第95話 緑龍家歴代最強VS歴代最年少の最強
『続いては四回戦第二試合、フレート・スティア・ホワイトドラゴン選手対クライア・グリーンドラゴン選手です!』
今大会一番の盛り上がりを見せる。
スティア王国民にとって、大興奮のこの対戦カード。
緑龍家歴代最強VSスティア王国血統最年少の天才。
どちらが勝つか、国民は注目している。
『フレート・スティア・ホワイトドラゴン選手は史上最年少で白龍を討伐した天才!まさに最強と呼ぶに相応しい人物ですが──』
実況が言葉を溜める。
そう、フレートの相手は本物の最強。
そう、高らかに宣言する。
『対するクライア・グリーンドラゴン選手は世界最強!果たして『無天無双』は見られるのだろうか!』
フレートとクライアが同時に入場してくる。
スティア王国民は胸を高鳴らせた。
決勝のような戦いが、準々決勝で見られるのだ。
スティア王国民でなくとも、強者であれば興奮は止められない。
『若き天才が最強を打破するか、それとも最強の意地を見せ防衛するか!注目の四回戦第二試合です!』
「クライアさん」
「⋯⋯何だ?」
「──本気で、ぶつかり合いましょう」
「──望むところだ」
フレートが純白の剣を取り出し、クライアが拳を握る。
先に動いたのはフレート。
姿勢を思い切り低くし、クライアを斬り上げる。
しかし、それを予測していたクライアは仰け反り、剣を掴んだ。
そのまま、後ろへと投げる。
壁に激突するかに思えたが、軽やかな足技で衝撃をいなし、壁に着地した。
そして壁が凹む程の瞬発力で、クライアに突進する。
「──『緑流舞踏』」
対するクライアは、その勢いを利用して外側へと弾く。
一瞬何をされたか分からなかったフレートだが、すぐに理解した。
そしてもう一度、クライアに突進する。
「『緑流舞踏』」
また受け流そうとするが、剣撃はフェイント。
長い足を使い、クライアを思い切り蹴る。
そこには、純白の魔力が上乗せされていた。
「──『白龍蹴閃』」
完全に引っかかったはずのクライアだが──右足を振り抜く。
「『緑天蹴武』」
お互いの右足の勢いを上空へと流す。
右足が交差し、フレートが不敵に笑った。
それにクライアも反応し、口角を吊り上げる。
「面白い、全て対抗される」
「こんなものか?」
「まだまだ!」
両者距離を取り、今度は純白の剣を鞘に収める。
クライアは来ると感じ、防御の姿勢を取った。
「──『閃光・白龍滅裂剣』」
「──ッ!?」
ラッシュの試合で見た、フレートの神技。
そして実際に聞いた。
まるで『無天無双』を発動させたお前みたいだ、と。
魂が震え、鳥肌が立つ。
そして笑う──面白い、と。
「──『鋼緑の鎧・龍改』」
自身の肉体を、緑龍の力を宿した鎧と化す。
しかし相手は白龍、完全に防ぎ切れる訳がない。
「──ッ!!」
「──『殲滅・白龍天閃剣』」
神技の連発。
目では追えない程の物量、そして速度。
いくら最強の鎧とはいえ、緑龍は白龍に勝てない。
──龍の格の違いだ。
「──ガァッ!!」
鋼鉄の鎧が、吹き飛ばされた。
結界に衝突し、その衝撃で闘技場の屋根の破片がパラパラと崩れ落ちる。
威力の調整を間違えていたら、屋根は崩れていた。
「クッソ⋯⋯この感覚、久々だ」
長らく最強と君臨していたクライアは、ここまで重症を負うことはなかった。
しかし、相手はフレート・スティア・ホワイトドラゴン。
たとえ油断などしていなくとも、その鋼ごと斬り刻んでしまうのだ。
「──『抜剣・一撃斬滅剣』」
白い光がフレートを包み──地面に倒れるクライアへ、一閃を放った。
クライアは意地を見せ──手の甲でその一閃を吹き飛ばす。
しかし、クライアの手の甲は焼け爛れたかのような傷を負ってしまった。
「光の熱をモロに受ければ、そうなるのも当然です」
フレートの魂は燃えていた。
──白の闘志である。
白の闘志は光と希望を司り、フレートに相応しい闘志だ。
(ああ⋯⋯やっぱり俺は、これが無いとダメだ)
クライア自体は、ベルにも劣ってしまう。
彼女は本物の天才、地獄をも完全に物にしてしまう程の才女だ。
しかし、クライアには『無天無双』がある。
だからこそ最強と呼ばれているし、その最強としての風格も保ってきた。
──依存してしまっているのだ。
『無天無双』があるから大丈夫、まだ戦えると。
──満身創痍の肉体でも、一発逆転をしてきた。
『無天無双』という最後の保険に、依存している。
「だから⋯⋯離れなきゃいけない」
グッと体を起こす。
その顔には心からの笑みと、瞳の奥で燃える闘志があった。
クライアの右頬には緑龍の刺青が出現し、瞳孔が縦長へと変化する。
「──『龍血緑令』」
緑龍の血を宿し、大きく息を吐く。
そして──消える。
「──ッ!?」
素早い反応をしたものの、フレートは苦しい顔をしていた。
まるで獣にでも堕ちたかのような戦闘スタイル、爪撃がフレートを襲う。
「フ──ッ!」
そのまま真下からの強襲。
フレートは反応が出遅れ、吹き飛ばされた。
美しい純白の衣装は赤に染まり、ポタポタと流す。
その隙を、クライアは逃さない。
「──『龍爪裂断』!」
上空から降りかかり、フレートの顔を引っ掻く。
すぐさま回避をしたが、フレートは劣勢。
戦況がひっくり返った。
「──『緑天閃武煉』」
手に灼熱を宿し、拳を振り抜く。
「流石は、最強⋯⋯ッ!」
フレートの衣装は灼熱に焼かれていた。
白龍を想像させるような純白は、灰の如き色に染っている。
「龍の力を宿すことに、何の抵抗もない⋯⋯素晴らしい、一か八かを賭けるのは嫌いじゃないですよ」
フレートが冷や汗を垂らしながら、そう評価した。
そして少し距離を取り──白い龍に包まれる。
「──『白光龍喚・幻想』」
自身の心の内にいる白龍を、呼び出した。
しかしそれは幻想、本来よりも少し小さいが、それでも試合場から圧倒的風格が感じ取れる。
「殺るぞ──殲滅の時間だ」
いつものフレートとは違う気迫が、クライアを襲った。
丁寧な言葉は失われ、とてつもない殺気が、観客席すらも覆い尽くす。
「──『白光の滅閃』」
──咆哮。
たった一つの咆哮で地面を抉り、クライアに重症を負わせた。
クライアに残る手は、僅か。
「──『緑の闘志』」
豊穣を司る闘志。
戦いの中で急成長を促す鮮やかな緑は、身体の末端に至るまで力を欲した。
龍の血を宿し、緑の闘志を滾らせるその姿は、圧倒的強者の風格。
「──ガハッ!」
──対するフレートは、吐血した。
白龍のあまりにも強大すぎる力には、どんな肉体も耐えられない。
強ければ強い程、その力の代償は酷く、自身に返ってくる。
フレートは耐えれるとしても、残り一発。
その一発で、勝負を決めるしかない。
「⋯⋯『生躍緑心』」
自身の生命を活性化させ、鮮やかな緑を増幅させる。
鋭い眼光は白龍を見つめ、その視線だけで殺さんとする迫力だ。
「⋯⋯その身体、穿つ」
「最強の名、僕が頂きます」
最初に動いたのはクライア。
自身の生命を燃やし、フレートとの距離を一瞬で詰める。
「──オラァァァァァ──ッ!」
「貸せ、白龍──『白絶猛咆・光滅』──ッ! 」
灼熱の拳と、全てを滅する白い光。
全てを焼き尽くす灼熱は燃え広がり、光と相対する。
「ガァァァァァァァ──ッ!!!」
「ハァァァァァァァ──ッ!!!」
お互い一歩も譲らない気迫。
最強として、負けることは許されない。
革命を起こす者として、勝たなければならない。
白と赤、二色に彩られた試合場。
果たして、結果は────
「⋯⋯ぁ、が⋯⋯⋯⋯」
クライアが、地に伏した。
対するフレートも、大量の血を吐く。
両者満身創痍。
クライアは這ってでも、フレートに近づく。
「⋯⋯⋯⋯情けなくてもいい、弱くてもいい⋯⋯」
「⋯⋯?」
「勝ちたい⋯⋯その心さえ、あれば⋯⋯ッ!」
己の勝ちたいという闘志。
その心にだけ従う。
例え誰が見ていようと、誰かに馬鹿にされようと。
努力し、勝利する姿は美しいと、知っているから。
最強に上り詰めた彼が、一番知っているから。
自身に立ち塞がる障壁を取り除いた時の達成感は、誰よりも知っているから。
フレートは吐血し、地に膝を付けながらも、その言葉を聞いていた。
「お前を⋯⋯倒す⋯⋯ッ⋯⋯!」
鋭い眼光。
その目で見られただけで刺されたような気分になる目は、フレートをも脅かす。
しかしフレートは、その目を美しいと思った。
だから──最後まで、全力で。
「──最後だ、貸せ」
最後の一撃。
クライアに、トドメを刺す。
その美しさと儚さを胸に、白龍から力を得た。
「──『白龍閃天・光乱収滅』」
一条の閃光を指に溜める。
極大とも呼べるそれは、白龍の咆哮にも思える程。
クライアは、それを見た後、笑った。
その笑顔には何を思っているのか。
その真意は定かではない。
ただ──その名を、呼んだ。
「ごめんな────『無天無双』」
────一撃必殺。
白龍ごとフレートを殺し、その極大な閃光は消え去った。
反応すらできない。
それは世界最強の権能だからだ。
『無天無双』と呼ばれる一撃必殺が、今大会初めて試合場にて、猛威を振るった────。
『四回戦第二試合勝者、クライア・グリーンドラゴン選出!』
そのまま医療班に運ばれていき、意識を断つ。
最後に浮かべていたのは──ベルと同じく、やり切ったと言わんばかりの満足な笑みだった。




