終わらない戦い
「どうなっている?状況は?」
「中国海軍の2隻の潜水艦が突如横須賀沖に浮上して来ました。」
「向こうの要求は?」
「それが様子がおかしくて、こちらに助けて欲しい様です。」
「よし、救助艦を派遣して助けてやれ。」
「はい。」
すると2隻は救助完了の5分後に自爆自沈した。
「中国語に堪能な下士官を今すぐに派遣しろ!」
「ここから先は自衛艦隊の仕事だよ?」
「そうですね。では私は家に戻ります。」
「急にお呼び立てして申し訳ありませんでした。」
「いや、これも仕事の内だからな。詳細はDMしてくれ。」
「了解しました。」
「ただいま!小百合、玄一、玄次!」
「父ちゃん?」
「貴方、仕事は?」
「速攻で終わらせて来た。はっはっは。」
「ばぁばは?」
「さっきね、焼却場に遺体を持って行って今これから、お骨を拾いに行く所だったの。」
「そうか。私も行こう。」
「玄一、玄次、お前等も来い。」
「はい。父ちゃん。」
こうして信吾の母がこの世を去った。そしてDMによると、中国海軍の2隻の潜水艦は未来から来た様で、自爆自沈したのは証拠を無くす為であったと話していると言っていた。
「またしても、アトムの被害者が…。」
「事情を聞いたら直ぐに中国へ強制送還の手続きをとってやれ。」
「詳しい事深ぼりしなくて良かったんですか?」
「さぁな?奴等は中国に帰りたいだけだろ?」
結局、中国側に難民として強制送還される事が10日後に閣議決定された。
「政府高官の話だと200年も先の未来からTSPして来たらしい。詳しい事情は全てシャットアウト。まぁ、そりゃあそうだ。アトムの事を忘れかけていたこの時代に、突如現れた黒船みたいなもんだからな。日本政府にとっては。」
「とは言え自沈してくれて助かりました。証拠が残らなかったので。」
2ヶ月後…。
「隊長?これ何ですか?」
「随分小さいが、アトムっぽいな。」
「どうします?これ?」
「海に戻せ!今すぐに。」
「はっ!」
「誰かの手に渡れば使う愚か者がいるからな。」
「アトムの悲劇はパパ等だけで充分だ。」
日本の海を守る海上自衛隊を襲ったアトムの悲劇は、それ以降海野Jr.が亡くなるまで、とりあえず無くなった。しかし、時空テロは形を変えどこかの国の軍隊に寄生するか分からない。その脅威は一人の男(海野玄太郎)の人生を変えただけではなく、多くの人々の人生と国家の歴史をも簡単に変えた。振り回されるのはいつも現場の人間だが、アトムに関してはそれは当てはまらない。アトムは現場も、国家もその歴史を変えた。それが時空テロ兵器アトムである。誰がこんなものを量産しているのかは未だに不明だが、いつの日かこの世界にもアトムの悲劇が訪れる事をただ祈るばかりである。
この物語は一旦ここで幕を閉じるが、いくら過去を書き換えようとしても、日本の歩んできた現実を変える事は許されない。アトムの様な時空テロ兵器の恐ろしさを、我々は感じておくべきだと警笛しておこう。