桜色に光る
不思議なご縁と言っていいんでしょうか。
今日、急におばけが見えたと思ったら、玄関先でイケメン双子に挟まれて立ち話です。
「鏡子に会ったんだってね。可愛かっただろ」
同じ顔でも表情が結構違います。
「はい。可愛らしかったです」
保健室の女の子の可愛い笑顔に、先輩が頭をなでてあげていた優しい仕草を思い出しました。
「あの、槐先輩はいつ頃から、その、見えるんですか?」
私の言葉に二人が顔を見合わせます。
「出来れば名前で呼んでくれる? 返事に困るからさ。
愛想のいい方が駆。俺ね。
愛想のない方が至。このはちゃんが保健室で会った方」
なんか、すごく的確な見分け方だと思います。
「その前にこっちも聞きたい。
君の左手。何があったんだ」
至先輩の視線が刺さる。
その左手を自分でチェックしてみるけど。
何にも、変化がない様な気がします。
クエスチョン顔の私に二人が顔を見合わせました
「とりあえず上がって。玄関先で話すには長話になりそうだし」
このため息は、至先輩ですね。
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十二畳くらいはあるのかな。
通されたのは大きめの、おそらくお二人共用の和室のお部屋。
男の人のお部屋って、初めて上がりました。
「俺たちは物心ついたころにはこんな感じだったんだ」
和風のお部屋にはあんまり合わない、可愛らしいミニテーブルを囲んで座ると、駆先輩が口を開く。
「寺の息子だし、人より霊力みたいなのが高いのかなー。くらいの気持ちしかなかったんだけど、何かの拍子に至と夢の話になった時にさ。
全く同じ夢を見ていることを知ったんだよね」
駆先輩の視線が、お向かいに座る至先輩を捉えます。
「夜って感じじゃないんだけど暗い所にいて、大きな桜の樹を見ているんだ。
巫女さんみたいな人が立っててさ。
彼女のそばにはもう一人の女の子。
左手を重ねると桜色の淡い光が女の子の中に吸い込まれていく」
お二人の話が頭の中に入って来ているような気はするんですが……私の頭は理解にたどり着く前に、パンク寸前ですぅ。
少し身を乗り出した駆先輩が子供のようにワクワクした顔で笑いました。
「このはちゃんの左手。まさにその桜色に光って見える。
もしそんな夢を見たら、後ろを振り返ってみて。
俺たちも手を振ってあげるからさ」
もう、見ました。