サウジの油
モリノコウイチ一等海曹は入隊して25年目のベテランである。「分からない事は若いエリートよりも、まずはモリノに聞け。」と言うのがきりざめでは鉄板であった。モリノ一曹と同タイミングで幕末にやって来たのがモリヤマミライ二等海曹である。まだ20代前半のモリヤマ二曹はモリノ一曹とは親子程年が違う。まぁ、階級と年齢がつりあわないのが、自衛隊と言う所なのだが。
「おい‼モリヤマ二曹しっかりせんか?‼」
「…。うん?ど!どうしたんですか?モリノ一曹?」
「どうしたんですかじゃねぇよ!ほらきりざめ探すぞ!」
モリノ一曹はモリヤマ二曹に持っていた64式小銃を渡した。
「てめぇの身は、てめぇで守れ。行くぞ!」
「はい。」
「ここは幕末の京都だな。」
「何で分かるんすか?」
「てめぇがくたばってる間に聞き込みしたんだよ。」
「えー!マジすか?幕末?」
「うるせいな。とりあえずここは危険だ。江戸に向かうぞ!」
二日後…。
「ここが江戸かぁ。」
「あぁ。あれ見ろ!きりざめだ!」
「隣にあるのは戦艦武蔵?どう言う事すか?」
「良いから、急ごう。」
「艦長、モリヤマ二曹とモリノ一曹です!」
「入れてやれ。」
「どこから来た?」
「京都です。危険な臭いがしたので海路で大阪経由で着ました。海野艦長これは一体どう言う事なんですか?」
「私にも分からん。ただ今はここで散り散りになったクルーを待っている所なんだ。」
「分かりました。それまではきりざめの整備をしてますね。」
「そうしてくれると助かるよ。」
「艦長、薩摩・長州のバックにはエゲレス(英国)やプロイセン(ドイツ)と言った欧米列強の国々がついている様です。」
「奴等の目的は?」
「開国…でしょうね。」
「そうか、是が非でも徳川の世を終わらせたいのか。メリケン(米国)の方はどうなっている?」
「今のところ動向に変化はありません。様子見といったところでしょうか。」
と、その時2隻の巨大タンカーが晴海埠頭に現れた。
「あ、あれはサカモト・テツタロウ‼」
「モールス信号です。」
「解読してくれ。」
「この油で諸君の艦船を動かせ。」
「艦長、サウジアラビアのモハメッド皇子も来ている様です。」
「宴の用意を。丁重にもてなせ。」
「海野一佐!」
「テツタロウさん!ディール成功ですね。どんな荒業を使ったんですか?」
「サウジアラビアのオリジン国王がモハメッド皇子を日本に連れていってくれるなら、サウジの油をおしまないとおっしゃるからな。タンカー2隻に石油フル充填して日本まで持って来た訳よ。」
「あとは武器の調達ですね。」
「ああ、それならウラジオストック(ロシア)で仕入れて越後(新潟)に卸した言うちょったぞ。」
「海援隊は仕事が早い。」
「海野一佐、うかうかしていると時代の波に乗り遅れますよ?」
「ああ。」(まずいな。武蔵と大和を動かせられる油の量だ。だが、俺達が生き延びる為には徳川幕府の世は続いてもらわねばならぬ。)
こうして、海援隊の活躍により、薩摩・長州と戦う準備が整いつつあった。




