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リバー・リバー・リバー  作者: 大堀晴信
3/3

愚問

 あくせく就活をして、これでもう何社目だとか、もう内定もらったとか、何そんなことで一喜一憂してんだよ。お前等は社会に飼い馴らされたイヌだよ。


 いい会社入って、美人OLと恋して結婚して、海外に新婚旅行に行って、子供は二人ぐらいつくって、糞ジジイになって孫可愛がって、老衰しきって、死んでいくんだろ?


 最高に幸せじゃねえか。笑っちゃうぜ。吐き気すんぜ。そんな人生、一億くれても、やってやんねえ。十億なら考えてやってもいいけどな。


「ねえ、ケージ。ケージはどうすんの?」


「何がだよ?」


「何がって、就活とか」


 きたきた、マジでうぜえ。こいつもスーパーうぜえ奴だな。この話題になるとオレが不機嫌になるの知ってるくせによ。


「なあ、マミ、お前、なんもわかってねえな?」


「何が?」


 そういうお前に軽く殺意を抱いていることによ……。


「オレ……マミとのことマジで考えてっから」


 こんなバカみたいな歯が浮いて飛んでちっまうようなセリフを吐けば、大概の女は黙ることオレは知ってんだ。ついでに股も開くってか。お前には性欲しか感じねえんだよ。スマホでエロい動画を見るのと大してかわんねえの!


 死ねよ、オレ……。死んじまえよ、オレなんか……。


「それなら、尚更、就職のこと考えないとね」


 話題をすり替えたはずなのに、元に戻しやがった。マジでバカか、この糞アマ。


「なあ、マミ? オレがさ、何かに苦労してる姿、見たことあるのかよ?」


「……ない」


「そうだよな? それなら、黙ってついてこいよ。オレが何も考えてないと思ってんの?」


「ごめん、ケージ。私、好きだから、ケージのこと本当に好きだから」


 うっせえよ、うぜえよ、マジで。お前がミスキャンパスじゃなかったら、とっくに切り捨ててるぞ。


 オレはマミの耳にキスをした。


「イヤだ。みんな見てるよ」


「だから、なんだよ」


 オレはさらにマミの耳を舐めた。マミは甘ったるい吐息を零した。バカが。


「なに感じてんだよ」


「ケージのいじわる」


 早足にオレに駆け寄るマミ。オレはお前に問いたい。マミはオレのどこが好きなんだって? でも答えはわかってる。きっとこう言う……カッコイイところ、だってな。わかってる。オレだってお前の容姿以外に魅力を感じてないんだからよ。


 高校卒業とともに目を整形手術をした。オレは自分の目がコンプレックスだった。切れ長の小さな目で視力が悪いもんだから、目をしかめると睨んでいるように思われるから、前髪を重く長めにして目をかくしていた。


 だから高校時代にバイトで貯めた金で目尻と目頭を切開し二重にした。すると生まれて初めて知ったんだ。自分の鼻と口元は良くできたパーツだったてことを。


 髪型をセンターパートに色をハイトーンにして毛先を遊ばせた。ピアスも開けてみた。


 世界が変わった。一瞬で童貞卒業。大学生活ではサークル活動に勤しみ、飲み会に顔を出せば必ず女を持ち帰れた。夢のようだった。性欲は満たされた。誰とヤッた、とか自慢して、羨ましがられて、それそれはでよかった。


 でもふと気づいた。こいつらみんな、この整形したこの目とセックスしてんだって。だってさ、高校時代、すだれのような長い前髪をしてたから女子からは忌み嫌われていたんたぜ。そんなオレがだ。


 だからって、どうした? 何人とヤれたんだよ? 最高じゃねえか。何か問題があるのか?


 こんな顔もスタイルもいいマミみたいな女がちょっと雑に扱っても尻尾振って付いてくるんだぜ? 最高じゃねえか? なあ、そうだろ? 前髪すだれ野郎? 


 オレは改めてお前に問いたい。オレが前髪すだれ野郎でも付き合っていたか? 愚問だな。


 ああ、誰か……本当のオレを見つけてくれ……探してくれ……。






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