第3話 パーティーと喧嘩
よし、寄り道寄り道!
さてさて、何を買いに行こうかな!
「ブライア、何を買いたい?この際、何でもいいぞ」
「うーん、そうですね……あ、カトラスティーとりあえず買っときましょう」
「好きだな、カトラスティー」
「あれ、世界で一番美味しい飲み物ですから!」
カトラスティーは、ジャスミンティーみたいな香りで、さっぱりした味わいだから美味しいんだよ。
ま、そんなこと言う親父も好きなくせに。
「……待て、ブライア」
「はい?どうかしましたか?」
顔、青ざめてるな。
財布忘れたんじゃないだろうな。
それか……落としたとか。
それ、まじで一大事だから急がないといけないぞ。
「父さん……すっごいことやらかした」
「……は?」
──グリーンドラゴン邸にて
「エルナ!エルナはどこだ!?」
「ちょっと、うるさいですよ父さん!一体何をしたんですか!?」
ちょ、速いって。追いつけないんだけど。
なんでそんなに母さん呼んでるんだ?
「ちょっと、うるさいですよ。今、飾り付けの途中……」
「やらかした!!」
「何をしたんですか?」
やっと追いついた……
この体だと走るの遅いな。
いや、前世が早すぎたのか?
んで、親父は何をやらかしたんだ?
「……ブライアに『緑武の舞』、教えるの忘れてた!!」
「…………はぁぁぁ!?」
親父は、物凄い音を立てた母さんのビンタに涙目になっていた──
──五分後
「あなた、何してるんですか!あれだけ、言ったでしょ!?なんですぐ忘れるの!しかも、なんでそれを当日に言うの!?馬鹿なんじゃないかしら!」
すっげぇ怒ってる。
まじで、今分かるくらいに言葉に魔力がこもってる。
使用人達もそっちに視線向けてないもん。
親父、正座させられてるし。
何やらかしたが知らんが、ドンマイ。
「あ、あの……父様は一体何を……」
そこにいた使用人に聞いてみよう。
それによって、親父への態度を変える!
「あ、えっと……ブライア様は知らないと思いますが、グリーンドラゴン家には、十歳の誕生日の子は、『緑武の舞』、というのをやるのです。ある一種の儀式のようなものですかね。」
「それを、父様は僕に教えるのを忘れてた、と?」
「はい、そうですね。普通は覚えるのに一週間程度かかるものなんですが、あと数時間ではちょっと……」
「なるほど、父さん、最低ですね!」
わざと、大きい声で言ってやった!
そんなの忘れることあるか!?
しかも、大事なんだろ?
流石にやばいだろ、母さんが怒るのにも納得しかしないわ。
絶対親父酔っていただろ。
自分の言った言葉には責任を持って欲しいものだ。
「ひっ、酷い!ブライアまで!」
「あなたはこっちを向く!ったく、あなたって人はこうだから!あなたは私の実験の材料として使わせて貰います!良いですね!?」
「いや、その、それは……」
「良いですね!?」
「……はい、あまり痛くしないでね」
「それは無理な相談とだけ言っておきましょう!」
絶望した親父の顔、可哀想だな……
ま、元はといえば親父が悪い。
こればっかりは仕方ない、仕方ないんだが……
「父さん、どうするつもりなんですか?」
儀式なら絶対にやらないといけないはずだ。
あと数時間、これをどうするか……
「ちょっと、ブライア、こっち来てくれ」
親父が呼んだな。
行くしかない、どうするのか聞かないと。
「はいはい、で、どうするんですか?」
「……『創成』で何とか出来ないか?」
「は?一体それはどういう……」
「『緑武の舞』ってのは、緑龍基礎武術とも言われているんだが、今言っている『緑武の舞』は自分に緑龍を顕現させるための儀式だ。その舞を見ている緑龍の中から誰か行くんだ。強いやつほど強い緑龍が、弱いやつほど弱い緑龍が来る。期限は1週間。だが、それ以内でもいい。正直に言おう。『創成』でこの窮地を脱する能力を創ってみてくれ!」
いや、なんとも無茶な。
どう考えても難しいだろ。
初っ端の能力使用がこれって恥だな。
だが、何事にも挑戦、やってみるか。
「分かりました。やってみましょう。」
「じゃあ、頼むぞ!」
て言っても、どうやって使うんだ?
適当にやってればいけんのか?
(能力、『創成』。何を創ればいいんだ……なら、『記憶』とかか?一度やってみようか。『能力創成・記憶』!)
で、出来たのか?
全く分からないが、出来たと信じるか。
「と、とりあえずはどうですか?」
「よし、じゃあ教えてみようか。こっちだ。」
──武闘の間
「ここだ。父さんがやるから、しっかり見ておくんだぞ」
「はい」
なら、能力『記憶』発動!
何か技名でも出せばいいのか?
んー、いいのが思いつかない……
ま、なんでもいっか。魔力使ってぶっ倒れさえしなければ。
『記憶脳容量増加』
た、倒れてないな。
よし、記憶力が良くなったはずだ!
見るだけで大丈夫……なはず。
「しっかり、見ておくんだぞ」
始まった……
素人の俺でも分かるくらい、洗礼されている綺麗な舞だ。
これを完成させることが出来ればいいのか?
簡単では無さそうだけど、難しくもなさそうだな。
たしか緑龍基礎武術だったっけ?
基礎なら大丈夫そうだけどな。
いや、油断してはダメだ。
こういう時こそ足元をすくわれるんだ。
「──ッ!ハァッ!セイヤァ!」
舞の綺麗さと気合いの声が比例しているな。
前世でもこんな綺麗な舞は見たことないな。
俺が、これをやるのか……
いや、弱気になるな。緊張して手が震えることもするな。自分は大丈夫だ、大丈夫だ。
「……よし、これで終わりだ。どうだったか?」
「結構な腕前で」
「よし、じゃあやってみるか?」
早速実践!
何事も経験だな!
「では、やります」
脳が、体が覚えていたように吸い付くように体が動く。
何かに引っ張られているように、傀儡のように動く。
なんだ、この高揚感は……
これに乗ったらできるって不思議と思う。
やってみるか。信用してみよう。
「乗ってきたな。それでいい。もっとそちら側に身を委ねろ」
自然な流れに、身を委ねて、綺麗に──
──気づいたら終わっていた。
「ブライア!いいじゃないか!合格だ!もういいぞ!」
「え?あっ、もう終わったんですか?」
「成程、無意識状態だったのか。まあ、パーティーには間に合ったな。よし!これでいい!」
あっ、もうこんな時間なのか。
んじゃ、主役の登場といきますかね!
でも、知らない人ばっかりなんだろうなぁ。
「お、もう始まるぞ。正装の準備もばっちりだな」
うう、緊張してきた……
スピーチ的なのは母さんがやってくれるとして、親父は何をするんだ?
ま、飯が食えるならなんでもいいか。
さて、入場だ!
「では、大きな拍手を!」
パチパチ、という拍手が会場に響き渡った。
うわ、知らない人ばっかりじゃん。
これ全員貴族なんだろうなぁ。
「では、ここに誕生日パーティー開催を宣言します!」
盛り上がりを見せた後、食事の時間となった。
「やあ、こんばんは、ブライア様」
「えっと、こんばんは。どちら様で?」
「テラトニ・トロイヤス、と申します。トロイヤス家当主にございます」
「お名乗り、感謝致します」
「そこまで畏まらなくても宜しいのですよ。実は、少し話がありましてですね」
「ええ、僕で良ければ」
「そこまで大した話ではありませんよ。貴方と同じ歳の息子がいまして、学校で同じ学び舎で学ぶ者の親として、挨拶に来ただけですよ」
「そうですか。ちなみにお名前は?」
「エアスですよ。エアス・トロイヤス」
「そうですか。仲良くさせて貰いますね」
──っと、こんな感じで何件か話に来たのだ。
子供も少し混じっているが、まあ喧嘩を売りに来ることはないだろう。
「なあ、ちょっと外来てくれ」
「ん?いいですよ。少し暑くて夜風に当たりたかったところですし」
パーティー会場ってこんなに暑かったのか。
貴族も大変なもんなんだな。
──外、緑庭園にて
「そこに腰掛けても大丈夫ですよ」
ふふん、俺親切アピールしておかないとな。
快く座ってくれたまえ!
──だが、そんな願いも虚しく。
「……こい」
「……なんですかこれは。一体なんのつもりで?」
子供が何人いるんだ?
十人くらいか。
まさかとは思うが、喧嘩か?
「お前、ちょっとチヤホヤされてっからって調子乗んなよ。最上級貴族とか知ったことか。俺は俺のやりたいままにやる。お前は俺の気分を害した!」
なんだよその暴論。
いや、これは数で押されそうだな。
だが、しぶといのが俺だ。
「そうですか、なら戦いでもするんですか?」
「ああそうさ。だからここに集めたんだからな」
親父といいこいつといい、なんだよこの世界。
物騒が過ぎるだろ。
ただ、武力行使でくるなら容赦したらダメだよな。
ただでさえ実践経験が乏しい俺だ、手加減して負けるとか洒落にならないからな。
「なら、やむを得ないですね。先に聞いておきましょう。名は?」
「お前に名前なんて教えるわけねえだろ!さっさとくたばれ!」
えっ、まじで?
てっきり冗談だと思ったんだけど。
「うりゃぁぁぁ!」
1人が殴りかかってきたが、分かる。遅い。
親父と比べ物にならないくらい遅い。
さて、使ってみるか。『緑武の舞』。
「『緑武の舞』」
「ぶふぉえぁ!」
「まずは一人、次は?」
「クッ、クソが!舐めてんじゃねえよ!」
二人同時、だけどいける。
二連撃目、決める。
「フッ!ハァッ!」
「オブゥ!」
「ガホォッ!」
よし、あと七人!
「ちくしょう!全員でいくぞ!」
うわ、ゴリ押しきた!
一番嫌なパターンだわ。
これは、三連撃かましてからジャンプで4連撃だな。
「ハァッ!セイッ!デリャ!」
「ボガァ!」
「オガァ!」
「グアッ!」
よし!ジャンプで着地の瞬間に蹴り一発から三連撃に変更だな。
「ハァッ!セイッセイッ、ウラァ!」
「ゴフッ、てめ、え!」
「そんなに元気があるんですか。もう一発蹴りますね」
「アゴァッ!グフッ、で、めェ……」
「これに懲りたら、二度としないことですね。」
さて、これにて終了。
でも、この絵面だけ見たら俺がボコったみたいな感じなんだよな。
名前聞いたのに答えてくれなかったし……
ま、フォンゲル呼んだら分かってくれるか。
「フォンゲル、いるか?」
「はい、お呼びで……これは一体?」
「喧嘩売ってきたから返り討ちにしたんだけど……親父に説明してくれないか?」
「かしこまりました、流石ですね」
「誕生日に喧嘩売られるのは勘弁だけどな。」
俺の専属執事、フォンゲル。
仕事が出来る有能執事で優しい!
んじゃ、説明はしてくれるからこいつら運ぶか。
うわっ、重たいな。一人ずついくか。
「ブライア!無事か!?」
「あっ、父さん。運んでくれませんか?」
「ああ、もちろんだ」
さて、こいつらは一体どのような罰を与えられるのでしょうか。
俺には関係ないことだし別に気にしなくてもいいか。
「ブライア、そろそろ出番のようだぞ」
「え?もうそんな時間ですか?んじゃ、ちょっと行ってきます」
「思う存分、楽しんでこい!」
楽しむ、か。
よし、親父のおかげで緊張もほぐれたし、やるか!
──数分後
よし、到着っと。
正装チェック、乱れてない。
髪型チェック、乱れてない。
心チェック、乱れてない。
よし、いくぞ!
──結論から言うと、ブライアは成功した。
少しの乱れも見せずに見ている人達を圧倒した。
グリーンドラゴン家でもかなりの完成度といえた。
だがそれは、緑龍にとっても同じことで──
よ、よし、やっとパーティーが終わった。
あとは、この確認装置で確認するだけか。
『緑武の舞』、成功して良かったぁ。
一体どんな緑龍が来るのか、ワクワクするな。
さあ、取り敢えず確認だ!
・抽象的内容
ブライア・グリーンドラゴン
能力
『創成』『緑龍』『紅蓮』
特異体質
『無効眼』『神魔眼』
解放
『剣技解放』
『魔法解放』
『武闘解放』
『闘志解放』
『全開放』
『限界突破』
闘志の色
緑
属性
九天(炎、水、風、雷、氷、地、光、闇、癒)
・具体的内容
能力
『創成』
・攻撃創成
・防御創成
・能力創成
・特異体質創成
・魔法創成
・武器創成
・防具創成
・物質創成
・世界『全てを創りし始まりの世界』
『緑龍』
・緑龍魔法
・緑龍武闘
・緑龍剣術
・緑龍使役
・緑龍融合
・緑龍武具
・精神交代『シャイフォン』
・世界『緑に染まりし緑龍の世界』
『紅蓮』
・紅蓮剣術
・紅蓮魔法
・紅蓮武闘
・紅蓮武具『紅蓮変形武具テル・ラ・グーニャ』
特異体質
『無効眼』
・物理攻撃無効
・精神攻撃無効
・状態異常無効
・能力無効
・特異体質無効
・魔法無効
・属性攻撃無効
・武器無効
・防具無効
・世界無効
これらは同時に発動は出来ない。
『神魔眼』
神眼
・読心眼
・分解眼
・増減眼
・確率眼
・変化眼
・分析眼
魔眼
・支配眼
・破壊眼
・危険眼
・万里眼
・魔力眼
・反転眼
これらは同時に発動は出来ない。
ただし、無効眼との平行使用は可能。
魔力量
15000
──終わってんなマジ。
驚き呆れるとはまさにこの事だな。
知らない間に知らない能力手に入れてるわ、特異体質?の性能が強すぎるわ、てかシャイフォンってやつが俺の緑龍か?しかも属性も色んなのあるし。
手に入れてしまったものだ、使いこなさなきゃな。
理解し難いが、これが現実だ。
──ああああああああ!!
そんなすぐに割り切れる訳ないだろ!
おかしいものはおかしい!
おい神!いるなら返事しやがれ!強すぎるだろ!
《神ではないが、我がいるぞ》
ふと、そんな声が聞こえた。
ちょっと大混乱。え、誰?
《もう忘れたのか?シャイフォンだ》
えっ、あの緑龍の?
中から喋りかけられてるような気がするな。
てことは、俺の、体内にっ──
うわ、意識したら余計気持ち悪くなったし。
どこにいるんだよ、返事しろ!
《焦らなくとも、答えてやるから。今はお前の精神にいる。限りなく核に近いところの精神にな》
え?いやどこだよそれ。
人間の部位で言ってくれよ。心臓か?
《ま、あながち間違ってはいないが、どこ、と言われたら難しいところだな》
結局どっちなんだよ!
まあいい、何しに来た?
《単純に話に来た、って言っても信じてもらえる訳ないよな》
そりゃそうだ。
いきなり来たんだから信じれる訳ないだろ。
ま、別に俺も用は無いし信じていっか。
じゃあな、俺は寝る!
《ああ、おやすみ。そして、精神世界にご招待》
な、何を言っ──
──精神世界
「来たか、ブライア。さて、俺の力を使う契約をするために、戦おうか」