第37話 睦月
少し投稿遅れましたごめんなさい!
五階層に到着した。
どの階層よりも大きな扉だ。
押そうとすると、やはり簡単に押せる扉で、他とは変わらなかった。
やはりこの階層で最後のようだ。
最後は火山で、まさに今噴火している状態。
だがこちらに被害は全く無い。
近くで噴火しているのに、何故か俺達に火山灰や溶岩がこない。
前を見ると、一体のドラゴンがこちらに向かって飛んできた。
赤い鱗で覆われ、勇ましいドラゴンだ。
着地し、雄叫びを上げる。
そして俺達を見て、その大きな手を振り上げる。
銀の鋭い爪が三本、鈍く光った。
ヤバいと思い、その場から離れる。
すると、物凄いスピードで手が振り下ろされた。
爪が地面に食い込み、周囲の地面にはヒビが入っている。
威力も桁違いのようだ。
さっきの魔物とは比べ物にならない。
爪を地面から引き抜くと、俺に向けて翼で竜巻を起こした。
更に畳み掛けるように、上空に飛び、上から強風と火を吹かせた。
魔法ではない、ドラゴン種族特有の能力だ。
前からは竜巻、上からは広範囲に炎風。
避ける余裕はこの空間には無い、何とか相殺するしかない。
「使ってみるか──『並列連立』」
『創成』はここでは見せたくない。
レジェンドに見られると何を言われるか分かったもんじゃない。
いや、もう見られているかもしれないが。
と思っていると、俺の目に火花が見えた。
よし、これにしよう。
「竜巻、炎風を火花に変換。特性を受け継ぐことはしない」
すると、小さな火花がパチパチと弾けた。
熱を感じることも無く、俺はあの状態から生き延びた。
本当に死ぬかと思った。
ドラゴンが驚いた表情を隠していない。
いや、隠しきれないのだろう。
一人仕留めたと思えば、生き残っているのだからそりゃそうだろう。
「隙を作ったのは褒めよう。後は任せろ」
と言い、レジェンドはドラゴンに向けて走っていった。
大きくジャンプをして、レジェンドはドラゴンと同じ高さで見つめ合う。
そのまま上空で留まった。
飛行の恩恵を使ったのだろう。
ドラゴンは鋭い爪で攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃を全て難なくレジェンドは躱す。
ドラゴンは無駄だと判断したのか、別の攻撃をする。
翼で竜巻を起こし、火を吹く。
すると、炎の竜巻が起こった。
それが四つ、レジェンドを囲うように配置される。
対してレジェンドは真顔のまま。
何か策があるのだろうか。
ドラゴンが雄叫びを上げると、炎の竜巻がレジェンドを襲う。
ドラゴンは今度こそ勝ち誇った顔で、レジェンドを見つめた。
レジェンドは、槍を横に振るった。
それだけで、炎の竜巻全てが消え去った。
ドラゴンは何が起こったのか分かっていない。
レジェンドが槍を縦に振るうと、無数の傷がドラゴンの身体中についた。
致命傷なのは間違いない。
ドラゴンは地に落ちて、絶命した。
レジェンドもゆっくり地上に降りてくる。
「これで全階層攻略したはずだ、出てこい」
レジェンドがそう言うと、迷彩ローブが突然現れた。
顔はフードを被っているから見えない。
「……座れ、話そう」
ノイズがかかった声で喋った。
少し聞き取りづらいが、何とか聞き取るしかない。
椅子と机が出現し、迷彩ローブは座る。
レジェンドも何の躊躇いなく座った。
俺もレジェンドに続いて、木製の椅子に座る。
「……俺の名は睦月と呼んでくれ」
やはりノイズがかかっているが、睦月、それだけははっきり聞き取れた。
警戒しないといけない。
ガルとはおそらく仲間だろう。
「ブライア・グリーンドラゴン、お前のことは如月から聞いている」
「……やっぱり仲間か」
「睦月と聞いた時点で、お前はもう分かりきっていただろう」
それもそうだ。
如月と睦月が何の関係も無いなんてことは有り得ない。
何か情報は聞き出せないのか。
「安心しろ、俺は組織に完全な忠誠を誓ってはいない。むしろ、お前達の味方だ」
「本当か?情報を渡してくれるか?」
「ああ、バレない程度にな。まずは何が欲しい?」
「お前らは睦月から師走までいるのか?」
「ああ、そうだ。全員強いが、神無月や霜月、師走は別格だ、俺達じゃ相手にならない」
よし、ここで情報が入るのは大きい。
ガルのことも探れるし、ここはバンバン質問していかないと。
「全員の能力とかは分かるか?」
「すまない、それは知らない。俺達は基本的に顔を合わせないから聞く機会が無いんだ」
「じゃあ、お前は一人で情報を渡しにきたのか?」
「いいや、副団長様からの命令だ」
副団長も組織に忠誠を誓っていないのか?
重要な立場にいるのに、そんなことをするのか。
信用出来るかと言われたら微妙だな。
「副団長が言うには、俺達配下には裏切れないように団長から改造が施されているようだ。俺は少しの間解除することに成功した」
「だから俺達に情報を渡しにきたのか」
「ああ、俺は組織の内情は分からないが、副団長様を信用してお前達のところに来た」
副団長は良い人なのかな。
それにしても、改造を施すって相当な技量がないと無理なはずだ。
団長だから強いのは間違いないけど、実際に戦ってみないと分からないか。
ガルであれだけ強かったんだし、団長とガルを比べるなんて参考にもならないだろう。
「聞きたいことはもう終わったか?」
「俺はもう大丈夫だ。レジェンドは何かあるか?」
「いいや、大丈夫だ。帰ろうか」
「転移しよう、捕まれ」
転移させてくれるのか、親切だな。
アジトとかに連れて行かれないよな。
裏切られたりしないよな。
今思い出したけど、そういえばこいつ敵だわ。
「行くぞ」
待てと言う暇なく、転移させられた。
転移した先は、迷都だった。
安心した、こいつは信用出来そうだ。
「じゃあ俺は帰る。気をつけて」
「ああ、ありがとうな」
睦月が転移していった。
やはりあの迷彩ローブは謎だらけだ。
それよりも、睦月が強いって言った神無月、霜月、師走には遭遇しないようにだな。
順番通りに序列が決まっているなら、睦月が最弱で師走が最強なのか?
それも聞いておきたかったが、まあいいか。
聞かなかった俺が悪い。
「これで四つ目の事件達成かな」
「おそらくそうだろう」
「じゃ、あと三つだな。いつ頃にくるか分からないし、いつでも戦えるようにしとかないとな」
「そうだ、お前に話があったんだ」
「なんだ?」
「大体二年後か、全ての国で戦いの頂点を決める全国総合大会があるんだが、出場するか?」
全ての国で、か。
今三年だし、二年後は五年生か。
それまでに強くなれるかだな。
あと三回事件もあるし、二年でも全然強くなれそうだな。
「出場する。レジェンドは出るのか?」
「各国国王は出場禁止だ、それに俺が出場すると対等に戦える者は極わずかだろうに」
「それはそうだな」
そういえば、親父とも戦えるのか。
二年で仕上げて、俺の特訓の成果を見せる。
前は一瞬で倒されたからな、もっと強くならないと。
『無天無双』の対策もしないとな。
「かなりやる気だな、そんなに強くなりたいのか」
「ああ、強くならないといけないんだ」
「そうか、まあ楽しみにしているぞ」
全国総合大会か。
成長したシュヴァルツとかとも戦えるし、楽しみだ。
特に年齢制限無さそうだし、ファルド先輩やネル先輩も出場して欲しいな。
「前回の大会情報を教えようか?」
「ああ、教えてくれ」
「優勝者はクライア・グリーンドラゴンだ。ここは予想通りだろう。注目になったのはイラン・リーバルブ、ベル・デフレーション、あとは八魔導士や八剣士、八武闘士だな。今回は中々荒れそうな大会になりそうだから、俺の忠告で一番聞いておく必要があるのはクライア・グリーンドラゴンだな」
「父さんはどのような技を使うんだ?」
「クライアは確か『鋼鉄』や『灼熱』、それに『緑龍』ぐらいだったな。あいつは能力こそ普通だが、技量が半端じゃない。あれは通常の人間が到達出来る境地だとは思わないな」
そうなのか。
てことは前回の大会で『無天無双』を一切使わずに優勝したってことになるよな。
改めて凄いと思う。
「今のお前だと無理だが、特訓して強くなったお前なら対等に渡り合えるだろう。だがあれを超えるのは生半可な特訓じゃ無理だ、本気で取り組まないと一瞬でやられる」
やっぱりそうだよな。
正直、親父は強すぎるから二年じゃ足りないと思う。
レジェンドに特訓つけてもらうしかないか。
「俺が気になったのは他にもいてな、イラン・リーバルブとベル・デフレーションだな」
「聞いたことある気がするけど忘れたな……」
「イランは八剣士の一位、ベルは八魔導士の一位だな。かなり強かったぞ、見ていて面白い」
「どんな技を使うんだ?」
「イランは六天剣術だ。炎、水、風、雷、氷、岩の全ての剣術を綺麗に操っていた。ベルは地獄魔法だな。世界を展開するように、地獄を見せつけてくる。地獄の影響力は凄まじい」
「俺で勝てるのか?」
「クライアに比べたら無理な相手ではない。望みはまだあるだろうな」
親父よりかはマシなのか。
でも強いのは間違いないと思うし、頑張らないとな。
「じゃあさっさと特訓するぞ」
「ああ、その前に帰らないとな」
「そうだったな。じゃあ転移しようか」
早く事件三回達成させないとな。




