暗中模索
「止めるなヌノカワ!」
「よさんか!ここに米国海軍基地はない。」
「じゃあ何処にあるんだよ?」
「ここには無い。おい、お前らきりざめのクルーか?」
「だったらどうだって言うんだよ?」
「まぁ、そういきり立つな。俺はナミノ二士で此方の方がナグラ一士だ。イージス型護衛艦きりざめ艦長海野玄太郎一等海佐の命で、横須賀に現れるきりざめクルーをしかるべき場所(江戸)に送っている。ちなみに貴様等で6組目だ。」
「そうでしたか。大変失礼致しました。ヌノカワ二士とヌマタ二士です。」
「いいか二人とも、驚くな?ここは、2022年の横須賀では無い。1866年11月下旬だ。」
「幕末!?」
「何でこんな事になったのかは分からない。それに本来なら俺達は観艦式の最中であった。その為、我々下級隊員だけじゃなく、上級幹部もこの世界に来ている可能性が高い。」
「きりざめもTSPしちゃってるんですか?」
「ああ、そうだ。お前らは江戸に向かってくれ。ナミノ二士に案内させる。」
ちなみに、ヌノカワヒトシ二等海士は、両親を東日本大震災で亡くした孤児であった。防衛大学校出願も行ったが、落第。それから8年間は社会人生活を送ったが、自衛隊への未練が残り自衛官候補生として海上自衛隊に入隊した。まだ入隊して7ヶ月の新人である。一方のヌマタゲン二等海士は、高卒入隊。入隊後1年ヌノカワより数ヶ月先輩である。
さて、きりざめでは…。
「ナミノ二士、いつも悪いな。」
「いえ。これが仕事ですから。」
「ヌマタとヌノカワ。艦長の言う事をしっかり聞けよ?」
「はい‼」
「艦長の海野だ。よろしく。」
「カイドウ三佐?横須賀組はこれで何人目だ?」
「10人程かと。」
「センドウ三佐どうする?横須賀に移動するか?」
「自分は晴海埠頭に留まるべきかと思いますが。」
「きりざめは勝さんのお膝元江戸にあるから意味があるのである。確かにディスの横須賀には戦略的価値のあるものは何もない。ただの野原だ。それに、今の体勢で充分回ってるしな。」
「では晴海埠頭に停留続行と言う事で。」
「御意。」
「それに、ボシン・ウォーに巻き込まれるのも良くない。私達の目的はきりざめクルー全員を回収し、如何なる方法を用いてでもゼアーへと戻る事である。それが不可能なのだとしたら、ディスでの生活も考えねばならぬ。現状歴史の軸もずれかけてる。」
「艦長、とりあえず様子を見ましょう。」
「そうだな。クルーも戻りかけている。」
「薩摩・長州はおろか、勝さんにすらきりざめのスペックは知らせていない。今戦に巻き込まれたら、少しの間も戦えない。私はあくまでクルーの総意で動いている。全てのクルーの為に。何故なら一人では戦えないと言う事を知っているからだ。」
海野玄太郎の意思は固い。自らの私利私欲をかなぐり捨て艦内の意思が一致した時、彼等は彼等の望むゼアーへの帰還が許されるのかもしれない。まぁ、今の段階で決断を下すのは、時期尚早と言った方が正しいのである。
「サクラギ二佐、どこにいるんだ?」
きりざめは暗中模索の真っ只中にいた。




