白い鬼
今年も見事な桜を咲かせて、今は葉桜になってしまった境内の桜の樹。
樹齢も相当なんでしょうけど、樹の寿命って凄いです。
夢の中の巫女がそうしていたように、そっと伸ばした指先は、焦げ跡のある幹には触れられずに止まります。
やっぱり、なんか怖いです。
さわさわと風に揺れる桜の若葉が訪問者を知らせてくれた気がして、なにげなく振り返った私の視界に至先輩と駆先輩が映りました。
「寺の息子に神社の娘とはね」
辺りを見回しながらつぶやく駆先輩。お二人が近づくにつれ、背後の桜の樹が何だかとっても気になります。
なんて言うか、桜が自己主張してきている。みたいな。
「すごいな」
桜を見あげる至先輩の声には、幻が現実になった畏怖のようなものも感じました。
私を挟んで左右に立つ先輩と桜に向き合うと、まるで桜が風を吹かせたような不思議な空気に髪がなびいていきます。
夢に出てきた桜の樹。
「あれから、他にも夢を見た?」
この前も聞かれた質問です。至先輩の言葉に首を振った私に、お二人の視線が頭の上で交差するのを感じました。
「俺たちはもう一本見ている夢があるんだ」
桜の樹を見つめた駆先輩の声に、続く至先輩の言葉。
「日本刀を持った巫女と、仲間の男。二人と戦う白い鬼。
場所はまさにここだ。
この桜の樹を焼いたのはあの白い鬼。
鬼に取り込まれる仲間の男。
前世。って言うものがあるのなら。多分俺と駆、どっちかはあの白い鬼だ」




