第55話 激闘の終わりと成長の始まり
ようやくレジェンドと俺の大きな戦いが終わった。
周りの人達を巻き込んでしまったのは本当に申し訳なかった。
だがもっと大変なのは、この戦いの後始末だ。
美しい街並みは見る影も無く、人もまだ眠ったままだ。
それで、後始末に来てくれたのは──
「──って訳でユーザルト、頼んだぞ!」
「……その為に俺を呼んだのか、クライア」
「お前の能力でちょちょいと頼む!」
「国王の俺を動かそうとは、いいご身分になったものだな?」
スティア王国の国王、ユーザルト・スティア・ホワイトドラゴンが親父に頼まれて帝国に来たのだ。
まさか国王まで巻き込むとは思っていたなかった。
確か、国王は『復興』の能力を持っているって聞いた気がする。
「……まあ、この惨状なら俺を呼ぶのにも仕方ない状況か」
「だろ?だから早く頭を離してくれ……!」
親父と国王の方を見ると、親父が国王に頭を鷲掴みされていた。
何故か俺の中でスッキリした気分になったが、今はそんなことどうでもいい。
国王が帝国を復興してくれるとは思うが、帝国民が起きないのは問題だ。
フィル君も目を覚まさないし、本当に起きるのか不安になってしまう。
「すまない……スティア王国には世話になりっぱなしだ……」
「別によい。我が国もレジェンダ帝国に助けてもらっておるからな」
「だが、この戦いの後始末まで……」
「それはこのバカのせいだ。礼を言うならこの緑のバカに言え」
「早く頭……離してくれよ……!」
「俺の気が済むまで離すとは思うなよ」
あの三人は自分で動くだろうし、俺は帝国民を起こすか。
オニシエント、どういう状態か分かるか?
《中々特殊な状態ですね……私が治すので少しだけ魔力を下さい》
分かった、流し込む。
オニシエントに魔力を流すには、自分の内側に魔力を貯める必要がある。
かなり違和感があるが、我慢するしかない。
《もう大丈夫です、ありがとうございます。帝国を復興させてから始めますね》
分かった、国王に頼んでくる。
あの地獄のような空気に首を突っ込みたくないが……仕方ないか。
親父に関わらなければいい。
「国王様、復興をお願いしてもいいですか?」
「……クライアの息子か。別に構わないが、帝国民はどうするつもりだ?」
「僕が治すので、先に復興をお願いしたく……」
「……全員、治せるのか?」
「……はい、もちろんです」
圧が凄い。
俺のことを信用していないのだろうか……。
いや、この親父から産まれた子供だし仕方ない。
「分かった、復興しよう」
「ありがとうございます!」
「ブ、ブライア……俺を助けてくれ……」
「父さんはそのままでいいですよ。では僕は準備してきます」
「だとよ。見放されたな」
「ブ、ブライアァァァァ!!」
よし、復興が出来次第頼んだぞ、オニシエント。
《お任せ下さい、では魔法陣を解放します》
すると、俺の足元、俺の腹、頭の上の周りに魔法陣が展開された。
大きさは計り知れないが、おそらく帝国全土だろう。
流石はオニシエント、『全知全能』の名は伊達じゃない。
国王の復興が終わるまで待ってくれるだろうし、俺は気楽にしていればいいか。
「ブライア、これもお前の力か?」
「んーまあそんな感じだな」
「なんか含んだ感じだが……まあいいか。本当にお前には世話になりっぱなしだ」
「レジェンドは俺の親友だからな、当然だ。あ、そうだ、後で俺の特訓してくれないか?」
「総合大会に出るのか?」
「ああ、俺がどれだけ強くなったか知りたい」
「……なら一つだけ、『望力』だけは使うな。あれは人間が持っていい能力じゃない」
まあ……薄々気づいてはいた。
あれは強すぎる、俺じゃ少しの間しか完璧に制御出来ない。
『最後の希望』みたいな特殊能力は世界で見ても持っている人間はちらほらいるようだし、使ってもいいだろう。
まあ今は帝国の復興と残り二つの事件のことを考えないと。
「なあレジェンド、事件のことなんだが……何がくると思う?」
「そうだな……あの如月と長月とか言ったか?あれは関与してきそうな予感がするな」
「まあ、そりゃそうだよな……」
ガルや影踏月葉が事件を引き起こすのは俺としてもかなりしんどい。
『望力』があっても勝てるかどうかの瀬戸際だ。
ガルくらいの実力者なら同等だが、影踏月葉は無理だろう。
長月は九月だから上から四番目、まさかここで来るとは思いもしなかった。
だが『勉強の天才』の予備がいるということは、他の予備もいるのだろう。
天才全員が集まれば、天才の予備も集まるのが必然という訳か。
《最後の仕上げに取り掛かります。全帝国民が目を覚ますので、ブライア様以外の人間はここから少し離れていてください》
分かった、伝えるよ。
「もうすぐ全員起きるから、帝宮に行っててくれ」
そう伝えると、ここにいた全員が帝宮に向かった。
俺が思考している間に、帝国の復興は終わったようだ。
そこまで思考に没頭していたとは思わなかったが、前世に関係あることだから没頭していても仕方ないか。
まあ考えすぎも良くない、今は今のことを考えておこう。
《……完了しました。目覚める時期は別々ですが、じきに起きるでしょう》
ありがとう、オニシエント。
終わったことだし、俺も帝宮に戻ろう。
──帝宮にて
真っ黒に染まっていた帝宮も、元の姿に戻っていた。
とりあえず安心して中に入れる。
もちろん、中も元通りだ。
流石は国王、この程度のことも余裕で直せるという訳か。
「会議室に大人数いるようだし、そっちに向かうか」
かなり人の気配を感じた。
あの大人数だと帝室では確かに狭いだろう。
ちなみに、会議室は四階にある。
「ただいま、戻った」
扉を開けると、かなりわちゃわちゃした様子で喋っていたりしていた。
まさかこんなに援軍が送られているとは思わなかったくらい大人数だった。
近くの席に座ると、シュヴァルツが寄ってきた。
「なあなあブライア、お前強くなったな!」
「おおシュヴァルツ、久しぶりだな……って、お前も十分強くなってるじゃないか」
「いやいや、今のお前に比べると全然だ。まさかこんな激闘を勝利で収めるとは思わなかったぞ」
俺が負けるとは、心外だな。
……いや、俺も負けると思ったくらい接戦だったが。
でもシュヴァルツが来るとは思わなかった。
この話を続けたいが、今は別の話をしないと。
「クリーナ、長月はどうだった?」
これからの事件に備えて、話をしておく必要がある。
今回の事件で分かったことは、事件には二つあることだ。
一つ目は、天然的な事件。
第一は不明だが、第三はガルや影踏月葉のような者が起こした事件ではなかった。
二つ目は、人為的な事件。
第二や第四、第五は全てガルや影踏月葉が関わっていることによって起きた事件だ。
これから起きる事件は、人為的な事件の方が多くなるだろう。
存在が認知された以上、今まで以上に大胆に、かつ派手な事件を起こしてくる筈だ。
だからこうして情報の共有は欠かせない。
「長月……奴の情報は二つ確保してある。この事件を起こしたのは奴の分体、長月の使う魔法は異次元だということだ」
「分体……あれで分体だったのか。本体はどれぐらい強いんだろうな……」
「顔、笑っているぞ。お前もそろそろこちら側に染まってきているな」
っと、本当だ。
何故か力のことを考えると、無意識に笑ってしまうようだ。
一体どういうことなんだ……。
「確か魔法は……影系統だったか?よく分からぬが、儂相手に魔法勝負を挑んだから研究はしておらぬぞ」
「あー……まあ仕方ないか。本体は別の力を持っているかもしれないな」
「推定ではなく、確実だろう。だが、本体が出てくることはまずなさそうだろうな」
それは俺も同感だ。
ガルの奴も分体だったようだし、変な賭けに出るよりかは、慎重に進める方が賢い。
ただ、ガルや影踏月葉以外の奴が絶対的自信がある場合は本体そのままが出てくるだろう。
他の奴らが出てくる可能性も考慮しなければならない。
「ここで起きる事件はあと二つ……目標まではまだまだ遠いだろうな……って、グロウさんとイビルさんは?」
「奴らはレジェンドと一緒に上におる。行ってくるがいい」
そうだな、あの二人にも話がしたかった。
帝室にいるだろうし、行くか。
「じゃあ行ってくる。まあ適当にここで喋っててくれ」
「ああ、分かった」
ちなみに、親父はまだ頭を握られていた。
──帝室にて
扉をノックする。
するとレジェンドの声がして、どうぞと言われる。
扉を開けると、何か違和感のする空間だった。
何だか、俺以外の三人が異次元のような──
「──どうした、俺が怖いか?」
気がつくと、頬を撫でられていた。
横を見ると、イビルさんが俺の横にいたのだ。
一瞬なんかじゃなかった、そんな次元じゃない。
ただ、力を見せつけただけ……?
イビルさんに殺意や敵意は湧いていない。
だけど、何か普通の人とは違和感が……?
「イビル、止めろ。邪気を放つな」
「はいはーい。でもこの子、素質アリ!」
「……まさか、人間で使えるとはな」
な、何を言ってるんだこの人たちは……?
一体どういう話をしているんだ。
「ブライア、お前には魔法以外の法の素質がある。そういうことだ」
「そ、そんなこと言われてもよく分からないんだが……」
「分からなくて当然だ、イビルにしか理解できない法なのだからな」
「そーそー!俺はこの世でごく少数の少数、そこからまたひとつまみした、限られた生物なのだ!」
何か、この人に対する印象が変わった気がする。
不思議な人から、陽気な人……かな?
でも実力は本物だ。
さっきだって、近寄ってきたのすら認識出来なかった。
魔法とは違う法……一体、どんな法なのだろうか。
「んー……そうだね、君なら理解出来るだろうね」
新しい法……俺は、新しい力を得ることが出来る……のか?
ガルや、影踏月葉に対抗出来るような、大きな力を……。
「お、興味あるのか?なら教える価値がありそうだ」
「ブライア、お前新しい力を受け入れる抵抗が薄くなっているような気がするんだが……」
確かに、レジェンドの言う通りかもしれない。
だが、強くなれるに越したことはないからな。
これから何があるか分からないし、強くなっている方が何事にも対応しやすい。
「その法の名前は──邪法だ!」




