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第7話 解決、第一の事件!

──同時刻、生徒会室にて

「そろそろ、私の出番かしら」


余裕そうに席を立つ、ネル。

だが、その姿には言葉とは裏腹に、有り得ない程の殺気を隠していた。

ある程度強い者でなければ、その姿を見るだけで気絶するだろう。


「さて、さっきの轟音、ファルド先輩が行ったのかしら?なら、見に行くだけでも行くかしらね」


ファルド先輩なら大丈夫でしょ──と思いつつ、部屋を出る。

今、ブライアが戦っていると知らずに。

生徒会室からは放送室も近い。

移動も直ぐに終わる。

何故、先に向かわなかったのか。

それは、『生徒会が手を出すのは最後の最後だけ』という決まりがあるからだ。

なぜなら、最初から生徒会に頼ると、生徒達は頼りきりになってしまう。

それはいけないと考え、そのルールを作ったのだ。

そして、ネルは放送室に着いた。

そこに……


「ああ、ネル。もう終わったのか?」


ファルド・グリーンドラゴンがその場に現れたのだ。

だが、ネルは不思議に思う。


「あれ?ファルド先輩が解決したのでは?」


そう、ネルはファルドが解決していると思っていたのだ。

なら、誰が行っているのか?

そう二人は疑問を抱き、穴が空いている方に向かう。

そして、二人は有り得ないものを見ることになる。


「あれ、レッドドラゴンかしら?それにしては背が小さいけれど……」

「いや、違う……ブライアだ……」

「ブライア?先輩の義弟の?なら、髪は……あれ、血!?」


大変なことになった──とネルは悔やむ。

さっさと動いていれば──とファルドは歯を強く噛む。

だが、まだ死んでいない。


「助けれるわ!早く行きましょう!」


ネルが催促するが、ファルドは動かない。

ファルドは、様子がおかしいことに気づいていた。


「いや、まだ待て……様子がおかしいぞ」


ブライア──いや、シャイフォンが立ち上がる。

その様子に、二人は驚愕する。


「な、なんであの状態で立てるの!?普通死んでいるわよ!」


腹に穴が空き、頭から血が流れ、腕はボロ布のように垂れ下がり、足は剣で裂かれたような傷。

それに加えて、腕と足は腐食されている。

立っている方がおかしいのだ。

だが、それはシャイフォンだから立てるのだ。

ブライアだったらとっくに死んでいるだろう。


「──は?な、なんでお前は立てる?」

「そうだな……あいつが、俺に託したからだな」

「あ、あいつ?託した?一体何を言って──」

「さあ、第二ラウンド開始だ。」


そう言うとシャイフォンは両腕の袖を捲った。

その腕には、何か文字のようなものが刻まれていた。

緑の文字が光り輝く。


「『緑龍十刻み』というものでな、見せてやろう、我が技を。『一の刻み・緑王波将閃りょくおうはしょうせん』」

「なっ、クソ、クッソオオオオオオオオ!!!」


一撃必殺、その存在ごと打ち壊された。

腕の刻みが消え、袖を戻すシャイフォン。

そこにファルドとネルが駆け寄る。


「だ、大丈夫!?け、怪我は?」


そんな心配を裏腹にシャイフォンは……


「ああ、こいつそういえばボロボロだったんだな。治すか」


と、呑気なことを言うシャイフォン。

この発言で初めて、ブライアじゃないことが分かったネルとファルド。


「お前……緑龍か?」

「ああ、ファルドか。お前は有名人だったな。確か、ポテンシャルも肉体も一流だと緑龍界でも話題になっていたな」

「そうか、緑龍か。ブライアは無事なのか?」

「ああ、もちろん。それも、あいつが望んで俺に代わったからな」


龍に肉体を預ける、ということは肉体を支配される可能性があるのだ。

それを、そんなことを簡単に出来るブライアにファルドとネルは驚く。


「そう、でも肉体は返してあげてね」

「ああ、当たり前だ」


そりゃそうだとも言わん顔でシャイフォンは返答する。

実は、ネルの中にも黄龍がいるのだが、一度も肉体を預けたことがない。

ファルドは例外だが。

肉体を預ける行為は珍しい。

余程勝てない相手に肉体を支配される前提で貸すのが当然なのだ。

肉体を預けたのがシャイフォンで良かっただろう。

他の龍であったならどうなっていたか分からない。


「ああそうだ、治療だな。超効果治癒ハイグレードヒーリング


躊躇いもなくかなりの魔力を消費する魔法を選んだシャイフォン。

だが、シャイフォンの魔力から引っ張ってきているので、ブライアのなけなしの魔力を消費することもないのだ。

ファルドは気になる。


「なあ、お前の魔力量って一体いくつなんだ?」


あの技といい、高度な治癒魔法といい、レベルの違いが分かる。

まあ、ファルドはこの学校で一番強いので、勝てると思っているが。


「そうだな、まあ一億は超えているんじゃないか?」


龍は魔力量が多い。

だがしかし、多すぎるのだ。


「お、お前階級どこなんだ?」

「緑龍王守護二龍だ。もう分かるだろ?」


おかしいだろ──とファルドとネルは思う。

上から数えて二番目の階級なのだから。

そりゃあ魔力量も多く強い訳だとファルドは納得する。


「ねえ、そろそろブライア君寝かせてあげたら?負荷かかりすぎるよ。ほら、医療室こっちだから」

「む、そうだな。では、後は頼む」

「は?お、おい急に代わるな!ってもう……」


案内しようとした時に代わられたので、運ぶしかなくなったのだ。

ファルドがブライアを持ち上げる。

軽いな──と思いつつ医療室まで運んだのだった。



──第1の事件【恐怖の音放送事件】

解決者

・シャイフォン

解決関係者

・ブライア・グリーンドラゴン

死亡者数

・十六名

負傷者数

・九十三名


事件の魔本に、新たな一ページが刻まれた。



──現在

「んっ、ふわぁぁ……あれ、俺生きてる?」

「あら、起きたわね。意外と早かったじゃない」


えっと、誰──え、ネル先輩!?

なんでここに……

あ、俺の看護してくれていたのか?


「あ、ありがとうございます。あと、あれも解決してくれたんですか?」

「いや、あの事件は君の中の緑龍が解決したよ。凄いね、緑龍に肉体を預けることを即座に決断出来るなんて」


ああ、シャイフォンが解決してくれたのか。

そういえば意識がなくなる前にシャイフォンと交代してたな。

後遺症とかはないか?


「本当に凄いね。表彰してもいいくらいに活躍してくれたよ君達は」

「いや、そんなことないですよ……仮にも何人か死んでしまったし……」


そう、何人かは死んでしまったのだ。

俺が解決しないといけないのに……


「ううん、実はこの学校はね、普通に死ぬことなんてあるのよ。三年生から五年生、そして七年生になれば分かるよ。君は優しいんだね」

「えっ、そ、そうなんてすか」


物騒な学校だな。

でも、そうか。

今知らない人が死んで悲しくなってると、知っている人が死んだときに俺は壊れるかもしれない。

だから、心を強く保たないと……

いや、違う。

俺が悲しんでいるのはそんな理由じゃない。

俺が助けられる命を助けられなかったからだ。

どちらかと言えば後悔だな。

なんとか『創成』で解決出来ないのか?


《やめとけ、心と体が壊れるぞ》


シャイフォン!

それは一体どういうことだ?


《命を操る、というのは高度な魔力操作に加え、心身の負担がかかる。まあ、命を操るなんて絶対に出来ないんだがな。そうなれば、いくらでも死者蘇生が出来てしまうだろ?まあ、不死場ならあるがな。それは事前に複雑な魔法陣を用意しておかないといけないから、特訓等によく使われるな。まあ、そこで特訓するのもいいだろう》


そうか、ありがとう!

なら、特訓だな。


「で、貴方にお誘いをしたいのよ」

「え?どうしたんですか?」

「二年に一回、スティア国では剣術、魔法、武術、そして総合での一位を決めているの。もうすぐ剣術大会なのよ。だから、出てみない?貴方の腕を見越しての誘いよ。どうする?」


なるほど、そんなのがあるのか。

出てみてもいいけど、ボコボコにされそうだな……

あ、いつ大会か聞いておかないと。


「えっと、それはいつですか?」

「まあ大体二週間くらいは猶予あるわ。特訓なら私がやってあげるし、出る?」

「そうですね、やってみたいです!」

「ありがとう!じゃ、ファルド先輩も強制ね!」


ん?ファルド?

あれ、後ろにいたのか。

全く気づかなかったな。


「は?なぜそうなる!?」

「可愛い後輩にいい所見せないと!じゃ、エントリー行ってくるわね」

「お、おい待て、俺は出るつもりないぞ!」


あー、こんな感じの人ね。

てか、髪が緑ってことは、グリーンドラゴンか?

なら俺の義兄に当たる人なのか。

それくらい教えてくれよ親父。

俺が聞かなかっただけなんだけどな。

あ、行ってしまったな。

まあ、別にいっか。


「ブライア、大丈夫か!?」


あー来た来た、病室うるさくなるやつ。


「静かにしないと。他の人もいるんだから」

「あっ、スマン。で、大丈夫なのか?」

「まあ、痛みはなくなった。もう大丈夫だとは思うけどな」


ここの治療はいいんだよな。

寝ていても治療されてるのが分かるくらい気持ちよかったし。

痛みさえなければ俺は大丈夫だな。

でも腐食とかはどうなったんだろうか。


「あ、そうだ!実は俺もあの大会出ることになってさ!一緒に頑張ろうな!」

「シュヴァルツも出るのか。戦いになったら容赦しないぞ?」

「もちろん、俺もだ!」


笑い返すシュヴァルツ。

はぁ、こいつが生きていてよかった。

さて、一度立ってみるか。


「うっ……しょと。立てるようにはなったな」

「おし、それならよかった!なら、俺は特訓行ってくるから、完治するまで安静にしとけよ!じゃな!」

「おう、行ってらー」


……寝るか。


──二日後

よし、今日から特訓開始だ。

とりあえず予選突破まではいきたいな。

確か予選は十六ブロックで行われるんだったな。

なら本選までいけるように特訓だな。

特異体質って使ってもいいんだろうか?

まあ後でネル先輩にでも聞けばいいか。

勝つには新技を開発したいな。

あの剣術じゃダメだ、もっと強い技じゃないと。

んー、まずはアイデアだな。

何か引っ掛け系で……相手のタイミングをずらせるような技だと勝ちやすくもなるか?

一撃必殺系も準備しておきたいな。

──よし、何となくは想像出来た。

後は『攻撃創成』で……っと。

まあ実践あるのみだよな。

おっと、その前に技名だな。

うーん……そうだな……適当な名前付けたくないし、完成してからの方がいい技名も思いつくものか。

後は一撃必殺系だけど、何かいい案ないかな?

基本は紅蓮剣術にして、時々緑龍剣術入れる感じのスタイルでいくか。

じゃ、一撃必殺系は後にして、特訓だ!

ネル先輩に教えてもらおっと。


──屋内練習場にて

「お、来てくれたわね。じゃ、始めるわよ」

「お願いします!」


先に来てくれてたのか。

何を教えてくれるんだろうか……


「じゃ、まずは実践、戦うわよ」

「初っ端から戦うんですか?」

「実践あるのみよ。さあ、準備して」


なるほど、俺と同じタイプか。

まあ後で聞きたいことは聞いたらいいか。

紅蓮巨剣装備。

特異体質は……まだ使わなくていいか。

とりあえず基礎で様子見だな。


「大きい剣ね、扱えるの?」

「ええ、攻撃力高いし、投擲すればいいので楽です」

「剣は投擲武器じゃないわよ……まあ、その人の戦い方よね。じゃ、始めるわよ──『黄剣翔』」


さて、特訓だから真面目にするか。

普段も真面目にしろって話なんだけどな。


「『紅閃』」

「結界『剣術無効結界』」


ええ!?何それ!

ずるくね!?

いや、まあ無効眼もずるなんだけどさ。

結界だったらゴリ押しで壊せばいっか。

よし、『破壊眼』でも使うか。


「『破壊眼・結界破壊』」

「ッ!?あら、特異体質かしら。いい特異体質じゃない、結界は意味なさそうね。」


お、もうバレたな。

見る人が見ればすぐ分かるってことか。

まあ結界貼られたら破壊眼使ったらいいか。

それなら完封出来るしな。


「……破壊眼、ならあなたも【破壊の使徒】なのね。」

「え?【破壊の使徒】?」

「知らないならいいわ、後で教えてあげる。『破壊の一撃』」


グッ……!

あ、腕、壊れ……


「あっ、ぐぁぁぁ!」

「ほら、そのくらいで叫ばないの、男の子でしょ?」

「あがっ、男の子でも限界が、あるっんで、すよ……」

「あんなに血だらけになって頑張っていたのに?」

「あれは、何も考えていなかったからですよ……」


くそ、ヤバい……

早く治癒しないと……


「まあ、これで勝負アリね、はい回復薬」

「あ、ありがとうございます」


負けちゃったな。

これじゃ予選突破なんて出来ないぞ。

出るからには目標達成しないと。

今日から必死で特訓だな。


「で、【破壊の使徒】のことだったね。これは『三壊悪魔』の名残でね、能力とか特異体質に破壊の言葉が入っていたら【破壊の使徒】よ。ま、そんなに悪いものじゃないから安心していいわよ」

「あ、そうなんですか。良かった」


そういうもんなのか。

迫害とかされなかったら別にいっか。

さて、じゃあ回復したことだし、特訓に戻るか。


「じゃ、もう一本お願いします!」

「お、いい威勢だね、じゃあやろっか!」


ボコボコにされる未来しか見えないんだけどな。

これも予選突破するためだ、頑張るか。


──約二週間後、本番

さて、ようやくだな。

ネル先輩の特訓の成果を出すときだな。

まあ、多少はずるしちゃうけどな。

この一ヶ月で多少は完成に持っていけたしよくやったと自分を褒めたいな。

この一ヶ月、俺一体何回殺されたんだろうな。

不死場があってよかったと今になって思うな。

そろそろ会場に入らないとな。

おっ、シュヴァルツじゃないか。


「よう、シュヴァルツ。今日は宜しくな」

「おお、ブライア!約束通り、容赦しないぞ!」

「当たり前だ、じゃあ俺は先に行ってるからな」

「ああ、また後でな!」


やっぱりシュヴァルツは変わらず元気だな。

そこが良い所なんだろうな。

エントリーは確かネル先輩がやってるはずだしそのまま控え室行ったらいいか。

あれ、そういえば今日はレインボードラゴンの当主が見に来るか何かネル先輩言っていたよな。

なら、親父も来るのか。

ビックリするだろうないきなり俺が出てきたら。

さて、俺の予選ブロックは……

第十三ブロックか。

特に注意する人は……いないか。

ネル先輩のアドバイス通りに出来るようにしないとな。

あ、他のブロックも見ておかないとな。

えっと……ネル先輩は第十六ブロック、ファルド先輩は第八ブロック、シュヴァルツは第十一ブロックだな。

なるほど、いい感じにバラけてるんだな。

まあ頑張れば全員と当たるのか。

じゃあ十三ブロックの場所に行くか。

この大会は貴族だけじゃなくて平民の方々もいるんだったよな。

失礼のないようにしておかないとな。

あ、部屋に入ったけど、凄いピリピリしてるな。

まあここの全員が敵なんだし、そりゃそうか。

さて、予選がもうすぐ始まるみたいだな。

あれがモニターなのか。

結構近代的なんだな。

さて、第一ブロックの見学だな。


『ではでは、予選第一ブロックの開始となりますので、選手は今すぐ会場にお集まり下さい!』


あ、実況もあるのか。

いい大会じゃないか、異世界は便利だな。

さて、じゃあ見学と洒落こもうじゃないか。


『では、予選第一ブロック、開始!』


実況の声が会場全体に響き、大会が始まった。

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