第28話 行き先
三年生の始業式。
恒例の校長の話だが、校長の正体を知った今、寝る事は無かった。
あの金髪美少女を想像すると、何故か頑張ろうと思えるのだ。
俺はロリコンでは無いのに……
まあそんな事はどうでもいい。
始業式が終わった後、三年生は多目的ホールに呼び出された。
想像していた通り、冒険者の話だった。
今日の夜までに決めておくようにと言われた。
その帰りに、シュヴァルツと話していた。
「なあ、どこに行くんだ?」
「うーん……どこに行こうか迷っているんだ……」
「なら、一緒に行かないか?」
「それは出来ない。自分だけでやりたいんだ」
「そうか……」
シュヴァルツの落胆が隣から聞こえた。
まあ一人じゃないと力がつかないからな。
シュヴァルツには申し訳ないけど、断るしか無かった。
でも行き先か、何も考えていなかったな。
とりあえずシャイフォンに聞いてみるか。
「じゃあな、シュヴァルツ」
「ああ、またなー」
部屋のドアを開ける。
中からおかえり、と声が聞こえた。
聞き慣れた声だ。
「シャイフォン、今日は早いな」
「いつもは遅いみたいな言い方だな」
「遅いだろ」
この時間に起きているのは珍しく、椅子に座っていた。
机の上には皿があった。
たった今作り置きしていた朝ご飯を食べ終わったのだろう。
シャイフォンに今日起きた事を話す。
「実は、冒険者の事なんだけど──」
──数分後
「成程な、なら今日中に決めておかないとな」
「でもどこに行ったらいいんだろうな……」
「お前なら、レジェンダ帝国でいいんじゃないか?」
レジェンダ帝国か。
まあ何も決めてなかったし、シャイフォンが言うなら安全だろう。
「俺も着いていこうか?」
「いや、一人で行くよ」
「なら、レジェンダ帝国について話しておこう」
「どんな国何だ?」
「良く言えば、個々の武力最強の国、悪く言えばスパルタな国だな」
成程、誰もが強いってことか。
町に出たらイカつい人とかいっぱいいるんだうな。
プロレスラー並のマッチョの人とか。
「武力にはかなり力を入れていてな、駆け出しの冒険者も軍人一人並みの強さだ」
「え、めっちゃ強いじゃん」
「ああ、だから気を絶対に緩めるな、下手したら死ぬぞ」
下手しなくても死ぬ可能性あるだろ。
喧嘩売られて死ぬとかなったら恥だな。
「まあ人間が強い分、魔物も相当強い。強い人間を食えば食う程魔物は強くなる習性があるからな」
「そこで強くなってこい、と……」
「成長するにはここ以外は殆ど無いだろうからな」
確かに、強くなる為にはより強い者と戦わないといけないしな。
聞いてる感じ、レジェンダ帝国は最適だろう。
行き先は決まったし、準備だな。
「シャイフォン、持って行く物ってあったりするか?」
「持ち物は最低限だと決められている筈だぞ、大体は現地調達だな」
「そうなのか……」
「あと、これは忠告だ。仲間が死んでも、絶対に悲しむな。そして、亡骸をどこか遠い場所で埋葬しろ」
悲しむなって、俺に感情を無くせと言うのか。
いや、俺は感情表現が豊かだし、そうしないとな。
いつでも冷静に、か。
俺がここに帰ってきたらどうなっているんだろうな。
「さて、今日の特訓はもういいだろう、お前は行き先を教師に言ってこい」
「あれ、これって言わないといけないのか?」
「当たり前だ」
まあとりあえず言いに行くか。
職員室に行かないとな。
「じゃあ行ってくる」
「ああ、すぐ戻ってこいよ」
「もちろんだ」
部屋を出ると、三年生が沢山いた。
行き先を決めて、申告しに行くようだ。
俺もその波に乗り、職員室まで行く。
職員室では行列が出来ている。
長いなと思っていると、校長が手招きしていた。
着いて行くと、校長室に着いた。
何の話かはもう分かる。
十中八九、冒険者の話だろう。
「座っていいぞ、菓子を用意しよう」
校長は今は元の姿に戻っている。
背伸びしてお菓子を取ろうとしている姿を写真撮りたかった。
いや、このままだと本当にロリコンになってしまう。
雑念を捨てろ、俺。
「さて、お前は一体どこに行くんだ?」
「あ、えっと……レジェンダ帝国です」
「レジェンダ帝国……うむ、君なら大丈夫だろう」
校長もシャイフォンと同じ様な事を言った。
レジェンダ帝国ってそんにヤバい国なのか?
まあこの二人が言うなら大丈夫なんだろうとは思うけど……
「えと、何でここに呼んだんですか?」
「あの行列は辛いじゃろう?私から言っておこうと思ってな」
「あ、ありがとうございます」
「礼には及ばんぞ」
たったそれだけなのか?
いや、俺がソロミア皇国って言ってたら全力反対されていたのか?
確か戦争が始まるのかもしれないみたいなのをファルド先輩が言っていたな。
聞いてみるか。
「あの、ソロミア皇国の話なんですけど……」
「ソロミア皇国……ああ、あの国か、それがどうした?」
「いや、戦争が始まるみたいなのを聞いたんですけど……」
「ああ、言われているな。あと数年は持たせたいがな」
校長が言うってことは、本当なんだろうな。
戦争は絶対に避けたいけど、その言いぶりだと戦争は確実になるのか?
ソロミア皇国に問題がありそうだな。
「いや、お前には話しておこうか。実は今停戦状態でな、この状態が何百年も続いているんじゃ。元々初代国王とソロミアは仲が悪くてな、何度も戦いあっていた。その内二人は周りの支援を受けて国を建国してな、お互い喧嘩を出来なくなったんだ。そして二人はこう考えたんじゃ、国を巻き込めばいいんじゃないか、と」
……頭悪いのかな。
いや、偉い人達だからどんな事情があるのかなと思ったけど……相当イカれてるな。
アホじゃないの、ホントに。
いや、悪口は良くないけど……これは誰が聞いても同じ反応するとは思うけど。
「スティア国王の二十代目が停戦交渉をしてな、ソロミア皇国は受け入れこそはしたが、かなり嫌がっとったな」
「それで、我慢出来なくなったと?」
「そんな感じじゃろうな。だが、お前さえいれば牽制にはなる。だからお前が成長する数年持たせたい」
「俺は戦争に参加したくないんですけど……」
「その場合、国王に支配眼を使われるぞ」
あ、忘れてた。
戦争になれば支配眼使って殺戮マシーンにされるのか……
本当にそれだけは嫌だな。
せめて自我だけは保っておきたいな。
今の国王がどんな人物かは知らないけど。
「聞きたい事はそれだけか?」
「はい、ありがとうございます」
「なら今日は早く寝ると良い。明日は早いぞ」
「はい、ではさようなら」
あ、シャイフォンにすぐ戻ってこいって言われたのにこんな時間になっているな。
行列に並んでたって言えば何とかなるか。
あ、行列は無くなっているな。
とりあえず走って帰るか。
部屋まではそこまで遠くないし、すぐ着くだろ。
っと、考えている間にもう着いたな。
「すまん、遅くな──」
「遅い、何をしていた?」
圧をかけられている。
特訓中の時より百倍怖い。
てか何でこんなに怒っているんだ……
「いや、ちょっと行列に……」
「…………ならいい」
納得してくれた。
何とか落ち着いてくれたし、そろそろ寝ないとな。
今は七時くらいか。
まあ、明日は確か三時起きか。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ、明日は自分で起きろよ」
「お前が起きれないだけだろ」
という会話を交わして、俺は眠りについた。
「──お久しぶりです、救世主様」
気がつけば、真っ暗な空間にいた。
目の前には、暗黒の人間……なのかは分からないが、生物がいる。
一瞬で分かった、ここがどこなのか。
「お前、何のつもりだ?」
「救世主様が死なない為に、忠告に来ました」
死なない為に?
ちょっと胡散臭いが、聞いてみるか。
「内容は?」
「先に、事件が起こる回数を言いましょうか」
「何回だ?」
「三年間で、五回です。その五回は、全て救世主様を軸に起こります」
「つまり、俺が行く先全てに事件が起こると?スティア国には何も起きないと?」
「ええ、そうですよ。それだけは約束しましょう」
「ならいい、事件内容は言えないのか?」
「それは秘密ですよ」
まあ警戒だけはしておくか。
裏切られるのは最悪だからな。
「あ、そうです、『事件』の能力内容が増えましたよ。『腐恐悪音』と『地龍耐久』です」
「……詳細は?」
「『腐恐悪音』は音を聞かせれば腐らせる、怖がらせる、悪に染まらせる事が出来ます。『地龍耐久』は地龍王並の耐久力を得る事が出来ます」
「『破魔砥絶』とどっちが強い?」
「『地龍耐久』ですが、一日に使える回数制限がございますので、気をつけて下さい」
成程、強いけどその分のデメリットが酷いんだな。
まあぶっ倒れるってよりはマシだな。
さて、そろそろ起きるか。
「じゃあな」
「では、さようなら──」
目を開けると、真っ暗だった。
時計を確認すると、二時半だった。
シャイフォンを起こして、寝ていた時の事を思い出して、警戒するようにと話す。
真面目にシャイフォンも頷いて、朝ご飯を食べ終える。
ここでシャイフォンとは別れる。
また三年後だな。
三年全員が集合しているホールに行く。
殆どが集まっていて、かなり騒がしい。
数分後、先生の声が聞こえて、すぐに静かになる。
冒険者の説明や、マナー、ルールを教えられる。
校長が出てきて、死ぬ事のないようにと、忠告を入れられる。
ちなみに、ネル先輩が言うには学年の三分の一は行方不明か、死んでいるそうだ。
冒険者という職業は、本当に怖い。
だけど、その中にもロマンが詰まっている。
そのロマンを求めて、人々は駆け出していく。
死なんて恐れない、勇気のある人々のように、俺達は冒険者を体験する。
冒険者にしか体験出来ない、ロマンを求めて。
俺は今、レジェンダ帝国に向かって転移した。
七月はなんとか毎日投稿頑張っていきたいです……




