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第2話 誕生日と能力

すみませんめちゃくちゃ寝坊しました!

本当は七時半投稿の予定でしたが……

申し訳ございません!

今日、俺は十歳になった。

大きなパーティーを開かれるのはいつぶりだろうか。

よし……スーツはこれでよし、後は──


「ブライア、入るぞ」

「どうぞ」


親父が俺の部屋に来たようだ。

親父なら別に見られても問題ないか。


「……何しているんだ?」

「見てわかる通り、着替えているんだけど」


なんだ、見たら分かるだろうに。


「もしかして、今夜のパーティーのか?」

「それ以外にないだろ?」


そうに決まっている筈だけど……親父ってこんなに察し悪かったか?


「いや……パーティーで着るの、それじゃないぞ?」

「…………え?」


前言撤回、見られるの大問題みたいだ。


──5分後

「いやーすまんな、それは父さんが悪かった」

「俺に勘違いさせて別のスーツ着させたこと、一生恨み持つから」

「だからごめんって言ってるじゃん……」

「で、パーティーの正装はどこにあるの?」

「ああ、こっちだ。ついて来い」


なんでスーツとパーティーの正装間違えるんだ?

正装見たことないから知らないけど、それと間違えるはずがないだろ。

ちゃんと確認しておけよな……。


「この部屋に入っている。今は……誰も入っていないみたいだな。じゃ、入るぞ」


物凄い服の量……何着あるんだ?

軽く見積もっても、百以上は絶対にある。

で、問題のパーティーの正装はこの中にあるのか?


「ん?あれ、どこにやったっか?」


おい、そんなこと言うなよ。

失くしたとかなったら母さんになんて言われるのだろうか。

いや、それに関しては俺は関係ない。

だが、ダサい服装でパーティー出るのだけは勘弁だ。


「おー!あった、あったぞ!」

「あったんですか、良かった」

「じゃ、その試着室に入ってみてくれ。服のサイズが合うかどうか確認したい」

「ええ、分かりました」


俺が着てみるとどんな服になるのだろうか、ワクワクするな。

えっと……上の服をこう着ればいいのか。

次は……ズボンか、ベルトも巻いてと。

着方の手順があまりにも面倒だ。

あ、間違えた。

ズボンの前にスパッツ?だからこれ脱がないと。


「おーい、ブライア、これ忘れて……」

「──ッ!は、入ってくんなや!!」

「ブハァァ!!」

「ノックくらいしろ!貴族じゃないのか!?」

「そ、それはすまなかった……痛い……武術が身についているようで良かった良かった……いつの間にそんな蹴りを身につけていたんだ……」


勝手に開けた罰だ。

でも、綺麗に横腹キック入ったな。

あれ、気持ちいいからサンドバッグ作ってもらって極めよう。

次あんなことになってもいいように、だ。

ま、極めたらあれじゃすまないがな。

で、これは何だ、マントか?

うーん、全部着終わってから親父に聞くか。


──20分後

「これ着るのにも20分かかったんだけど?」

「お、帰ってきたか。ん?マント着けてないじゃないか」

「あ、そうそう、これの付け方を教えて欲しいんだけど」

「それはだな、肩にかける感じだな。ちなみに、左側だぞ。そこにパッチが付いているはずだから、左肩の凸部分にマントの凹部分をくっつけるんだ。できるか?」

「えっと……こうで、こう……出来た!」


よしよし、これで正装の着方は完璧だ。


「ほれ、鏡だ。父さんから見た感じ、よく似合っていると思うぞ」

「そうか?まあ、確かに似合っているようには見えるけどな……」


鏡で見たらこんな感じなのか。

しかも、結構着心地いいし、気に入った。

てか、これ普通の人は絶対間違えない筈だ。

正装とスーツモドキは全然違うデザインだ。

親父これ取りに来るとき酔っ払っていただろうな。


「じゃ、そろそろ出かけるぞ」

「どこにですか?」

「十歳になればな、『能力』っていうのと『特異体質』っていうのが分かるんだよ。今から能力が何かを確認しに行く。ついでに、お前もパーティーの準備してきるのをあまり見たくはないだろ?」

「確かに、そうですね」


能力か、俺の想像通り、中々面白そうなのがこの世界にはあるんだな。

あれ、じゃああの時の親父って──


「父さん、僕が5歳のころに出た、ドラゴン覚えてる?」

「ん?ああ、父さんが初めてお前に見せた戦いだったな。それがどうかしたか?」

「父さんはよく『鋼鉄』って言ってたけど、もしかして……」

「察しがいいな。そう、御明答。父さんの能力は『鋼鉄』だ。それと、『緑龍』だ。これはグリーンドラゴン家なら誰もが持っている能力だ。これを『固有能力』という。あ、それに関しては母さんも持ってるぞ。父さんと結婚した時に授かったからな」

「そうなのか。因みに、能力の強さとかあるのか?」


それが一番の疑問、能力に強弱はあるのかないのか。

だけど、だいたい予想出来る。

親父の答えは……


「無い、と言えば嘘になるが、基本的には無い。己を最大に極めたものが自分の強さになる。だが、あまりにも強い能力があってだな、それを『七つの最強能力』というんだ。現在は保持者はいないと言われているが、その能力は自分の不利すらも覆すことが出来ると言われているほどの強さを持つ強力無比な能力だ。ま、父さんの方が強いのだがな」


いや、強すぎだろ。

だって、自分の状況を覆すことが出来るんだろ?

なら、その能力があったらやばいじゃん。

親父がそれよりも強いのはよく分からないが。

いや、その前に何の能力か聞いておかないと。


「なあ……」

「大体分かる、その七つの能力はなんだ?と聞くのだろう」

「……その通り」


俺の考え程度、お見通しって訳か。


「『創成』『全知全能』『森羅万象』『断罪』『無限』『輪廻』『太陽』だ。ちなみに『太陽』に関してはよく分かっていないんだ。そんな言葉、この世界にはその能力以外存在しないからな。ある説では、イセカイ(・・・・)から来たやらなんとやら」


その七つ……よりも、『太陽』?

俺よりも先に異世界から来た人がいたのか?

一体どういうことだ?

しかも……俺の前世の名前だ。

俺が転生したのにも理由があるはずだし、その『太陽』を持っていた人も何か理由があるはずなんだ。

ただ単に神がお慈悲をくれたってだけなのかも知れないけど。


「じゃ、教会に行くぞ」


教会に行くのか。

またなんか作法とか覚えたりしないといけないのか?

ま、行くに越したことはない、親父に着いて行こう。


──40分後

「お待ちのクライア様、ブライア様、順番になりましたのでお部屋にいらして下さい」

「呼ばれたな、行こう」

「ええ」


何だか、物凄く緊張する。

これは俺の一生を決めるかも知れない。

『緑龍』は確定しているから、もう1個あるかないかって感じだ。

だけど、あまり強すぎるのもいらない。

いや、強すぎるに越したこともないのだろうが、それはそれで苦労しそうだ。


「来ましたね、グリーンドラゴン家当主様。今日はこの方の『能力』を判明させたら良いのですね」

「そうだな、では、宜しく頼もう」

「お任せを」


なんか、安らぐな。

気持ちいいっていうか、落ち着くっていうか。

さて、気になる判定結果だが。


「──……そんな、馬鹿な」

「え?一体どうかしましたか?」

「この子の能力……『緑龍』の性能もおかしいのですが、もう一つの能力です……」

「──天使系か、悪魔系……まさかとは思うが……」

「あなたの予想している通り、『七つの最強能力』の一つ、『創成』です。初めて見ましたよ……」


……本当に言ってるのか?

おかしいだろ、強いに越したことはないとは思ったけど、それは強すぎるだろ!?

親父の顔が青ざめてる。


「ブ、ブライア、良かったな!」

「良くないですよ!これ他の国にバレたら殺されるんですけど!?」

「それには同意!だが、父さんが守るから安心しろ!」

「あ、安心出来ねぇ!」

「おい!」


おっと口が滑ってしまった。

……本当に殺されるのだけは勘弁だ。

また殺されなきゃいけないのか?

しかも、これ持ってたら戦場に出ないといけないのだが?

できるだけ多くの人にバレませんように。

……でも何か、この牧師から嫌な匂いがする。

国家機密レベルの情報をこの一端の牧師に持たせてしまうと、ヤバいことになってしまう……そんな匂いがしてきた。


「その……父様。ちょっとこちらへ」

「ん?どうかしたか?」


親父を隅に呼び出し、教えて貰おうか。


「あの人の記憶、消して下さいよ」

「……は?何を言ってるんだ?」

「……あの人、もしかしたら他の国の人に喋る可能性があるから、記憶を消して欲しいんだ……何か、嫌な予感(・・・・)がするんだ。言葉にできないんだけどな……」


もう、俺が生き残るにはこれしかない。

それに、嫌な予感があの牧師から溢れているのだ。

ここで始末しておかないと、またすぐに死んでしまう。


「はぁ……こういう時の嫌な予感は馬鹿に出来ないからな。よし、国王にでも頼むか」

「え?王様に?なんでまた?」


なんでそこで王様が出てくるのか、それは純粋な疑問だったのだが、想像を上回る答えが出てくる。


「国王にはな、『特異体質・支配眼』ってのがあるんだ。だから、あの牧師を支配すれば、あの人の記憶は消える、どうだ?」


そうだ、騒ぎを起こさず始末するにはそれしかない。

信頼関係が構築している親父ならまだしも、名前も知らない牧師が俺の能力を知るってなるなら、そうして始末するしかないのかもな。

……そうするか、すまない牧師。


「父さん、じゃあ頼んでもいいか?」

「ああ、勿論だ。お前を死なせるのはまっぴらごめんだからな。よし、やってみよう」


こ、これ以上無いくらい頼りになる!

で、これから城とかに行ったりするのか?

王様なら信用あるしいいと思うんだが。


「……ああ、クライアだ。『支配眼』の使用許可を頂きたいんだが……はい、理由だが……だ。ああ、本当に助かる。」


何だか、電話しているみたいだ。

相手は……十中八九、王様だろうな。

言葉遣いが不敬じゃないか?親父よ。


「許可が取れた、やってみよう」

「え?何の許可ですか?」

「まあ見てろって。すみません、ちょっと話をしていて」


なんかすっげえ不自然だな……

ありゃ何か秘密があるのはバレるだろ。


「ええ、大丈夫ですよ。深くは追求しませんし」

「そうか、助かる──『支配眼』開眼」

「え?一体何……を…………」


ドサリ、と音を立てて倒れた牧師。

……本当にすまない、疑心暗鬼になってしまって。

だが、必ず秘密を守ると言い切られるのも不安だ。

だから……本当にすまない。


「立て」

「……はい」

「国王がお呼びだ、今すぐ王城に向かえ。」

「かしこまりました」


うわ、本当に支配出来てる。

声も機械みたいな喋り方だし、あれなら心配する必要は無さそうだ。

だけど、なんで親父が『支配眼』を使えるんだ?


「何か疑問に思ってそうだな、ブライア。」

「……なぜ父さんが『支配眼』を使えるんだ?」

「そうだな、国王就任儀式の時と同時に我らレインボードラゴンも当主を国王から決められる。その時に忠誠の誓約を交わすんだ。それは、忠誠を誓う代わりに、レインボードラゴンは国王の力を、国王はレインボードラゴンを逆らえなくするんだ。ただし、力を使うには許可と理由が必要、となっている」


へー、なかなか良さそうな誓約じゃないか。

だけど、時と場合によるって感じだな。

レインボードラゴンの勢力は凄まじいらしいし、反乱を起こしたら並の人物では絶対に対抗出来ないからな。

その誓約をしておいて正解かもな。

国王の血筋は頭いい人ばっかりなのか?


「そろそろ帰るぞ、パーティーが待っているではないか。おっと……これ時間中々取れていなかったな」

「そうなのか。なら、少し寄り道したいな」

「そうだな、少しだけなら寄り道してもいいか」

「では、行きましょう」

「おい、置いて行くな!」


……こんな幸せそうな会話とは裏腹に、王城では、とんでもない事が起きていることなど、知る由もなかったのである。


──王城にて

「お呼びでしょうか、国王様」

「ああ、確かに呼んだな。よし、捕縛しろ」

「なぜですか、国王様」

「クライアはよくやっている、初めて使うのにこの精度とは、我も泣いてしまうぞ……そやつは打首だ、刎ねよ」

「ハッ!」


グシャリ、という音が玉座に響き、コロリという音が赤いカーペットに落ちる。

何が落ちたかは言うまでもない。


「良かったのですか?この牧師、かなりの使い手ですが」

「馬鹿言え、そいつは知ってしまったんだ、仕方ない。クライアの判断が正解だった」

「この男、何を知ったんですか?」

「追求するな、お前も打首にするぞ」


王は玉座から立ち、後ろの窓を見ながらそう言った。

窓に映っているのは、花園と、青い空。

なんとも幻想的で綺麗な場所だが、王にはそれ以外のものが映っていた。

少し遠くに見える、グリーンドラゴン当主家、つまり、ブライアが住む家を見ている。


「では、私は死体を片付けするので、失礼致します」


そんな声にも反応せず、兵士はそっと部屋を出る。

王は、自分しかいない部屋で、ボソリと声を放つ。


「確か、今日はクライアの息子の十歳の誕生日だったな……後で祝辞の言葉でも言いに行ってみるか、我が親友(・・・・)のために……だが、我が外を出ると騒がれるから困るな。よし、兵士に手紙でも届けさせるか。それでも騒がれるのだが」


少し沈んだ声のまま玉座に座り、頭を抱える。

王族、というだけで外で騒がれ、親友にも会えないという苦しみを解放されたい、という一心で一途な叶うことのない願いを思い浮かべる。

寂しく、今元気に喋ることが出来る相手もいない国王としては、彼が唯一の本音を出すことが出来る相手と言えるだろう。


「……『創成』か、我が親友に誓って、その秘密は守られねば。破ってしまえば、親友に恨まれてしまうからな」


牧師の死体があった場所を見つめながら、再び親友と口に出す。

兵士が振るった冷たき刃を、思い出し、またクライアを思い浮かべる。過去の若き王を、若きクライアを思い出しながら微笑み、気持ちを切り替える。


「あの時はもう戻ってこない、今を生きるんだ、国王としての今を」


悲しき国王は、自分を再認識し、政治に心を向ける。

一心不乱に、あの日誓ったこと(・・・・・・・・)を思い出し、守ることに必死になって、国王は生きる──

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