番頭
セイノ一尉とセンドウ三佐が現れたのは、スダ二曹とスムラ一曹の帰還直後の事であった。
「おい、セイノ一尉。ちょっと悪さしてみないか?」
「またですか?」
「未来をちょっと変えて見たくてな。何て事はない。万引きだよ。万引き。」
「刀と鎧兜に具足に地下足袋にわらじ。そんなに一気に盗んじゃ面子われちゃうじゃないすか?」
「捕まってもシラを切るんだ。決して未来から来た海上自衛官だと言う事だけは言ってはいけない。良いな?セイノ一尉俺を信じろ!」
「鎧をつけて、重。刀を選びあとは猛ダッシュ。」
「ピーピー。盗人がいるぞ!気をつけろ。」
「おい、セイノ一尉。こっちに逃げるぞ。鎧は半分脱げ。」
「狙いは刀!?」
「くそっ奴等何処に逃げた?」
「案ずるな。この町はそんなに広くない。必ず見つけてやる。」
「きりざめまで逃げ切ったら俺達の勝ちだ。」
「これか?まさかきりざめごと?タイムスリップするとはな。」
「入り口開いてます!」
「侵入者がいるとセンサーが反応したが、センドウ三佐にセイノ一尉じゃないか?つーかセイノ一尉何と言う格好してるんだ?」
「これには色々と訳がありまして…。」
「起きたら江戸の旅館にいたんだ。それからは盗みを繰り返し…。」
「馬鹿か!全部立て替えてやるから返して来い。」
「あのセンドウ三佐が盗み?よほど追い込まれていたんだな?」
「過去を変えれば未来も変わるかなと思って行動したまでだ。飛ぶ鳥跡を濁さずだ。」
「いや、堂々と言う事じゃないか。」
「セイノ一尉は隊内随一の韋駄天50メートル5秒台ですから。」
「セイノ一尉は悪く無い。悪いのは指示役の俺だ。これだけははっきりしておく。」
「海野艦長、部隊の品格をおとしめる事をして申し訳ありませんでした。」
「頭を上げろ、センドウ三佐。悪い事は悪い。良い事は良い。その盗んだ刀で薩摩や長州の藩士を100人だって斬ってみろ?センドウ三佐、セイノ一尉貴様らは罪人から英雄に変わるのだ。実際にそれが出来るか否かは別にしてだ。私の考えも一理あるだろう?」
「盗んだもので豊かさを得るとは、考えが及びませんでした。」
セイノ一尉とセンドウ三佐は鳩が豆鉄砲を喰らったような気持ちになっていた。
「物事はプラス思考で考えないとな。」
セイノユタカ一等海尉は防衛医科大学校卒業の28歳。きりざめの軍医として搭乗して丸2年。彼女はいない。一方でセンドウアキヒコ三等海佐は防衛大学校卒。きりざめの米4班(炊事)番頭であり、若い頃から料理が好きだった。本当は一般大学に行きたかったが、学費がかからない防衛大学校を選択。きりざめでは自ら炊事番頭の役を買って出ている。隊内での評判も良い。決して盗みを指示する役を演ずる様な男ではない。米国海軍の士官たちもセンドウアキヒコのライスカレーは、エクセレントで、センドウ三佐の料理の腕は本物である。ロシア語が得意で過去にロシアでの駐在武官の経験がある。プライベートでは一男三女の子宝に恵まれている。責任感も強くきりざめクルーの信頼も厚い。




