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第107話 星の戯曲と蒼天の聖霊

「【星の漫遊戯曲門(スターゲート)】」


暗黒の門、その奥が光り輝く。

星の遊びは始まったばかりだ。


「──『蒼い穹、遠い未来、氷漬けの世界』」


青い目が光り、詠唱が始まった。

恐らく、全力で来るはず──しかも、この気配は『連唱』を使うつもりだろう。

なら、俺も全力で相手をする。


「『届かない声、今はただ一つの願いと共に──連唱』」

「流石は最強、『連唱』は軽く成功させるか」


恐らく、血反吐を吐くほどの努力をしたのだろう。

だが、こうもあっさりと『連唱』を成功させるとは思っていなかった。

俺の『連唱』よりも完成度が高い。


「『溶けない氷、燃えない水、吹きやまない暴風──我の行く道を阻むなら、容赦はしない──連唱』」


そろそろくる、準備をしよう。

そうだな──ずっと鍛えてきたあの技を出すか。


「『悲劇の王女、氷柱の涙──あなたへ、破滅を贈ろう』──『蒼涙の氷雫』」

「【星座の導き(コンストレーション)】──『|雄勇たる赤色分光連巨星ラス・アルゲティ』」


氷が上空から降り注ぎ、俺を襲った。

それと丁度対抗するように英雄を呼び起こして爆発させ、攻撃から身を守る。

神話にもいる英雄ヘルクレスをモチーフとした星座、ヘルクレス座──そこから『ラス・アルゲティ』を持ってきた。

星座をモチーフにしたこの技は使える、もっと極めよう。


「はっ、面白い!『連唱』をこうも容易く砕くか!」

「かかって来い天才、真の天才が相手してやる」

「──さて、ちょっと本気出すか」


──バカみたいな魔力量が、フィアセルトから立ち上る。

青い魔力が至る所で爆発し、生徒達にまで被害が及ぼうとしていた。


「おい、アイツマジか!」

「『連唱』までに留まらず、全力なんて⋯⋯」

「全員もっと上へ上がるぞ、まずい!」


誰が張ったか分からないが、あまりにも強固すぎる結界は壊れない。

やはり、ここは凄い──俺もまだ出せるだろう。


「ビビんなよ」

「誰に口利いてんだ、お前 」


安い挑発、だがそれでいい。

ここは俺も乗ってやる、面白そうだからな。


「『蒼凍の光』」


氷の礫が俺に襲いかかり、光を放つ。

目眩しをしながらの遠距離攻撃、中々厄介なことをするな。


「『熱夏炎焔陽星(アンタレス)』」


氷には熱を、アンタレスを放って視界を晴らす。

そしてその晴れた視界の上空にあったのは、巨大な氷の城。


「『聖女の祈り、許されざる王の独裁、民は怒りに身を任せ、戦いにより龍の封印は解かれる』──『氷聖の咆哮』」


氷の城の頂上から氷の波動が放たれる。

俺に近づくにつれ形が変わり、俺の周囲を囲うような渦へとなった。


「『捕虜の尋問、戦の幕開け、我が敵を殲滅せよ──氷刹風嵐』」


渦が俺に襲いかかり、上空へと打ち上げられる。

身動きが取れないまま、氷の刃が嵐のように降りかかった。


「おいおい、嘘だろ」

「『龍よ、都を燃やし、敵を殺戮せよ──龍焔烈火』」


一部の氷の刃に炎が付与され、炎と氷の刃が同時に襲いかかってきた。

ずっと短文詠唱をしながら畳み掛ける、面白い。


「【星座の導き(コンストレーション)】──『星馬たる特異分光連星(アルフェラッツ)』」


星のように光り輝く俊足の馬が顕現し、全ての刃を蹴散らして進んでいく。

そのまま氷の城へと突撃し、粉々に砕いた。


「チッ、もう壊されたか」

「デカイ的は壊すもんだ」

「貴族の癖に、野蛮だな」


圧倒的に、俺よりシュヴァルツの方が野蛮だろ。

ま、今はそんなこと気にしている場合ではないか。


「『精霊の導き、水面に映る聖なる姿──我の真姿よ、今ここに顕現せよ──真姿・魔煌の聖霊』」


フィアセルトが光り輝き、透明な二対四枚の翼が生えた。

その頭には水色の王冠が捧げられ、虚空から魔導の杖が出現する。


「聖霊⋯⋯へぇ、それが本気なのか」

「私達の一族は皆聖霊の血を継いでいてね、この姿になれば力が解禁される」


聖霊──千年程前に存在した、圧倒的上位存在。

魔物や人間より遥かに強く、魔力も多い。

しかし、突如として姿を消し、その血を引く者は希少とされている。

聖霊の血を引く者はこの世界でも珍しい力を使うようだ、フィアセルトの使う力は一体どんなものなのだろうか。


「『遥か遠くの希望、聖なる力により魔は滅した──今こそ、我らの反逆の時──氷霞天穿』」


──俺の顔の真横に、氷の閃光が放たれた。

間一髪で躱せたからよかったが、あれを食らっていたら恐らく即死していただろう。

あまりにも速く、強い。

後ろを振り返ると、あまりにも強固な結界に穴が空いていた。


「『歌は終わらず、舞は継承され、恩恵は授けられた──今こそ、我らの祝福の時──福音の魔鈴』」


黄金の鈴のピアスがフィアセルトの耳に付けられ、魔力が光り輝く。

恐らく、魔法の威力の強化だろう。

あまりにも聖霊の魔法が美しく、思わず見入ってしまっていた。


「『永遠は終わりを告げ、我らの繁栄は死の宣告により滅亡する──今こそ、断罪の時──砕煌・聖霊の滅詠』」


魔法陣がありとあらゆる場所に展開され、光り輝く魔砲が乱射される。

一発一発が俺を一撃で仕留め得る程、威力が高い。

──全て、相殺しよう。


「星よ、我が意思に応えろ!」


星の漫遊戯曲門(スターゲート)】が光り輝き、俺の魔力を吸い尽くす。

どうせ俺の魔力は無限、好きなだけ吸っていい。


「『星の一節、星の楽章、その光と共に星は生きていく──第一楽章──【怒れる群星乱(スターブレイク)】』」


──【星々の戯曲(スタードラマ)】は、他の技とは一線を画す程の威力を誇る。

全部で十二楽章が存在し、その第一楽章が【怒れる群星乱(スターブレイク)】だ。

この技はとてつもない数の星々を召喚し、物量で倒し切るという技。

これを捌き切るヤツはこの世に存在しない、親父の『無天無双』でもギリギリかどうかというレベルだろう。


「──はははっ!面白い!」

「お前の魔法は全て相殺した、どうするつもりだ?」

「⋯⋯いや、いい。君の実力は分かった」


フィアセルトが聖霊状態を解く。

それに合わせて、俺も【絶界】を解除した。

二割でも圧倒できる程には強いことを実感できた、俺としても戦う理由はもうない。


「君は強い、『聖霊』になった僕ですら勝てるとは思えなかった──つくづく、化け物だね」

「褒め言葉として受け取っておくな」

「ああ、勿論褒め言葉さ⋯⋯『魔導祭』が待ち遠しいよ」

「『魔導祭』?」

「『魔導祭』は一学期に一度、年に三回行われるクラス対抗の魔法の祭りさ。一位になったクラスには栄誉が与えられるんだ」


へぇ、そんな祭りがあるのか。

この学校の強い魔導士とも戦えそうだし、参加してみたい。


「⋯⋯はぁ、やっと終わりましたか。では次は──」


──俺とフィアセルトの戦いが終わった後、実践が続けられた。

俺とフィアセルトは観客席でずっと喋っていたが、コイツは凄く面白い。

実力もそうだが、魔法の知識も凄いのだ。

魔法とは深いものだと、そう思わされる。


「そういえば、なんで世界大会に出なかったんだ?」

「いや、出たさ。予選で負けたけどな」

「予選で?⋯⋯誰にだ?」

「ベル・デフレーション⋯⋯アイツは強い、僕じゃ勝てないだろうね」


ベル・デフレーション⋯⋯やっぱり、アイツはおかしいのか。

ファルド先輩との準決勝を見たが、あのアーガイルに勝利していたからな。

──アーガイルといえば、アイツ、神⋯⋯っぽかった気がする。

神智結晶、何か知らないか?


《ああ、アイツは確かに神だ⋯⋯元、だが》


やっぱり神だったのか。

元神⋯⋯一体、何があったのだろう。

また今度聞くとするか。


「この学校でお前以外に強いヤツって、誰なんだ?」

「そうだな⋯⋯二位のチビ二年と、三位の八年生だろうな」

「どういう魔法を使うんだ?」

「三位は俺の聖霊みたいに、龍を宿して戦う⋯⋯まあ、お前らレインボードラゴンのどこかの血統だ」


レインボードラゴンの血統が、この学校にいるのか。

魔法が強い血筋はブルードラゴン、インジゴドラゴン、パープルドラゴン⋯⋯一体、どの家出身なのだろう。


「二位は?」

「アイツはあんまりよく分かってないんだ⋯⋯入学早々に二位の立場を獲得したからな」


二年⋯⋯シャルナとミルナがいる学年だな。

絡まれてないといいが、無事だろうか。


「そういえば、二年にいる留学生は強いみたいだな」

「シャルナとミルナのことか?」

「そうだ、僕たちの学校でもかなり有名だ」

「有名?何でだ?」

「この国の魔法大会で一位と二位を勝ち取ったからさ、グリーンドラゴン家は武術が強いはずなのに、魔法も強いなんて前代未聞だからね」


アイツら、魔法も使えるのか。

⋯⋯恐らく、母さんの血だろう。

八魔導士第四位の血を受け継いでいれば、魔法も強くなるのだろうか。

後で会いに行こう。


「よし、実践はこれで終わる。明日は休みにするから、各自キチンと休息を摂るように」


明日は休み⋯⋯この学校周辺にでも遊びに行こう。


「フィアセルト、明日この辺を見て回りたいんだが、紹介してくれないか?」

「当然いい、どうせならシュヴァルツ・レッドドラゴンも誘ったらどうだ?」

「そうする、ありがとう」

「構わない、僕も何人か紹介したいから誘っておく」


とりあえず、シャルナとミルナの教室に向かおう。

確か、俺と同じ第三校舎の別棟にいるはずだ。


「ここか⋯⋯失礼します」

「あれ、お兄ちゃんだ!」

「こんにちは、兄様」


俺は言葉を失った。

中央にシャルナとミルナがいるのだが──その前に、六人の生徒が地に伏しているからだ。


「えっと⋯⋯これは?」

「力試しさせて欲しいって言ったから、ボコボコにしただけだよ?」

「私達は何故かこの学校で有名みたいですから、勝負をよく持ちかけられるのです」

「へ、へぇ⋯⋯それで、『十大魔導士』の二位の子ってお前達のクラスにいるのか?」

「いえ、隣のクラスみたいですね」


よかった⋯⋯シャルナとミルナがその二位のヤツを倒していたらと思うと、冷や汗が止まらなかったところだ。

⋯⋯だとしても、魔法を専門に学んできた奴らをこうも圧倒するものか?


「なあ、なんでお前らって強いんだ?」

「えー、知りたい?」

「仕方ないですね⋯⋯じゃあ、戦ってください」

「⋯⋯分かった、それでお前達の力を知れるのなら戦おう」


シャルナとミルナの方も授業は終わってるみたいだ、なら好き勝手しても問題ないだろう。


「お兄ちゃんとの真剣勝負だ!やったー!」

「本気でいきますよ、ミルナ」

「当然!」


──俺がコイツらの魔法に驚かされるのは、一瞬で十分だった。

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