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第12話 シュヴァルツVSブライア

先手必勝、と言わんばかりにシュヴァルツが特攻してきた。

手に持つのは普通の剣一本だった。

なら、あの状態になるのは条件があるのか。


「『赤斬』」

「『球・太陽』」


防御を展開させ、攻撃を弾く。

シュヴァルツが持っていた剣だが、原型を無くしていた。

無理だと判断したのか、もう一本を鞘から取り出した。

そして、あの状態になる。


「『聖剣化』、『轟炎真焔丸(ごうえんしんえんまる)』来い」


髪が真紅に染まり、剣も光り輝く剣と、燃ゆる紅色の剣を手に持っている。

そして、俺は『視認眼』を開眼する。

その瞬間、シュヴァルツが動いた。


「なッ──!」


全く、見えなかった。

『視認眼』を開眼しているのに、動きが見えなかった。

これは、もしかすると──


「お前の特異体質は面倒だからな、妨害させてもらったぞ」


妨害!?

こいつも何かの特異体質なのか!?


「お前の方が面倒なんだけど、どういうのか教えてもらったりする?」

「仕方ないな、俺の特異体質は『轟炎真焔丸』と、『特異体質妨害』だ」


マジかよ……

無効眼も先に妨害されたら、太陽剣術しか頼るものがないな。

無効眼はバレないようにしないとな。


「てか、何でお前の剣溶けないんだよ」

「溶ける?何かは知らないが、この剣は生易しいものじゃないぞ」


こいつには常識が通用しないのかよ。

まあ、『球・太陽』で防御出来てるし、貫通されない限り大丈夫だよな。

これ、『殺・太陽』を発動しなきゃいけないか?

いや、まだだな。

もっと楽しみたい。


「お前に、勝てるか分かんなくなってきたぞ」

「俺は、勝つ気しかないけどな!『聖突貫撃』!」


今、一番恐れていることが起きた。

まさかの、防御貫通技だ。

ヤバすぎる!


「『天・太陽』──ッ!」


この技は、上から攻撃する相手に下から斬撃を与える技だ。

なんとか相殺出来たため、次の攻撃へ移る。


「『光・太陽』」


この技は、光速で移動する技だ。

もう一つの技とも組み合わせる。


「『閃・太陽』」


この技と合わせることで、『一閃・太陽』という技が出来る。

そして、シュヴァルツを斬った。

──はずだった。


「──『聖天覇王斬』」


──斬った瞬間、胴体を斬り分けたはずのシュヴァルツの声が聞こえた。

そして、俺に向かって輝く大きな剣が、俺を斬ろうとする。

『光・太陽』を全力で使い、なんとか避けた。

てか、何でこいつ生きてんだよ!

間違いなく手応えはあった。

あったはずなのに……


「シュヴァルツ、何をした?」

「聖剣の力の一つ、『聖治癒』で、再生したんだ」


待て、意味分かんないんだけど。

常識に考えてオカシイだろ!

なんだよこいつ、強すぎんだろ!

もしかすると、この国で一番強い可能性あるぞ。

──本気、出すか。


「シュヴァルツ、お前が強いのはよく分かった。だから、俺も全力でいく」

「なんだと、今までが全力でなかったとでも?」

「ああ、俺の力はここからだ。『剣技解放』『全開放』『限界突破』──ッッ!!」


俺の力が湧き出る感覚がする。

初めて発動させた為、かなり気分が高揚する。

さらに、俺の力を使う。

この世界では、どの技にも魔力を使うものだ。


「『無限ノ魔力』」


魔力を無限にして、強力な技を何度でも発動出来るようにする。

シュヴァルツが非常識なくらい強いように、俺もポテンシャルだけは非常識なくらい強いのだ。

そんな俺を見たため、シュヴァルツの目が点になっている。


「お前……何だよ、それ……」

「俺ですら、制御出来ないかもしれない力だ、暴走したらごめんな」

「はぁ、そんな力を隠し持っていたのか……なら、今からどっちも本気、だな」

「ああ、いざ、尋常に──」


お互い、口を揃えて叫ぶ。


「「勝負だ!」」


お互い、これから本気で戦う。

口に出さず、お互い『闘志解放』をする。


──お互い本気になったため、周りの被害を気にする余裕が無くなってしまった。

地が割れ、空が軋むような音がする。

観客席の結界に、ヒビが入りそうなくらいだった。

スティア国で優秀の魔道士を集めて作った結界だ。

その結界にヒビを入れるのだから、どれだけシュヴァルツと俺が強いのか分かる。

見えない程の速度で、剣技の澄んだ音が響き渡る。

灼熱の炎が辺りに飛び散る。

その飛び散った地面は、有り得ない速度で溶けていく。

とてつもない高温の炎だった。

この世界に無い、太陽の温度だった。

『紅蓮』を圧倒的に凌駕する強さだった。

シュヴァルツは、そんな温度を真に受けて無事でいるのだ。

いや、受けていない。

当たっていないのだ。

『闘志』の効果だ。

シュヴァルツの『闘志』の色は赤。

赤は、炎や温度を無効化出来る特性がある。

他にもあるらしいが、俺の色は違うので、あまり知らない。

俺の『闘志』の色の緑は、豊穣を象徴する。

今使っているのは、『急成長』だ。

これを使うことによって、シュヴァルツの技に早く対応出来るようにする。

それに加えて、自身の力に早く馴染ませる効果も含んでいた。

初めて使う力のため、暴走する危険性が大いにあるのだ。

だから制御出来るようにした。


「なあ、楽しいな、ブライア!」

「ああ、そうだな!」


時折会話もしつつ、剣と剣を交える。

この勝負は、一年生が出来る戦いでは無い。

お互い、尋常ではない力を持っているから出来る戦いだ。

さらに、自身の力を最大限に発揮させる。

『纏いし闘志の覇気』──俺の体から、緑色の覇気を噴出させる。

シュヴァルツも、同じことをするように、赤色の覇気を噴出させる。

戦いに呼応するかのように、闘志が光り輝く──


お互い、ボロボロの状態だ。

これが最後の一撃になるだろう。

最後だ、正々堂々と戦おう。


「ハァ、ハァ、やっぱり、ブライアは凄いな」

「お前もだろ、シュヴァルツ」


お互い、思わず笑い出す。

やがて、シュヴァルツが俺に向けて言う。


「最後、剣一本だけで勝負しようぜ」


もちろん、この提案に頷く。

サリューズの片方をもう片方のサリューズに合成させる。

剣の大きさはそのままにする。

お互い、剣を突きつける。

やがて、どちらも居合の構えになる。

泣いても笑っても、これが最後だ。

なら、せめて悔いの残らないように終わらせよう。

シュヴァルツは轟炎真焔丸で挑むようだ。

そして──動き出す。

勝負するタイミングが分かっているかのように、お互い同時に動き出した。

技を、繰り出す。


「『斬・太陽』──ッ!!」

「『轟火斬昇』──ゥ!!」


──一閃。

剣を鞘に収めた時の、「キン」という音が響く。

勝者は──


『おおっと、どちらも倒れたぞォ!この勝負、先に立った方の勝ちとします!』


もう、ダメだ、立つ気力なんて、残っていない。

完全燃焼だ。

この勝負、シュヴァルツの勝ちだ……


『……な、なんと!どちらも立つことが出来ないのか!?審判、確認をお願いします!』


俺の方に、審判が駆け寄ってきた。

意識が、遠のいていく……

あの事件ぶりだな、これ……


──俺の意識は、ここで途切れた。



『えー、審判に確認してもらったところ、どちらも立つことが出来ないとなりました!この勝負、引き分けとさせてもらいます!ですので、剣術大会一位は、アルバート選手!二位は、先に斬っていた方としますので、映像をご覧下さい!』


モニターのようなものに、さっきの映像が映る。

どちらが先に斬ったのか──

判定が、決まった。


『先に斬っていたのは、シュヴァルツ選手!ですので、二位はシュヴァルツ選手!三位はブライア選手になります!この二人が目覚めたら、閉会式を行いたいと思います!』


ほんの一瞬だった。

その一瞬の速度で、ブライアはシュヴァルツに負けた。

だが、ブライアにも悔いは無いだろう。

悔いの無いよう、誇りを持って負けた。

この敗北は、ブライアをより成長させるいい経験となるに違いないだろう。

ブライアとシュヴァルツは、最後まで全力だった。

ただひたすら、全力だった。

互いの健闘は、観客を圧倒した。

興奮させ、熱気に包まれた。

会場には、「うわぁ!」という声や、「すげえ!」の賞賛の声が響き渡っていた。

だが、ただ1人、不満を抱いていた。


(ブライア君と戦いたかったのになぁ、惜しかったね)


アルバートだった。

まさかここで相打ちになるとは思っていなかったアルバートで、残念に思っている。

自身との手合わせで、あれほどの力を発揮したから、当然と言えば当然だった。

だが、アルバートには一つ気になったことがあるのだ。


(右目はともかく、左目が一切変わっていなかった。一体、どういう意図があったんだ?)


このシュヴァルツとの戦いで、ブライアは一切無効眼を使用しなかった。

正々堂々戦いたかった、という意図だったのだが、アルバートは無効眼という存在を知らない。

ただ、目の色が変わる、ということだけ。

何かしら効果があるのだと思っていたアルバートだが、深読みをする。


(まあ、今回は使う気無かったってことかな?あの子は楽をするのが得意そうな子っぽかったんだけど)


勝手な想像だったが、あながち間違っていなかった。


(まあ、この2人はイランに報告だね。さて、あいつは一体どんな反応をするのやら……)


肘掛けに肘を置き、足を組んで笑みを浮かべる。

そして席を立ち、閉会式のために、本部へ向かう。

イランとは、どのような人間なのだろうか……



クライアは、良く頑張ったと内心で褒める。

口に出そうだったが、他の当主達の前なので、雰囲気を保つ。

救護室に行きたい気持ちを抑え、当主達と共に部屋を出る。

もちろん、閉会式の会場に向かうためだ。

道中で、エラディスに話しかけられた。


「お前の息子、強いな」

「そりゃどうも」


息子自慢は嫌だ、と言わんばかりの態度を出し、適当に返事する。

だが、エラディスが言ったのは、クライアの想像していた通りじゃなかった。


「いや、武術が得意なグリーンドラゴン家でも、剣術があそこまで出来たら、戦力が上がるんじゃないかってことだ」


思っていた返答じゃなかったため、驚くクライア。

そんなクライアを見て、エラディスは問う。


「何だよ、その顔。俺が一体何言うと思ったんだよ」

「いや、てっきり『俺の息子の方が強いけどな!』とか言うと思っていてだな……」

「あの戦いみて、そんな感想を口に俺は出せないぞ。ったく、俺をなんだと思っ……て……おい、お前らもそう思っていたのかよ」


前を見ると、クライアとエラディス以外の当主が驚いていた。

常に態度が悪く、マウントをとってくるようなエラディスなのだ。

そうならない方がおかしいくらいだった。


「どいつもこいつも……ハァ、まあいいや」


と、閉会式が始まりそうだった。

どうやら、ブライアとシュヴァルツはすぐに目を覚ましたようだ。

服は着替えていて、キッチリしていた。

先程のボロボロになった服とはあまりにもイメージがかけ離れていた。

今は賞状とトロフィーを貰っているようだった。

その姿を見て、クライアは泣きそうになっていた。

すぐにでもブライアを抱きしめたかった欲望が抑えきれなくなりそうだった。

紙一重で理性を保つことが出来た。

そして、クライア達の待つ出口へ向かってきた。



──負けたのか、俺。

でも、悔いは無かった。

全力で戦ったんだから、当然だった。

でも、この銅のトロフィー、重たい。

これで、閉会式が終了した。

長い話とかは特に無かった。

シュヴァルツと共に出口に向かう。

そこでは、親父とその他の人達が待っていた。

見た目から察するに、各[レインボードラゴン]当主達だろう。

そこで、親父が話しかけてきた。


「おめでとう、ブライア。よく頑張ったな」


と、俺の頭を撫でてきた。

とても嬉しく、涙が出そうだった。

いや、出ていた。

その事実を認めたくなかっただけだろう。

俺の左では、シュヴァルツとそのお父さんが、ハイタッチしていた。

そして俺の方に向かってきて、手を差し出す。

俺もハイタッチをする。


「じゃ、ブライア、寮に帰ろうぜ」

「ああ、そうだな。父さん、ではまた今度」


いつになるか分からないが、約束する。

そして、手を振り、寮に向かって歩き出す。

夏休みはもうすぐで終わると思えば、かなり厳しい夏休みだと思う。

事件に巻き込まれ、大怪我をして、特訓しまくって、大会に出て──こんな濃密な夏休みは初めてだった。

とても疲れたが、その分とても楽しかった。

異世界では、これが普通なのかと錯覚するくらいだった。

いや、事件に関しては普通じゃないんだろうけどさ。

とか、そんな振り返りをしていると、シュヴァルツが焦ったように俺に言ってきた。


「やばいブライア、夏休みの宿題ほとんど終わってねえ!」

「はぁ!?今まで何してたんだよ!」

「ずっと特訓してた!明日から夏休み終わるまで手伝ってくれないか?」

「はあ、仕方ないな……って、少しは自分でもやれよ!」

「ああ、俺の夏休みー!」


全く、自業自得とはまさにこのことだ。

まあ流石に可哀想だから、俺も手伝ってやるとするか。


「やれることはやってやるから、頑張ろうな」

「うう、ブライア、助かるぜ……」


結局、俺の夏休みにゆっくり出来る時間は無かったのか。

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