コンコルドの嘆願1
『2045年5月25日』
五十鈴由良は美少女である。
その股間には紛うことなくゾウさんのお鼻がパオーンと垂れ下がっていたが、外見は間違いなく美少女である。
華奢な骨格。細い線。サラサラの髪。声は高いソプラノ。喉仏などどこにも見当たらない。
どこをどう見ても、肉付きが薄いことを除けば女性にしか見えないのだ。
そんな彼だが、外見のみならず内面、自分の性別に関する意識もまたさほど明確ではなかった。
同年代の男子達が恋やらスポーツやらに打ち込む中、機械弄りをライフワークとして邁進してしまったのもそれを助長させる一員だったのかもしれない。
男の世界だと思われがちだが、技術の世界は実力主義だ。
鉄と油の世界で生きてきた由良にとって、自分の性認識など割とどうでも良かったのだ。
なので、結果的に女性と勘違いされることが多かっただけであり、内面はあくまで『中性的』。二次性徴がほとんど発露しなかった体質もあって、そういった点で悩むこともなかった。
よって由良の『方向性』を定めてしまったのは、他ならぬ大和武蔵その人であると言える。
「由良ちゃん、俺のハーレムに入ってくれたら今ならクオカード5000円分プレゼントだ」
経験を積むべく実家とは他の工場でアルバイトをしていたところ、由良は仕事の後輩としてやってきた彼と出会った。
少し前まで学生エアレーサーとして暴れまわっていた、由良と同い年の少年。噂で聞くところによると随分とストイックな人物という印象を抱いていたが、所詮噂など噂でしかないと由良は解釈した。
それはそもそも口説き文句だったのか。第一声からして不審者丸出しな彼を、由良は不思議なものを見る目でしばし観察することにする。
元々飛行機を扱っていた為か、基本的な部分は抑えている。工学に関して当時の武蔵は本格的に勉強を始めたばかりだったが、それでも将来有望な技術者だった。
バイトの後輩として、仕事面に文句はなかった。しかし性格は大いに癖のある人物だった。
外見が性別不詳とはいえ、男をハーレムに加えようという豪胆っぷり。否、ハーレムだからこそ男が1人くらいいてもいいかもしれない、という発想なのか。
これまで同性に口説かれたことは何度かあったものの、よもやこのような欲望だだ漏れな提案をしてきた人物を他に知らない。
いっそ清々しい提案に、由良は不信感や恐怖より先に、大和武蔵に対する興味が勝ってしまった。
なんということか。由良はシンプルに武蔵に恋してしまったのだ。
そして、高校入学後に発覚した事実―――武蔵が、由良を女の子と勘違いしていたという真相。
由良は相応にショックを受けた。だが、こうも思った。
「だからって、今までのことをなかったことには……しないで、ほしいです」
武蔵の前に立ち、スカートをゆっくりとたくしあげる由良。
「由良……ちゃん」
「お兄さん……責任、とってください」
スカートの下にそそり勃つのは、紛うことなき武蔵の言葉の結果。
武蔵には責任があった。美少女だからととにかく口説き、そして誰よりも最初にハーレム入りへの意思を固めた由良に対する責任が。
武蔵はそっと由良の肩を掴み、彼の唇に―――
男でも食っちまうような主人公が嫌、という人はこの章を飛ばして下さい。
はい、時間は遡ってその日の朝からスタート。




