親分肌
「おい、ネゴシ?どこだ?」
「へっへっへ。お前の仲間か?」
「ネコダ先輩自分の事より、早く逃げて下さい。」
「何が目的だ?」
「金だよ金。海兵さんはお金持ちだからね。」
「これしか持ち合わせはない。」
「そこで何をしている?」
「ヤベェ、新選組だ。ずらかるぞ。」
「人質は?」
「ばぁか、新選組に殺されてぇのか?急げ!」
「ネコダ士長心配しましたよ。」
「それはこっちの台詞だよ、ネゴシ一士。」
「君達大丈夫か?」
「ありがとうございます。助かりました。あのぉお名前は?」
「新選組副長土方歳三だ。」
「ネコダ士長、新選組に一つかりが出来ちゃいましたね。」
「ん?」
「あ、いや、こっちの話ですからお構い無く。」
「ところで、海兵が何故京都にいるんだ?」
「流浪人ですから気になさらず。」
「自分はネコダシュン海士長でこちらはネゴシツカサ一等海士です。」
「異国の者では無さそうだが…。」
「信じてもらえるかは分かりませんが、実は150年以上先の未来から来たんです。」
「ほう。とりあえず衣食住に困っているようじゃな。」
「悪いな。助けてもらっておいて宿まで。」
「気にするな。」
その夜…。
「ネゴシ?起きろ!」
「何すか?ネコダ先輩?」
「ずらかるぞ。追っ手も来る。急げ!」
「何で逃げるんですか?」
「それは後で充分教えてやる‼」
「何処に行くのですか?」
「海野艦長の所だよ!」
「江戸ですか?」
「走れ!」
「ふん。海軍か?面白い。逃げた二人は追わなくて良いぞ?不貞浪士では無いからな。」
土方はネゴシとネコダをあえてリリースした。幕臣勝海舟の息のかかったやからだと、見極めたからである。幕臣勝海舟とやり合うのは、新選組にとっての不利益だからだ。実際には新選組を海上自衛隊が援護するWIN-WINの関係になるのだが、それを彼等が知るのはもう少し先の事であった。
ちなみに、ネゴシツカサ一等海士は、高卒2年目の平隊員である。ネコダ士長の舎弟である。一方でネコダシュン海士長は、ネゴシ一士以外にも何人かの舎弟を抱える親分肌の24歳で、現在三期目であり、三等海曹への昇進は時間の問題であった。
それから半月後…。1866年12月初旬にようやく二人は江戸晴海埠頭に到達した。
「あれがきりざめですかね?」
「あれだな間違いなく。」
「艦長!」
「ネゴシ、ネコダ!京都から戻ったのか?」
「何で分かるんですか?」
「そのダンダラ羽織だよ‼」
「げ?いつの間に。」
「新選組の世話になったのか?」
「ええ。まぁ、色々とありまして。話せば長くなるんですが。」
「そういやぁ、ネゴシ一士もネコダ士長も給養員だよな?」
「ええ。まぁ、一応。」
「皆、大歓迎だよ。」
「え?マジすか?」
と言うのも三等海曹以下の給養員がいなかったため、きりざめには不在だったため、食事をきりざめ艦内で提供出来ずにいた。食材は江戸幕府から支給されていた。素人の作る飯より遥かに旨い飯をネゴシ一士とネコダ士長は作った。季節は厳寒の初冬にさしかかっていた。




