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第106話 精神世界【2】

「ルールは?」

「魔法、能力、特異体質のみ。物理戦闘をするのは無しだ」

「了解、じゃあやろう」


フィアセルトが氷の杖を構えた。

折角なら、俺も杖を使った魔法戦闘をしてみよう。


「それでは、始め」

「──『永久凍土』」


実践場が凍てつき始めた。

これに巻き込まれたら俺も凍る、その前に燃やし尽くさなければならない。


「『熱砂の大地』」


『永久凍土』とは真逆に、焦熱の大地を呼び起こす。

氷結と熱砂が激突し、雹と砂の竜巻が実践場を襲った。


「面白い──『白雪の凍土都市』」

「『灰の大地、焦げた太陽、巻き起こる熱風──千年の時を経て、欠片を拾う』──『廃墟の陽熱都市(ソーラータウン)』」


氷柱と陽光が衝突し、煙が巻き起こる。

高速詠唱でギリギリ間に合ったが、あのレベルの魔法を無詠唱とは、流石だ。


「『静かなる女王の棺、凍土の始まり──花は枯れ、命は尽き果てる』──『積雪の冥』」


普通なら長文で詠唱する魔法を、短文で抑えた。

詠唱をすることで、魔法の力を底上げしたのだろう、今の魔法も無詠唱で放てたはずだ。


「『陽熱よ、氷雪を消し飛ばせ』──『陽解の恵』」


ずっと氷魔法を放つのは、氷魔法が得意だからなのだろうか。

それとも、熱に氷で対抗しているのだろうか。

いずれにせよ、探るしかない。


「そろそろ気づくと思ったぞ──『蒼覇の秘眼(アズール・セグレード)』」


フィアセルトが髪をかきあげ、その美しい目を現した。

『蒼覇の秘眼』⋯⋯どういう効果だ?


「『蒼熱よ、全てを焼き払え』──『青炎熱波』」


青い炎が、俺を襲う。

先程まで氷に固執していたのに、いきなり炎、それに加えて青い炎だ。

あの魔法は恐らく、青色に関係しているのだろう。


「『陽炎烈焼』」

「──『赫滅の壊眼(アキーラ・ケブラー)』」


──魔法が消滅した?

成程、あの赤い目は赤色に関係しているのか。

⋯⋯いや、ここは聞こう。


「その目、どういう効果だ?」

「この目か?この目は色々効果があるが、青いのは寒色系の魔法を強化させる、赤いのは暖色系の魔法全てを消し去る──単純な特異体質だ」


ここまで正直に話してくれるとは思わなかった。

正直に話してくれたせいで、あの目が俺にとって脅威になった。

『太陽』は全て消される、そうだな──実験しよう。

神智結晶、起きろ。


《はいはい、例のアレだな》


──数ヶ月前

⋯⋯この精神世界には、久々に来たな。

俺の記憶が正しければ、事件の魔本を手にした時だったはずだ。


《来たな、ブライア》


そこにあったのは、緑色の神々しい結晶。

一目見た瞬間分かった──コイツが神智結晶だ。


「よう、直接会うのは初めてだな」

《そうだな、何か聞きたいことがあるのだろう?》

「ああ──【絶界】について教えろ」


『無天無双』を遥かに凌駕する力、【絶界】──あの力はこの世界を滅ぼし得る、力の制御ができなければ世界は破滅だ。


《魂と魂が共鳴した時に発生する絶大な力、それを【絶界】と呼ぶ──お前が考えてる通り、この力は世界なんて簡単に滅ぼせる──その気になれば、この宇宙すらも再構築できる》

「⋯⋯宇宙の、再構築⋯⋯?」

《この宇宙の始まり──ビッグバンの再発動だ》


宇宙の誕生した理由は、ビッグバンという大爆発だ。

それを、再発動できる──いや、再発動?


「待て、それだとまるでビッグバンを発動したヤツがいるみたいな言い方じゃないか」

《そうだ、始まりにして頂点──神の皇帝カオスが、この宇宙を誕生させた》


神の皇帝、カオス──一体、どんなバケモノなのだろうか。


《他にも神王が五体程いるが、今は省こう──【絶界】を発現できた者は皆、神になる資格を与えられる⋯⋯無論、お前もだ》

「神に、なれる⋯⋯?」

《ああ、この世界を意のままに支配し、制御する、正真正銘最強の種族だ。今は少しだけだが、お前にも『神の性質』ができてきている》

「『神の性質』って何だ?」

《万物一切全てを支配し、創造し、破壊する、何者も抵抗はできない程の力──『神智結晶』も、それに当たる》


ということは、【絶界】とはまた別の力なのだろうか。

あまりに別次元すぎる話で、俺にはまだよく分からない。


《完全な神になるにはあともう少しかかるだろう、その鍵となるのは──『事件』だ》

「──は?『事件』が鍵になるのか?」

《元々、人が神になること自体がおかしい話だ。昔に一度だけあったんだが、『事件』を全て解決した者が神へと昇華した。そしてお前も『事件』を所持している、恐らく合っているはずだ》


図書館で偶然手にしたあの魔本が、そこまで重要な物だとは思っていなかった。

あれは安易に触れていいものじゃなかった、これからはあれに似た何かがあれば注意しよう。


《俺の力も未だ万全とは言い難い、本来なら何度でも魂の共鳴を行えるが、間隔を空ける必要があるみたいだ》

「ということは、今は【絶界】を使えないのか?」

《偶然魂の共鳴が起こらない限りは使えないな》


あの力を無しでは、正直世界最強は名乗れない。

世界を滅ぼす力なんて別に必要ないから、どうにかして【絶界】の力を扱えるようにしたい。


《⋯⋯何を考えているんだ?》

「いや、何か条件を結んで【絶界】の力を扱えるようにはならないか、と思ってな」

《条件⋯⋯面白い、何を提示する?》

「本来の二割の力、それ以上の力は一切出せない、これでどうだ?」

《⋯⋯もう一つ、その条件下で【絶界】を使用している間は能力、特異体質といった類を一つのみしか使えない、これでようやく条件を結べる》

「かなり厳しい条件だが⋯⋯無いよりはマシだ」

《──面白い⋯⋯こんな条件で結ぶと、そんな容姿に変わるんだな》


そう言われて、鏡を創り出す。

そこに写っていたのは、緑の髪に黒のメッシュが入っており、右目が暗黒に染まっていた俺だった。


「結構変わったけど⋯⋯常時このままじゃちょっと嫌だな」

《現実世界だといつでも切り替えられるから安心しろ、精神世界では残念ながらそのままだ》

「現実に影響がないならいい」


どうやら、上手く条件を結べたようだ。

本来の力の二割といっても、そこまで落ちるはずはない。

【絶界】という力があるというだけで、世界最強の証明は十分だ。


《先に言っておくが⋯⋯お前があの大会で見せた力は、四割にすぎない》

「──あれで、四割?」

《【絶界】を発現させた者の効果は全員違っていてな、お前は特に異質だ──他の者なら、あれで六割はあった》

「【絶界】の効果って、全員違うのか?」

《ああ、【絶界】はそれぞれに合う四つの異能を手にする、お前が大会で見せた【超越(クロスボーダー)】や【星の漫遊戯曲門(スターゲート)】はそれに含まれる》

「じゃあ、残り二つあるのか?」

《あるが、今は抑制されている⋯⋯お前が真に『神の性質』を手にした瞬間、完全に解放されるだろう》


それ程までに【絶界】は絶大ということか。

『神の性質』がどれ程のものか、楽しみだ。


《そういえばお前、能力が進化した感触はあるか?》

「いや、ないが⋯⋯進化しているのか?」

《ああ、今は『太陽』と『創成』だけみたいだな》


『太陽』と『創成』──何か、増えている?

『太陽』に『原子構造完全掌握』、『創成』に『世界創成の神話』と『創成権力』が追加されていた。

一体、どういう──いや、『原子構造完全掌握』ってかなりヤバくないか?

前世の頭脳と身体能力が完全にこの体に宿ったお陰で、今の俺には圧倒的な策を練ることができる。

『原子構造完全掌握』は、恐らく俺の頭脳の根幹になるはずだ。


《お前の過去の記録はやっぱり面白い、この世界でも随一の天才だ》

「勝手に俺の過去を覗くな──待て、やっぱり?」

《──そうだ、帝国でお前の危機を救ったのは俺だ》

「おい、もしかしてこの世界に呼んだってのは⋯⋯」

《俺だ》


──神智結晶が、俺をこの世界に呼んだ?

あの時言っていたのは⋯⋯世界の危機を救う者になる、だったはず。


「俺が世界を救う理由、教えろよ」

《そうだな⋯⋯全て教えても後の未来が面白くない、なら一つだけ教えよう──お前の裏で暗躍している組織を潰さなければ、世界は破滅の道を辿る》

「⋯⋯もしかして、如月や長月とかの、アイツらか?」

《そうだ、奴らを全員殲滅しろ──でなければ、お前に未来はない》


へぇ⋯⋯アイツら、面白いことしてくれるじゃねえか。

天才の予備(スペア)の分際で、舐めた真似だ。

──もしかして、アイツらが付き従う存在って、俺達六人の天才の中にいるんじゃないか?

アイツらより遥かに上位の俺達六人なら、アイツらが従う理由もある。

誰が裏切り者か──俺が直々に手を下してやろう。


《さ、今日はもう帰った帰った、やかましい奴らが来る気配がする》

「お、おう⋯⋯分かった」

「誰がやかましい奴だって?」

「そうよ、塊の癖に生意気な」

「皆さん落ち着いて下さい、ブライア様の前ですよ」

「獣と聖龍は野蛮だな、全知全能を見習え」


神智結晶が四人の話をすると、ここに割り込んできた。

確かにこの四人がいると騒がしくなる、今の間に去るのが吉だろう。


「じゃ、俺はもう向こうの世界行くから」

「もう帰るのか?向こうでも元気でな」


シャイフォンが俺に声をかけ、四人が俺に向かって手を振った。

【絶界】やこの世界について色々知れた、収穫はあったな。



──魔法学校実践場にて

アレを使う──起きろ、神智結晶。


《はいよ──条件締結》


俺から黒い魔力が立ち上るのを感じる。

あの時みたいに緑髪に黒いメッシュが入り、右目が真っ黒に染まっているのだろう。


「それは世界大会で見せた技──だが、不完全だな」

「へぇ、そこまで見抜くか」

「だが、それは俺を遥かに凌駕するのは間違いない──来い、相手をしてやる」

「ああ──【星の漫遊戯曲門(スターゲート)】」


暗黒の門が俺の背後に現れた。

純粋な超高火力のこの技は、使いやすく、殲滅力も尋常じゃない。

それに何より──使ってて楽しい。


「反撃の時間だ」

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