話題の大泥棒
「今話題の大泥棒イトウとシバタって知ってるか?あいつらきりざめのクルーらしいぞ?」
「マジか?イトウケンジと、シバタケイワねぇ。確か二人ともまだ入隊して間もない二等海士だったはず。」
「ったくロクデナシじゃないか。まぁ、仕方無い。オニザキ三曹とイベ士長迎えに行ってやれ。」
「はっ!」
一時間後…。「さぁてこの懐中時計は目玉商品だぞ?10両でどうだ?仕方無い赤字覚悟で半額の5両でどうだ?こっちは高級キセル15両が今ならタイムサービスで10両はい!毎度あり。本日はこれにて完売御礼。イトウと、シバタのオークションでした。拍手。」
「売上高は25両か。はい12.5両シバタ二士の取り分ね。」
「ボロい商売だな。俺達完全ブルジョアジーだな?」
「何がブルジョアジーだ?イトウ二士とシバタ二士。」
「マジかよ?見つかるの早くね?イベ士長にオニザキ三曹生きてたんすね?」
「で、ここに来たって事は俺達を迎えに来たと言う事ですね?」
「盗品と売上は没収させてもらうぞ?」
「生き残る為だったんすよ。」
「それでも駄目なものは駄目だ。今後はきりざめにて任務についてもらう。これは艦長命令だ。」
「はい。」
ちなみにイトウケンジ二等海士は入隊して3ヶ月のヒヨッコも良いところで、入隊理由は海軍カレーが食べたいからだとか。一方でシバタケイワ二等海士は、シングルマザーだった母親に恩返しをする為、入隊したが、団体行動に馴染めずにいた。と言う普通のヒヨッコ隊員が話題の大泥棒の正体であった。
「情状酌量の余地はある。」
「でも、それを許しては海上自衛官の名が廃る。」
「ってくどく言わなくても分かるよな?」
「うす。」
大抵の者は18歳で入隊あるいは防衛大学校や防衛医科大学校に入校する。それからの歩み方は異なるが…。シーマンシップは海上自衛官全てに共通する心構えである。「スマートで目先が利いて几帳面負けじ魂これぞ船乗り」
「海野一佐、若気の至りですから許してやりましょう。まぁ、あの若さで、別世界に放り出されたんだ。非合法な事に手をそめるのも仕方無いな。」
「サカモトさん、確かに若い彼等にとって生きる糧であってもそこに品格はありますか?」
品格が無ければ仮にも海上自衛官を名乗る事は出来ないのではない。二人とも反省はしている。本来なら減給の処分が妥当であるが、事情が事情なだけに、と言うか払える給料がそもそもない。
「海野一佐、資金でお困りの様ならこの海援隊にお任せ下さい。」
海援隊は凄まじいまでの勢いで資金を調達していた。リョウマ亡き後の海援隊は事実上兄テツタロウのものであった。敵の目をかいくぐり、涙ぐましい努力を重ね江戸幕府の目に留まった。目の上のたんこぶは潰される運命にあるが、弟や中岡慎太郎がヤろうとした事に間違いはないとテツタロウは思っている。流石にちと強引過ぎたやり方であった。勝海舟の元で、勉強した日々を楽しそうに語る弟の姿がテツタロウには、懐かしく思えた。
「テツタロウさん、これから我々は勝さんの元へ行きますが一緒に行きますか?」
「何とお知り合いであるか?」
「まぁ、知り合いと言うか雇用主と言うか。」
「まぁ、会ってみれば分かりますよ。」
「それともここで下船されますか?」
「否、我々はもう少しこの未来のスーパークルーザーきりざめを体感しているだけで充分だ。金もいらない。」
「ようやく理解してくれた様ですね。」




