表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/123

第89話 三回戦第四試合・第五試合

『続いて第三試合と行きたいところですが、二回戦第六試合の勝者がいない為、フレート・ホワイトドラゴン選手はそのまま四回戦へと進みます!そして次の試合は三回戦第四試合になります!それでは、どうぞ!』


二回戦第六試合は魔女同士の殺し合い。

両者死亡してしまった為、フレートは四回戦へと進出。

三回戦第四試合はスズオカ・シグレ対クライア・グリーンドラゴン。

先に時雨が試合場に入場し、後からクライアが入ってくる。


「⋯⋯来ないのか?」

「逆に、先手を貰ってもいいのか?」


時雨はクライアが突っ込んでくると踏んでいたが、予想が外れた。

先手の取り合いはクライア相手では不利な為、譲ってくれるのなら、と時雨はクライアに仕掛ける。


「──『雨の日』」


時雨が周囲の空気と同化する。

クライアは厄介だと思い、手に『灼熱』を纏わせて待機。


「──ッ!?」


警戒はしていたが、横からいきなり短剣が出現し、すぐさま退避する。


(カルムから聞いてはいたが、やはり危険だな)


予めカルムから情報を手に入れてはいたが、聞くのと体験するのでは大違い。

どこから出現するか分からないのは脅威と判断し、辺り一帯全てを焼き尽くす。


「特別属性『灼熱』──尽滅ノ熱懸」

「バケモンが──『時間停止』」


『魔力眼』を開眼して辺り一帯の魔力を吸収、条件を満たして『時間停止』を行う。

迫り来る灼熱は止まり、クライアすら一瞬動けなくなる。

その一瞬でいい、その隙さえ作ればいい。

──『時間』が、クライアを襲う。


「『未来予想図展開』」


時雨の行動によって起こりうる様々な時間軸を召喚し、一斉にクライアを攻撃する。


「──『ハガネノヨロイ』」


対するクライアは、出遅れたものの反撃は厳しいと判断して、防御に回る。


「『時間停止』解除」


──ここで、世界のバグが起こる。

『時間停止』自体が世界のイレギュラーそのものなのだが、能力を発動したままの状態で時間停止を解除されたクライアが──


「──固まった?」


その場から、動けなくなってしまった。


(どういうことだ──ッ!?)


「⋯⋯⋯⋯通常、有り得ることのない運命が、交わることで起こる世界の異常」

「分かってる──でも、これは俺の役目じゃねぇ」


ブライアと別れたクリーナは、一人の男といた。

そう──『禁忌の番人』と。


「怠慢だな──『運命の番人』」


『禁忌の番人』は空を見上げる。

そこにいたのは、美しい女性。

翼を生やした、『運命』を司る女性だ。


「やっちゃったね──『運命改竄』」


『運命の番人』は、交わることのなかった『運命』を起こりうる『運命』へと改竄を行う。

──その後、『五大番人』のみが感知できる改竄が、行われた。

クライアは普通に動き、時雨に反撃する。

誰も、何も言わない。

それが真実であったかのように、皆振る舞う。

『運命の番人』は仕事をした後、自身のいるべき場所に戻った。


「──『運命の番人』が、まさかヤツとは⋯⋯」

「⋯⋯お前、何故『五大番人』を探知できる?」

「儂は少し特殊なんだ、始まりの魔女だからな」

「そういう事にしておいてやる」


本来、『五大番人』と呼ばれる者達は認識できない。

しかし、始まりにして至高の魔女であるクリーナは、その境地に至っている。

『五大番人』──禁忌、運命、生命、権能、世界の五つを司る五体の番人。

表立っては行動せず、自身が持つ力を完全にセーブし、常に出力を一割以下に抑える。

但し、自身の役割を果たす時のみ、全力を出すことが許されているのだ。


「⋯⋯面白い」

「お前は世界の絶対的悪の象徴だ、崩すなよ」

「それが『世界の番人』の望みなのか?」

「さあな、俺も詳しいことは知らん」


『禁忌の番人』は去って行く。

クリーナが下を見ると、既に決着は着きかけていた。


「クライア・グリーンドラゴンの勝利か」


──時雨は片膝を地に着け、クライアを見上げる。


「チッ──やっぱ強いな」

「降参しろ」

「はいはい──なーんて言うと思ったか!」


自身の時間を逆行させて怪我や疲労を全て回復する。

周囲に弓を出現させ、矢を放った。


「『鋼鉄の鎧』」


しかし、クライアは血一つ流れなかった。

何も纏っていないかのように見えるクライアだが、実はその肉体こそが鋼鉄の鎧、何者も通さない絶対的な守護。

不意打ちが失敗した時雨は──クライアの重い一撃に吹き飛ばされる。


「魔力が減らないと思っていたが、まさか空気中の魔力を吸収していたとはな」


それに気づいたクライアが取った策は──燃やす。

『灼熱』を発動するのに使用する魔力の対象を変え、自身も空気中の魔力を吸い取り、攻撃を行う。

『魔力眼』を見破られ、『雨の日』も対応され、『時間停止』も効果を成さない。

──完敗である。


「もう一度吹き飛ばす」

「分かった分かった、降参だ」


両手を上げ、降参する時雨。

今度こそ本当に死にかねないと、危険を察知する。

時雨は自身を治癒してすぐ退場して行き、クライアもそれを見送ってから退場した。


『それでは二回戦第五試合、シュヴァルツ・レッドドラゴン選手対シェード・ライアウト選手です!それでは、どうぞ!』


「シュヴァルツ君、この日を楽しみにしていたよ」

「──俺もです」


シェードとシュヴァルツ、共に二刀流を主体とする戦闘スタイルで、似通っている。

シェードは魔法で剣を創り出し、シュヴァルツは能力に付いている剣で戦う。

魔法学校と貴族学校の最高戦力の戦いが今、始まる。


「──影光、白閃、おいで」


長剣である『影光』と、短剣である『白閃』を手に持ち、構える。

対するシュヴァルツは──素手。


「⋯⋯初めて見るよ、君の武術」


『剣聖』に変わってもいない、純粋なシュヴァルツ。

剣技を得意とする家系に、今までの試合全て剣を扱ってきた。

そのシュヴァルツが、まさかの素手で戦う。

それは──ただ一つの理由。


「ブライアが全部で戦ってんのに、俺は剣だけを使う、ダッセェだろ」


ブライアだけを見ているシュヴァルツ。

器用で、使えるものは全て使い、貪欲に勝利をもぎ取るブライア。

剣技も、魔法も、武術も、能力も、特異体質も、全部使う。

そんなブライアに憧れ、剣技だけでなく、武術も、魔法も手に入れる。

これが──シュヴァルツ・レッドドラゴンだ。


「──面白いね、試しているのかい?」

「⋯⋯分からない、だが⋯⋯俺も今、面白いんだ」


シュヴァルツ史上、一番の気分の高揚。

自身の力を試せる、自身より格上の存在へ対抗する喜び。

その感情の起伏の激しさが、シュヴァルツを強くする。


「──来い、シェード・ライアウト」

「いいね──『白き影、天を裂く』」


影光と白閃両方を使って、シュヴァルツに挑む。

シュヴァルツは完全にそれを見切り──反撃する。


「『赤闘の杭』」


両方の剣から繰り出される斬撃を躱し、シェードを蹴り上げる。

シェードは危機一髪で避けるが、シュヴァルツは止まらない。


「『轟焔』」


回避した場所に、魔法を設置する。

魔法陣からは人なんて簡単に焼け死ぬ程の炎が飛び出すが、シェードは魔法の結界によって防御した。


「『赫閃』」


赤く光る蹴りがシェードを襲う。

シェードは防戦一方、ここで反撃に出なければ、チャンスは無い。


「──『影光天突』」


素早い蹴りに対して、素早い突きの攻撃で対応する。

更に、白く光る短剣を振った。


「『白閃斬壊』」


白い刃を飛ばして、シュヴァルツを斬り裂こうとする。

蹴りの体勢にあったシュヴァルツは万全に回避はできず、胴体に深い傷を負った。

畳み掛けると言わんばかりに、シェードは開く。


「──世界『光影見つけし遥か彼方の世界』」


世界の効果を逆転させた、シェードの世界が展開される。

これでシュヴァルツは、後から世界を展開しようと、塗り替えることができない。


「その傷じゃ、戦うこともままならないでしょう」

「グ──ッ!」

「立てるのですか⋯⋯ですが、終わりです」


世界の効果によって、シェードが今まで作った魔剣が、シュヴァルツを囲む。

満身創痍なシュヴァルツに──一本の魔剣が襲いかかった。

──その瞬間。


「──ダァァァァァァ──ッ!!」


シュヴァルツが、咆哮した。

魔剣を片手で受け止め、歯を食いしばる。


「⋯⋯⋯⋯俺は、アイツに勝てない」

「⋯⋯ブライア君ですか?」

「ああ⋯⋯⋯⋯アイツは俺よりずっと先にいる、追いつけない⋯⋯⋯⋯だから、追いつきたい」


心の内に秘めていた思いを、吐露する。

掴んでいた魔剣を地に落とし、特殊な印を結んだ。


「俺がアイツに追いつく、唯一の方法」


その名を、シュヴァルツは堂々と、宣言する。



「────『世界打破』────!!」



──シェードが展開した世界が、消失した。

何が起きたか理解できない、何故なら今まで前例の無い、前代未聞のことが起こったからだ。

どの文献を見ても、同じ世界以外で世界をひっくり返した者はいない。

しかし、彼はやってのけた。

親友に追いつく為に、自分ができること。

──『世界』を、内側から一方的に打破する。


全員が、一瞬静まった。

ざわめきもない、物音一つすらしない。

そして次の瞬間──物凄い歓声が、会場を埋め尽くす。


「お、おい今!見たか!?」

「すげえ!世界をひっくり返しやがった!」


この日、歴史史上初めて──『世界打破』が達成された。


「──凄い⋯⋯⋯⋯!」


シェードは、見入ってしまった。

世界を打破されたのにも関わらず、その飽くなき探究心は、シュヴァルツの『世界打破』に興味津々。

その隙を、シュヴァルツは逃さない。


「──『轟焔聖拳』」


シェードの腹に、シュヴァルツ渾身の一撃が放たれる。

会場の端の壁を貫通し、大穴が空く。

ここまで傷だらけなシュヴァルツだろうと、その一撃の重さは健在だ。


『──三回戦第五試合勝者、シュヴァルツ・レッドドラゴン選手!』


拍手と喝采が、シュヴァルツに向けて行われる。

その様子を見たブライアは──


「──やるじゃねぇか、シュヴァルツ」


控え室にて、笑顔で、試合を見ていた。


「『世界打破』──あれに対抗してやるよ」


拳を握り、突きつける。

一人しかいない部屋で、高らかに宣言した。


「お前相手に、『世界』で勝ってやるよ!」


ブライアは、四つの世界を持つ。

その四つの世界を駆使して、『世界打破』に勝利すると、そう言ってみせた。


「楽しみにしているぞ──シュヴァルツ!」


彼らが対戦するとすれば、準決勝。

──因縁の対決は、すぐそこにある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ