ピーファウルの落伍者5
「もう時間がないから、最後にこいつに乗ろう」
由良が半装軌バイクで牽引してきた機体。
武蔵は機体に歩み寄り、深緑色の飛行機の前に立った。
アリアの目が見開かれる。
「これは……零戦!?」
「いやどう見ても違うだろ」
日本人の8割3分は、プロペラがついていればなんでも零戦なのだ(日本怪鳥の会調べ)。
「スピード・カナードっていうスポーツ機だ。ちょっと操縦が特殊だが、遊び用の機体だから乗りにくいってことはない」
「超軽量動力機よりは上等ですが、これも大概玩具みたいです」
重量400キロ。狂気染みた軽量化が施された武蔵の零戦はともかく、まともな飛行機でありながらこれほど軽量なのは確かに珍しい。
曲線で構成された小ぶりな胴体は、米粒から翼が生えているようだとアリアに思わせた。
「だから実際玩具用なんだって。原型機はレシプロエンジン機だが、こいつは電化されている。これもバイトの店長のコレクションだ」
「あのオッサンなんでも持ってますね。本物の戦闘機とかも持っているんじゃないですか」
「お前の言う本物の戦闘機ってのはたぶんジェット戦闘機のことだと思うけど、ぶっちゃけ持ってる」
「むしろ何なら持ってないのです?」
「うーん、旅客機は……いやYS11が奥の方にあるし……というかオッサンって言ってやるな、たぶんまだ若い……と思う」
主翼を機体の後ろに持つ、エンテ翼の軽飛行機。軍事を齧っている人ならば、『震電と同じレイアウト』と言った方が手っ取り早いかもしれない。
本来真っ白な機体が緑に塗られているのは、店長の趣味で震電カラーに塗り替えられているからである。
「こいつは特殊なレイアウトだが、非フライ・バイ・ワイヤ式で正安定性が強いから充分練習機として使える。ちょっと古い機体だがアビオニクスも新調されているから心配しなくていい、これならお前でも扱えるだろう……たぶん」
「アビオニクスって何ですか?」
「『Aviation』と『Electronics』を組み合わせた単語だ。よく使うから、これは覚えておけ」
「んー、航空電子機器、ですか」
「……まあ、そうだな」
英単語でさえあれば、アリアは直訳して大凡の意味を推して知ることができる。
武蔵はずるいと思った。英語はパイロットを志す者にとっての鬼門なのだ。
「でも、航空機に搭載された電子機器なんて沢山あるのでは?」
「そりゃあな。ぶっちゃけ定義は曖昧で、単語としては航空機に載せる電子機器全てがこれに含まれる可能性がある。あまり具体的な単語じゃない」
先程から話題に上がっているフライ・バイ・ワイヤは勿論だが、初歩的な無線機や乗客用のオーディオ機材までもをこれに含むことがある。そもそも電子機器を組み込んでいない道具など今時ほとんどなく、どこからがアビオニクスなのかは意見の別れるところだ。
「にしても、先程のスタンダードなレイアウトからいきなりゲテモノになりましたね」
「ああ、操縦方法は同じでもカナード機は特性が色々と違ってくる。こいつを乗りこなせるようなら、問題は操縦補助の差異による違和感と断定してもいいはずだ。その場合は……解決法については後で考える」
結局フライ・バイ・ワイヤ乗れない問題については解決しないが、エアレースに出場する分に関しては対策が出来る。ケーブル舵式の機体を用意すればいい。
ココマデェ
「つーか、この前乗ったスペースシップナイトやプラネットクルーザー、あれら宇宙機だって充分ゲテモノな形だったろう。今時単純な直線翼の方が珍しいくらいだ」
ならば直線翼の需要がないかといえば、そんなことはない。
直線構成の翼は効率や性能が犠牲となるものの、製造整備が楽になる。安価であることを求められる業務用機では未だに現役の、シンプルだからこそ埋もれない技術の一つなのだ。
「いいから乗れ。前の席だぞ」
ぐいぐいとアリアの背を押して座席に押し込む武蔵。
「あの、そろそろ1人で乗ってみたいのですが」
「ダメに決まってるだろ。ちょっと上手く乗れたからって調子に乗るな。それとも俺と結婚するか」
「1人乗りは諦めます」
そんなに嫌か、と武蔵はショックを受けた。
「まあなんだ、飛行機の単独飛行ってのはある種、神聖な儀式みたいなものだ。ライセンスがあるといっても、それだけじゃ飛行機の先輩として許可は出せない」
飛行機の単独飛行は、ある意味での登竜門。決められた時間、孤独な飛行に耐え抜いて初めて免許を与えられるのである。
「半径数キロに渡っての孤独、無線機と僅かな情報だけで空という海原を航行する恐怖。その中で尚脈拍一つ揺るがさないようになるのは、本当に大変なことなんだ」
「あの、私は国ですでに単独飛行は経験しているのですが」
「それはなにかの間違いだった可能性もある」
「ないのですよ。あの時の教官も一緒に何を間違えたというのですか」
アリアには意味が判らなかったが、判らないなりに真面目な話をしていると察した彼女は折れることにした。
「解りましたから、後ろに乗って下さい。精々存分に頼らせて頂きます」
「飛行中に精神集中が出来ているか確認する為、後ろからちょっかい出してやろう」
操縦に専念する為に抵抗出来ないアリアを、一方的に背後からグヘヘである。
「変なことしたら、貴方が腕を前座席に回していようと構わずに射出座席で脱出させて頂くのです」
武蔵のこめかみに冷たい汗が流れた。そんなことをされたら腕が吹っ飛ぶ。
「じょ、冗談だよな? ですよね?」
「愛していますよ武蔵」
「そんな愛の言葉がほしいんじゃないの。確約がほしいの。愛と優しさは半比例なの」
しばらくスピード・カナードで飛んでみたところ、やはりアリアは条件次第ではごく普通に飛行機の操縦が可能という結論に至った。
空の上であっても雑談する余裕も出てきたアリアは、なんとなしに武蔵に話しかける。
「この飛行機、さっきの古い練習機より窓が広くていいですね。空を飛んでいるという感じがしますし、完全に覆っているので風が寒くありません」
「窓……ああ、風防か。そうだな、だが開放式の風防にも利点はあるぞ。速度が判りやすい」
「いや速度計見ればいいでしょうそこは」
「昔の飛行機は速度計が適当でな、あまりにアテにならないから『自分で風を感じて測った方がマシ』と言われていたんだ」
「ええっ……」
ドン引きするアリア。速度計なんて大した技術ではないという印象を持つ彼女としてみれば、たかが速度を計るのにすら難儀する技術力で飛行機を飛ばしていたという事実は、彼女をそれなりに驚かせた。
だがタイヤの回転数を測ればいい自動車と違い、空中で速度を測定するというのは結構難しいのだ。
「そう聞くと、さっきまで乗っていた機体が急に恐ろしく思えてきたのですが」
「ダイジョーブダイジョーブ、エンジンは骨董品の寿二型改一、しかもサバイバーでひょっとしたらいきなり止まってたかもだけど、ダイジョーブ」
「なにをどう安心しろと」
武蔵は後部座席で尻の位置をモゾモゾと調節する。背後からペラが空気を叩く音がするのは、いささか奇妙な気分を彼に与えていた。
武蔵にとってもエンテ機など初めてだった。
「あ、そういえば飛行機ってエンジン止まっても滑空して安全に着地出来るのでしたよね。なら確かに安全ですね」
「戦前の飛行機にそんな設計思想が組み込まれているわけないだろ。100年前の飛行機だぞ」
「降ろしてー! 降ろして下ざいー!」
「落ち着け、この機体は戦後に開発されたものだ。航空機用のパラシュートも積んでるから墜落の危険はほぼ0に等しい」
「『勝率は99,9%、負ける要因などありません』とか言って主人公に負けるキャラなんて幾らでもいるじゃないですか!」
操縦桿を左右に揺らし、翼を振るバンクと呼ばれる挙動にて抗議の意を示すアリア。
何気に使いこなしてるんじゃねぇよと呆れながらも、武蔵は彼女に飛行機の適正がまったくないわけではないことを再度確信した。
「お前の癖はおおよそ解った。これからどうするかは地面で考えるとして、とりあえずRTBだ」
「アールティービー?」
「Return to base、やることやったから帰ろうぜって意味だよ」
「日本語で言って下さい面倒くさい」
「お前の母国語だよな? それと俺もスピード・カナードを飛ばしてみたいから、I have control.」
「ゆ、You have control!」
武蔵はアリアから操縦を引き継ぎ、普段の言動に似合わぬ優雅な曲線を描いて旋回する。
蒼い空を、コンパスで引いたように軽やかに滑るスピード・カナード。素人のアリアからしても、それが自分の操縦とは一線を画する高度な技だと判った。
「顔に似合わず、丁寧な操縦ですね武蔵は」
「顔通りだろうが。俺の優美な顔が見えないのか」
「はっ」
アリアは鼻で嗤った。
「はっ」
「なんで2回嗤ったの? ねえなんで?」
そんなやりとりの直後。
武蔵は機体を90度ロールさせ、操縦桿を思い切り引いた。
急旋回するスピード・カナード。アリアの身体にも地上の数倍の重圧がかかり、悲鳴を上げる。
「はぐぅっ!? っ、な、何をするのです!」
「それは俺の台詞だ! 管制塔も何してやがった!?」
直後、スピード・カナードを飛行していた場所を白い閃光が通り抜ける。
「ニアミス!?」
事態に気付いたアリアが叫ぶ。
ニアミス―――空中接触の危険が伴うほどの、航空機同士の異常接近。背後上空より迫る小型機を察知した武蔵は、アリアに断りを入れる間もなく回避行動を行ったのだ。
それは結果として正解であった。衝突していたかは不明ながらも、それに極めて近い航路を不明小型機は通過していった。
「今の、さっきの2人の飛行機では!?」
アリアが指摘し、武蔵も続いて確認する。
確かにその機体は、練習を開始する前に武蔵達を茶化してきた男女……彼らが搭乗する凰花であった。
「あれは―――オートパイロット?」
一目で彼の機が人間の操縦から手放されていることを看破する武蔵。
降下し続ける凰花を追い並走することで、更なる観察を続行する。
「見て下さい。前の座席に座っている人がぐったりしています!」
「そうみたいだな。理由は判らんが」
心臓発作、機体から漏れたガスによる中毒、物理的なダメージによる意識の喪失。可能性は多々有るものの、それは今は重要ではない。
問題は目の前を手放しで飛行する凰花をどうするかだ。
「そこのクソカップル! 聞こえるか、応答しろ!」
無線機で通信を試みるも、後部座席に乗る女性は武蔵達に必死に手を振ってアピールするだけで、通信による返答はない。
「無線機の使い方を教わっていないようですね」
「ざけんな!」
通信が可能ならばまだ望みはあったものの、これでは自動操縦に切り替えての着地も行えない。
どうしたものかと悩んでいると、女性は突如キャノピーを開けた。
「脱出する気か?」
「男の人を見捨てて!」
「二人共倒れよりはマシだ、判断としては賢明だろう。―――って、パラシュート背負ってないぞ!?」
まさか、と目を疑う武蔵だが。
女性はこともあろうか、丸腰のまま空へとその身を投げたのだった。
「バカ、何を考えているんだ!」
「下は海ですから、死にはしないのでは?」
「死ぬわ! 時速数百キロで叩き付けられたら、海面もコンクリートと大差ない!」
どうすべきか、悩んだのは一瞬だった。
「無線で指示する、それまで空中待機していろ!」
「へっ? あの、ええっ!?」
ハーネスを外し空に飛び降りる武蔵。
アリアとてライセンス持ちである、安定性の高い遊具機を着陸させるくらい問題はない。
よって、武蔵は女性を追うことを選んだ。今打てる手の中で、最も確実に人命を救う選択を選んだのだ。
ほぼ自由落下するのみの女性とは違い、正式な訓練を受けている武蔵はすぐに彼女へと追い付く。そしてパラシュートのベルトを女性に固定し、予備傘を開いた。
急激に減速する武蔵と女性。小さな予備傘、しかも2人分の重量から減速速度は小さく、それなりの速度で海中に突っ込む。
武蔵はすぐさま女性の後ろに周り込み、羽交い締めにする形で行動を制した。
「コントロール、エマーンジェシー! 当方の救助を求む!」
「《こちらコントロール、状況は把握している。既に当空港常駐の特殊救難隊をそちらへ急行させた。それより―――》」
「何か? いや、これは暴れて溺れないようにであって、別に胸に触っているわけではないからな!」
「《そうではなく、君が搭乗していた機体は何をしているのだ?》」
言われ、武蔵はアリアが単独飛行させるスピード・カナードへと目を向ける。
先程と変わらず、制御を失った凰花と共に飛行していた。だが、その距離は先程よりずっと近付いている。
カツン、と翼端が接触する。2機が大きく姿勢を崩すのが、海上からでも判った。
「バカ、何をしているんだ! すぐに離れろ!」
武蔵は怒鳴るように指示した。
小さく見えて、凰花の機体重量は数トンに達する。対し、スピード・カナードは0,4トン。
接触して危険なのはアリアの方なのだ。
しかし武蔵の声を無視し、2機は再度空中接触。
「《でもっ、このまま降下していったら、この人死んじゃいますよ!?》」
「だからなんだ! お前が気に病むことじゃない! お前が背負うべき責任じゃないだろ!」
「《それを、飛び降りて女性を助けた貴方が言いますか!》」
「俺にはそれが出来る、お前にはそれが出来ない。それだけだ! 多少褒めたからって自惚れるな!」
「《でも、でもっ―――!》」
アリアは未熟であった。それは勇気というよりは、無謀に近い下策でしかなかった。
それでも、彼女なりに挟持があった。ひよっこにも劣るパイロットは、先人の行動を見習ってしまったのだ。
「《な、なんだっ!? ぎゃああっ! 落ちてる、墜落する!》」
何度かの接触、その衝撃で男が目を醒ます。
アリアの試みは適切ではなかったが、それでも1つの人命を救う結果となった。
飛行機が自機の状況を把握出来ない場合は、とにかく高度を上げて時間を稼ぐべし。その心得に従い、凰花は寸前まで迫った海面から逃れるべく上昇する。
「《良かった》」
安堵するアリア。武蔵が怒声を上げた。
「良くない! 前を見ろ、いやさっさと上昇しろ!」
指摘され、前方を確認するアリア。
そこには巨大な鉄が横たわっていた。海上に鎮座する横倒しとなったビルが如き、巨大構造物。
空母赤城。スピード・カナードの進路上に、全長260メートルの壁として彼女は存在していた。
「ああっ、くそ!」
もう駄目だ、と武蔵は思った。
旋回性能に優れるスポーツ機といえど、あれほど目前に迫った障害物を避けきれるわけがない。上昇は間に合わず、下降すれば海に叩き付けられ分解。左右に避けても船尾か船首に衝突する。
脱出するにも、パラシュートを開くにはそれなりの高度が必要。それほどの高さはもう失われていた。
彼の脳裏に諦念が過る。この状況から、事態を解決する術などない。
されど、アリアは諦めてなどいなかった。
機体を大きく傾け、船首へと向かって旋回。
しかしそれでは間に合わないことは明白。だが、アリアの行動は武蔵の予想の更に上をいっていた。
エルロンを開き、更にロールする。その角度は90度、完全な横倒し状態。
主翼の揚力が喪失するも、ラダーを蹴り機体を上向きにすることで高度を保つ。翼を縦に持ち上げたままに、スピード・カナードは赤城の船首へと突入した。
赤城船首、4本鉄柱の間。
僅か10メートルほどの隙間に、小さな機体を横倒しにすることで無理矢理ねじ込んで通過させたのだ。
「―――ナイフエッジ、だと!?」
そのまま、何事もなかったかのように姿勢を戻すスピード・カナード。
武蔵は信じ難い気分だった。ナイフエッジ、機体を90度横に倒して真っ直ぐ飛行するそれは―――シンプルな見た目とは裏腹に、高い技術を要求される高等技能なのだ。
当然だが、飛行機は水平を基本として飛ぶように設計されている。
重心も、操縦系も、全て水平であることを前提としている。ナイフエッジはそれら設計者の意図を完全に無視した、極めて不自然な飛行方法。
縦となった主翼はただのデットウェイト、空気抵抗となる。それだけではなく横方向への不要な揚力を発生させ、機体を意図しない方向へと持ち上げようとさえする。
エレベーターはラダーに、ラダーはエレベーターへと変貌。揚力が失われた分を、機体そのものを主翼とすることで補わねばならない。
プロペラ機―――特にスピード・カナードのような非力な飛行機ならば、揚力を強引に稼ぐことから徐々に速度が落ちていく。それに伴い少しずつ機体角度を調節し、一定の高度を保ち続ける。
単純な割に、逐次変化していく状況を四肢全てを駆使し御し続けなければならない。アリアが行ったのは、そういう技術に他ならなかった。
「ありえない、ライセンスを取ったばかりの、超軽量動力機にすらまともに乗れない奴が―――!?」
「《武蔵!》」
そこに唐突に―――むしろ自然な流れだが、武蔵にとっては現実に強引に引き戻されるような感覚を伴いながら無線通信が入る。
「……アリア?」
恐る恐る応答する武蔵。
「《今の凄くなかったですか! 褒めてくれてもいいのですよ!》」
自分の成したことをいい意味でも悪い意味でも理解していないアリアの声に、武蔵の頭が一気に冷えた。
「……とりあえず着陸しろ。お前、お説教な」
「《そんな!》」
「ああ、救助が来たからちょっと待て」
武蔵は救助隊のボートに乗り込みつつ、空を見上げる。
空を旋回待機するモスグリーンのエンテ翼。やはり、その飛び方はお世辞にも上手くはない。
だが、彼女はナイフエッジをやってみせた。ほぼゼロ高度でのナイフエッジなど、武蔵ですら御免こうむる危険な行為だ。
「単にビギナーズラックか。それとも―――」
あるいは、彼女は―――『そういう人種』なのかもしれない。
武蔵とは極対にある、道理や理屈を飛び越えていく種類の人間。武蔵が憧れ、そして打倒してきた存在。
かつてそうだったように、武蔵とアリアが全力で戦う機会が来るのだろうか。
武蔵はふと、そんなことを思った。
「……まあ、いい」
その呟きを聞いて、文字通り興味がないのだと感じ取る者などいないであろう。
並々ならぬ努力を対価とし、多くのものを切り捨ててきた彼だからこそ、天賦の才など認めがたい。
忌々しげに空を見上げ、そして自分の矮小さに我に返り武蔵は嘆息する。
「練習試合にマシな結果の展望が見えてきた、とりあえずそれで良しとするか」
雷間高校の勝利は武蔵にとっても益のあるものだ。アリアに才能があるのなら、それは別に悪いことではない。
「アリアのお説教して、関係各所への謝罪行脚して、ああ時雨にも挨拶しとこう。今頃愛しい俺を心配して涙目のはずだ」
とんだ放課後になったな、と溜息を吐く武蔵。嘆いていても仕方がないと、気をなんとか持ち直す。
とりあえずは―――アリアを迎えに行くべく、空港へ戻ろう。武蔵はそう予定を立てたのであった。
バート・ルータンという航空機業界の変なオッサン




