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第81話 二回戦第三試合・第四試合

『二回戦第三試合はファルド・グリーンドラゴン選手対キャンディット・シガレット選手です!それでは、入場して下さい!』


実況のその声が会場に響いた瞬間、試合場では魔法の発動音が轟いた。


「荒いな、キャンディット・シガレット」

「私、あんたは何故か気に入らないの」

「俺もお前が気に入らない。良かったな、両想いだ」

「地獄に叩き落とすぞ、厄災」

「やってみろ──『災・魔壊刃』」


キャンディットの『永続魔法陣』をアーガイルの魔法を借りて破壊する。

先程の轟音はキャンディットの『永続魔法陣大展開』によるもの、キャンディットは最初からファルドを完全に殺すつもりだったのだ。

この試合、ファルドが負けたら確実にファルドは永続に取り込まれ、出られなくなる。

ファルドはアーガイルの力を借りないなんて抜かす余裕は無いと判断し、勝手に力を使った。

アーガイルも何も言わない。

アーガイルからしても、シガレット家は気に入らないからだ。


「『永続大展開』──魔印字」


アリスとの試合終盤で使った『魔印字』を平気で序盤から使う。

本来のキャンディットは残忍で暴虐に振る舞うという性格、アリスへの対応は特別なのだ。

キャンディットの気に入る特徴は名言されていない為、気に入られようとしても大抵は永続に取り込まれる。

魔導士としての才能は突出しているのだが、人間として生きるには向いていない。


「『厄・光切断』」


ファルドは魔印字を付けられた右手を魔法によって切り落とす。

平気でこの選択をできるのは限られた者のみ、それに驚愕するキャンディット。

──そう、魔印字の対処法は至ってシンプル。

付けられた瞬間に手を切断する、ただこれだけ。

厄介なのは、魔印字を付けられてから二秒経過してしまえば手を切断したとしても解除は不可能。

二秒以内にこの判断ができるのは本当にファルドのみだろう。


「そんなあっさり手を落とせるものなの?」

「俺はこの『魔印字』の対処法を知っているからな」


ファルドがこの判断をできた理由はただ一つ。

アーガイルの仕業である。

アーガイルの『分析眼』はブライアやベルの『分析眼』や『分析の加護』とは違って少し特殊なのだ。

アーガイルは一度見たものを無意識に分析し、記録する。

そして知りたいと思えば知識の奥底から引っ張り出せるという異常な『分析眼』なのだ。

キャンディットはこの大会で『魔印字』を使い、それがアーガイルの眼に入った。

この時点で『魔印字』がファルド相手に通じない。


「そう、もういいわ──世界『永く遠い果て無き世界』」


グニャリと空間が捻じ曲がり、いくつもの大きな時計が空中から降りてくる。


「私の世界に来たわね──さよなら」


『永続魔法陣』をファルドの周りに展開させる。

──これで試合終了だと、キャンディットは本気で思っているのだ。

キャンディットは他の試合を一切見ない、何故なら彼女は自分がシガレット家で一番強いと誇っているから。

あのベル・デフレーションにも負けないと本気で思っている。

気に入らない奴は全て永続に取り込んだからか、戦闘の経験値は殆ど無いに等しい。

アリスと戦ったのだって才能だ。

魔印字を生み出したのだって母からの助言。

キャンディットは他人に興味が無い。

だからキャンディットは──自身の才能を上回るファルドの才能に気づけないのだ。


「世界『破壊と破滅を撒き散らす絶望の世界』」

「──なッ!?」

「世界は後出しの世界に全て塗り替えられる、お前の負けだ」

「何でお前がそれを持っている!私だけが持つものじゃないの!?」

「はぁ?何を言っているんだお前」


──キャンディットは世界が自分だけが持つものと勘違いしていた。

その理由は──


「お母様は言ってくれた!私だけの才能だと!」

「⋯⋯?何を言ってるんだ?」

「姉妹の中で私だけがこれを持ってる!私は特別なの!あなたが私と同じ特別な訳ない!」

「⋯⋯もういい、お前は世間を知らなさすぎた。俺という事例から世の中の強者を学べ」

「うるさい、黙れ!」

「うるさいのはお前だ──『滅閃・厄災一撃』」


ファルドが黒く染まった剣をキャンディットに振るう。

キャンディットは吹き飛び、臓物が飛び出たまま息絶えた。

キャンディットは死ぬ瞬間何をされたかも分からずに絶命した、試合の反省をしようにもできない。

だが、キャンディットの性格的に試合の反省など絶対にしないだろう。

ファルドは一人の戦士としてはっきりとキャンディットに対して軽蔑の目を向けてから退場した。


『二回戦第三試合勝者、ファルド・グリーンドラゴン選手!』


キャンディットは良くも悪くも純粋だった。

魔女(・・)の言葉を真に受けたのが間違いだったのだろうが、キャンディットは一生をかけてもその残酷な真実には気づけない。


『二回戦第四試合はミステリアス・シャイン選手対ショコラミア・シガレット選手です!それでは、入場してください!』


「あなたの仮面⋯⋯不思議ね」

「──『光刀斬』」


光はショコラミアの発言には一切応じずに攻撃を開始した。

攻撃をひらりと躱すショコラミアはまた質問する。


「私の質問には答える気がないの?」

「──『白光閃・刀絶』」


白光刀を抜き放ち、一瞬の間にショコラミアを斬る。

だが、ショコラミアには効かない。


「──!?」

「『共有』──『肉体共有』⋯⋯私の肉体を斬ろうとしたところで、あなたの肉体を斬らなければ私に損傷はない」


光が自傷を選ばなければ、ショコラミアへのダメージは入らない。

更に光には『自傷感覚無効』と『自傷死無効』を持ち合わせていない為、痛みを感じてしまう。

ショコラミアの『共有』の厄介な部分はここだ。

自分が痛みを我慢しなければ、ショコラミアの討伐は叶わない。

だが光は一人の剣士、自傷など簡単に行える。


「──グゥ──ッ!」


試しに光は自分の手を刀で突き刺す。

ショコラミアを見ると──肉体の損傷はしていない。


「あなたとの『肉体共有』を解除しただけ⋯⋯」


ショコラミアは相手の意思関係なくいつでも『肉体共有』を接続したり、切断できる。

突破口など見つからないような厄介な魔法に、光は頭に血が上った。

光は短気だ、少しでも機嫌を損ねたら竹刀で叩かれしまうのを時雨が特に体験している。

頭に血が上った光は何をするか?

それは至ってシンプル──大暴れする。


「『白光刀・絶閃雷光』──ッ!!」

「さっきも言ったでしょう⋯⋯私を傷つけるにはあなたの肉体を傷つけないといけないって⋯⋯」


光はショコラミアの言葉を完全に無視した。

──刀を持って怒り狂った光に、太陽はこう言う。

『どんな不利な状態でも、光が怒ったら逆転なんて容易だ』と。

光が負ける相手はただ一人、太陽のみ。

それ以外の天才で光に剣道で敵う相手など存在しない。

その理由は──光の鬼のような威圧と気迫に、根負けするのだ。

単純な実力と、不屈の心と、怒りによる肉体制限の解除。

これによりショコラミアは──自身の体に違和感を覚える。


「何⋯⋯この感覚⋯⋯今にも暴れ出したい⋯⋯!」


光は精神的にではなく、肉体的に暴走の欲求を感じている。

脳の指示ではなく、体を構造する細胞の一部一部が脳に暴走の指示を送っているのだ。

気分の悪い感覚に、ショコラミアは『肉体共有』を解除してしまう。

──その瞬間、ショコラミアの肉体は細切れになってしまった。


「ガァァァァァァ──ッッッ!!!」


鬼のような形相で刀を振り続ける。

ショコラミアの意志などもう既に残っていないにも関わらず、暴走が止められない。

未だ会場内に響き続ける咆哮は留まることを知らず、ただ怒り狂って細切れになったショコラミアに対し刀を振るうのみ。


『ちょ、ちょっと止まってください!二回戦第四試合の勝者はミステリアス・シャイン選手です!』


終了のコールを鳴らされてもまだ止まらない。

観客は怯え、出場選手はあの化け物とは戦いたくないの一心で嫌悪する。

だが二人、光を止める為動いていた者がいた。


「『対象時間停止』」


時雨とブライアである。

刀を振り続ける光は迫ってくる二人に気がつけず、まんまと時雨の『時間停止』に嵌ってしまった。

ブライアは時間の止まった光を急いで控え室まで運ぶ。

原型を留めていない程斬り刻まれたショコラミアは緑光に包まれて蘇り、光にトラウマを植え付けられてしまった。


「あ、あぁぁぁぁぁぁ⋯⋯⋯⋯」


彼女は地面に膝をつけるだけで動こうとしない。

両者共に、理性を失ってしまった試合であった。

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