第53話 激闘〜その十〜
読者の皆様、新年あけましておめでとうございます!
2023年になっても変わらず投稿していくので、これからも『男子高校生の異世界転生』をよろしくお願いします!
「俺の可愛い子孫にこんなことをしたんだ、覚悟は出来ているのだろう?」
「貴様、その声はまさかグロウ──」
「黙れ」
グロウと呼ばれた男が、レジェンドにアッパーを食らわせる。
レジェンドが一発のパンチによって吹き飛んだ。
驚いて立ち上がろうとしたが、紫髪の男に止められる。
「落ち着け、あの程度でやられるレジェンド・オーブじゃない」
「あの人、グロウって呼ばれて……!」
「ああ、知っているのか。奴はグロウ・グリーンドラゴンだ。お前の家族だな」
やっぱり、あの人がグロウ・グリーンドラゴン。
この前にクリーナから話してもらった、初代グリーンドラゴン家当主の人だ。
というか、あの人がグロウ・グリーンドラゴンなら、俺の隣にいるこの人は誰なんだ。
「見たところ、あなたはパープルドラゴンの家系のように見えますが……」
「いいや、違うさ。髪は紫だけどな」
「じゃあ、あなたは一体何者で?」
「その辺にいる普通の人間だよ」
絶対嘘だ。
確実に嘘と分かる。
人間でこんなに丁寧で禍々しい魔力を見たことがない。
いや、これは魔力じゃないのかもしれない……。
この人の魔力には違和感しかない。
人間じゃない何か、ということにしておこう。
「始まるぞ」
その言葉を聞いた瞬間前を向き、レジェンドとグロウさんを見る。
レジェンドには強者という圧と覇気があるが、グロウさんには一切無い。
グロウさんがさっき放ったアッパーが偶然なのかと疑う程だ。
「兄の親友……何故、ここにいる?」
「黙れと言いたいところだが、教えてやるか……呪いのせいだよ」
「呪い……あの忌まわしき魔王のか?」
「ご名答。不死の呪いのせいで俺は死にたくても死ねない。おまけに歳をとる。最悪の呪いだよ」
「俺よりかはマシだろうに……」
「確か、人の痛みを受ける呪いと、不老不死の呪いだったか」
「……正解だ」
人の痛みを受ける呪い……?
まさか、レジェンドはその呪いのせいで精神がやられてこんなことをしているのか!
その痛みに、千年以上も耐えてきたのか……レジェンドは凄いな。
「さて、お喋りは終わりだ……戦いを始めよう」
その瞬間、二人が消え去った。
次の瞬間にはレジェンドが槍を放ち、グロウさんがそれを受け止めていた。
速すぎる、目で追えない!
とんでもない戦いだ、視認眼を使っても見えるかどうかだ。
「そんなに目に負担をかけるな、潰れるぞ」
紫髪の人に頭を触られると、視認眼が閉じた。
気がつくと、右目から少量の血が流れていたのだ。
さっきの戦いからずっと視認眼を使っていたから、休ませなければならない。
それよりも、この人は見えているのだろうか。
「見るんじゃない、感じるんだ」
紫髪の人は戦いを見ながらも、俺にアドバイスをしてきた。
かなり難しいが、人外の領域に一歩踏み出すには必要不可欠な技だろう。
この戦いはチャンスだ、俺が成長する為に必要なことが沢山ある。
「そうだ、その感覚だ……落ち着いて、焦らず、ゆっくりと」
馴染みすぎて自覚が無かったが、『最後の希望』の効果がまだ続いていた。
いや、一度発動すれば俺が死なない限り永遠に続くのだろう。
その『最後の希望』の身体能力強化で感覚が強化され、魔力に加えて波動も正確に感じ取れるようになっていた。
魔力を全身に巡らせ、二人に流れている波動を感じる。
レジェンドは全身に波動の反応があったが、グロウさんは手足にしか波動を感じられなかった。
手足に凝縮しているのか、かなり濃密な波動だ。
攻撃をする時にだけ魔力を混ぜ込み、レジェンドに攻撃する。
まるでおとぎ話のような戦いだ。
英雄譚に出てくるような激闘が、この場で繰り広げられている。
すると、後ろから声が聞こえた。
「なんじゃ、これは……」
パッと後ろを振り向くと、黒髪の美少女が立っていた。
髪色が違っていても、声と口調で分かった。
この美少女はクリーナだ。
目の前の戦いに絶句し、俺の隣の紫髪の人に話しかける。
「イビルよ、何故グロウがここに……」
「アイツ、かなり家族が大好きなようでな……この前の地龍王の時も駆けつけていたぞ」
「そうだったのか……」
「クリーナ、まさか『魔天究極獄法』を使ったのか?」
「ああ、情けないことにな……」
「そうか。まぁ、ここにクリーナが来たことだ、俺もあの戦いに参加してくる」
「儂は今魔法を使えんぞ?」
「グロウの子孫がここにいるだろう、最悪『魔天究極獄法』を貸し出せばいい」
「……まぁ、それなら良いが……」
勝手に話が進められて困る。
だがあの戦いを見ては参加したいとは思わない。
ここは大人しく任せよう。
「ブライアよ、よくここまで耐えてくれたな。それに、お前は特殊能力まで持っていたのか」
「だけど、特殊能力を使ってもレジェンドには勝てなかった……やっぱり、レジェンドは強い」
「……レジェンドに勝ちたいか?」
「もちろんだ、あいつはあれが『素』だって言ってたけど、俺は認めない。俺が知ってるレジェンドに戻してやる」
「……分かった、手を出せ」
クリーナが小さな手を差し出してくる。
さっき言っていた魔法を貸し出してくれるのだろうか。
座ったままクリーナと手を繋ぐ。
すると、クリーナから途轍もない魔力が流される。
驚いて固まっている間に魔法の伝達が終わったようだ。
だが、さっきまでの魔力が嘘みたいに俺の体には変化が無い。
「お前なら教えなくとも出鱈目な使い方をするだろう、存分に暴れてこい」
「いや、何を渡したかくらいは俺に言ってくれよ」
「先程話題に上がっていた『魔天究極獄法』じゃ。かなり欠点が多い魔法じゃが、強力なのは間違い無い」
そこまで言ってくれるなら使い方も教えてくれよ……。
仕方ない、『全知全能』でカバーするしかないか。
オニシエント、起きているか?
《勿論です、先程の会話も聞いていました》
話が早くて助かる。
『魔天究極獄法』って、どんな魔法なんだ?
《……これは魔法というか、なんというか……いえ、何もありません。この魔法ですが、正直『全知全能』を使っても完全解析には数日かかります。この短時間なら一割理解出来て良い方でしょう。戦闘中に今持っている知識でアドバイスをします》
なんだ、そんなヤバい魔法なのか?
なら、クリーナってやっぱり強かったんだな……。
小さい子の見た目して、中々エグい魔法を持っているとは信じられないよな……。
とりあえず、俺はオニシエントに頼って戦闘すればいいか。
「じゃあ俺は行ってくる」
「ああ、存分に楽しんでこい」
楽しむって、俺は戦闘狂じゃないぞ……。
《ブライア様、レジェンド帝ですが、あれが本性で間違い無いようです》
認めたくないけど、本当だったのか……。
俺の理想とレジェンドの現実とでは、全く違うってことか。
でも、やることは変わらない。
レジェンドを俺が想像している通りにねじ曲げればいいだけだ。
じゃあオニシエント、そろそろ戦闘が始まるから頼んだぞ!
《ええ、お任せを!》
「……って、これどうやって割り込めばいいんだ?」
目の前ではとんでもない激闘が繰り広げられている。
レジェンドの槍、グロウさんの拳が交差しているのだ。
さっきの紫髪の人はグロウさんの手助け。
正直、俺の入る幕が無い。
いや、そんなことを言っていたらいつまでもレジェンドを戻せないままだ。
何とかしてでも割り込んでみるか。
《そうですね……『魔天究極獄法』は私にお任せ下さい》
え、いいのか?
《使い慣れていなくても、『全知全能』と併用するので安心して下さい》
そうか、なら任せようかな。
俺は何すればいい?
《防御にだけ集中して下さい、攻撃は何とかします》
分かった、じゃあ頼んだよ。
……あれ、俺防御系の能力持ってたっけ?
まあ今ある能力で何とかするしかないか。
使えそうなのは……『輪廻』と『無限』、『事件』の地龍耐久、あとは『無効眼』と『神魔眼』のいくつかってところか。
よし、これで何とか乗り切るか。
「まず邪魔になるのは、レジェンドの槍だよな……『空間支配』──『空間交換』」
レジェンドの二つの槍が存在している空間と、俺の手元の空間を交換する。
これでレジェンドは得物は無く、俺が槍を手にしている。
しかしこの槍、持つだけで使いやすさが分かる。
ただでさえレジェンドは強いのに、この槍まで持ってしまえば無敵になるだろう。
実際、無敵みたいな感じになっていたが。
気がつくと、レジェンドがこちらを向き、驚いた表情をしている。
この槍、折ってしまってもいいけど……かなり硬い。
折るのは諦めて、収納しておこう。
俺の左に『無ノ空間』を開き、そこに二本の槍を入れる。
これであの槍は俺のものだ。
俺が使いたかったが、すぐに取り返される可能性も考えて、レジェンドが元に戻るまでは収納しておこう。
「……立ち上がるか、ブライア。やはりお前は、俺の敵に相応しい」
「俺を褒めるのはいいが……余裕だとは思わないことだな」
オニシエントの攻撃まで、俺は耐えるしかない。
攻撃も交えつつ、防御を主体として動いていく。
だが、ただ防御だけをしていても俺らしくない。
つまり、防御しながら攻めればいいのだ。
右手を銃の形にし、レジェンドへ向ける。
すると、俺の背後にスナイパーライフル銃が出現し、それを右手に取る。
元々俺は前世にあったFPSゲームで世界一の人間だ。
銃を扱うのは俺にとっては簡単だ。
だがスナイパーライフルだけでは近距離に弱い為、今度は左手を銃の形に変える。
今度はハンドガンが出現し、左手で取る。
威力こそは低いが、この世界には無い鉛玉を使った武器だ。
魔法や属性を付与することも可能で、レジェンドに限らずこの世界の人間全員にとって脅威だろう。
これに『追求眼』を使うことで必中の弾丸となる。
『追求眼』を開眼すると、『危険眼』も開眼される。
『危険眼』は俺が窮地に陥る攻撃を自動で防御してくれるのだ。
これで、オニシエントの解析が終わるまで攻撃し続ける。
「さぁ、レジェンド……戦い続けようか!」
先程まで繰り広げられていた神話のような戦いに、ただの人間が割り込んだのだった。




