第11話 ネルVSブライア
「あら、反応したのね、いいじゃない」
「不意打ちとは、らしくないですね」
「そう?どう思おうがあなたの勝手だけどね」
「それは確かに、ですね!」
俺も斬撃を飛ばすが、斬撃で相殺される。
予想通りの展開だ。
最初から全力でいくつもりだったけど、シュヴァルツが勝った今、温存しなければならない。
温存して勝てるなら苦労しないけどな……
修行してる時も1度も勝てなかった。
……どうしようかな。
「動きが止まったわよ『黄龍斬』」
斬りかかってくるが、グーニャとサリューズで止める。
反応が遅れた瞬間負けるので、やっぱり全力でいくことにする。
ただし、無効眼は使わない。
使ったらすぐに勝ってしまうしな。
なんとか距離をとり、斬り合いにもっていく。
「『紅蓮刃』」
「『黄閃』」
相打ちになり、両方とも吹き飛んだ。
サリューズの使い方がイマイチ分からないし、グーニャ使うしかないよな。
使い方分からないのに何故俺はサリューズを持っているんだ……
少し後悔しながら、また構え直す。
二刀流って、案外やりにくいな。
見た目はかっこいいんだけど、操作しにくいんだよな。
まあ二本あれば非力な俺の体でも攻撃受け止めれるからこっちの方が防御的にはいい。
「まだまだいくわよ『黄閃』」
「『紅の斬撃』」
斬撃で相殺、さらに畳み掛ける。
「『紅蓮華・三重螺旋』」
「『黄乱撃昇』」
俺の三重の斬撃に対して、ネル先輩は斬撃を上に押し上げる。
そして、ネル先輩が反撃してくる。
「『黄斬波閃』」
「『紅斬華』」
なんとかこちらも相殺出来た。
だが、このままじゃあ埒が明かない。
一気にこちらにペースを持ってきいたいと思った瞬間──
「『剣技解放』」
先手をとられてしまった。
俺もあとからやればいい──そんな甘いことを考えていると。
「グアッ!」
なんだ、いきなり斬撃が飛んできた!?
反応出来なかったのか!?
次は『神魔眼』を使わないと。
傷は思ったより深くないな。
『超速治癒』
『神魔眼・視認眼』
「『剣技解放』はね、自分が剣を使う攻撃をすると、自分の攻撃が早くなるのよ。さて、もう一度いくわよ『黄斬撃』」
よし、反応出来る!
「『属性剣術・引力増幅』」
『先程攻撃を食らったブライア選手でしたが、今回は見事地属性の剣術で斬撃を地に落とすことに成功!さあ、次はどうなるのでしょうか!?』
「特異体質、使ったわね。確かに右目が陰陽模様に変わっているわね」
「その質問には答えないでおきますよ」
「……そう、分かったわ──『黄斬連撃』」
無数の斬撃が俺を襲うが、全て見えている。
だから、斬り伏せることなんて造作もないことなのだ。
「『紅蓮剣・乱』」
『おおっと、物凄い数の斬撃がブライア選手を襲いますが、その全てを斬りました!なんという神技なのでしょうか!』
神技、という程ではない。
アルバートの方が神技だからな。
まあアイツのことは今はどうでもいい。
「あなた、今の全部斬るなんて、どういう反射神経してるのよ!普通、有り得ないわよ!」
「え、まあ全部見えてたので」
「見えていた──?なら、それが特異体質なのかしら」
「だから、それについてはノーコメントですよ」
俺の能力と特異体質に関しては秘密にしなければならないのだ。
これでバラして他国に暗殺されるとか死んでも嫌だ。
そんなことはどうでもいい。
今は驚愕で油断している。
なら、今が絶好のチャンスなのだ。
あの、新技を試すチャンスだ。
「──紅蓮華・遅咲き」
俺が、右手に持つ剣を振るう。
──だが、斬撃も何も出ない。
会場は、静寂に包まれた。
ネル先輩が周りを見渡し、やがて俺の方へ向く。
口を開こうとした瞬間──
「な──ッ!!」
斬撃が、ネル先輩を襲った。
そう、この技は後から斬撃がくるのだ。
これでタイミングをズラすことが出来る。
ちなみに俺がタイミングを指定することが出来る。
実の話、これは魔法だ。
つまり、この大会に置いて反則行為である。
それを平気で使ったが、内心バレないかで冷や汗が止まっていない。
バレたら失格だからだ。
ただ、誰も指摘しないため、バレなかったのであろう。
ネル先輩は、地に膝を着けた。
剣で体を支えているが、血の量が凄まじく、やがて倒れた。
意識はおそらくないだろう。
俺が審判の判定を待っていると、焦ったように──
『ネ、ネル選手が倒れたため、ブライア選手の勝利となります!』
と、判定をしたためネル先輩を救護室に運ぶ。
救護班はネル先輩をベットに寝かし、治療魔法をかける。
なんとか傷は塞がった。
変に毒とか斬撃に含まなくて良かった──と安堵したのは内緒である。
──レインボードラゴンの観戦場所では
「おい、クライア、これはどういうことだ?」
イエロードラゴン家当主、ファルが問う。
その質問に同意する者がいる。
「俺も同じだな。お前の息子について詳しく教えろ」
レッドドラゴン家当主、エラディスが更に問い詰める。
「……あいつ、強くなったな……」
ポロッと口に出た言葉が、エラディスとファルを激昂させる。
「強くなったなとは何なんだ!あのお前の息子はなぜ剣術があそこまで出来ると聞いているんだ!」
「俺も同じくだ!早く答えろ!」
クライアは何も知らない──と言いそうになったが、ブライアには秘密しかなかったため、その言葉を口にすることが出来なかった。
そこに「まあまあ」と落ち着かせようとブルードラゴン家当主のゼナが2人を宥める。
「クライア君が何も知らないならいいじゃない。それとも、秘密を何か隠し持っている?ならそれは私達としても教えて貰いたいね」
説明を促そうとするゼナに、クライアは確認をとる。
「お前ら、口外厳禁と約束するか?」
「当たり前だ、早く言え!」
すうっ、と息を吸い、クライアは説明を始める。
「あいつの能力だが──『創成』だ」
この瞬間、この場が凍りついたかと思うほどに沈黙が流れた。
また、クライアが説明をする。
「まだ確定では無いが、今使ってた能力も『創成』で創り出した能力かもしれない」
会場を見ながら、そう説明したクライア。
全当主が押し黙った。
国家機密に値する程、重要なことなのだから。
「それ、国王様は知ってるの?」
「無論、知っているさ。そのことを知った牧師は国王様に始末してもらった」
「そう、なら安心ね」
「じゃあ、これは会議を開くか?」
全員がそう悩んでいると──
「その心配はない」
そこに、一人の豪華な服装をした男が現れた。
その男が現れた瞬間に、全員が跪いた。
そう、この男は──
「如何なされましたか、国王様」
三十三代目スティア王国国王、ユーザルト・スティア・ホワイトドラゴンその人であった。
「顔を上げよ、俺としても提案があるんだ」
そう言い、顔を上げるレインボードラゴン当主達。
そこで、ユーザルトの思惑が聞かされる。
「俺は、あの子に『支配眼』は使う気は無い」
そう言うと、驚愕するレインボードラゴン当主達。
いや、クライアだけ安堵していた。
「何故ですか?あの能力だとこの国にクーデターが起きる可能性だってあります!それに、グリーンドラゴン家にはあの忌まわしき『破壊衝動』だって目覚める可能性もあります!」
尤もな意見だった。
あの魔王の呪いがあれば、簡単にクーデターだって起こせる。
そうなれば、この国の滅亡は不可避だった。
その心配をするのが当然なのだが──
「確かにそうだ。だが、ここにはこの国最強のクライアがいる。そうだろう?」
と、クライアの方を向くユーザルト。
その意見に肯定するように、クライアが話し出す。
「『破壊衝動』が目覚めた場合、我らグリーンドラゴン家総出で対処すると約束致しましょう」
ここに、誓いは成された。
ユーザルトが頷き、皆の方を向く。
「グリーンドラゴン家の異端は現在、二人存在する。グリーンドラゴン家の異端はもれなく『破壊衝動』に目覚めているため、その可能性の方が高いだろう。だが、ここに俺とクライアの誓いが成された。これで、文句は無いだろう?」
有無を言わさないような覇気が部屋を埋め尽くす。
その覇気をビリビリと感じ取り、また跪く。
そして全員が声を揃えて言う。
『我らレインボードラゴンは、貴方様の意見を尊重致します』
全員が賛成したことにより、この案が可決となった。
そして、ユーザルトは黙って部屋を出る。
──視点変更・ブライア
俺が勝ったことで、ベスト四が出揃った。
アルバートVSファルド、シュヴァルツVS俺だ。
次の試合だが、明日ということになったため、今日はこれにて終了。
てか、もうすぐ夏休みが終わる……
あと一週間程度だ。
もっとゆっくりしたかったな。
宿題は終わらせたし、あとはこの大会でシュヴァルツに勝つだけである。
だが、あの豪炎真焔丸と、聖剣だったか?
あれへの対処がかなり難しく感じる。
向こうも二刀流で、斬るスピードが有り得ないくらい早かった。
なら、『視認眼』は当然使うことになる。
剣は、グーニャとサリューズの二つだ。
今の間にサリューズの使い方を学ばないと、シュヴァルツの試合が勝てなくなる。
試合終わった直後に特訓とか、モチベーションがかなり下がりそうになる。
だが、シュヴァルツは本気で戦う。
なら、俺もその気持ちに応えるのが道理だ。
じゃ、特訓場にでもいくか。
──特訓場にて
誰もいなかったため、練習が広々と出来る。
まずはサリューズの使い方を知らないとな。
いつでもどこでも、この確認装置だ。
早速、確認していくか。
確認内容
・太陽剣術の内容
内容
『閃・太陽』
『轟・太陽』
『猛・太陽』
『斬・太陽』
『撃・太陽』
『球・太陽』
『天・太陽』
『滅・太陽』
『殺・太陽』
『豪・太陽』
『乱・太陽』
『舞・太陽』
『烈・太陽』
『壊・太陽』
『光・太陽』
奥義『終焉之太陽』
──これが強いのかどうかは、素人の俺でも分かる。
いや、見る前からすでに分かりきっていた。
もう驚きなんてしない。
だって、見慣れたんだから。
こうとしか言いようがない。
オカシイだろ、と。
奥義っていうのも気になったが、一番有り得ないのは『殺・太陽』だ。
これは、一撃必殺。
自身の持つ剣の半分が相手に当たる、もしくは刺されば、確定で殺すことが出来るという、最強の剣技だった。
──危険すぎるだろ!
だが、自動発動ではないのが救いだった。
俺が意図して発動しないといけないという条件があった。
そりゃそうだと思った。
自動発動とかだったら負ける気がしないからな。
流石にダメだろ、ってことだった。
まあ、これも無効眼と同じく封印だな。
もちろん、奥義もだ。
奥義の効果だが、これもかなりオカシイ。
確定で当たるようになっていて、威力は通常剣技の約数千億倍。
さらに怖いのは、ここからだった。
太陽の高熱をそのまま出すことが出来る。
さらに、終焉の名の通り、終わりを迎える。
太陽の高熱を散開させることが出来る。
ちなみに、太陽の温度は、表面だと六千℃。
中心部だと、確か千六百万℃。
そんな太陽が終焉を迎えると、大爆発が生じる。
中心部の太陽の熱が、散開すればどうなるか。
考えたくもないくらいだ。
これも、封印。
便利だな、と思ったのが『球・太陽』だ。
これは防御で、三百六十度あらゆる攻撃から防御することが出来る。
しかも、その防御の表面は太陽の表面温度大体同じ。
これを生物が受けたら、灰すら残らず消えるだろう。
えげつないが、無効眼よりかはマシ……いや、どっちもどっちか。
防御貫通技以外の攻撃は受けきれるため、防御貫通技さえ警戒すればいい。
──とまあ、俺はアホらしいと思う。
そんなことは後の祭りだ。
なら、今出来ることは練習だな。
──翌日、試合会場にて
そろそろ第1試合が始まる頃なのだが、始まらない。
何かトラブルでもあったのか?
と、そこで実況席からアナウンスがあった。
『えー、準決勝第一試合ですが、ファルド選手が棄権なされましたので、決勝進出はアルバート選手となりました』
──……は?
棄権!?
一体どういうことなんだ?
何か、事情があるのか……?
今すぐにでも聞きたいが、棄権となるとすぐに俺達の試合が始まる。
今から、集中だ。
『えー、では準決勝第二試合を行います、選手の方は、至急控え室に行き、直ちに入場して下さい!』
という実況の声が聞こえた。
よし、と気合いを入れ、ダッシュで向かう。
控え室を通り過ぎ、ステージに直行する。
向こうには既にシュヴァルツが待機していた。
互いに頷き合い、開始の合図を待つ。
『では、準決勝第二試合、開始!』