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第45話 激闘〜その二〜

突如暗闇に閉ざされた場所に転移させられた。

俺を転移させたのは長月で間違いない筈だ。

長月は睦月や如月のガルよりも強いと思っていて間違いないだろう。

一体何の組織かは不明だが、睦月から師走の十二人いると考えて間違いではない筈だ。

長月は上から四番目だが、俺に相手が出来るか不安だ。


《私もついていますので、大丈夫ですよ》


そうだな、オニシエントもいるんだ。

極限状態は……あと六分程度か。

決着を急がないと。


「さて……長月、どこにいる?」


そう言うと、後ろからコツコツと歩いてくる音が聞こえる。

その音が聞こえた瞬間、俺達がいる場所が明るくなった。

振り返ると、目の前にはさっき見た仮面にマントをつけた性別不詳の人間がいる。

その人間は喋ることなく、仮面を取り外した。

その正体は──


「……──ガル、だと?」

「正解。俺はお前との勝負に逃げるほど臆病じゃないんでね、決着をつけに来たのさ」

「待て、なら長月は──」

「向こうさ、今頃はレジェンド帝と共闘しているんだろうな」


まずい、相当まずいぞ……。

如月のガルよりも強いと見立てた長月がレジェンドと組んでいるとなると……親父や校長、他の当主やシャイフォンがいても長月とレジェンド両方の完全無力化は恐らく無理だろう。

さっさとガルを倒したいんだが……そうともいかない様子。

ガルは本気で俺との勝負に決着をつけるようだ。

だが、俺も一年生の時とは違う。

ガルの想像を超える程強くなった自信がある。

さて、そろそろ始めようか。


「ガル、お前を本気で殺しにかかる」

「ブライア、その勝負、受けて立とう」


さっきの暗い景色がまるで嘘のように景色が真っ白に

明るくなった。

次の瞬間、剣と剣がぶつかり合う。

俺はサリューズを、ガルは氷の剣を。

まずは様子見。

あと六分程度しかない極限状態を解除し、『太陽』を存分に振るう。


「成程、能力精度も格段に良くなっている」

「分析している暇があるなら、戦いに集中しな!」


そう叫んで、斬撃を放つ。

だが軽々しく躱され、逆に斬撃を放たれた。

何とか反応し、後ろに下がる。

駄目だ、全くと言っていいほど隙がなさすぎる。

あまりにも完璧過ぎる動きに褒めざるを得ない。

だが、俺もまだまだ本気じゃない。

まずは様子見に徹する。


「『氷槍世を巡れ』」


聞いたことの無い呪文に戸惑いつつも、警戒を怠らない。

すると、どこからかやってきた氷の槍が俺目掛けて突き刺そうと向かってくる。

真正面から迫る槍が十本。

背後から迫る槍が五本。

上から迫る槍が三本。

右と左から迫る槍が六本ずつ。

下からは認識出来ないが、襲われる可能性も十分にある。

全てを同時に捌くのは厳しい。

だから俺は右と左だけに専念する。


《正面、背後、真上は任せて下さい》


ということだ。

勝手にしてくれてたとは思うが、頼もしい限りだ。

『全知全能』で何かしてくれるのだろう。

ま、任せっきりはよくないから俺も仕事しよう。

元々は俺の問題だと言われればそれでお終いだが。


「『閃・太陽』──ッ!」


何条もの閃光を放つ。

眩い光が散り、迫ってきた槍を破壊した。

オニシエントに任せた槍も全て壊せたようだ。


「成程、これにも反応するのか……なら──『氷花・咲き乱れ』」


氷の花が俺の周囲に咲いた。

雰囲気は神秘的だが見た目は刺々しく、刺されたらひとたまりもないだろう。

段々と俺に近付いてくる。

一つ一つ壊していたら時間が足りない、一気に壊す。


「『轟・太陽』──ッ!」


地に拳を叩き付け、太陽の熱を噴射する。

見事に全て破壊することに成功した。

だがガルは表情一つ崩さない。

これも想定内のようだ。


「『氷破凍冷』」


ガルから水色の光線が十本発射された。

一つでも当たりさえすれば、俺の体は氷に閉ざされるだろう。

真っ向から挑むのは不利だと判断し、回避する。

追尾機能は搭載していないようで……って、追尾で思い出した。

そういえば、俺が眠る前にガルに風魔法で追尾機械モドキを取り付けた筈だ。

それの回収をしないと。

そもそも壊されていないかの確認だが……。


《反応アリ、ですね。ガルの左肩に付いています》


オニシエントが確認してくれたようだ。

近距離攻撃と同時に回収も行おう。

まずは接近することからだ。


「これも全部避けるのか、凄いな!」


笑いながら賞賛するが、聞こえないフリをする。

ガルにはその行動は無駄だろうが、今は少しでも回収に専念したかった。

俺は全力で走り、ガルに急接近。

拳を固め、ガルの左頬にフックをいれる。

そのまま左肩を掴み、肩を壊す勢いで力を込めた。

場所は分かっている為、何とか中指で引っ張り上げて回収は成功。

だが、接近したはいいものの……。


「『氷突・人体貫き』」


俺の背後で氷の剣が迫る気配がする。

逃げようにも、ガルに全身を掴まれている。

オニシエント、頼む!


《はい!『全知全能』──『対抗障壁』》


何かが俺の背後で出来上がった。

直後、剣が折れた音がする。

何とか守りに成功したようだ。

一瞬だけ俺の掴みが甘くなり、そこを見逃さずにサッと抜け出す。

ガルの驚いた顔を見ると、俺があの攻撃を防いだのは想定外のようだ。

一矢報いた気分になったが、回収が出来た以上、向こうの負担も考えて早く終わらせなければならなくなった。


「……お前、そこまで反応するのか。是非とも俺の仲間になって欲しいんだが……お前の返答は?」

「嫌だね。何があっても前にお前がしたことは許されないぞ」

「だと思った。はぁ、こんな人材を始末しなきゃいけないのか……俺は悲しいよ、ブライア」


すると、俺の体は剣で刻まれたような感覚になった。


「う、うがぁぁぁぁああ!」

「大丈夫、痛みだけだ。お前を倒すなら出来るだけ苦しませたくないからな、痛みに慣れてもらわないと」


駄目だ、痛みが引かない。

ここままだと、まともに動くことさえままならなくなってしまう。

座り込み、絶叫しながらも痛みを必死に堪えるが、やがてガルが俺の前に歩み寄ってくる。

駄目だ、死ぬ…………?


《変わって下さい、私なら何とか出来ます》


ほ、本当か……?

申し訳ないが、頼んだ……。


《ええ、ゆっくり、お休み下さい》


俺はいつも仲間に情けない姿を見せているな、と思いながら、そのままオニシエントと入れ替わった。



──ブライアとオニシエントの交代後

「じゃあ……さようなら、ブライア」


確実にブライアを仕留めようと振り下ろした剣は、ブライアに届くことはなかった。

代わりに、ある声が聞こえる。


「『対抗障壁』」


とんでもない殺意と悪意が篭った声だ。

流石のガルも危機を覚え、その場から大きく後ろに下がった。

表面上は冷静そのものだが、内心では焦りに焦っていた。


(やばいやばい……あれ、ブライアじゃないな)


ガルはすぐに理解するが、その正体が分からない。


(今のブライアの中に緑龍はいない……誰だ、他の緑龍か?いや、それは不可能な筈……分からない……)


ゆったりと動くブライア(?)に、ガルは違和感と危機感を覚える。

雰囲気自体が全くの別物だ、圧倒的にブライアより強いオーラを醸し出している。

ガルは、後から気づくことになる。

とんでもないヤツに、手を出してしまったと──



──帝宮にて

全員必死で戦っている。

誰かがサボっているなど、微塵も有り得ない。

クライアやクリーナは本気ではないが、被害を出来るだけ少なくするように立ち回り、そして被害が出来るだけ出ないようにセーブしながら必死で帝国を守っている。

ただ、どうしようもないほど──レジェンドは強かった。

自我を完全に失い、暴走するレジェンドに太刀打ち出来る術を持ち合わせていなかったのだ。

いや、一つだけある。

クライアの『無天無双』──あれは、究極の可能性を秘めた、現代にある最強の特異体質。

本気で発動させれば、『無天の一撃』という、一撃必殺──直撃すると、問答無用で確定の死だ。

避けることはほぼ不可能に近い。

レジェンドを殺しては駄目な為、クライアは『無天無双』を使えない。

『無天の一撃』を使えない理由はもう一つある。

『無天の一撃』を放った後からくる『無双状態』が問題なのだ。

『無双状態』は、相手の攻撃を受けず、相手の防御は無視する。

さらに『無天の一撃』程ではないにしろ、体を砕くなんて造作もない。

途轍もない可能性を含んだ、特異体質の中では最強になる。

いや、恩恵や加護、能力全てを含んでも最強格だ。

しかも、クライアには特別属性もある。

クライア単体の勢力でも、並の王国一つは一夜にして壊滅させることが出来る。

だからこそ、本気を出せばレジェンドを滅ぼしてしまう。

だが本気を出さねば、クライアやクリーナ達は死ぬ。

ガル──クライア達は正体を知らないが、長月が戦闘に参加していないのが唯一の救いだろう。

レジェンドを隷属化した長月だ、実力はレジェンドと同等、またはそれ以上だ。

その長月が戦闘に参加すれば、クライア達との勝負は既に決着が着く。

クライアが迷っていると──長月が、動いた。


「さて、そろそろね」


ガルの皮を被った長月は、指を鳴らし、姿を変える。

練り込まれた魔力を一気に解放し、長月の元の姿に変化する。

鮮やかで長い黒髪、桃色を主体とした袴。

この世界には有り得ないような服装で、ブライアが見たら一瞬で日本人だと言い張るだろう。

それに加えて……顔立ちも日本人そのものだ。

見慣れない顔に、レジェンドと戦っている最中だというのに、全員長月に釘付けになってしまっている。

長月は妖艶な笑みを浮かべる。


「さぁ……滅びなさい、長月特権『滅輪月』」


三日月を象った刃が、全員を目掛けて放たれる。

超広範囲攻撃に物凄い速度で迫ってくる、逃げることは不可能。

覚悟を決め、一か八か相殺する構えをとる。

──そこに割り込んでくる人影。

全員の前に立ち、三日月に斬りかかる。

その人間は、二つの剣を持っていた。

真っ赤に染まる赤い髪を揺らし、三日月を両断する。

その人間は──


「シュヴァルツ、参上!」


──シュヴァルツ・レッドドラゴンだ。

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