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海援隊

 必死のビラ配りは無駄ではなかった。次第にきりざめクルーが1日2名ずつ戻る様になってきたのである。キサキ三曹とキムラ一曹はビラを持って、"約束の場所"(集合場所)に来た。

 「カイドウ三佐!」

 「キサキ三曹、キムラ一曹元気そうで良かった。」

 「イベ士長やオノ二曹の姿も見えましたが、皆無事だったのですか?」

 「積もる話はこっちでしよう。」

 「って、きりざめ無いんすか?」

 「その件に関しては今艦長が必死で事にあたっている。」

 「今は西暦何年ですか?」

 「1866年10月20日だ。」

 「ホントに俺達TSPしちゃったんですね?」

 「キムラ一曹、スマホ圏外すよ。Wi-Fiも無い様です。」

 「あちゃ。」

 キサキテルノブ三等海曹は、大卒後民間企業に就職するも水が合わず3年程で辞め、25歳の春に曹候補生として入隊してまだ2年。物静かな青年で自衛官に向いているとは思えない人柄だが、以外にもギャンブル好きで、金銭感覚はとても良いとは言え無かった。

 キムラヒサシ一等海曹は、高校卒業以来の自衛官20年目のベテランである。二人の息子を持つ父親でもあり、その息子達は何と防衛大学校学生である。趣味はラーメン屋巡りで、関東近辺のラーメン屋はほぼ制覇している強者である。

 「あーあ。キサキ三曹、ラーメン食いてぇ。」

 「幕末にラーメン屋なんか有るわけ無いじゃないですか?そばかうどんで我慢してください。」

 カイドウ三佐は二人にきりざめの事を詳しくは語らなかった。混乱を避ける狙いがあった。

 「ぶっちゃけた話、俺も他のクルーもTSPしたばかりで詳しくは分からないんだ。」

 「そーゆう事ですか?分かりました。」

 「詳しい事は幕臣勝海舟に聞くと良い。とは言え、この俺ですら、会ったのは一度きりだがな。」

 「それ、単純に幹部と一部の下士官に情報を絞ってるじゃないすか?」

 「まぁな。全ては波風立てずに元の時代に戻る事なんだ。」

 「了解しました。」

 その頃、横須賀では…。

 「きりざめじゃないか?誰か中に入った形跡は無いっぽいけど、どうやってここまで?後はフェイズドアレイレーダーを司るブラックボックスだが、いじられていない様だな。」

 「おい、俺の艦で何してる?」

 「あんた誰だ?」

 「俺は海援隊の社長サカモトテツタロウだ。」

 「海援隊?サカモトリョウマの?」

 「兄貴をしっちゅうとか?」

 「まぁ、俺達の世界では有名だからな。」

 「この船は2~3日前に突如ここに現れた。中には入れないけど、凄いお宝を手に入れたつもりだったが、どうもこいつはこの時代のものではないと見ている。」

 「このイージス護衛艦きりざめは、我々の船だ。(でも何故ここに?)意味不明だ。」

 「引き渡してくれるか?」

 「100両でゆずってやるよ。」

 「後払いでも良いか?」

 「構わんが同行させてもらうぞ?」

 「そんなはした金即払える幕臣が俺達のバックにはついているんだが?」

 「お手並み拝見しましょう。とりあえず我々は何もさわりませんので、なぁ、沖田専務?」

 「沖田武蔵だ。海援隊の専務を任されている。」

 「中岡新次郎だ。海援隊の常務を任されている。」

 「江戸の晴海埠頭にこの船を持っていきたい。燃料は満タンだから心配はいらない。」

 「で、何故土佐の者がこの横須賀に?」

 「勝海舟が色々工面してやるから海軍を作るの手伝ってくれっちゅうもんじゃから全社を挙げて来たのよ。」

 「まぁ、この船がありゃ倒幕なんて考えは起きないと思いますがね?」

 「テツタロウさんは、リョウマさんの事何も知らないんですか?」

 「海援隊は任せたっちゅうて京都ば飛んで行ってしまいました。」

 「なるほど。」

 海野一佐には大方の事情が分かっていたが、敢えて口にはせずきりざめのエンジンをかけた。

 

 

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