突然ですが、今日から私は死神です。【第一章】
第1章【死神になった日】
—ジリリリリリ…
年季の入った目覚まし時計のベルが鳴り目を覚ます。
「あぁ…。今日も目が覚めてしまったか…。」
俺の名前は神谷太郎
33歳。バツイチ。それでいて現在ニートだ。
おい。そこの読んでるお前ら。名前が神谷太郎だからといって
「タイトル回収早すぎワロタ、はい、乙。」
とか思ってないか?
馬鹿な事を!誰が神谷太郎だ。絶対、神なんかやってやんねーぞ!
「はっ。笑えるね。妄想も大概にしろってな。俺が神になったら、リア充から消すぞ?マジで。」
そんな事を1人で呟いている。正直言って悲しい。
さて、今日はバイトの面接だ。近所のバイトは不合格通知で制覇したし、この辺りのお店には行きにくいから、今日は電車で2駅先のお店で面接だ。交通費は支給されるし、満員電車さえ我慢できれば理想的な所だ。
慣れない背広に袖を通し、鏡に向かってドヤ顔をキメてから
パシッ!
両手で顔を叩き気合いを入れて駅へ向かう。
「えーと、面接は11時からだから、この次の電車に乗れば10分前には着くな。ムフッ。我ながら上出来!」
そうこうしているうちに、ホーム内に電車通過のベルが鳴った。
ージリリリリリ…
「何だか、聴き覚えのある音だな。」
柄にもなく片手を顎に当てて考える。
「そうか!親父から貰った目覚まし時計の音と一緒だ!」
何の解決にもならないのに、名探偵気取りになる自分が嫌いではない。
ーその時だった…
ドンッ!
何かにぶつかって線路に突き落とされてしまっていた。
…
気が付けば、高い場所から下を見ていた。何やら、強盗を働いた人物に偶然にもぶつかり、線路へ落ちてしまった人物がいるようだ。
「背広を着ているな…。サラリーマン?」
それにしては、体に合わないスーツを着ているようだった。
「あぁ〜…。違う。これ、俺だわっ…!」
異常な程に冷静な自分がいる。
痛みもなく死ねて良かった。いや、俺みたいな人間なんて死んで良かったのかも。そう思っていた。
「さて、お約束だと、ここで天使がお迎えに来るんだよな?ん〜?やっぱり、さよならパトラッシュって言うべきかな?プークスクス!」
しかし、迎えにやって来たのは銀髪で色白く、黒色のフード付きローブを着た、ちびっ子ロリフェイスの変人だった。
「え?何こいつ?見た目は可愛いのに、ヤバいくらい厨二くさいんだけど…。しかも、鎌に乗ってるし。ジブリかよ…?いや、マジブリと言うべきか…?」
すると、銀髪少女は話し始めた。
「お主…。心の声が漏れておるわ。何ともまぁ…痛いげな奴よのぅ。オホン!改めて、ワシの名は朧じゃ。分かっておるかと思うが、お前さんは死んだ。しかも、ミンチ状にのぅ。」
俺は悟ってしまった。ぶっ飛んでる奴が来たと。
しかし、この少女は語り続けた。
「お主の死は、想定されていなかったもの。じゃから、日本死神協会は慌てておるのじゃ。ワシも緊急に派遣されたもんだから、お主の事は何にも知らんのじゃ。」
その少女は、そう話しかけた。
「ふぁっ?死神?君、天使じゃないの?じゃあ何?俺は死神に殺されたわけ?」
少し怒りをあらわにして問いかけた。
「お主は何か勘違いをしておるようじゃのぅ。死神は死の宣告するが、死の宣告を受けた者の命を奪ったりはせん。むしろ、いずれ来る死を受け入れてもらい、余命の限りを尽くして欲しいと願っておるんじゃよ。しかし、お主の今回の死は日本死神協会にとっても例外中の例外で、どうするか決めかねておるのだよ。」
ロリっ子死神は下唇を噛み締め視線を落とした。
そして、目を合わせないまま話した。
「簡潔に話そう。お主には2つの選択肢がある。1つは現世を彷徨う道。もう1つは、死神になる道じゃ。」
どうしてもっと顔を上げて話してくれないのだろう?
どうして目を合わせてくれないのだろう?
何故、そんなに悔しそうなのだろう?
俺には理解出来なかった。
俺は死んで正解だった。死ねて良かったんだ。そう思っていた。すると、朧が話した。
「お主は人として死んだが、これからどちらの選択をするにしても霊体、もしくは死神として生きる続けなければならん。良く言えば永遠の命だが、悪く言えば地獄でもある。」
そんな、悲しげな声と目で朧は俺を見ていた。
「あぁ〜!馬鹿みて!俺なんて普通に死ねたら良かったのに…」と言いかけた途端、話を割るようにいきなり
『はい。御用は何でしょう?』
何か、知らない声が聞こえた。
「おい。そこのロリ神…じゃなくて、朧ちゃんだっけ?今、何か言った?」
俺は疑い深い目でロリ神を見つめた。
「あぁ。すまぬ。こいつは神PADといって、人間の寿命が分かる神アイテムじゃ。だが、困った事にご返事が多くて困ったアイテムなのじゃ。」