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第108話 シャルナとミルナ

「ブライアの弱点?」

「はい、実際に戦ったお父様なら分かるかと、聞きに来ました」

「お兄ちゃんってなんか弱いとことかないの?」


世界大会が終わった後、シャルナとミルナは二人でクライアの所に向かった。

その理由はたった一つ、兄であるブライアを追い越す為。

世界最強であるクライアに勝利したブライアより強くなりたいと、本気でそう思ったからだ。


「基本的には、弱点はないな」

「⋯⋯ないのですか?」

「えー、じゃあ勝てないじゃん!」

「最後まで聞け⋯⋯確かに弱点はない、アイツは賢いし、俺を倒す程の強さもあるが⋯⋯アイツは、『緑龍』をあまり知らない、そこに突け込めば、勝機はある」

「『緑龍』ですか⋯⋯?」


『緑龍』──グリーンドラゴン家に生まれた者全員が所持している能力、当然シャルナとミルナも例外ではなかった。

圧倒的な研鑽を積めば勝てると、クライアはそう言っている。

確かに、ブライアは『緑龍』をそこまで使わない、あまり知らなくても何ら不思議ではない。


「じゃ、早速特訓だね!」

「対お兄様用の作戦も練りましょう、ミルナ」

「それはシャルナに任せるよ!」

「役割の分担をするのであなたも強制参加です」

「えー!やだよー」


(⋯⋯ブライアも、最初はこの二人に手こずるだろうな)


クライアは、そんな予感がしていた。



──実践場にて

「ミルナ、前は頼みます」

「はいよ──『龍翔醒輪』」


ミルナが俺に特攻し、華麗な足技を放ってきた。

単純な武術、対処は難しくない。


「──『緑将・天下静謐』」

「──ッ!?」


ミルナの足を受け止めようとした瞬間、体が動かなくなった。

驚いている瞬間に、胸部に一発重い蹴りが放たれる。


「やるじゃんシャルナ!一発入ったよ!」

「油断しないで、絶対に復帰するから」


まさか、こうも簡単に一撃を許してしまうとは思っていなかった。

ミルナだけなら今の攻撃の対処は余裕だった、だがシャルナの行動制限によって有効打になる一撃へと変化させる。

成程⋯⋯想像以上に面白そうな戦いだ。


「よし、かかってこい」

「あの剣、多分ヤバいよね?」

「ええ、ですが考えなくていいです、私が全部対処するから」

「安心と信頼のシャルナだね──『緑兵・嵐影閃撃』」


『聖白陽光武』を構え、ミルナの攻撃を見切る。

背後、上空からの足技で強襲。

シャルナも視界に入れながら、ミルナの技に対応する。


「『緑将・戦場の知恵』」


ミルナの足が光り輝き、威力と速度が増した。

一瞬なら目を離してもすぐ対処できる、今はミルナに集中しよう。


「──『緑将・空景の瞬風』」


シャルナから目を離した瞬間、一気に距離を詰められた。

まずい、挟まれた──だが、まだ対処できる。


「『陽光球閃』」


指を弾くと、俺の周囲前方から陽熱の一閃を出現させた。

二人にあまり傷はつけたくないから、少し温度は下げている。

もし怪我が残っても、何とかして絶対治療してみせるが。


「『緑将・兵の守護』」

「『緑兵・将軍の盾』」


お互いがお互いに防御結界を構築した。

成程⋯⋯兵士と将軍、上下関係を構築しているのか。

そうなれば狙うのは──将軍であるシャルナ一択だ。


「『陽波閃光』」

「『緑将・兵の瞬壁』」


一閃を振り抜くと、シャルナの目の前にミルナが呼び出され、盾として使われる。

将軍は兵を使い、兵は将軍を守る⋯⋯想像以上に厄介な二人だ。

この二人を突破するのは、かなり難しい。

双子だからこそ通じるものもあるだろうし、普通のコンビに比べれば意思疎通は遥かに容易だろう。


「お兄ちゃん、まだ本気じゃないでしょ?」

「みたいですね⋯⋯なら、もっと本気にさせてあげましょう」


シャルナとミルナがそう言うと、とんでもない魔力がこの場全体を覆った。

俺ですら少し恐怖を抱く程に、この魔力は異質だ。


「私の能力の一つ、『策略』によってミルナを動かしてきました」

「私は『追従』でシャルナの意思を感じ取っていたの」

「でも、だからといって二人で一つなんて抜かさない」

「一人だけでも十分強い──それを思い知らせてあげるわ、お兄ちゃん!」


目の前からミルナが消え、上空からその異質な気配が漂ってくる。

上をむくが、誰もいない。

次の瞬間──反射的に、背後に剣を振るっていた。


「──ッ!?」

「私も自信あるんだけど、お兄ちゃんも野生の勘が凄いね!」


完全に、体が勝手に動いていた。

脳で理解するよりも早く、ミルナの攻撃に体が吸い付いていた。

今のはどういう芸当だ⋯⋯?


「──『緑将・統率者の君臨』」


シャルナの背後に数多の魔法陣が展開され、グルグルと回り続けている。

今の状態で砲撃されるのはまずい、ミルナを引き剥がさなければならない。


「『陽光閃熱』」


ミルナが離れたのを確認し、シャルナに攻撃を仕掛ける。

だが、その次の瞬間──俺の動きが固まった。


「特異体質──『天衣無縫』」


緑の羽衣を纏い、多重魔法陣が構築された。

魔法陣は層を重ねる毎に威力を増す、今シャルナが構築した層数は──目算で、十層。

しかも、かなりコンパクトに構築されている。

これ程の技量、一体どこで──


「特異体質──『天下無双』」


背後から、光り輝く魔力がこの場を襲った。

まるで『無双状態』に入ったかのような──いや、これは間違いなく『無双状態』だ。


「おいおい⋯⋯嘘だろ⋯⋯」


正面には多段構築された魔法陣の一斉砲撃が、背後には『無双状態』に入ったミルナが。

コイツら、本当に強い⋯⋯余裕を持っていられなくなった。


「ミルナ、いくよ」

「──『無双天兵・鎧緑武技』」

「──『麗衣天将・緑峰夢衣』」


この特異体質⋯⋯もしかして、親父の遺伝なのか?

明らかに親父と共通点が多い、偶然では済まされない。

なら──俺も本気で相手をしよう。

勿論、怪我をさせない程度に、だ。


「──【絶界】」

「出たね、最強と呼ばれる理由が!」

「絶対に油断は禁物です、ミルナ」


黒い魔力がこの場を襲った。

俺の髪に黒いメッシュが入り、右目は暗黒に染まる。

星の漫遊戯曲門(スターゲート)】は強力すぎる⋯⋯【超越(クロスボーダー)】を使おうか。


「【超越(クロスボーダー)】──【肉体超越(ボディオーバー)】」


普段の俺からは考えられない程の力が、付与される。

一歩歩くだけで地面が割れた。

見た目は変わっていないからこそ、より恐怖がある。


「──『一斉掃射・天将の威光』」

「──『武痕無双天兵』──ッ!」


魔法陣から緑の砲撃が繰り出され、背後からミルナの一撃が迫り来る。

俺の対応は至って単純──全て受け止める。


「──ッ!?弾いた!?」

「⋯⋯受け止め、られた──!?」


左手で魔力砲撃をあちこちに弾き、ミルナの一撃を右手一本で受け止める。

肉体を超越させることで、ここまで効果があるとは思っていなかった。

やはり、力こそが全てを解決するということだろう。


「これで終わりか?」

「ミルナ、抑えて!」


シャルナが魔法陣と揃って、俺に迫り来る。

未だ魔力砲撃は止まないが、全て完全に捌いている、ここからどうするつもりなのだろうか。


「──『天将の知恵、兵士への愛、愚鈍な指揮者である我を許したまえ──連唱』」

「『詠唱引き継ぎ──天将へと捧げるこの身が朽ち果てるまで、あなたに付き従いましょう──連唱』」


『連唱』を成功させたかと思いきや、その詠唱を引き継いだ⋯⋯!?

成程、二人で一つの魔法を『連唱』することで、負担を軽減させている、ということなのだろう。

だとしても、普通の人間はこんなことできる訳が無い。

恐らく、母さんの入れ知恵だろう。


「『詠唱引き継ぎ──轟け号砲、雷よりも速く、炎よりも熱く、水よりも美しく──』」

「『詠唱引き継ぎ──緑龍よ、我々に偉大なる力を与えたまえ──』」

「「『緑武天龍・轟淵獄煉世』──ッ!」」


緑龍が顕現し、シャルナの拳に、ミルナの拳に宿り、俺に襲来する。

この歳の俺じゃ、できない芸当ばかりで、物凄く面白い。

──真正面から、それを受けてやろう。


「──【現実超越(リアルオーバー)】」


右手と左手をそれぞれ突き出し、攻撃に対峙する。

肉体と現実を超越させた俺にこの攻撃は届くのか、実験してみたかった。

激突の瞬間、白煙が舞い──爆音を轟かせる。


「──中々面白かった、本当に強いんだな」

「⋯⋯⋯⋯はぁ、はぁ⋯⋯」

「まさか、あれでも勝てないなんて⋯⋯」


結果は、圧勝。

俺は攻撃を真正面から受け止めても、無傷でその場に立っていた。

だが、俺が二人の歳でこれができたかと言われたら、答えはノー。

二人はこれからもっと強くなる、成長がとても楽しみだ。


「疲れたろ、今日は早く休もう」

「今度こそ勝つから!また勝負だよ!」

「分かった分かった、楽しみにしてる」


二人と一緒に実践場を出る。

⋯⋯その時、真正面に小さな男がいた。


「君がブライア、だね」

「⋯⋯お前は?」

「ユフィスティア・ラディス・フェイン──『十大魔導士』の序列二位さ」


フードを取り、美しい金髪が露になる。

その目は引き込まれるような碧眼で、特殊な模様をしていた。

他の魔導士とはレベルが違う──フィアセルトの聖霊と、同じくらい異質な存在だ。

コイツ、一体何者だ⋯⋯?


「ボクの目に惹かれたかい?面白い目をしてるだろ」

「ああ、確かに面白い⋯⋯お前は一体何者だ?」

「それは『魔導祭』で答え合わせをしよう──君こそ、ボクより異質の存在だからね」


ユフィスティアはそう言って、消えた。

恐らく、転移したのだろう。

シャルナとミルナも、アイツに何か疑問を抱いているようだ。

⋯⋯今は気にしないでおこう。

アイツがどんなヤツなのかは、『魔導祭』まで楽しみにしよう。


「じゃ、帰るか」


今度こそ、二人を連れて部屋まで戻った。

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