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だから腐男子ははかどらない  作者: 奥川悠介
2/2

1 恥ずかしい趣味と暴露

 趣味を全否定されたような気がした。

 篠原祐貴しのはらゆうきは、やや憂鬱な気持ちで証券会社のビルを出た。最寄りの淀屋橋よどやばし駅へと歩いているうちに、怒りの感情もこみ上げてきた。流石に取引先に

「BLっていうの?オカマちゃんが恋愛する漫画が流行ってるんやて?」

 と上司に言われたら、

(「ゴルフっていうの?人間の娯楽のためだけに森林破壊するスポーツが人気なんやて?」)

 位には言い返したくなる。

 ただ、そこまで言ったら間違いなく取引を打ち切られる。下手したら、左遷すらされかねない。

その悔しさも、祐貴の怒りを増幅させるには充分な材料だった。

 

 悔しさと怒りに任せて歩いているうちに、天満橋てんまばし駅まで来た。淀屋橋の2つ隣の駅だが、楽に歩ける距離だ。腕時計の針は、20時ちょうどを指している。

 (もう京橋きょうばしのアニメクスは閉まってるか)

 心の中で呟き、駅ビル内の書店に入る。コミックコーナーの「ボーイズラブ」と書かれている棚の前に立つ。そして、BL本を吟味する。週一回・もともと憂鬱な月曜日の至福のひとときだ。

 

 大阪は門真かどまに生まれ、何不自由ない生活を送ってきた。大手メーカーに勤めている父と料理上手な母のもとで何不自由ない生活を送ってきた。自分で言うのもなんだが、学生時代は「それなりに何でもできる明るいヤツ」だったと思う。

 BLとの出会いは、そんな高校時代だった。友人が執拗にBL本を薦めてきたので、仕方なく

「松川さんと俺」というライトな作品を読ませてもらった。

 即落ちだった。

 そこからBL本を読み漁り、近場なら同人誌即売会にも通うようになった。今では「攻め」の対義語を問われたら「受け」としか答えられない腐男子だ。

 

 比較的ライトなものから表紙でキスをしているものまで、数冊を買った。

 好みの漫画を買う際には、喜びと同時に不安も生じる。

 (何かの機会で親にバレたらどうしよう)

 という不安だ。


 かれこれ10年近くこの趣味をしているが、未だに一部の親友以外には腐男子であることをバラせていない。もちろん、親にもだ。

 そのため、高校生の頃から隠し方には苦労してきた。必ずブックカバーをつける。あえてベッドの下に置く。普段はあまり使わない方の学生カバンに入れておく。ありとあらゆる隠し場所を試した。その甲斐あって、親にはバレていない。

 ただ、最近はバラすことも考えるようになった。ここまでバレないと、流石にバラしたくもなる。付き合ったことが嬉しくて皆に話したくなってしまうものだ。


 だが、いつものように隠すことにした。今さらバラしでややこしくしたくなかった。それに、

「腐男子は恥ずかしい」という思いも少なからずあった。

 祐貴は少なくともポジティブとは程遠い気持ちで区間急行に乗り込み、帰路についた。

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