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本能と瓶と反省点

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目の前に緑色をした死が迫っていた。


一説には死が直前に迫るといままでの記憶が走馬灯として見えると聞いたことがある。

 しかし、実際はそんなことはなかった。

 なにか映像がよぎるなんてこともなく頭はただただ真っ白になり、体が必死の防御反射を起こすだけで精一杯だった。

 

 カン!


 はっぱのナイフが顔面に近づく中、おれはなんとか顔とナイフの間に盾を滑らせることが出来た。


 あぶねぇ…


 防いだことを自覚するとともに先程とは比べ物にならないほど汗が吹き出る。


 ここはゲームの世界だということはこれまでの経緯で重々承知している。

 ミニプラントの攻撃なんてものはシステムに乗っ取るのであれば恐らく当たったとしてもHPが削りきられることはないだろう。なまじ、HPが削りきられたとしてもコンティニューがあるかもしれない。


 でも、違う。


 この世界はゲームかもしれない。でもあの目前に死が迫る恐怖そのものは確かにおれが「生きている人間」としてここにいるのだと感じさせるに十分であった。


 そう感じると途端に恐怖で押し潰されそうになった。敵としては雑魚もいいところであるはずの目の前にいるレッサーゴブリンにすら「戦法」としてではなく、「本能」として逃げ出したいような気持ちになっていた。


 逃げたい…。いますぐ、この場を離れたい…。


 しかし、そんな気持ちが収まったのは意外なところからのワンアクションからだった。


 パリン!!


 まるでガラスが割れるような音が響くと同時に俺になにか液体のようなものがかかった。


 俺は新手の攻撃かと思い、身構えながらそれが飛んできた方向を見てみた。

 すると、明らかになにか物を投げたあとのフォロースルーを行っているバロバロさんの姿が目に入ってきた。


 なにをしたんだ……?


よりにもよってなんでこんなタイミングでこんなことをするんだと思うのもつかの間


 「バロバロ!バロ!」


バロバロさんはなにかをうったえかけるかのようにこちらに叫んできた。


 なんだ…?なにか言っている…?


ほんやくコ○ニャクを食べたわけでもないからもちろんバロバロの一言だけでは意志が伝わることもない。しかし、なにかを伝えようとしているのだけはわかった。

おれはそれを汲み取るためにまわりを見回した。

そして地面に落ちたものを見てみると


 この形は…


 ああ、なるほど…。


 おれは一息だけ深呼吸をし、「目の前の奴らを倒す決意」を固めた。


 そして胸に入った空気を吐き出し終え、スッと一呼吸だけ酸素を肺に満たすと…

 痛みで崩れた態勢を整え、レッサーゴブリンの方へ体の正面を向けた。

レッサーゴブリンは追撃と言わんばかりに再び、俺に対し槍を突きだそうとするモーションの真っ只中だった。

 しかし、その槍が勢いに乗り、前に突きだされることはなかった。

おれは突きだされる前に錆びた槍の穂先を盾ではたきおとした。途端にレッサーゴブリンは思わぬ方向から槍を弾かれて態勢を崩す。


今だ…!


おれは腰の短剣を一息に抜刀しレッサーゴブリンが持つ緑色のうなじへとへ振り払った。


 「グ…」


 レッサーゴブリンは呻き声のような物を出し、倒れ伏すや否や全身がポリゴンへと変化し、キラキラとした光の粒子となって空気中へとけだすかのように消滅しはじめた。


へえ、倒すとこんなエフェクトが出るのか


現実ではみたことのない思ったよりもきれいなその光景に俺は一瞬目を奪われた。

 しかし、すぐに思考をきりかえる。

その光景をただ手放しにただ眺めるわけにはいかない。


 


まだ戦闘はおわってないのだ。

 


 シュパ!


 カキン!


 「さっきのは痛かったけどそう何度もやられないよ」


 レッサーゴブリン討伐の余韻に浸る間もなく、ミニプラントは持ち前の飛び道具を発射してきた。

 俺は一回目・二回目と同じ轍は踏まないようタイミングをはかりしっかりと盾でナイフを弾き飛ばした。

 

この攻撃をしてきたあとのミニプラントの隙はおおきく、次の攻撃をするまでに数秒の時間がある。

 つまりこの攻撃さえ、防ぎさえすれば…


「意外と倒すのは楽なんだよね」


 おれはミニプラントとの間合いを詰めて横なぎに短剣を振るった。

 すると先程、盾で感じたような硬さを感じることもなくミニプラントは滑るように横一文字に切り裂かれた。


 ミニプラントに発声器官はない。

先程のレッサーゴブリンのように呻き声をあげることもなく、ミニプラントの上下に別れた体は地面にバサッと音とともに落ち、光の粒子として霧散し始めた。



 「ふぅ…」


 おれは未だに少し振るえる手で短剣を鞘に納め、盾を腰のもとの位置にさげなおした。


 ▶️EXP を27取得。

 ▶️レベルが2に上がりました。

 ▶️ドロップアイテム「はっぱのナイフ」を入手しました。

 ▶️スキル「スラッシュ」を習得しました。


 …怖かった。

 ただ痛みがあるだけで今、俺が置かれている環境はただのゲームだった頃とはこんなにも違うのかと深く認識させられた。


 ミニプラントもレッサーゴブリンも芋洗いでは初心者が最初の方の敵としてバトルするただの雑魚敵のはずである。

初見殺し的な性能なんてものはあるはずもなく、順当に戦えばHPが余程削られてるでもしない限り絶対に負けることはないだろう。


 それがこの体たらくとは…


仮にもトッププレイヤーとしてこのゲームの最前線を走ってきた俺にとってこんな一戦に取り乱すのは本当に屈辱的であった。


 我ながら自分が情けなくて仕方がない。


 おれは悔しさを噛み締めつつ改めて先程の戦いについて考えを巡らしていた。


 接敵…するのは仕方なかっただろう。あれは本当に意識の外から現れたものだった…。


 でも問題はその後だ。

 盾を腰から腕に持ちかえることに意識が向くばかりで相手から視線を外していた。

 それが一番の問題だろう。


 このゲームの戦闘はターン制ではないのだ。自分が行動の選択をするまで相手が待ってくれるなんて生易しいことは決してしてくれない。ならばこそちゃんと戦闘に入る前に戦闘準備をしておくことが重要である。


俺はただ武器や盾を構える。

ただそれだけのことを俺は怠っていたのである。


 俺だって普段のゲームであれば流石に敵が出るエリアで盾を腰にぶら下げたままにするなんてことはしない。冒険をしているのだ。戦闘に入ってもすぐに構えられるように常に腕に備えておくくらいのことはしておく。


 しかしだ。

 ルーニアへ向かうときにも感じていたのだが、ことこの世界では…



 「疲れ」の概念があったのだ。


 基本的に家に引きこもり、なまじ体を鍛えていない俺にとって腕になにかを常につけておくというのはなかなかにしんどいものがあったのだ。


 油断してたのかもしれない。

 そんなつもりはなくともどこかにここは知っているゲームだから大丈夫だと高を括っていたのかもしれない。

 「ゲームの仕組み」はこれでも情報屋をやってた俺である。

 十分に理解しているつもりでいた。

 しかし、俺は無知すぎた。

 この「世界の仕組み」をあまりに知らなすぎたのだ。


まさか、盾を持ちかえるってだけでここまでの弊害が出るとは…


 「はぁ…」


 俺は気持ちを切り替えるために目を閉じながら一つ大きなため息をし、頭を振った。


 次だ…次。次は油断しない…。


 内省を十分に行うと少し落ち着けた気がした。

 そして、目を開け今回の立役者の方向へと振り向いた。

立役者は相変わらず変な表情をしていたが、落ち着き払い馬車に寄りかかっていた。


 「バロバロさん!」

 「バロ?」

 「助かった!ありがとう!」


 バロバロさんはなにも言わずサムズアップをすることで僕に答えた。


 戦闘中、彼がなにかを投げたことを思い出してほしい。

 てっきり、おれに対してなにか恨みがあり攻撃をしてきたのかとでも思っていたが実を言うとあのときバロバロさんは回復用ポーションを投げてくれていたのだ。


 正直、あれは助かった…。


 ゲーム上ではHPを回復するだけに過ぎないあのアイテム。

 しかし、このアイテムはちゃんと「痛み」も取り除いてくれた。


 そして、芋洗いで回復するときに何度も見たのある割れたポーションの瓶もただ思考が「怖い、逃げたい」という染まっている状態から「これは俺が何度も戦闘を行ったことのあるゲームでもある」という思考に変えるのに一役買ってくれた。

 あれのお陰で冷静になって戦闘を行うことができたのだ。


 多分、これから先ポーションはかなり重要だな…。

ダメージが入る度にあんな痛みを味わうなんてのは正直、洒落にならない…

 回復アイテムは出来るだけ取得しておこうか…

 ん、でもそういや…回復といえばバロバロさんが回復してくれる条件って「HPが半分以下」になったときからじゃなかったけ?

 あのとき、確かに目茶苦茶痛みはあったけどHPそんな減ってたかな…?


 ……まぁ、いっか


俺は考えを中断し、退屈そうに小石を蹴ってるバロバロさんに声をかけた。


 「バロバロさん、移動再開しよっか。」

 「バロ。」


 わかった。

 言葉は通じないけどこんことを言ってるぐらいはわかる。

 そう一言を答えるや否や彼は改めて馬車の御者席に腰をかけ、馬をこちらに向かって歩かせはじめた。

 おれもそれを確認し再び街道を歩き始めることにした。



 ただの戦闘、一回だった。



 これを見ている君たちにとって今のはなんの面白味もなく「初手でダメージを受けたから味方が回復して攻撃を開始しただけの戦闘」であっただろう。


 確かにその通りだ。序盤でただ戦闘を一回行っただけ。


 でも、この戦闘を見ていた君にはこの一戦確かにおれに「現実」をつきつけ、心に深く深く刻み付けられた重要な一戦であったことをどうか覚えておいてほしい。

 

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