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さよなら、ばぁば(ママ)

 「信吾?もう終わりにしても良いんじゃない?」

 「ママ、そうかもね。パパも良く頑張ったったて誉めてくれるかな?」

 「勿論じゃない。きりざめ元クルー150人全員見届けたんだから。」

 信吾はきりざめ元クルーの最後の一人であったアダチ元二士の死を看取った。ゼアーにきりざめが戻って来てから丁度30年目の事であった。信吾はママの介護をしながら、海将補にまで昇進していた。10年前に友人の紹介で知り合った妻と結婚。二人の子宝に恵まれた。長男玄一、次男玄次で二人の名は亡き父玄太郎からあやかったものである。妻の小百合は少し反対していたが、男らしい名前だと気に入ってくれたようである。ママにも孫の顔を見せてやれたし、もう自分は充分幸せである。

 信吾は、海上自衛隊横須賀地方隊副総監や幹部候補生学校校長、自衛艦隊副司令を経て潜水艦艦隊司令官(現職)と出世街道を歩んでいる。自分が家にいない時は、ママや子供の世話は妻の小百合任せだ。玄一や玄次がいるからママも寂しくはないと思っていた。そんな矢先の出来事であった。

 「え?ママが死んだって?」

 「落ち着いて、信吾。お母さんもう6年も癌と戦っていたの。最初は小さな胃癌だったけど、徐々に全身に転移して抗がん剤も効かなくなったのが2年前。余命6ヶ月を宣告されてから良く持ちこたえたわ。」

 「ママはそんな事一言も…。パパの時も…。」

 「お母さんに口止めされていたの。信吾にこれ以上負担をかけたくないって。」

 「負担って何だよ?家族じゃねーか?ろくに看病すらしてやれなかった。」

 「父ちゃん?こればぁばから。」

 「玄一?ありがとう。」

 「手紙か?」

 「信吾へ。貴方がこの手紙を読んでいるという事は、ママはパパの元に行っている事でしょう。小百合さんを攻めないであげて。病気になったママが悪いのだから。それから仕事に集中しなさい。貴方は海野Jr.なんだから。いつまでもすねていたら、ママ承知しないからね?じゃあね。」

 「こんな紙切れ一枚で俺が納得するしかねーのかよ?」

 「信吾?本当に隠していてごめんなさい。」

 「小百合が謝る事じゃないよ。」

 「父ちゃん、ばぁばは凄く幸せだったって。もう後悔はないって言ってたよ?」

 「そうか。玄次。じゃあばぁばをじぃじの元へ送ってやらなきゃな。」

 プルルルTEL

 「どうしたこんな時間に?」

 「何?潜水艦の領海侵入事案発生だと!?」

 「父ちゃん、ファイト!」

 「父ちゃん、ばぁばの事は任せて。」

 「頼んだぞ!」

 「てんりゅうの現在地は?」

 「太平洋に即事展開中です。」

 「よし。総理には私が直接話そう。何とか時間を稼いでくれ。」

 「T-1了解。海上警備行動発令に備え、哨戒機による監視を強化します。」

 「防衛大臣即事海上警備行動の発令を要求します。」

 「総理、事は重大です。慎重な気持ちは分かりますが。」

 「現場がそれだけ悲鳴をあげているのなら、出すものは出そう。後は現場の君達がしっかりやってくれ。」

 「玄一、玄次、母ちゃんの事頼むな。しっかり助けてやってくれ。」

 「うん。」

 「じゃあ行ってくるよ。小百合。」

 と言って呼び出したタクシーに飛び乗った信吾は横須賀市船越地区の潜水艦隊司令部に急いだ。

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