第38話 冒険者らしい仕事
ごめんなさいギリギリ間に合いませんでした……
今度からは気をつけます
レジェンドの特訓は凄まじい。
どこからでも攻撃が飛んでくる。
主に槍、何本あるのかと思う程だ。
それに、レジェンド自身の実力は本当に凄い。
仮にもレジェンドは人間だ。
やはり何千年も生きてきた人間はレベルが違う。
そして、厄介なのが恩恵だ。
なんと、レジェンドは全ての恩恵が使える。
通りで恩恵の数が多いと思った訳だ。
俺には『恩恵無効』があるが、それをすると槍が俺を襲う。
逃げ道はないから正面突破しようとしても、レジェンドは武術もお手の物だ。
しかも、レジェンドは全力を出していない。
これでも軽く遊んでいる程度だそうだ。
勝てる筈がない。
俺は割と本気な筈なのに、これじゃあまるで力が付いた気がしない。
だから今、俺は冒険者の仕事をしに来た。
そもそも冒険者の経験をしろと言われた筈なのに、いつの間にか帝国の王様と仲良くなっているんだ。
これは流石に隠しておかないとな。
こんなこと話したら失神する人がいるだろう。
っていうか、そもそも皆大丈夫かな。
かなりの生徒が行方不明になったりするって聞いた気がする。
まあ皆の安全を祈っておこう。
「あ……どうされましたか?」
やっぱり帝都の冒険者協会は居づらいな。
そりゃ力ずくで脱出したんだ、当たり前か。
冒険者軍の人達がいないだけまだマシと思えばいい。
そもそも冒険者階級上げないといけないから結局はここに来ないといけないんだったな。
時間の問題だった訳だ。
「あ、この依頼お願いします」
「もう少し上の依頼でもいいんですよ」
「いや、大丈夫です。今日はこの位から進めたいので」
「そうですか、分かりました。場所はここになります」
まだ冒険者階級Ⅰだし、さっさと上げないとな。
依頼はいつも通りの討伐系だ。
討伐系が一番楽だと俺は思うが、他の依頼と比べたらあまり人気が無いらしい。
討伐系には死と隣り合わせだからそれもそうか。
冒険者なんだから冒険すればいいのにとは思うけどな。
受ける依頼なんて自由だから何でもいいけど。
「さて……まずは一番最初の依頼だし、軽くウォーミングアップだな」
最初の依頼はゴブリンの殲滅。
ゴブリンとスライムは人間と一番身近な魔物故に、荒らされる頻度がかなり多い。
特に強い訳でもないけど、何しろ数が多いのだ。
自分達の平和の為にどちらも必死だが、仕方ないとは言えない。
人間だって必死なのだ。
さっさと終わらせて次の依頼に行くか。
「……数、多くないか」
パッと見、30は超えている。
森林の中で宴でも開いているのだろうか。
真ん中には大きな何かの肉があった。
どうせ殲滅するから何の肉でも関係無い。
俺の場所はバレていない、少し数を減らすか。
「狙いを定めて──『属性魔法・散弾光線』」
銃弾の様な光線を何発か発射する。
空中で散り散りになり、ゴブリンを貫く。
数は大きく減らせた、後は全て葬るだけだ。
「姿を晒すのもアレだし、潜伏したまま狙い撃ちするか──『乱・太陽』」
何条もの閃光が、ゴブリンを焼き尽くす。
全てのゴブリンは地に伏し、動かなくなった。
すると、木に火が燃え移っていた。
消化しなくてもいいか、と思いその場から転移した。
冒険者協会に転移した。
ウォーミングアップは終わったし、少し上の依頼に挑戦するのもありだな。
でも、舐めてかからないようにしないと。
こういう時程足元がすくわれやすい。
「この依頼お願いします」
「分かりました、場所はここになります」
協会の人といつも通りの会話をして転移する。
転移した先は門があった。
迷都では無い筈だ。
「なんだここ……」
何か怪しい雰囲気だ。
でも事件では無いのは確実だ。
事件は少し間を空けて起きるのは分かっている。
こうやって立て続けに起きるのは有り得ない筈だ。
すると、門が黒く輝いた。
思わず目を瞑ってしまった。
その輝きは一瞬で収まり、何かが現れた。
その容姿は全体は黒く、捻れた角が頭に生えている。
翼を持ち、目は赤い。
「まさか──悪魔!?」
門を見ると、ヒビが入っていた。
悪魔界門だったとは思わなかった。
だが、相手は一体。
何とか討伐は出来そうだ。
「悪魔との初戦闘か」
悪魔は強い。
下位悪魔でも、上位の魔物と同等レベル。
舐めてかかると、本当に殺される。
「さて……早く終わらせれるようにしないと」
その言葉を発した瞬間、悪魔の鋭い爪が俺の心臓を狙って伸びた。
間一髪で躱すが、もう片方の手からも爪が伸びる。
致命傷は避けれたが、腕に傷が入った。
とんでもない速度だが、レジェンドとの特訓で見慣れた。
避けれなかったのは少し悔しいが、仕方ない。
悪魔は更に爪を伸ばしてきた。
俺を貫こうとするが、全て避ける。
腹が立ったのか、悪魔は高速飛行をして突進してきた。
迎え撃とうと、拳に力を込める。
長く鋭い爪で引っ掻こうとした瞬間、悪魔の顔面にパンチを入れる。
かなり力を込めたからか、かなりの勢いで吹き飛んだ。
だが悪魔はこれでやられる筈が無い。
「どうした、かかってこいよ」
挑発すると、悪魔は怒って俺を睨みつけた。
余裕を見せたが、実際は余裕なんて一切無い。
だが弱気になってはいけない。
強気に振る舞うことで、相手を焦らせる。
案の定この悪魔は引っかかっている。
俺を殺そうと必死になって、更に攻撃を重ねてきた。
だが悪魔だ、作戦が成功したからといって舐めてはいけない。
悪魔に限らず、情報が無い相手と戦う時は警戒して戦わなければならない。
いくら俺が強くなっても、初見の技に何も対応出来なければ死んでしまう。
命の奪い合いは、常に自身の力と情報が鍵を握る。
「さて、そろそろ終わらせるか」
この悪魔の情報は、他の悪魔と戦う時にも有効活用出来そうだ。
それにしても、まさか悪魔とは戦うと思っていなかった。
今度からは依頼をちゃんと確認しないと。
この悪魔がまだ弱い方で助かった。
上位悪魔とか出てきたら本当に死んでいたかもしれない。
第三の事件と同じ羽目になるのはもう懲り懲りだ。
「『戦火暴炎』」
悪魔に向けて巨大な炎を放った。
悪魔に着弾すると、大きな爆炎が起こった。
あの中ではもう悪魔は生きていないだろう。
だが悪魔がいるかどうかも確認しないと、民間人に被害が出てしまうから、煙が晴れるまで待つ。
やはり悪魔は塵も残らず消え去っていた。
ついでに、悪魔界門も破壊しておく。
「『戦火暴炎』」
悪魔界門が大きな音を立てて崩れ去った。
少し音が大きすぎた気がするが、仕方ない。
炎属性は派手なのが多いから、今度からは別の属性使うか。
派手なの程使っていると楽しいんだけどな。
「さて、協会に報告してからレジェンドのとこに帰るか」
冒険者協会に転移した。
やはり転移魔法は楽だ、どこにでも転移出来る。
よくよく考えると、転移魔法は何の属性に含まれるんだろうか。
考えたこと無かったな。
やはり光に入るのかな。
何も考えずに使っていたが、これくらいは気にするべきだろう。
また今度調べておくか。
「依頼終わらせてきました」
「はい、この依頼は……ちょっと冒険者カードをお貸し頂けますか?」
「あ、はい」
「少し確認するので、少々お待ち下さい」
階級アップかな。
やっと上がるのか、今思えばかなり波乱だった数ヶ月だ。
これでようやくⅡなる筈だ。
「確認しました、階級がⅣまで上がります」
……ちょっと待て、今Ⅳって言わなかったか?
上がりすぎじゃないか?
「それで合ってるんですか?」
「はい、確認しましたが階級Ⅳで間違いないです。本当ならもう少し上がれますが、依頼数が少ないのでこの位になりますが、不満でしたか?」
「いやそうじゃなくて、上がり過ぎじゃないですか?」
「いえ、この位が妥当でしょう」
マジか、飛び級なんてあるのか。
ん?待てよ、もう少し上がれるってことは、依頼をこなしていけばどんどん上がれるということだよな。
じゃあ明日は何回も依頼をこなそう!
これでⅥ位まで上がれたらいいな。
よし、明日は頑張ろう。
冒険者階級を上げれば上げる程成績も良くなるそうだし、出来ればもっと上げたい。
「ありがとうございます」
「いえ、もっと頑張って下さいね。あなたならもっと上の階級になれる筈なので」
「その言葉に答えられるよう、頑張ります」
さて、そろそろ声を掛けるか。
「あなた、気づいていますよ」
俺は冒険者協会にいる間はずっと視線を感じていた。
その視線の正体は分からない。
後ろを振り向き、俺に視線を浴びせていたのは──
「ティルさん、あなたでしたか」
冒険者軍軍団長、ティル。
俺が迷わず『断罪』を使ったあの時の光景と記憶が蘇る。
だが、今のティルは前とは全然違う。
目には酷いくまが出来ていて、髪はボサボサ。
服も所々が破れている。
いかにも戦っていましたと言っている様なものだ。
俺がいなくなってから、冒険者軍は壊滅したそうだ。
レジェンド直々にその命令を下して、解散したらしい。
その時の光景は地獄だったそうだ。
特にティルが酷く、周りの冒険者を蹴散らして暴れていたそう。
冒険者が監禁されているのに、何故そこまで固執するんだとは思うが、そんなの俺の知ったことじゃない。
「お前のせいで……俺の生き甲斐が無くなったじゃないか……それを気にせずお前はここにノコノコやってきやがって……」
口調がだいぶ荒々しくなった。
それに、一人称が僕から俺に変わっている。
怒りを抑えている様子だが、今にも噴火しそうだ。
俺は何も喋らない方が良いだろう。
「冒険者軍……たった一つの俺の希望だったのに……英雄になれたかもしれないのに……お前の……お前のせいで……」
拳をギュッと握り締めた。
俺は何も言えない。
ただ俺の自由の為にしたことだ。
お前らで勝手にやってろって話なのに。
それにちゃんと説明すれば俺だって断っていた。
いくら機密事項とはいえ、説明くらいはして欲しい。
今のこいつに関わるとろくでもないことになりそうだ。
通り過ぎるしかない。
声を掛けたのが間違いだった。
「お前……逃げるのか……」
何も言わない。
何を言ったって今のティルには無駄だ。
それに、面倒事を起こしたくない。
「お前が壊したのに……何も言わないのかァ!」
ティルが叫んだ。
それでも、無視するしかない。
今のティルとは関わりたくない。
「そうか……ならお前は俺の前から消えろ」
剣を抜く音がした。
振り向き、剣を受け止める。
この行動で、俺は怒った。
お前がやる気なら、徹底的にやってやるよ。
あの時のは比にならないレベルで叩きのめす。




