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第19話 魔法大会に向けて

「ブライアは、俺の中にいる奴を知っているんだろう?」

「……そうですね、勝手に心を読んだのはすみませんでした」

「いや、いいんだ。俺が早くに決着を着けないのをおかしいと思うのは当然だろうな」


オムライスを食べながら頷くファルド。

まあ、その事については許してくれるそうだ。

半ば助かったと思いつつ、俺は質問をする。


「災厄……でしたっけ、そのことについて教えてくれませんか?」

「そうだな、知りたいなら教えよう」


意外とすんなり教えてくれるそうだ。

あんまり話してくれなさそうだったんだけど、ファルド先輩はどうやら俺の想像していた人物とは違うようだ。

もっと厳格な人なのかと思っていたな。


「何を話して欲しいんだ?」

「そうですね……では、当時の状況を聞きたいです」

「当時の状況、か。確か、あの時は俺はお前が生まれる前で、今俺は九年だから……当時は七か八歳だな」

「覚えてないんですか?」

「ああ、記憶が曖昧でな」


そうなのか。

それ程強大な力だったんだろうな。

でも、少年の体にあの力は耐えきれるのか?

それが一番気になるな。


「あの時は、俺は外出してたっけな……何か石を見つけて、それを動かしたのは少しだけ覚えているんだ」


成程、それがアイツを封印する石的な存在だったのかな。

いや、でも封印する石だったらもっと厳重に管理されているはずだ。

例えば、神社とかそんな感じの封印に適した場所で管理されているはずなのに、何でその辺に置いてあったんだ?

一番の謎はここだな。

もしかすると、必然的に復活させようとしてそこに置いていたのかも知れないしな。


「まあ、そこからは俺は殆ど覚えていないんだ。後から聞かされたりしたんだが、やっぱり認め難い事実でな……」

「そうだったんですね……その聞かされた事を詳しく教えて貰ってもいいですか?」

「別に構わないぞ。あの時は俺が暴走したまま貴族街まで突っ込んだらしくてな、その時はお前の母親、エルナさんはお前が腹の中にいたから、戦える状況じゃなかったんだ。だから戦ったのはレインボードラゴンの中でも強者、つまりクライアさんとかだな。他は戦力として期待出来なかったから住民の避難をさせていたそうだ」

「……それ、僕は誰も教えてくれなかったんですけど……」

「そりゃそうだ。教えたくも無いだろう、あんな悪夢」


悪夢なのか。

まあ、そんなことが起きていたなんて、認め難い事実だよな。

俺がその場にいても、逃げるだけしか出来ないだろうし。

親父とか、戦った人はかなり勇敢だったんだな。

それ程強かったってことなんだろう。

やっぱり、この世界の貴族って強い人が多いよな。

当然、威張っている奴もいるだろうけど。

そんなことはどうでも良くて、だ。


「結局、勝ったんですか?」

「ボロボロになる状態まで戦って、負け寸前だったらしい。だが、国王陛下が来てくれたそうだ」

「国王陛下……あ、支配眼ですか?」

「ああ、そうだ。知っていたんだな。それでアイツを支配して、クライアさんが特殊封印を施して終わったらしい」


成程、支配眼を使ったのか。

でも、負け寸前まで追い込まれたのか……

それだけアイツが強いのが分かるな。

親父がこの国最強だけど、一人で戦っていたら負けていたかもな。

それ程までにアイツは強いんだな。

災厄っていうのも頷ける。

もしかしたら、歴史書に記載されているかもな。

後で大図書館にでも行ってみるか。


「起きたら家族皆が俺の周りにいてな、ビックリしたんだ。だけど、後から教えてくれたから、その時は罪悪感が半端じゃなかったな」

「そうだったんですか。あれ?でも、今の街には異常がありませんよ?かなりの被害だったんじゃないですか?」


地震や津波などの災害を受ければ復興にはかなり時間がかかる。

ましてや災厄の魔物が来たら、数百年単位で時間がかかるはずだ。

だけど、今の街には何の問題も無い。

これは一体どういうことだ?


「俺も驚いたんだが、国王陛下にはとある能力があってな、それが『復興』っていう能力らしくて、一瞬で復興させたらしい」

「そ、そんなことが可能なんですか……」


凄いな、国王って。

国を統治するなら凄く使い勝手がいい能力だな。

一族に代々伝わる支配眼もあるから、優れた才能を持ってるんだな。


「まあ、こんなとこじゃないか?俺が知ってる限りの事は話したぞ」

「ありがとうございます、それで、何故棄権したんですか?」

「……ちょっと、事情があったんだ」


これは詳しく聞いてはいけない雰囲気だな。

何も触れないでおこう。

まあ、相手がアルバートだったし、昔の事もあったから気まずかったのかな。


「そうだ、次の魔法大会は出るのか?」

「はい、優先出場権を貰ったので折角ですし出ようかと」

「──優先出場権を、貰ったのか!?」

「え?あ、はい」


何だ?この優先出場権ってそんなに凄いものなのか?

ファルド先輩が驚いているってことは、そういう事なのかな?


「それ、八魔導士の人達でも貰えないような代物なんだぞ」

「……ええっ!?」


これ、そんなに凄いものだったのか。

それならそうと、シャイフォンは何で言わなかったんだ?


「そ、そうなんですか……」

「それ貰ってると、予選する必要が無くなるから、最初から本戦出場ということになるんだ」


なら、手間が省けるっていうことになるのか。

ありがたいな、予選をしなくて済むということは。

でも、俺はあの大会に出ただけなのに、何でこれを貰ったんだ?

俺よりも八魔導士の人達が貰った方がいいような気もするが。


「まあ、出るんだったら俺は見に行こう。頑張れよ」

「はい、もちろんです!」


ファルド先輩が折角見に来てくれるなら、頑張らないと。

シュヴァルツとか、ネル先輩も呼べば来そうだな。

来てくれたら嬉しいな。

緊張しそうだけど、今更だ。


「そういえば、これはお前に話しておかないとな」

「一体どうしたんですか?」

「実は、皇国との関係が悪化していってな。一般市民にはまだ知られていないんだが、もしかすると……」

「戦争、ですか?」

「そうだ。下手をすれば、大戦争になるかもしれない」


そ、そうなのか。

嫌だな、戦争は。

やっぱり日本人だからかな?

戦争になるのだけは回避したいな。

戦争を行う者は愚者だって俺はずっと思ってきたし。

でも、何で皇国と仲が悪いんだ?

昔に何かトラブルでも起きたのかな。


「戦争になると、不利なのはこっちだ。アーシルがいる訳だし、もちろんソロミア女皇もいる」

「えっと、ソロミア女皇は知ってますけど、アーシルって誰ですか?」

「そうだな、簡単に説明すると、聖剣保持者で人類が定めた、『五強人類』に入っている」


『五強人類』……って、アーシルはその五人の内の一人!?

それに、聖剣保持者ってことは、シュヴァルツの強制的に作ったやつじゃなくて、れっきとした本物の聖剣を持っているのか。

相当、というより今の俺じゃ勝てないだろうな。

特訓すれば別の話だけど、戦争になる可能性があるなら、真面目に特訓しないと。

回避すれば問題無い訳だけど、回避出来るとは限らない。

俺が今から本気で特訓した力を持ってしても、ソロミアに勝つのは不可能レベルだろうな。

だって、二千年生きている神に近い人間に、長くても百年程度しか生きれない人間だと、まるで大人と赤子だ。

その場合、親父に任せるしかないか。

困った時の、親父に丸投げだ。

そんな冗談はさておいて、戦争は嫌だけど、いつか起こるのかもしれない。

両国の関係さえ直ってしまえば、戦争する必要が無くなる訳だしな。

難しそうだけど、他の国との関係は他の人に任せるとしよう。

俺が発言したって、向こうが直す気が無いなら、意味無いし。

まあこの話は俺の切り替えるスイッチになったな。

──もっと、強くならないと。

短い生涯だとしても、生きててよかったと思えるように、な。

まずは目の前の目標、魔法大会で優勝だな。


「シャイフォン、毎日特訓してくれないか」

「ん?ああ、それは構わないが、お前は大丈夫なのか?」

「ああ、覚悟しないといけないのかもしれない」

「……分かった、そうしよう。ファルド、お前はどうする?」

「そうだな、俺も特訓をつけようか?お前のために、少しでも役に立ちたい」

「ありがとうございます、ファルド先輩!」


これで、特訓してくれる人が増えた。

ファルド先輩は俺より強いから、舐めてかかると痛い目に遭わされそうだな。

もちろん、舐めてかかる訳が無いけど。

あれ、でもファルド先輩って魔法も得意なのか?

親父からそんな人がいるとは聞いていたけど、何で得意なんだろうか。


「さて、そろそろ俺は帰るよ。飯までご馳走して貰って悪かったな」

「いえいえ、ついででしたし大丈夫ですよ。では、また明日、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


さて、俺もそろそろ寝る準備をするか。

あれ、そういえばベッド一つしかないよな。

……どうしようか。

とりあえずシャイフォンに聞こう。


「なあシャイフォン、ベッド一つしかないんだけど……」

「ああ、そうなのか。なら一緒に寝ればいいだろ」

「いや、俺に合わせてるから二人だとこれ狭いんだよな。お前身長高いじゃん」

「そうか、なら布団を貰ってくる」

「いや、俺が行くよ。お前はここで寝てくれ」

「構わない、そもそも俺からここに来たんだからな」

「……分かった、じゃあよろしく」

「校長に頼んでくる」


アイツ、何もしてない……よな?

まあ、とりあえず準備するか。

あ、歯磨きしないと。


「あ、ブライア、行く必要無いぞ」

「あれ、布団は?」

「お前が『創成』で創ればいいじゃないか」

「……あ、そうじゃん。じゃあ創るわ『物質創成』」

「よし、助かる。後は俺が自分でやるから、歯磨き行ってきていいぞ」

「分かった」


そうだな、物質も創れること忘れてたな。

でも面倒なんだよな、あれ。

他の創成とは違って、内部構造までしっかり考えないといけないんだよな。

武器とかだったら形と材質考えるだけでいいんだけど。

まあ布団だから内部構造は綿で十分だろう。

柄も特に何も無いけど、許してくれるだろう。

歯磨きも終わったし、そろそろ寝るか。

あ、そうだ、『五強人類』の他って誰なのか聞いてみるか。

まあ親父は絶対入っているだろうけど。


「なあシャイフォン、『五強人類』ってアーシル以外に誰がいるんだ?」

「ああ、『五強人類』の話か。アーシル以外だと、ソロミア女皇、レジェンド帝、クライア、後は……いや、その四人だ」

「あれ、五人じゃ?」

「申し訳ないが、五人目の話は出来ない」

「あ、ああ分かった、その四人なんだな。『五強人類』って最近出来た制度なのか?」

「いや、大体千五百年くらい前からあるんじゃないか?」

「じゃあなんで父さんが入っているんだ?」

「入れ替わり制なんだ。ソロミア女皇とレジェンド帝は入れ替わったことは無い。聖剣保持者は受け継ぎだ。クライアは入れ替わった」

「へー、そうなのか。誰と入れ替わったんだ?」

「セシルア・グレイスフォールだな。リーバルブ家のように、受け継ぎだな。武術の名家だ」

「魔法の名家は?」

「デフレーション家か。あそこはこんな制度に興味を示さないんだ。教訓か何かであったはずだ。ま、例外が一人いるがな」


あ、それは聞いた事あるぞ。

確か、『魔法を極めるのは己の力を示す欲の為に極めるものでは無い。自身の野望と理想を追い求め、この世の醜悪と嫌悪に立ち向かうため』だったっけ。

だから入らないし、入ろうとしないのか。

まあいい事だよな、それって。

謙虚に生きるのは人として最も大事なことなのかもな。

でも世の中を勝手に悪と決めつけるのは違うと思うけどな。

まあよそはよそ、うちはうちだ。

俺らには関係の無い話だ。

もうこんな時間だし、そろそろ寝るか。

例外の人の話もして欲しかったけど。


「じゃあ俺は寝るよ。色々教えてくれて助かったぞ。おやすみ」

「ああ、おやすみ」


仰向けで布団に入り、横を向く。

横ではシャイフォンが敷布団を整えていた。

もう一度上を向き、目を瞑る。

驚くことが多かったから、しっかり睡眠を摂るようにした。

そこで俺は眠った。

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