艦長の仕業
「こりゃ、艦長の仕業だな?」
「JMSDFなんて隊内じゃ使わないもんな?」
「地連(地方連絡部)時代が長かった艦長のやりそうな事だな。」
「素直に海上自衛官集合せよ!とかでも良いのに…。」
「そのパターンもありますよ。」
「このビラできりざめクルーが戻って来ると良いのだが…。」
「この辺りで良いんだよな?」
「カイドウ三佐、カミヤマ二尉!こっちです!」
「オノ二曹が代理艦長?笑わせるな。俺の仕事やわ。」
「仕方無かったんすよ。士官クラスのクルーが戻って来てなかったんですから。」
「現状13人です。街に潜伏しながらきりざめを待っているのが現状であります。」
「あとは交代であの岬からきりざめが来ないか交代で見張っています。それに、一応あの岬が集合場所に指定してありますから。」
「ザックリしてんな。」
「まぁ、海野艦長の指示した事ですから。」
「で、その艦長は何処に?」
「きりざめは横須賀にあるらしく出張しています。クルーサーチはイベ士長に任せて行かれました。」
「一人で行ったのか?」
「はい。まだ隊員が戻って来てない段階でしたから。陸路で行かれましたよ。」
「あのバ艦長、何で陸路で?」
「お金が無かったからだそうです。」
「ビラを配るのはもう止めたのか?」
「幕府の連中にマークされてしまって。止めました。ただ、幕臣勝海舟様だけは我々の味方です。」
「で、この寺で寝泊まりしてるっつー訳か?」
「はい。」
「んな事より勝海舟様に御挨拶しに行かねーとな。」
「お、また新入りが戻ったか?」
「部下が大変お世話になっております。艦長代理で航海長のカイドウタケシ三等海佐です。」
「同じく、水雷副長のカミヤマツカサ二等海尉です。」
「ほう、航海長に水雷副長か。やっと幹部が戻って来たか。よろしく。」
カイドウ三佐は30歳の若さできりざめの航海長を任されている。防衛大学校卒業のエリートできりざめのエースクルーである。一方のカミヤマ二尉は東大卒の一般幹部候補生で、こちらもエリートと言えるが、きりざめ配属3ヶ月目でのTSPは不運にも程がある。
まだきりざめの姿は見られない。
「イベ士長とオノ二曹から、大体の事はヒアリングした。とりあえずオノ二曹、牛鍋はまだ早い。艦長がきりざめを率いて帰って来るまで我慢しろ。」
「了解です。」
「カイドウ三佐、君はその航海術をどこでマスターした?」
「横須賀にある防衛大学校で習いました。後は術科学校や現場でマスターしました。まぁ、未来の話なんですけどね。」
「防衛大学校とやらは海軍専門の士官学校なのか?」
「いえ。違います。陸軍と空軍を目指す者もおります。」
「空軍ねぇ…。エアーフォースかぁ。未来では空を自由に飛べるのか。ワシもそんな時代に生まれたかったぜよ。」
「イベ士長、あとどのくらいかかりそうだ?」
「艦長は2日前に出立しているので、横須賀港にはもうついておられるかと。」
「この時代の横須賀港には大した船は無いぞ?」
「それは艦長も良く理解していると思います。」
「マシュー・ペリー提督の所謂黒船が横須賀にいて、きりざめがいたとしたら、大変な事に成っていたかもしれません。もしTSPしているきりざめを一刻も早く見つけなければ、あってはならない戦が起きているかもしれないでしょう。」
「勝さんもあのきりざめと言う近代史上最強のミサイル駆逐艦を見れば、こんなものが世の中にあってはならないと思う事でしょう。」
「イベ士長?マスターキーは艦長が持ってるんだよな?」
「はい。そこは大丈夫ですが、早く見つけなければ我々が帰れなく成る可能性もあります。」
「それはいかんな。」
と、海野艦長の帰りをハラハラと待つきりざめクルーであった。