二話
熱い。
肌に感じるのは熱さ。
足元に感じるのは冷たさ。
何処だろう此処は。
氷が炎を纏い、全く溶ける様子が無い?
変なの。
私は自分の身体を見た。
大事な部分は映ってないけど、服は身につけて無かった。
「・・・此処は何処なの?」
私は歩く。
燃え盛る炎と、周囲で形を保つ氷の結晶が、なんだか神秘的に思えてきた。
「誰か・・・誰か居ませんか?」
私は歩きながら、周りに向かってそう言った。
その時だった。私の周りに変化が起きる。
炎が私の目の前で螺旋を絵描き、氷が冷気となって炎とは逆の螺旋を描き、軈て炎と氷は一つになる。
二つの正反対の渦が一つとなり、軈て一匹の鳥の姿へ成長した。
「ひっ!?」
『落ち着きなさい』
私は腰を抜かして倒れてしまうが、鳥は私に話し掛けてきた。
『貴女は先程まで死にかけて居ました。しかし、貴女が死ぬ事を拒む意志が、私と呼応したのです。『モンスターガールズ』により倒される前から怪獣結晶のままであった私は、死して尚生きたいと願う貴女の生きる意志に応え、こうして融合し蘇生したのです』
モンスターガールズ?怪獣結晶?何?どういう事?
全く分かんないんだけど?
「ねえ、モンスターガールズとか怪獣結晶とか、なんかよく分からないんだけど?」
『では、怪獣はご存知ですか?』
「・・・あの時、目の前に現れるなんて思わなかったよ。ニュースに出てくる以外はね」
ニュースでしか知らなかったし、自分が遭遇するとは思わなかった。
警報が間に合わずに現れるなんて、そんな事の方が実際に多いのかも。
怪獣。
それは、この地球に出現する謎の大型生命体であり、人類とは絶対に共存出来ない破壊生命体。
何処から来たのか、何故人類に敵対するのかは不明。
大型生命体と言っても、大きさは種類毎に違う。
奴等は大きさがあればあるほどに強いというシンプルな物で、過去に登場したある個体は全長二万メートルという、エベレストも真っ青な大きさを持っていた。
それ以上は確認されてないけど、出現するかもしれないのだ。
小さいなら弱い?馬鹿言わないで。
過去に二メートルレベルの怪獣が現れた時、自衛隊の戦車や戦闘機が出撃して一斉攻撃を仕掛けても、全くダメージが無かった。
過去に二メートルの一個体に向かって核ミサイルをも放たれたけど、失敗。
生きてました。しかも全く無傷。
放射線も無意味。
他の大きさの怪獣にも試したけど、無意味。
核ミサイルでも倒せなかった。
はっきりしたのだ。
人類は怪獣に勝てない。
もし怪獣が現れたなら、逃げるしかない。
ニュースで見た時は、呆気に取られたよ。
何時しか私は、学校に行くのが怖くなった。
自宅に籠ってた。自宅なら安全と思ってたから。
しかし実際は逃げる暇もない。
私みたいに、突然現れたせいで逃げられずにやられるのが現実だ。
「・・・とまあ、此れが私の怪獣について知ってる事」
『把握していたようで何より』
「・・・で、怪獣結晶って?モンスターガールズというのは?」
しかし、此処で私の身体に浮遊感が襲い来る。
「うわぁ!?ま、待ってよ!まだちゃんとお話もしてないのに!」
『心配入りません。夢から目を覚ました時に、貴女の周りには沢山の人達が居ます。その人達が、私以上に説明してくれます』
「待って!名前だけでも教えてよ!」
『私はツヴァイフェニックス。炎と熱、氷と冷気を支配する、人類の女王』
「女王様?ま、待って!」
私は光に包まれた。
その時にツヴァイフェニックスと名乗った鳥は居らず、背中に炎と冷気の翼を持った美少女が居た。
訳も分からないまま、私は光に包まれて何も見えなくなった。
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目を覚ますと、私はベッドで白いシーツと布団のあるベッドで眠っていた。
ベッドはとても寝心地が良いシーツと柔らかい低反発の為か、起きてても気持ちいい。
「此処、何処?」
病室だ。
しかし窓は無い。
ベッドは四つもある。
そんなに広くない。
「あっ!やっと目を覚ましたんだね!」
聞き覚えのある声がした。
私は声のした方を見た。
其処にはスク水を着た少女が居た。
「気が付いて良かったよ!」
「えっと・・・うん。私、死んだかと」
「うん。君は死にかけたけど、助かったんだよ。あっ、自己紹介がまだだったね。私は愛香。年齢は十二歳だよ」
「あっ・・・私より二つ年下なんだ」
「ええっ!?そうだったんだ!あっ、君の名前は聞いてなかったよね」
「あっ。そうだったね。私は芽々。年齢は十四歳だよ。前まで学校に通ってた」
「そうなんだ。でも、どうして家に居たの?」
「いつ怪獣が現れるか解らなくて、それで怖くなって引きこもってたんだよ。そしてああなった」
「避難警報聴かなかったの!?」
「避難警報?」
「鳴ってたじゃんか!その時はパジャマ着てたから、まさか寝てたの!?」
「・・・ごめんなさい。寝てました」
私が逃げられなかったんじゃなくて、逃げなかっただけって事になる。
「何考えてんのさ!しかも怪獣の出現確定ポイントで!」
怒られた。
でも当然だと思う。
現に私は死にかけたんだから。
分からない単語も出てくるけど、何を言いたいのかは理解出来る。
私が怪獣が絶対に出てくる所に居た事を怒ってるのだ。
私が呑気に寝てたのが悪いよね。
「もう・・・でも君は助かったんだよ。怪獣結晶となって宿主に相応しい者に憑依する怪獣『ツヴァイフェニックス』によってね」
「・・・ツヴァイフェニックス。私、夢の中で見たよ。炎と氷の翼を持った鳥だったの」
「っ!成る程、なら話は早いね。歩ける?」
「う・・・うん」
私はベッドから降りた。今の私は裸姿だ。流石に、何か着ないと恥ずかしい。
「芽々の着替えは此処にあるからね。着替えたら、私が教室に案内してあげる」
私は愛香から服を受け取る。
服というか、ビキニだよ。
私はそこそこ胸はある方だし、Dカップ位だけど、それでも際どいし恥ずかしいと思う。
私は身に付けた。
「おおっ!良い身体してるね!エチエチだし私の好みだよ~!」
「十二歳の発言とは思えないね」
「ごめんごめん。じゃあ芽々。早速行こうよ」
「うん」
こうして私は愛香に案内されて、病室を出た。
此れから私は、何をすることになるのだろうか。
元の日常に、帰れれば良いんだけど。
怪獣紹介
ツヴァイフェニックス
・体長不明・体高不明
・体重不明
外見
炎の翼を左に、氷の翼を右に持つ、大鷹の姿をしている。
能力
現時点では不明。炎と熱、氷と冷気を支配するのは間違い無い。