刀隠れ 3
静けさを取り戻した理科室は、沈む日の光の中に次第に影が濃くなっていくみたいです。
「とりあえず、ありがとう。かな。
現状打開の糸口にはなりそうだし」
「……はい」
至先輩の言葉になんて答えていいか、わかりません。
抜けない刃なんて、結局ないのと一緒です。
急に明るくなった室内に、電気を点けてくれたハルオくんとボン太くんがドタドタドタっと駆け寄ってきてくれました。
「姉ぇさんすごいやん」
「ほんま、感動でっせぇ」
目がきらきら輝いて見えます。作り物ですけど……。
「ありがとう……」
きっとぎこちない笑顔でした。
なんか、こんな自分が本当にイヤです。
私が頑張れば、皆さんの助けになれるかも知れないのに。
短い電子音が室内に響いて至先輩がブレザーのポケットから取り出したスマホを目を走らせました。
「保健室から消えた彼女。夾竹桃に向かっているみたいだ。
ニノが見つけてくれた」
すぐに動き出す駆先輩に、他の物の怪さんたちも廊下に飛び出して行きます。
どうしよう。
お手伝いしたいって言ったのは、私の方なのに。
とっさに動けなかった私の手を、キュッと掴んでくれる優しい温もり。
視線を下すと、小さな鏡子ちゃんの可愛らしい笑顔に胸がズキっとしました。
私に座るように手を引いた彼女に促されるまま床に膝をつくと、小さな身体全体で私を抱きしめてくれました。
小さい子特有のいい匂いに、優しい温かさ。
温かい。
見えない人の方がきっと多いんです。
私も先週まではそんな中の一人でした。
でも今は、彼女たちが「いる」ことを知って、大切な人たちの力になれるかも知れなくて。
こんな私でも、強くなれるかも知れなくて。
鏡子ちゃんをギュッと抱きしめて、私たちはお互いの顔を見つめ合うと、にっこりと笑い合いました。
「ありがとう」
不思議と涙は出て来ません。
心がすごく落ち着いて、大きく深呼吸をすると胸の中に深く青い、静かな湖面の上に立っているような凛とした空気を感じます。
急いで廊下に出ると、至先輩、駆先輩を始め皆さんが待っていてくれました。
一人じゃない。
みんながそれぞれやれることを探しているんですよね。
私は私の出来る精一杯を。
皆さんの力を借りてやり切りたい。




