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第43話 奇跡の救援

──遡ること、数分前──

「さて、帝国に転移したが……まさか、これ程とはな……」


見上げると、渦は帝宮を中心にグルグルと回っている。

量も凄まじく、帝国全土が覆われていると言っても過言では無い。


「では帝宮に行くとするか」

「だな、俺は先に行く」


シャイフォンが目にも止まらぬ速さで全力疾走する。

他の者もシャイフォンに負けじと地を駆ける。

だが黒い渦は勢いを増す一方だ。

帝国全てを飲み込もうとするような動きを不思議に思うが、まずは原因の調査をする為に帝宮に向かう。

シャイフォン達が見た帝宮は、美しいと呼べる建物ではなかった。

噴水は黒に染まり、金と白を基調としたデザインは見る影もない。

帝国史上最も不可思議な異例だろう。

シャイフォンは誰よりも早く帝宮に入った。

もう既に気配で察知している。

ブライアが、この中にいることを。

そして、今危機に陥っていることを。

全力で駆ける。

数秒も経過しない内に、ブライアのいる最上階へ到着した。

扉や壁が破損している。

だがそんなことはシャイフォンにはどうでもいい。

壊れた壁越しにブライアを見つけた。

ブライアに槍が迫る。

そうはさせないと、過去一の速度でブライアに向かう。

拳を固め、力を込める。

ブライアの眼前に迫った黄金の槍を弾く。

すぐさま振り返り、無事か確認する。

ブライアは大きな声で、その名を呼んだ。


「──シャイフォン!」



──奇跡が起きた。

正真正銘の奇跡だ。

誰も助けに来るとは思っていなかった。

だから全てを諦めたのに……シャイフォンが駆けつけてくれた。

だがその涙もすぐ止まった。

シャイフォンの拳が、原型を留めていない。

見るも無残な姿に変貌している。


「シャイフォン、手が──」

「失せろ」


黒の槍が、シャイフォンの頭を目掛けて放たれた。

だがシャイフォンの頭は貫かれなかった。

何故なら──


「後ろをもっと警戒するように」


親父が、その槍を掴んでいた。

黒の槍は必死に抵抗するが、親父はそれを逃がしはしない。


「砕けろ」


その言葉で、黒の槍は粉々になった。

一瞬力を込めただけで、俺の命を脅かした槍は砕けていく。

その行動に、レジェンドは顔を顰める。

更に続々と、帝室に人が入ってきた。


「さて帝、この人数差、どうする?」


こちらは俺を含めて十人。

対するレジェンドは一人。

実力が開いていても、流石にこの差を埋めることは出来ないだろう。


「俺の邪魔をする者は全て、潰す」


黒の槍が復活する。

金の槍を左手に、黒の槍を右手に持った。

レジェンドは俺達に、二つの槍を突きつけた。


「『楯突く者全てを貫け』」


槍が伸び、俺達の心臓を貫こうとする。

だが親父が全員の前に立ち、槍を何度も何度も壊す。

その度に槍は再生し、我慢比べとなった。

今なら回復が出来る。


「シャイフォン、手を貸せ──『超速治癒(スピードヒーリング)』」


みるみるシャイフォンの拳が元に戻っていく。

さっきまでの光景が嘘みたいのようだ。

治癒魔法は本当に便利だと今更ながら実感する。

ついでに俺の腹も回復させた。

あの槍、切れ味は今まで見た武器の中で一番良い。

だが食らってみた感じ、特別な効果とかは特に無さそうだ。

レジェンドがあの武器に恩恵を乗せれるかどうかが鍵になってくる。

恩恵を乗せれる場合、物凄くピンチになるだろう。

俺には無効眼があるが、他の人達には無い。

どうしようか悩む。

けど親父凄いな。

レジェンドは極限に至っているのに、親父は一切能力も特異体質も使わずに槍を迎撃している。

だけど、レジェンドは本気じゃない。

レジェンドが本気になれば、今の親父を瞬殺出来る筈だ。

まだ本気を見せたくないのか、それとも本気をまだ出せないのかのどっちかだろう。

感覚的に新しい事件が始まっている。

どうにかして解決方法を出さないと。


「俺の前に立つ者は──死に至れ!」


槍の攻撃速度が早くなった。

流石に耐えきれないのか、親父も何かを使おうとしている。

それを察して、赤髪と黄髪の人が槍を打ち返す。

青髪と紫髪の人が魔法をレジェンドに放つ。

だがその魔法も槍に斬り裂かれた。

橙色の髪の人が前線に上がり、藍色の髪の人が後衛に入り魔法を乱射する。

金髪の少女は、こちらに向かってきた。


「あの状態なら、儂が参加せずとも十分は持つ。ほれ、立てるか?」


少女は、小さな手を差し出した。

見ただけで分かる。

そしてこの喋り方でもう確信に変わった。

校長だ。

まさか、校長も来るとは思わなかった。

現状をまだ把握しきっていないが、差し出された小さな手を取り、立ち上がる。


「さて、今の帝をどうやって鎮めようかのう……」


校長も頭を捻っている。

今までこんな事態が無かったのだろう。

逆に、こんなことが帝国で頻繁に起きていたら俺の命はいくつあっても足りない。

俺以上の人が七人いてようやくレジェンド一人を抑えれているのだ。

俺だけなら絶対に解決出来なかっただろう。


「ふむ……そろそろ前線が崩壊するな。儂も前線に上がる、見ておくならそこで見ておけばいい」

「俺も戦う!」

「……まあ、迷惑にならなければ良い。シャイフォンよ、任せたぞ」


俺も足手まといにならないようにしないと。

俺だって、レジェンドを元に戻したい。

行くぞ、頑張れ俺!


「レジェンド……俺が、絶対に助ける!」


時空刀を出す。

レジェンドには時空刀の効果はバレている。

だから今からの俺の役割は、全員のフォロー。

鞘を左手に、刀を右手に持つ。


「『時閃撃』」


鞘をクルクルと回しながら、レジェンドに攻撃を仕掛ける。

首を狙ったが、槍で見事に阻止された。

槍が自由自在に動いている。

まるで操作されずとも、自身の意思で動いているようだ。


「邪魔だ、消え去れ」


黒い槍が俺を襲う。

が、白の刀で別空間に槍攻撃を移動させる。

すると外から、大きな音がした。

ランダムに攻撃を移動させたから、味方に当たらなくて良かった。


「準備完了!」


親父の声がこの部屋中に響いた。

振り向くと、物凄い熱気が充満している。

親父の拳は炎に包まれ、辺りを溶かす程の熱量だ。

『太陽』と同等、またはそれ以上だろう。

あれがただの能力とか属性な筈が無いんだろうけど……。


「特別属性『灼熱』──やはりクライアを敵には回したくない」

「と、特別属性……?」

「なんだ、知らなかったのか?特別属性ってのは全属性に一つずつあって、どの属性も世界にたった一人いるんだ。その一人がクライアだな」


なんかもう驚かなくなってきた。

色々と周りに振り回されたり、自分でもよく分からない進化をしたりしている訳だ。

今更このようなことでいちいち驚いていたら今後どうなるか分からない。

親父はハチャメチャに強いし、あっても確かにおかしくないと思っておこう。


「『灼熱烈閃』──ッ!!」


真っ赤に燃える轟炎が、レジェンドを焼き尽くす勢いで放たれた。

これに耐えるのは、無効眼や地龍耐久を使わないと厳しそうだ。

対するレジェンドは──


「恩恵『炎属性関連無効』」


なんと、炎を無効化する手段を選んだ。

最初こそは全くと言っていい程効果が無かったが、徐々にレジェンドが顔を顰めていく。

やがて槍を振り回し、放たれる炎を斬っていく。

親父の猛攻が終わった頃には、レジェンドが持っていた二つの槍はドロドロに溶けていた。

原型すら残っていない。

あるのは何かの物体を溶かしたものだった。

レジェンドははっきりと親父を睨んだ。

対する親父は、ニヤリと口角を吊り上げる。

まるで作戦成功だと言わんばかりに。

俺のその解釈は間違っていなかった。

この隙に、俺と親父以外の全員がレジェンドを攻撃した。

魔法を撃ち、剣閃を放ち、拳で殴りかかる。

レジェンドは──その全てに反応した。

まずは魔法。

槍を即座に再生し、魔法全てを斬り払った。

次に剣閃。

魔法とは反対方向に襲来していたが、服に塵一つ付けずに全て回避した。

最後に拳。

殴りかかっていたのは橙色の髪の人だ。

物凄い速度で放たれた拳は、レジェンドに到達することは無かった。

レジェンドが橙色の髪の人に向けて槍撃を放つ。

間一髪で躱した為大事に至ることは無かったが、回避しなければ大怪我を負っていた。

褒めている場合じゃないとは思うが、流石はレジェンドだ。

とんでもないことを平然とやってのけた。

間違いなく、俺じゃあ到達出来ない場所にいる。

あれが、レジェンドの極限──!


「凄い、やっぱりレジェンドは強い」


呟きながら近づく。

右手に持っている刀をクルクルと回し、左手に持っている鞘を首に添えた。

『全知全能』──借りるぞ、オニシエント。


「さあレジェンド、今から俺が相手だ」

「何も出来なかったお前が、俺の相手?ハッ、笑わせてくれる。クライア・グリーンドラゴンの方がよっぽど相手になる」

「レジェンド、お前は俺のことを全くと言っていい程知らないんだな」

「──何?」


俺が今まで本気を出した相手はナスティーしかいない。

その一度だけだ。

そしてあれから何ヶ月か経った。

自分でも把握しきれていない所はあるが、知っている所は大いにある。

レジェンドに見せつけよう。

今出せる本気の俺を。


「借りるぞ──『召喚・五刀』」


オニシエントが持っていた残りの[五刀]を全て呼び寄せた。

時空刀を除いた四つの刀が俺の腰に出現する。

突然俺の中に声が響く。


《では[五刀]をお貸ししますね。使い方はご存知で?》

(『全知全能』使いながら戦うよ。オニシエントの知識借りるよ)

《ええご自由に。あなたの『全知全能』ですので》


懐かしい感覚だ。

こうやって喋りかけてきたのはシャイフォンの時振りだ。

っと、感傷に浸っている場合じゃないな。

レジェンドをさっさと元に戻さないと。


「さあレジェンド、本気で戦い合おう!」

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