローチする面子の中で、由良は信濃に次いで付き合いが長い。

 そして最も特殊な関係性だからこそ、由良は曖昧を恐れて本気の覚悟を完了してしまったのだ。

 学生だからといって異性交友を自制する気などサラサラない武蔵、条件が揃えば遠慮なく食っちまう人間である。

 そして真っ先にその『条件』が揃ったのが由良だった、それだけだった。


「その割に、お兄ちゃんって普段ヘタレだよね」


「リスク管理に厳しいと言ってほしいぜ。ハーレムの維持には宇宙計画並の慎重さが必要だろう」


「おっぱい先輩は覚悟完了していないと? 明確にハーレム加入に同意してるのに」


「あれは欲望のまま適当に抱いたら抱いたで禍根残るぞ。抱くにしても全力で全方位に根回しをした上で、シチュエーションを徹底的に整えなければ駄目だ」


「めんどくさいね」


「めんどくさい人だよ。しかも、ヘタレ人間だから物理的にも厄介だ。たぶん覚悟決めてた由良ちゃんの方が物理的にもあっさりしてたと思う」


「物理的物理的……連呼しないで下さい」


 由良はおしりを気にしていた。


「なんか、先輩ってほんとに外見ステータス全振りな人だね」


「性格だって悪い人じゃないんだけどな」


 おそらく誰かが彼女を顔だけ見て交際したなら、遅かれ早かれ破局する。

 一見しただけでは到底判らないほど、内心色々と抱えている女性なのだ。

 だがその面倒くささが可愛い人なのでオーケーなのである、とは言わない武蔵である。


「じゃあ時雨ちゃんは?」


「怖いからパス」


「Tレックス系女子だもんね」


 順位を付けるなら、付き合いも長くてハーレムも許容し美人で献身的な時雨はぶっちぎり1位である。

 あの元恋人は、急に呼び出して関係を迫っても受け入れるであろう。むしろ武蔵がブレーキ役にならねばならないレベルの残念少女だ。

 だが彼女に関しては、武蔵の内心がまったく片付いていなかった。ハーレムに加えるかすら未定。

 他の面子と違って、攻守が武蔵と時雨の間では逆転しているのだ。


「お兄さんのハーレム計画って……現状どんな状況なんですか?」


 訊ねる由良に、武蔵は適当なチラシの裏を使って説明する。


「こんな感じかな」




アリア 結婚の言質→不明瞭     関係性→友人 ハーレムについて→国柄的に許容 全体推移率→ 30%

妙子  結婚の言質→条件つき承認  関係性→恋人 ハーレムについて→一応だが許容 全体推移率→ 70%

信濃  結婚の言質→快諾      関係性→夫婦 ハーレムについて→むしろ推進派 全体推移率→100%

由良  結婚の言質→了承      関係性→恋人 ハーレムについて→許容     全体推移率→100%

花純  結婚の言質→それ以前の関係 関係性→知人 ハーレムについて→情報不足   全体推移率→ 10%

時雨  結婚の言質→バッチコイ   関係性→狂気 ハーレムについて→内心は複雑  全体推移率→???%




 一通りまとめを書き終えた武蔵。

 その表を見て、信濃と由良は思う。

 この人普段からこんなこと考えて生きているのか、と。


「さて、何か気になることがあるなら質問に答えるが」


「実妹と男の娘が攻略完了済みで、しかも3人で夕食を囲んでるって無茶苦茶な状況だね」


「そうだな、将来的にはこの机ももっと大きなやつに買い換えないと」


 由良が挙手する。


「花純さんって……誰でしたっけ」


「生徒会長の下の名前だ」


「ああ……朝雲重工のご令嬢さん……」


「っていうかお兄ちゃん、会長さんまで狙ってたの? あの人大企業のお嬢様だよ、お兄ちゃんなんて吹けば飛ぶような権力者だよ?」


「権力など考慮しない感情の発露こそ愛だろう」


 なんかちょっと納得してしまった信濃であった。


「信濃ちゃんは……どうして、ハーレム計画を推進してるの……?」


「あ、ほら。うちってお兄ちゃんと私しかいないから」


 信濃はどこか寂しげに笑う。


「ずっと憧れてたんだ、大家族って」


「由良ちゃん、騙されるな。俺達の両親は単身赴任でいないだけだ、死んでないぞ」


「知ってます……」


 付き合いは長いので、武蔵達の両親が存命であることは由良も把握していた。

 信濃は可愛い女の子も大好きで、そっちの方が面白そうという理由である。


「でも、100パーセントが何人かいるっていうのに、妙子先輩は70パーセント止まりなんだね」


「まあ理由については前述の通りだ。手順を踏まないと簡単にこの数字は簡単に下がるだろう」


「めんどくさいね」


「なー」


 同意しあう兄妹。

 次に由良が注目したのは、アリアの全体推移率であった。


「アリアちゃん……普段からお兄さんと仲良くしているのに、30パーセントなんですね」


「アイツの身分は性奴隷だが、実質は友人とか師弟関係に落ち着きかけてるからな。関係が変わるとすれば、何かイベントが必要だろう」


「わ、お兄ちゃんゲーム脳」


「要するに、きっかけですよね……具体的には?」


「うーむ、そういうのは劇的な展開が必要だからな。インパクトは大きければ大きいほどいい」


「恐怖の大魔王が世界を滅亡させるとか?」


「それ流行ってんの?」


 信濃までもが予言ネタを使い始めたことに、自分が流行に乗り遅れているのではないかと危惧してしまう武蔵であった。


「お兄ちゃんの指針としては、この数字が100%に達した子は逐次どんどん抱いちゃうつもり?」


「まあそうだな、別に皆まとめて7P初体験に挑むつもりはないよ」


 それはそれで男のロマンだが、失敗する可能性が著しく高い。

 6人を前に失敗し、嫁達から嘲笑されたら死ねる自信が武蔵にはあった。


「お兄ちゃんお兄ちゃん、ここ見てここ」


「ん?」


 信濃は笑顔で自分のパーセンテージを示した。

 100%である。誤差を疑う余地もない、兄ラブ妹である。


「お兄ちゃんにも色々あるんだと思って我慢してたけど、男でも抱いちゃうっていうんなら私だって容赦しないよ」


「不公平は良くないな。いいだろう、今晩は俺の部屋に来い」


「即決……」


「パイロットに必要なのは十全な知識と経験、そしてそれに全賭けする狂気だ」


 3人で夕食を済ませ、風呂に入り、ワニワニパニックの練習を一通り済ます。

 そうして時間を確認すると、既に時針は天辺を超えていた。


「今から帰るのもあれだから、今日は泊まりなよ」


「う、うん……ご厄介に、なります」


 大和宅にお泊りすることとなった由良。だが、由良がどこで寝るかは議論の余地があった。


「由良ちゃんもお兄ちゃんの部屋に泊まる? 私とお兄ちゃんは由良ちゃんが眠る隣で初夜るけど」


「気まずいです……」


「かといって信濃の部屋で寝るのも問題だぞ、由良ちゃん男なんだし」


 喧々諤々の議論の末に、3人で武蔵の部屋に向かうこととなった。

 これが、長い夜の始まりであった。



この主人公はホモも近親相姦も気にしない倫理観ガバガバ男です。

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