ジュラヴリの遺児3
「あああ。サボりなんて初めてだわ」
「背徳感が半端ないです」
「あの、どうして僕まで……」
部室の艦橋にて意気消沈する女性陣3人。
最後の困惑する声は由良である。
この雰囲気、なんだかイケナイことをした後みたいだな、と武蔵は密かに興奮した。
『ご主人様、最初の授業が始まった時間だにゃあ!』
「知ってるよ、言わんでくれ」
タマが親切にも設定していない時報を知らせる。
自称『真の人工知能』である彼女は、日頃好き勝手に飛び回っていた。
いっそ、武蔵の部屋にいる時間より外にいる時間の方が多い。
「これからどうします?」
「こっそり学校に戻りましょ」
「意外と真面目ですね先輩」
「私、受験生よ?」
「俺のところに就職して下さい。三食昼寝付きです」
「とにかく大学は行くわ」
「あの、それより結局どうしてこうなったか教えてほしいのですけど……」
小さく挙手した由良に、武蔵は頷く。
「今日集まってもらったのは他でもない」
「私の飛行機についでですね!」
「俺の妹の信濃が赤化した。各々対策を提案してほしい」
まとまりのない集団であった。
「いえ、それより現状説明を……」
「それじゃあ制限時間は5分。皆、いい案を頼むぞ」
とりあえず忌憚ない意見を聞こうと、武蔵は各々にスケッチブックを渡した。
そして5分後、一斉に紙を上げる。
アリア『分割して内部紛争させよ』
妙子『可愛いは正義』
由良『先に手を出させる』
「……なるほど」
まったく意味が解らなかったが、武蔵はとりあえず意味深に頷いておいた。
「とりあえず、アリアから詳細を聞こう」
「簡単なのです。制御不能ならば、双方を上手い具合に争わせればいいのです。互いに銃を向け合っている内は、こちらに銃口が向くことはありません」
「流石小さな国土で世界中を掌握してた国は言うことが違うな。で、誰と誰を争わせるって?」
「そりゃあ、武蔵と信濃をです。あることないことを吹き込んで、お互いを疑心暗鬼にすれば制御もずっと容易になります」
「よし却下だ」
武蔵は妙子に向き直した。
「それで、妙子先輩のそれは?」
「文字通りよ。可愛いは正義、その根源がなんであろうともね」
武蔵はこめかみを押さえた。きっと、こんな考えなしの単純思考どもが○産主義に賛同してしまったのだろう。
「ミイラ取りがミイラになる気しかしないから却下」
いつの間にか感染拡大している、それが思想の恐怖であった。
だが、武蔵にとって妙子は別枠だ。
明確な好意を示してくれた相手には配慮が必要だった。
「妙子先輩マジ綺麗なお姉さん」
「ねえその唐突かつ適当なフォローなに?」
「おっぱい大きくなった?」
「髪切った? みたいに言わないで頂戴」
妙子は最近、Gカップに昇格したばかりである。
実際大きくなっていた。
「それで、由良ちゃんのそれはどういう意味だ?」
「地政学、敵の敵は、味方……です」
単純明快なようで、机上の空論になりがちな理屈である。
あまりに強大な敵を前にした弱者達は、一致団結するより内輪もめに終始するのだ。
「主導権を握れば……あとで色々とやりやすいです」
「あら、この子ったら戦後を見越してやがる」
由良は意外とちゃっかりしていた。
「囲んで……追い詰めます」
「追い詰めたら可愛そうだろ」
「あとでどうとでも仕向けられます……弱っているところに付け込んで、敵が正しかった、自分は間違っていたと……自虐な価値観を刷り込みます」
「よし、いい加減にしようか君」
立場に余裕があるのならば、先に手を出させるのは有効な手段だ。
ホトトギスが鳴かぬなら、鳴くまで止まり木を揺らしながら待てばいいのである。
「で、どうやって信濃に手を出させるんだ? 俺が死傷しない程度にしてほしいのだが」
来いよヘイヘーイ! 煽って待ち受けた挙げ句、太平洋中心の軍事拠点に大打撃などごめんである。
「とりあえず包丁を……」
「包丁!?」
「死なない程度に……めった刺し」
「加減が難しいな」
成功の暁には間違いなく武蔵は信濃に優位に立てるであろう。生き延びられれば。
「信濃ちゃんは、根は優しくて素直で献身的な女の子……弱みを握ればもう逆らわない」
心が折れて、従順となった信濃。
メイド服を着て健気に兄に尽くす妹を妄想すると、武蔵は身震いした。
「……いいかも」
「妹を男の願望丸出しなメイドに仕立てようとするのは、人として駄目かも」
妙子が冷たい目で武蔵を見据えていた。
「メイドさんをしてほしいなら、お姉ちゃんがメイド服でお世話してあげる」
年上という自分の立場にゾクゾクしつつ、妙子が提案した。
「血の繋がった妹っていうのが、むしろいいんです」
「ま、まままっ」
戦慄する妙子であった。
会議は踊れど迷走するばかり。進まないわけではないのが、むしろ混迷を深めていた。
「とりあえず信濃はメイドにするとして」
「するんだ……」
学生の特権たる底抜けに馬鹿な談義をしていると、船の外が騒がしくなってきた。
何事かと窓から見下ろすと、作業着の配達業者が武蔵達に気付き声をあげる。
「お届け物でーす!」
「あ、はーい」
パタパタと外へ駆けていく妙子。
「お母さんみたいだ」
「お母さんですね」
再びパタパタと戻ってくる妙子。どこか狼狽した様子で、武蔵に真っ先に訊ねる。
「武蔵くん、なんか変なもの頼んだ!?」
「え、エロいものなんて頼んでませんよ!? 箱勝手に開けないで下さい!」
「やっぱり武蔵くんね! ちょっと来なさい!」
「おかーさーん!」
ぐいぐいと腕を引っ張られ、船の下に降りる4人。
そこに鎮座していたのは、巨大な木箱で梱包された何かであった。
「武蔵くんこれ何!」
「つか、アリアの飛行機でしょう。朝にメールしたじゃないですか」
「まあ、携帯忘れてたわ」
「いますよね、携帯を携帯しない奴」
アリアがぴょこぴょこと飛び跳ねる。
「遂に届きましたね、家からの宅配物!」
「さすがエロの本場、スケールが違うな」
「誰がエロ本宅配頼みますか! 飛行機です飛行機!」
「武蔵くんはまず、宅配便イコール男性向けパソコン部品って固定観念を捨てなさい」
受領確認のサインを終え、木箱の解体に取り掛かる。
海上船にて遥々地球を半周し、日本保有の軌道エレベーター『天空の橋立』を昇ること38000キロメートル、更にジオ・ステーションから大型宇宙船にてセルフ・アークまで運搬された大荷物。
物が物なのでしっかりと梱包されており、木箱を分解するだけでも難儀であった。
「結構、重労働ね……」
「ですね……」
ダンボールや紙箱とは訳が違う。内容物を保護し固定させる為の木箱は、その加工や処分の容易さから、最初から破壊前提で釘打ちされている。
「あ、そだ。こういう時こそタマの出番でしょう」
「そんな小さい子に何が出来るのよ」
『お任せだにぁあ!』
タマは木箱の前に浮かび、スカートから巨大な鉄塊を取り出した。
『みんなだいすきGAU―8!』
「総員退避ー!」
史上最強の30ミリガトリング砲が、瞬きする間もなく木箱を地上から吹き飛ばした。
散った木片を片すと、中から姿を表したのは流線型の分解された物体であった。
「飛行機ね」
「はい、私の曽祖父が100年前の戦争で乗っていた機体だそうです」
「デ・ハビランド DH・98 モスキート。……見るのは初めてだ」
木造双発の流線型の機体。傑作と呼ぶにふさわしい美しさに、武蔵も息を呑む。
「でもどうして虫みたいな名前なんでしょうね。ええっと、日本語だとベンジョコウロギ?」
「蚊だ」
未だに日本語を間違えることがあるアリア。
どちらにしろ、兵士の士気に影響するレベルの酷い名前だった。
スピットファイアを始めとして、あの国の兵器の命名は割と士気に影響するレベルで大概だが。
「でも不思議。この機体に乗って、アリアちゃんのご先祖様は100年前の空を飛んだのね!」
浪漫を感じているらしい妙子に、アリアは訂正する。
「いえ、そのものではありませんよ?」
なにがそのままじゃないのか、と視線で問う武蔵。
「私は直接の子孫ではありませんし、その彼が乗っていた機体そのものでもありません。戦後しばらくしてから買い取ったと聞いています」
古い戦闘機が民間機として払い下げられるのは連合国側ではよくあったことだが、それも旧式機に限った話だ。
今でこそ骨董品だが、当時は最先端の軍用機。軍人が乗っていた機体そのものが本人に払い下げられることなどそうそうない。
兵器なのだ、当然である。
「しかしモスキートの稼働機か、残ってるもんなんだな」
「博物館に残っていたものを引き取ったと聞きました。とはいえ当人が亡き今、何らかの形で処分されそうになっていたのですが」
「しなかったの?」
「処分のほうがお金がかかるのです」
「そういう問題って世界共通なんだな」
「それに、私がいつかエアレースに出場する時、乗りたいと思っていたので」
そう言って、愛おしげに機体に触れるアリア。
アリアは幼少より、ずっとこの機体と共にあったのだ。納屋に死蔵されてきた機体を見上げ、この機体を駆って空を舞う日を夢見て。
そしてそれは、十二分に現実的なところまで迫ってきている。
「純戦闘機というよりマルチロールな戦闘爆撃機だが、出場出来なくはない。……ん?」
武蔵はこの機体をエアレーサーに改造する予定を立てようとして、違和感を覚えた。
「んんんっ?」
何かがおかしい。具体的にいえば、機首とか銃座とかが。
よくよく疑い前提で見ていけば、全体的にシルエットの差異を感じる。
「どうしたのです?」
コンコンと機体を叩くと、薄いジェラルミンの金属音。
「おい木製じゃないぞこれ」
「木製の飛行機なんてあるわけないじゃないですか」
「モスキートは世界的にも珍しい、木製戦闘機なんだよ」
デ・ハビランド モスキート。名機に分類される世界的に有名な戦闘機だが、その最大の特徴は『木製である』ことである。
アリアがそう考えたように、飛行機とは金属製が基本。それは100年前であっても同様であり、モスキートは異端な存在であった。
しかしながら、兵器は結果が全ての世界。例えそれが木製であっても、結果さえ出せれば誰も文句は言わないのである。
そして、モスキートは木製でありながら結果を出したのだ。
「そんなモスキートにも幾つか種類があるが、金属モノコックの機種はなかったはずだ。これはモスキートではない」
「じゃあ……なんなんですか?」
今まで信じてきたことを否定され、不安げに訊ねるアリア。
「新司偵です」
不意に明かされた名を告げたのは、1人黙って機体を調べていた由良だった。
「由良ちゃん?」
「新司偵、100式司令部偵察機……です。コックピットを見れば、一目瞭然です」
指摘され、武蔵も機首を見やる。
そこには通常の飛行機とは明らかに異なる、機首上面を覆う広大なキャノピーが存在した。
例えるならば、以前武蔵達が乗ったスピード・カナードに近い。コックピット位置が、かなり機体の先方まで迫り出しているのだ。
「どんな戦闘機なんですか、その『紳士帝』って」
「その発音やめろ」
「面倒なのでナンバーで呼ぶのです、日本語の略称はちょっと法則がおかしいのです」
外国育ちのアリアは、personal computerをパソコンと略す日本の感覚に強い違和感を覚えるタイプであった。
「つーか、戦闘機じゃなくて偵察機だ」
武蔵は訂正するが、一応新司偵……ないし百式にも戦闘機型はある。
優れた速度と高高度性能は、迎撃機として充分に適正があったのだ。
ただし『日本軍機にしては』という但し書きがつくが。
「運動性能は低いけど、どうせ乗るのが素人だしな。一撃離脱に徹すれば充分使い物になるだろう」
防弾性能が低いのもネックだが、実戦ではないので危険性はない。
機体の出来も素性もいいのだ。充分いける、と武蔵は踏んだ。
「偵察機……偵察なんて戦闘機で写真とれば良さそうなものですが。どうしてわざわざ専用機を作ったのですか?」
アリアの疑問に、武蔵は若干脱力した。
「あのな、偵察用のカメラなんてバカでかくてアホ重くて、しかも扱いが難しい精密器具だぞ。コックピットから操縦桿片手にパシャ、ってわけにはいかないんだ」
故に偵察機は2〜3人乗りであり、偵察中は後部座席員は写真機の操作に専念出来るようになっている。
ならばカメラが小型化した現代ならば戦闘機のコックピットからパシャ、で済むかと言われればそんなことはなく、技術進歩と共にカメラも高性能化しているのでとても人が持てるサイズではない。
戦闘機の下に大きなカメラを取り付け、コックピットから遠隔操作でパシャ、である。
というか偵察なんて危険な任務は基本無人機頼りだ。
「へえ、カメラですか。ちょっと見せてください。記念写真を撮りましょう」
「今時フィルムカメラなんて現像出来ねーよ」
そう揶揄する武蔵だが、現在でもフィルムの現像を行える店舗は存在する。愛好家というのはいるところにはいるものなのだ。
そも、ジェット戦闘機主流の時勢でプロペラ機に乗る武蔵達とてその部類の人間である。
「あれ……写真機がありません」
機体の後部座席を覗き込んだ由良が首を傾げる。
レストア時に極力原型へ近付ける努力を払ったはずだが、無いものは再現するか別の似た機材を載せるか、あるいはそもそも載せないでおくしかない。
ちなみに似た物で代用することが最も多いのはプロペラである。
飛行機のプロペラは機種ごとに決まっており、安直に他機種と交換などは出来ない。なので戦争の撤退時に、鹵獲防止の為外してしまうことがあるのだ。
そんな飛行機が拾われ博物館行きとなった際、どうせ飛ばさないのだし、と適当なそれっぽいプロペラで代用するのである。この百式もそういった経緯を経てアリアの祖国へ渡ったのか、プロペラは幅が広く日本軍機のそれとは似ても似つかない近代的な物へと換装されていた。
「あっちに向けて地球半周しているうちに紛失したのかも?」
「まあ外国製の機体ですし、さほど熱心に修復もしなかったかもしれません」
妙子は脚立でエンジン周りに登ると、エンジンの上部カバーをぱんぱんと叩く。
「……ねえ武蔵くん、なんだろこの違和感?」
「確かに……」
どうにも百式のエンジン配置に不自然さを感じる妙子と武蔵であった。
釈然としなさげな様子の妙子を脚立の下から見上げ、その胸元の膨らみで顔を伺えないことに驚嘆しつつふと思い出したことを語る。
「妙子先輩、豆知識いいですか?」
「聞きましょ」
急に始まる飛行機雑学。
「アメリカ軍は日本の飛行機に人物名を付けました。HienやIssikirikukoなんて英語圏の人からすれば呼びにくくて仕方がないでしょうから」
「そうね、現代人からしてもちょっと呼びにくいわ」
「戦闘機には男性名、大型機には女性名を付けていたわけですが。一式陸攻という爆撃機に対して、彼らはべディという名前を付けました」
「うん、別に法則通りだし普通じゃないの?」
「この名前を付けた人間がいるわけですが、一式陸攻の双発エンジンが彼のガールフレンド、べディさんの身体的特徴を連想させた……というのが通説なんです」
「まあ」
武蔵は百式を見上げる。
「俺なら、この機体にTaekoと名付けます」
「ねえ、さっきから疑問だったんだけど、それ口説き文句なの?」
「お兄さん……やっぱり、この機体少しおかしいです」
機体を見聞していた由良が降りてくる。
「確かにエンジン配置が独特だな」
「いえ、それは元々です……航空力学に基づいて設計された、高速飛行に適したレイアウトだと聞いています」
「さすが私の飛行機なのです!」
「……本当に最適解だったのなら、他の飛行機にも採用されています」
由良の呟きをアリアはスルーされた。
都合のいい耳である。
「でも……僕が不思議に思ったのが、エンジンなのは正しいです」
「これ、水冷エンジンか」
ようやく武蔵も由良の疑問点に至った。日本軍機は、ほぼ全てが空冷エンジン機である。
例外もあるが、少なくとも100式司令部偵察機はそうではない。
「セイバーエンジン、計器も外国製です。旧式ですけど……」
「なんでよりにもよってセイバーエンジンなんだ……」
会話の意味が判らない、という顔をするアリアと妙子に説明する。
「ネイピア セイバーエンジン、高回転大出力を目指した高性能エンジンだ。当時、100年前としては最強クラスのエンジン出力を発揮し、現代のエアレースでも充分通用するだけのカタログスペックを誇っている」
「凄いじゃないですか、100年前のエンジンが通用するなんて」
純粋に感嘆する技術に疎い2人。
確かに当時の技術でプロペラの理論限界に迫った高性能は凄まじい。理論限界間際なので、現代のエアレーサーとの性能差も誤差レベルに収まっている。
だが、スペック以外の部分がどうしようもないのもまた事実であった。
「スペック要求こそ高いが品質管理が杜撰でな。複雑な構造も相まってトラブルだらけのエンジンだったんだ」
製造時期によっても品質管理の程度は異なるが、どちらにしろ現代ではより高性能で扱いやすいエンジンが幾らでもある。
武蔵と由良の中では、エンジンの載せ替えは決定事項だった。
「放出品でしょうか?」
「だろうな。しかし、合計7000馬力とは大したものだ」
「いえ……チューンナップされているので、4000馬力は出ているかもしれません」
「合計8000馬力かよ、もう列車レベルだな」
由良と武蔵は考察する。馬力数はレシプロ戦闘機の戦闘能力を計る、最も単純な指標の1つである。
零戦が1000馬力前後。エンジン出力で最強クラスのコルセアでさえ2000馬力オーバー。双発なので単純に2倍されるとはいえ、小型な機体を8000馬力で振り回すのだ。
「この状態でも、800キロ出るかもしれん」
時速800キロ、それはプロペラ機にとっての限界のライン。
物体が光の速度を超えられないように、プロペラ機もまた時速800キロを超えられない。
どれだけ強力なエンジンを積もうと、どれだけ空気抵抗が小さい機体を設計しようと。
時速800キロは超えられない―――極一部の例外、モンスターマシン達を除いては。
「時速800キロ、それって凄いのですか?」
「いやまあ、現代だと超音速プロペラってのもあるんだけどな。昔よりは敷居は下がってる」
だがそれでもプロペラ機にとって時速800キロは君臨し続ける壁なのだ。
まず、普通の飛行機では超えられない。
「外装はカーボンに張り替えられてますし、機体剛性も強化されてます。完全に実用機です」
この場合の『実用機』とは実戦機という意味ではなく、競技用機という意味だ。
「アリア、お前の世話になっていたとかいう家の爺さん、こいつに乗ってたんだよな? 何か聞いてないのか?」
「え、えっと? すいません、私が物心つく前に亡くなっていたので」
機体の本当の名すら知らなかったのだ、アリアはこれについて何も知らなかった。
アリアからの確定は得られなかったが、しかし武蔵と由良はほぼ確信している。
「こいつは……エアレーサーだ。多分リノ仕様の、バリバリのチューン機だ」
リノ エアレース アンリミテッドクラス。
かつて地上でもっともイカれた狂人達の宴とさえ呼ばれたエアレース。
現在のエアレース レジェンドクラスの前身ともいえる戦いの出場機が、そこにはあった。
この小説内では主人公の零戦と対比させるため、新司偵ではなく主に百式と呼称されています。
別に金ぴかではありません。




