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第4話 精神世界【1】

なんだ、ここ……

真っ黒で、何も見えない……

確か、シャイフォンってやつに連れてこられたんだよな?

なら、ここは俺の精神!?


と、思っていると──


「来たか、ブライア。さて、俺の力を使う契約をするために、戦おうか」


パッと明かりがつき、シャイフォンの姿が見えた。


「っ!てめぇ!なんでここに──っ!」


一瞬で距離詰めてきやがった!?

の、喉元に剣がっ……


「言っただろう?俺の力を使う契約のために戦いをしようと。契約しなければ、『緑龍』は力として成りたたないぞ」

「ぐ、ぐっ──ガッ!」


ギリギリ肩だった!

くそっ、剣に貫かれてる……

何か、この状況を、脱する方法は……

──ッ!『創成』!

よ、よし、取り敢えず武器だよな。

『武器創成・鉄剣』!

これで少しでも、ダメージを与える!


「うおらぁ!」

「チッ、離れるか」


くそ、避けられた。

だけど、肩に刺さってた剣は離してくれたな。

痛すぎだろこれは、次食らったらやばそうだな。

血は……流れてない?

もしかしてだけど、五感はあるけどそれ以外の体の機能はない感じか?

なるほど、仮想空間みたいなものか。

死んだらどうなるのだろうか……


「その顔、もう分かったようだな」

「ああ、だから恐れるものはない!」


とか言いながら怖いんだけどね。

意地張ってるのバレてないよな?

まあいっか。よし、授業で習ったことを活かす!


「初級雷魔法!『雷撃』!」


初級魔法じゃ届くとも思わないが、足止めにはなるはずだ!

続けて連撃をかます!


「初級炎魔法!『炎砲』!」


よし、これでどうだ!?


「お前の才能は、潜在能力だけなのだな。開花させることは出来ないのか?見ろ、これが魔法だ。『緑覇爆裂(グリーンノヴァ)』」


激突──爆発、煙が上がる。


な、何にも見えない。

突っ切ってくる可能性があるから剣は構えて……


「どうだ、攻撃はしないのか?」

「生憎、挑発には乗らない主義なんでね。」


よし、あれを使う。

集中しろ、意識を保て……

詠唱した方が安定するし、詠唱するか。

それを、あいつが許すかどうかだけどな。


「──雷よ、今こそ我の手元に落ち、我がものと成し、我の力へと還元し、その荒ぶりを我に与えよ。願わくば、我の声を聞き、力の全貌を明らかにし、その力を使い攻めの一手とし、我が敵を荒ぶる雷にて焼き貫きたまえ!『上級雷魔法・焼貫荒雷撃』!!」


──先程とは比べ物にならない程の雷撃。

閃光が走り、稲妻がシャイフォンを焼き貫く。


これで……どうだ!?

や、やべ、魔力使いすぎた……

あと残るは5000程度ってとこか。

案外、攻撃はしてこなかったな。

なら、無傷の可能性も……


「チッ、もうここまで上達していたのか。計算が狂ったな」


余裕で喋ってる、てことは……


「くそっ、まだ治んねえな」


うお、予想外だけど、ダメージを食らってる!

ここで畳み掛ける!


──だが、シャイフォンはそんな俺を裏腹に。


「いや、もう終わりだ」

「……いきなりどうした?怖気づいたか?」

「いや、お前がそこまで実力があるなら、俺の力も使いこなせるだろって話だ」


なるほど。

つまり、俺が上級雷魔法を打てたから、契約出来るぞって話か。

いいか、どうせ魔力切れになったら終わる運命だったし。

契約を済ませたら戦う理由も無くなる訳だし。

いや、これは実践経験としてかなり良かったな。

もしかしたらまた戦うかもしれないし、次は勝てるように特訓しておこう。


「よし、なら契約しよう」

「そうこなくてはな。よし、これで終わりだな」


ふぅ、思いの外上手くいったな。

で、なんだ?俺は紙にサインでもすればいいのか?


「契約証明書、とかはないの?」

「ん、何を言ってる?もう契約は済ませた」


……はぁ?

こいつが何言ってんだよ。


「いや、お前が『緑龍』を手に入れた時点で契約は完了しているぞ?」


……はぁ?

なら戦わなくて良かったじゃん!?


「な、なら……」

「いや、単純に潜在能力だけならピカイチなお前を、嘘をついてでも試しにきたのさ」


…………こいつマジか。

俺変に魔力使ったじゃねえか。

あーあ、貴重な魔力が……

ま、回復するんだし別にいいんだけどさ。

むしろ、これは良かったことだな。

俺が上級魔法打てるって分かったし、『創成』も使えたし。


「ま、いい経験になったよ。助かった」

「それならいい、経験は力になるからな」

「んじゃ、俺は帰る──ゴフッ!」

「何逃げようとしている、まだまだ夜は明けていないぞ」


いったた……まだ戦うのか!?

こいつの魔力量一体いくつだよ……


「しかもだ。お前、なぜ特異体質を使わなかった?」

「え?まあ使えること知らなかったし、仮に使えたとしても使い方分かんなかっただろ」

「なら、実践していくか?」

「実践は俺の魔力が持たない、出来るなら授業で」


正直、実践となれば魔力切れしてしまうからな。

俺は魔力量だけは一般と同じなのが救いだな。


「そうか、意外と少なかったんだな。残りは?」

「ざっと、5000程度ってとこか」

「ああ、それは無理だな。んじゃ、授業でもするか」

「お前出来んの?」

「それくらい出来るわ!」


ええ、本当かなぁ。

ま、丁寧に教えてくれたらそれでいいんだけどな。


「んじゃ、特異体質についてだが……お前のはかなり異端なものだ」

「えっと、どういうこと?」

「特異体質にはな、色んな種類があるんだ。特に強いとされているのが眼系と自由発動系だ。んで、お前は眼系を2つ持っている。正直、『創成』と合わせたら世界の武力バランスが壊れるだろうな」

「そ、そうなのか?あまり実感はないんだが……」

「そりゃそうだろ、授かってすぐなんだからな」


へー、そうなのか。

特訓頑張れば強くなれるのか?

まぁ強くなっても何になるんだって話なんだがな。


「んで、お前の特異体質なんだが、まあ、化け物級に強い。いや、強すぎる」


なんだその言い草……

まるで俺が化け物みたいな言い方じゃねえか。


──だが、次の言葉で全てが分かる。


「眼系にはな基本は、神眼六つ、魔眼六つあるんだが、それをお前は全て持っているんだ。しかもそれに加えて特別眼系最強の『無効眼』だ。それを全部使われてたら俺に勝ち目なんてないもんだ」


え?

いや、俺ってそんなに強かったのか?

まじで本当に実感湧かないんだけど。


「『神魔眼』──これは、全ての神眼、魔眼を統べる眼系特異体質だ。同じ眼系特異体質者なら圧倒的にお前が有利だろう。

『無効眼』──これは1つだけという束縛はあるが、それでもかなり有利に戦闘を進めることができる唯一無二の特異体質だろう。

そうだな、折角だし続けて能力も説明しよう。

『創成』──あらゆるものを創り出し、戦闘を圧倒的優位に進め、尚且つ[世界]も展開出来るため、最強能力の1つだな。

『紅蓮』──すまんが、これは俺が勝手に創らせて貰った。以前仕えていた主人の能力でな。これはな、テル・ラ・グーニャが強い。自由自在に変形出来る武器だと思っておけばいい。

『緑龍』──俺の中にある魔力を貰ったり預けたり、俺が記憶して魂に刻まれている魔法や俺自体を武装化できるかなり使い勝手がいい能力だ。ただし、グリーンドラゴン家の奴らには全く効かないと思っておけ。同じ能力を持っていれば無効化出来たり相殺出来たりするからな。

『記憶』──これは別に必要な能力では無かったから消した。使い道がないって訳でもないが、もう使うことはないだろう」


『紅蓮』と『記憶』はお前のせいだったのか。

だけど、消す必要あったのか?

聞いてみるか。


「はい先生!なぜ『記憶』を消す必要があったんですか?」

「そうだな、説明しようか。能力と特異体質は肉体と魂に依存しているんだ。お前の歳でそんなに持っていると肉体と魂が壊れてしまう。だから消さないといけないんだ。ちなみに、『紅蓮』を作れる余裕はあったからな。今のお前の容量は能力一個作ったらもうやめておけ」


なるほど。

つまり、内部ストレージとSDカードみたいな関係か。

コンピュータか、触りたいなぁ。

今世では一度も見てないし触ってもないからな。

それっぽいのもあるんだろうか。


「まあ、『創成』の容量が大きすぎるんだ。最強能力の1つだからって理由もあるがな」


へえー、能力にも容量があるのか。

まあそれには納得だな。


「他に聞きたいこととかはあるか?」

「んー、特に無いかな。助かった」

「それは良かった。では、これから宜しく頼む」

「ああ!お互い助け合いってことだな!」


んじゃ、帰るか。

そろそろ朝だろうし、帰っても文句はないだろ。

っと、忘れてた。


「なあ、お前って強いの?」


単純な質問が気になった。

だってあの『緑武の舞』で来たんだから、聞いておかないと。


「──強い。それ以上は聞くな」


何か、反射的に、拒絶された。

多分だけど、何かあったのか。


「分かった、ありがとう」


さて、そろそろ起きるか。


──ブライアが去った後

シャイフォンは1人で考えていた。

前に仕えていた、主人のことを。

そして、さっきのブライアの質問を。


「何故、ブライアがアイツと同じ質問したんだろうな」


以前の主人の同じ質問が映像化されながら頭に浮かぶ。


『なあなあ、お前って強いのか?なあなあ!』


以前の、主人、『2代目グリーンドラゴン』家当主のことを。

自分が殺した(・・・・・・)、主人のことを。

分かっている、戻らないことも分かっている。

だけど、彼とブライアが重なっている。

シャイフォンはもう、ブライアの秘密を知っている。

ブライアは、異世界転生したと。

だが、黙っている。

なぜなら、そうするべきだから(・・・・・・・・・)だ。

純粋な子供ではないことももう知っている。

だけど、仕えたくなったのだ。

あの『緑武の舞』を見て。

重なった、以前の主人のような舞を。

素晴らしい、ポテンシャルの塊のようなブライアを。

心の美しさと、緑の闘志の濃さ。

全てにおいて完璧で一流であるブライアに魅入ったのだ。

いつか、人類の頂点に立つ日もあるだろう。

だから、魅入ったのだ。

そんなことが起こりうる未来が、想像出来るから。

そんなことが本当に、起きて欲しいから。


そして、あの時のやり取りを思い出す。


──約1450年前

「カーラ、俺はお前に仕えるよ」

「ん?誰?」

「緑龍のシャイフォンだ。宜しく」

「シャイフォンか?宜しくな!」


固い握手を交わし、友情が芽生えた時だった。

お互いがお互いを考え、支え、生きていくことになる握手だった。

それからも、シャイフォンとカーラはずっと一緒にいた。

だが──幸せは一瞬に壊れるものである。


「お、おい?カーラ?」

「──なあ、シャイフォン。俺ってさ、どうしたらいいんだろうな」

「は?な、何を言って……」

「考えたのさ、俺なりに。こんな荒れ狂った世界を正す方法をさ」


その目は狂気に満ちていて、後ろには爆炎が燃え盛っている。

これはシャイフォンとしても見逃されるものでも無かった。

だが──カーラは止まらない。


「この世界ごと壊せばいいのさ。そうすれば、この世界ごとなくなって争いも悲壮も失望も怨嗟も絶望も後悔もなくなるだろ?ほら、俺は正しいことをするんだ。だからさ、俺を手伝ってくれ、シャイフォン」


この手を取ればどうなるのだろうか。

カーラは本気で言っている。

手を取れば、自分も、カーラもグリーンドラゴン家の汚点として、いやそれ以上の存在として歴史からなくなり、徐々に壊れていくだろう。

シャイフォンは、それが許せなかった。


「なんで、こんなことをしたんだ?」

「さあな、俺でも分かってない。そろそろ父さんが来る頃だぞ?いいのか、俺を止めなくて」


まるで、悪役は俺だけで十分とばかりに言っているよう。

さっきの勧誘とは発言が矛盾している。

だが、それよりも。

何故こんなことをしたか分かっていないカーラをシャイフォンは絶対に許せなかった。

シャイフォンは、大声に出して、叫んだ。


「カーラ!こんなことをするお前を俺は絶対に許さない!俺は、お前を殺す!」


それに対抗するが如く、カーラは静かに叫んだ。


「お前は、この争いが好きなのか?嫌だろう?無意味に争って、泣いて、喚いて、殺して、殺されて、俺も俺の理想の為に、お前を殺す」


声を大にして、ニ人が相対する。

名乗りを上げ、戦う意志を見せる。


「グリーンドラゴン家二代目当主、カーラ・グリーンドラゴン。お前を殺し、目的を遂行する」

「緑龍階級『緑龍王守護二龍』シャイフォン!お前を殺し、世界を闇から救い出す!」


剣閃が辺りに響き、心が灼けるような痛みが2人を襲う。

お互い精神攻撃をしているのだ。

これは我慢比べでもある。

殺すか、殺されるか。

生きるか、死ぬか。

一瞬でも気を抜いたら命を刈り取られる。

2人が剣に力を込め、2人が距離を取る。

手をかざし、同じ魔法を駆使する。


「「『緑覇紅天裂焼牙煉』!!」」


強大な威力の魔法が激突し、辺りがまた爆炎で燃え尽くされる。

そして、煙が晴れる前にまた剣閃が響く。

緑の剣と紅の剣が交差し、演舞のようにも見える。

ただし、それは死の演舞だが。

拮抗した実力かと思われたが──


「グファ、ゲホッゲホッ!」


カーラが吐血した。

精神攻撃が効いたのだ。


(お、おい?カーラってこんなにも弱かったか?)


そう、シャイフォンからすれば、カーラは弱すぎたのだ。

だが、その理由が今分かる。


「──なあ、シャイフォン、グリーンドラゴンはな、ある【呪縛】があるんだ……」


いきなり明かされる重大な秘密。

そんなことにも構わず、シャイフォンが剣を向ける。


「カーラ、何か言い残すことはあるか?」

「……そうだな、こう残しておいてくれ」


カーラは、シャイフォンに目を向けずに下を向いたまま話を続ける。


「俺達には、魔王のクソ野郎の【呪縛】が当主の子孫に受け継がれる。その【呪縛】はな、『破壊衝動』だ。そして、父さん個人の【呪縛】もある。こう伝えておけ。『初代グリーンドラゴン家当主は不死の呪縛を患い、永遠に生き続ける』とな。ただし、それは当代の当主だけに伝えろ」

「ああ、分かった。──カーラ、永遠に、おわ、お別れ……うぐっ、え、ぐっ」

「泣くなシャイフォン。俺は負けたんだ。殺せ。勝者たるお前が泣いてどうする。さあ、早く殺せ」

「カ、カーラ、おま、お前を、わす、忘れないから、な」

「──ああ、俺とお前は、永遠に友達だ」


にっこり微笑んで、そう言ったカーラ。

そして──シャイフォンは、剣を振るう。


これにて、災厄は去ったのだ。




──現在、朝

うーっん、おはよう、いい天気だな。

やっぱり魔力はあんまり回復していないな。

ま、気長に待っていよう。


「ブライアー、ちょっと来てくれないか」


おっと、親父が呼んでいるな。

多分、一階に居るな。

寝起きだし、ちょっと整えてから行くか。


──一階、食堂にて

「で、どうしたんですか父さん」

「まあ、座ってくれ。少し大事な話だ」


ええ、何か大事な話か。

俺何かしたっけ?

下級貴族ボコった記憶しかないんだよな。

あれは向こうが喧嘩売ってきたんだけどな。


「ああ、そんなに堅苦しくするな。すぐ終わる」

「そうですか。では、何の話で?」

「……お前の、学校の話だ」


俺は、学校へと通うことになったのである。

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