プロの作家としてデビューしたとき今の仕事をやめるべきか問題
プロになっても今の仕事はつづけましょう。
そんなことを言うプロの作家が嫌いだった。
最高に不愉快だし大きなお世話でしかない。
この話題は、芸能人の不倫報道と似ている。
誰も聞いちゃいないのに、定期的にしゃしゃり出てくるところなんか特に。
そもそも、わざわざそれを言う理由はなんだ?
厳しい現実を知っているからこその助言?
絶対に違うと断言していい。
あれはただの自慢だ。
なぜなら、それを言ってくるのはプロとして活躍している専業作家か、作家以外の仕事でも成功している異世界人しかいないからだ。
自分は好きなだけケーキを喰うけど、きみらはそのパンの切れ端を生涯大切にしてなさいと、成層圏あたりからの上から目線。
お心遣い痛み入る。
今この業界は極めて困難な状況で作家を目指すなんて無謀だと、作家の部分を飲食店かプロレスラーに変えても成立するようなことを、それこそ文章の書き方教室にでも通えばいいのにと、まどろこしくご教示してくる。
そんなやつらの次なる行動パターンは、人間をロックオンしたエイリアンよりもわかりやすい。
そう。創作論を語りはじめるのだ。
人目を惹きつけるタイトルの決め方とは?
最初のページで提示する情報のあれこれ。
書きはじめた作品は『必ず』完結させろ!
説明をするんじゃない、描写をするんだ!
とにかく書いて読んで書いて読んで書け!
などなど、桜はバラ科の植物なんです程度の知識を自分だけが発見した驚愕の事実みたいに披露していただけるのだから恐れ入る。
そんな風物詩を目にした俺のやるべきことは決まっていた。
そいつの名前を、もうこいつの本は買わないリストに追加してさようなら。
いつからだろう。
新人賞に応募しても一次選考通過者を確認しなくなったのは。
いつからだろう。
web小説を投稿してもPVの数や評価を気にしなくなったのは。
五年、十年と新人賞に応募をつづけても、一次選考通過者に自分の名前を確認したことは一度もなく、投稿サイトに全五十話の長編を何本か掲載したところで、どれも総PV数は一桁で、全話読まれたものは一本もなく、評価も感想もゼロ。
俺みたいなやつは、よくこんなことを言われる。
プライドを捨てて、テンプレを書け、と。
何もわかっちゃいない。
書かないんじゃない、書けないんだ。
流行を自作に取り込めるのは妥協でも打算でもなく、純粋な個性であり才能だ。
同じ人間なんだから努力すればできるはずと疑わない方々は、もれなくスーパーモデルみたいな体型でアインシュタインなみの頭脳を持ち、歌声はマライア・キャリーなんだろうか。
それに売れ線なら一定の数字がついてくると考えるのは危険な誤解だ。
世の中、俺みたいに好き勝手をして相手にされないやつより、トレンドを分析してユーザーの望みに寄り添って作品の完成度も低くないのに、見向きもされないやつのほうが圧倒的に多数派だからだ。
別にいいだろう。
俺はプロじゃない。
誰にも迷惑をかけてない。
このままずっと自分の好きなことだけつづけて、それに見合った評価を受ける──つまり、何も受けとらない日々がつづくだけ。
そうあきらめていたものだから、ある日、新人賞の受賞と書籍化の打診が同時にやってきたときは、盆と正月が一緒にきたというよりも、ドロップキックとバックドロップを同時に喰らったような顔になってしまった。
二年後。
『自分の好きが誰かの好きになる日が必ずくる』
その二十文字が生まれつきの痣みたいに胸の奥にあったから、何も信じられなくて、希望も持てなくて、あきらめていても、つづけることができた。
プロの作家としてデビューしてからというもの、俺の日々は快調だった。
二つのシリーズを同時進行させ、おかげさまでどちらも好評を得て軌道に乗っているし、二冊出した一般文芸のうちの一つが文学賞の候補になっている。
少なくともこれまで食べたトムヤンクンの数よりは新人賞で俺を落とした出版社から、うちでも書かないかとお声掛けもいただいた。嬉しくないわけがない。
尊敬する先輩の作家先生方にお会いしては、SNSで発信されていた創作論や、作家として食べていく方法論を示された著書のおかげで今の自分があると感謝を伝えることもできた。
媚びてる? いいや、ただの事実だ。
だったら最初のあれはなんだと問われれば、あれも事実。
でもあれは、かつての俺だ。
うまくいかなかったとき、思ってもないくせに無理やりポジティブ思考でいるよりも心に巣食う闇を膿として体外に出したほうが健全で、そっちのほうがより早く次に取り組めることは科学的に証明されている。
大抵のやつはその膿をSNSに書き込んで全世界に見せびらかすから炎上するのだ。
溢れ出す闇は紙に書くのが正解なのだ。雰囲気が出るので個人的に筆ペンをおすすめしたい。そしてデビューが決まったその日、その紙は職場で木っ端微塵にした。
『Do you know what I love about pen and paper? Nobody can hack into this shit.』
(紙とペンの何が素晴らしいかって? 絶対にハッキングされないところさ)
と、イーロン・マスクの次に金持ちの男も言っている。
さて、本題はここから。
振り込まれた印税の数字と見つめあいながら、ふと思った。
そろそろ今の仕事をやめて、作家一本で食べていけるのでは? と。
今やってる仕事には満足している。
職場のみんなとは良好な関係を築けているし、給料だって悪くない。
きつめの肉体労働だけど兼業でもちゃんとやっていけている。
経済的かつ客観的に見れば、すぐにやめる必要を感じない。
現状維持は間違った判断ではない。
だけど俺は作家としてこれからの人生を歩んでいきたい。
主観と直観という、大きな決断を下す際に真っ先に疑うべき本能が、愚直に作家になれと頭の中でタンバリンを鳴らしている。
実に愚かで贅沢な悩みだ。
プロの作家になって自分の本が書店に並んだその日に辞表を叩きつける妄想を繰り返してきたというのに、今ものうのうと出勤して汗を流しているのだから。
夢が叶えば全てが上手くいく、なんてのはただの希望的観測でしかなく、いざその立場になってわかったのは、悩みの種が一つ増えただけだった。
自分が仕事を辞めると、職場のみんなに迷惑がかかります。どうしましょう?
そんな優柔不断をネットで見るたび、コインか花占いで決めろよと思っていた。
財布から五百円玉を一枚取り出す。
表なら作家一本、裏なら兼業というルールでトス。
キャッチ──表。
「…………」
くそっ、なんで嬉しくないんだ。
物語を書くことに人生をささげたい。
だけど今の仕事は嫌じゃない。
どちらも嘘じゃない。
口の中に塩水とシロップをどばどばと流し込まれて、いつまで経っても、しょっぱくも甘くもならない。そんな気分だ。
そうやって煮え切らない感情だけが肥大していたある日、俺は職場でミスをした。
作家じゃないほうの職場だ。
作業中に新作のいいアイデアが浮かんで、そっちに意識をもっていかれていると。
「危ない!」
すぐそばで仲間が叫ぶ。
そこで俺は、はっと我に返る。
目の前では、石油で茹でたように真っ黒で巨大なウサギの怪物がその長い耳を刃と化して俺に襲いかかってきているところだった。
ウサギの刃よりも先に、俺の繰り出す回し蹴りがカウンターでそいつの眉間に叩き込まれ、蹴飛ばされたウサギは、はるか後方にあった雑居ビルの壁に衝突して背中にクレーターを作ったのちに消滅した。
「やったな、レッド!」
親が見たら泣くかもしれないけれど、子供たちからは大人気のピッチピチでピッカピカの緑のスーツに全身を包んだ男が俺の肩を叩く。
「──ああ」
俺はグリーンに声を返す。
「だけどお前、このところずっと変じゃないか?」
ブルーが大雑把な疑問をぶつけてくる。
「……変って?」
俺はわざとらしく、首をかしげる。
「私も思ってた。なんか、ぼーっとしてるときが増えてるっていうか」
ホワイトがブルーに同意している。
「…………」
俺は何も返せない。
無口なピンクも黙ってじっと、俺に視線を向けていた。
突如、宇宙に出現した暗黒の月、ダークムーン。
その支配者であるダークかぐやが地球に宣戦布告をした。
地球の平和を守るため、大いなる意思に選ばれた五人の地球人。
五人は力をあわせ、この星を守ることを決意する。
地球防衛戦隊エクスタシーアース。
そのリーダーであるエクスタシーレッド。
それが俺の普段の仕事である。
イギリス。大英図書館地下2000階。エクスタシーアース秘密基地。
メカニカルな円卓を囲い、俺、ブルー、グリーン、ホワイト、ピンクが謎の科学力で無駄に発光しているゲーミングチェアめいた椅子に腰をかけている。
「さて」
円卓の上に両肘をつき、組んだ両手の上に顔をのせて重々しい雰囲気を醸し出しながら、ブルーが語りはじめる。
「今回もみんなの力で地球の平和は守られた。これから打ち上げといきたいところだが、その前に一つ話がある。最近のレッドについて、だ」
四人が一斉に俺を見る。青、緑、白、ピンクの無表情。
ブラック企業の圧迫面接でもここまでの威圧感はないんじゃないだろうか。
「なんというか、敵と戦ってるときも心ここにあらずっていうか、上の空になってることが増えてないか?」とブルーは言う。
「変身のタイミングもレッドだけズレてるよな」そう指摘したのはグリーンだった。
「なにか、心配なことでもあるの?」ホワイトは優しい。
「…………」いつも無口なピンクだけど、鋭い視線を俺に向けているのは漆黒のゴーグル越しでもわかる。
状況は至ってシンプルだ。
要するに兼業など不可能だったのだ。
月からやってきた怪物を叩きのめしたあとで、キーボードを叩いて物語を紡ぐ。
充足した日々も、じわじわとヒビが広がり、疲労が蓄積され、地球の平和と〆切の両方を守らなければという重圧に押しつぶされそうになっていた。
「……それは……その」
ファストフード店で女子高生が話題にしていたんだけど──からはじまる体験談は全て捏造なのと同じで、このしどろもどろの後につづく発言が事実である可能性などゼロに等しい。
俺の言い訳を遮るようにブルーはため息をつきながら、円卓の上に数冊の書籍を並べた。一瞬、呼吸を忘れる。全て、俺の著書だった。
「これについて何か言うことは?」
異端審問官のような口ぶりのブルー。
「いい表紙だな」
俺は素直な感想を述べる。本当にいい表紙だ。中身も負けてないと思いたい。
「お前なあ──」そのブルーのマスクを外した先にある素顔も、今は青ざめているのでは思えるほど呆れた声で彼はつづける。「何考えてるんだよ。地球の平和と小説書くの、どっちが大切だ?」
「どっちもだ」自分でも驚くほどの速さで即答してしまう。
「そのせいで明らかに支障が出てんだよ! どっちも終わらせたいのか?」
ブルーの言っていることは、もっともだ。
ある種の限界はすぐそこまできている。自分が一番よくわかっている。
ヒーロー活動でしくじれば地球は異星人に侵略される。
作品の質が落ちれば、作家として食べていけなくなる。
俺にとっては、どちらも世界の終わりを意味している。
とはいえ──まだ、なんとか踏ん張れてもいる。
地球防衛と執筆活動、どちらも質を保てている。
だから、もう少しだけ時間が欲しいと先延ばしを提案しようとした俺を、ブルーが乱暴に遮った。
「なんかさあ、最近の俺らって、全然エクスタシーじゃねえよな?」
「え?」
「どこかの誰かさんが他でパワーを使いすぎてるせいで、ここ何戦かはエクスタシーキャノンもエクスタシーカリバーも使えなかっただろ。こんなんで子供たちは喜ぶのかよ? 愛と勇気とエクスタシーが地球を救うって信じてもらえるのかよ? グッズ売れんのかよ? ライブの同接増えんのかよ!」
ブルーの声音は右肩上がりに高まって、俺の感情は右肩下がりに萎縮していく。
彼の言うことは何一つ間違っちゃいない。質は保てていなかった。
短編小説の句読点の位置に一日中悩んでいるぶん、宇宙からやってくる敵との戦いは等閑になっていた。
そしてブルーは俺にとどめを刺す。
「もういいよ。お前、やめろ」
「……え? やめろって?」
その理由は明白なのに聞き返してしまう。前髪が伸びすぎた男子中学生が千円カットに行くのと同じで、邪魔になったからだ。
「警察官がラーメン屋はじめたいって言うなら俺は別にとめない。ただし、バッジは置いていけとは言う」
ブルーのその発言に、自分ならもうちょっと気の利いた比喩を使うのにと考えてしまった時点で、俺はもうヒーローに向いていないのだろう。
「はいはい、そこまでそこまで」
手を叩きながら、グリーンが割って入る。
「熱くなりすぎだよ、ブルー」
熱を冷ますように、ホワイトが手のひらでブルーをあおぐ。
「うん?」
急速にゆるくなっていく場の雰囲気に違和感を覚える。
「あのねレッド──」俺を見つめながらホワイトは「私たち、あなたに笑顔でエクスタシーアースを卒業してほしいって思ってるの」と言った。
白いマスクの向こうに、微笑む少女の顔が見えた気がした。
「夢、叶えたんだろ? そのまま突っ走れよ」
円卓の上の本を一冊掲げて、グリーンは力強く俺を励ます。
「……いつから知ってたんだ?」
「二年前から」
俺の問いにホワイトが答えてくれた。
つまりデビューしたときには把握されていたということか。
そして今、俺の夢を応援してくれようとしている。
「あれ? それならどうしてブルーは……」
あんなにきつくあたってきたんだろう。
「ブルーがレッドの一番のファンなんだぞ! お前のデビューを最初に見つけたのもブルーで、あいつすごいぞ! ついにやったぞ! ってブルーのやつ、自分のことみたいに喜んで──」
「おい!」
そのときのことを思い出しながら愉快そうに語りつづけるグリーンをブルーはとめようとするものの、とまらない。
「今のお前はそれなりに売れてるし、そろそろ専業作家になるって言い出すんじゃないかってずっと待ってたのに、いつまで経ってもそんな素振りも見せないからしびれをきらしたブルーが、俺がケツを叩いて追い出してやるって──」
そういうことだったのか。
俺はブルーに目を向ける。
ブルーも、俺を見ていた。
照れくさくなって、お互い顔をそらした。
「なんでまだ専業作家にならないんだ? もう小説で食っていけるんだろ? それに、これまでの蓄えもかなりあるだろ? お前、全然金使わないし」
グリーンからの問いに俺は自分の表情が曇っていくのがわかる。
そうじゃない。金の問題じゃないんだ。
ああ、もう! 俺はいつまでうじうじしてるつもりだ。
みんな、俺を思って夢を突き進めと言ってくれた。
だったら、俺も正直に白状しよう。
つまらない俺の本音を。
「……だって、みんなだって、ヒーロー以外に仕事あるのに、ちゃんと両立してて、俺だけ好きなことだけするのって、罪悪感があるというか……」
ブルーは世界的に人気の役者。
ホワイトは現役女子高生で人気アイドル。
ピンクは地球に有害と判断した相手を闇に葬る種族の末裔で、世界中のあらゆる組織を恐れ戦かせている最強の暗殺者。
グリーンなんて合衆国の大統領だ。
俺はずっとヒーロー一筋でやってきて、それで好きな仕事ができるようになったから、それ一本でいきたいなんて、さすがに虫がよすぎるような。
「おいおい何様ですかレッド様」ずいぶんと芝居がかった口調で、ブルーは肩を竦ませた。「自意識過剰はベストセラー作家にでもなってからどうぞ」鼻で笑われる。「まあお前が抜けるのはチームには痛手だよ。だけどそれは一時的だ」とブルーは言う。「悪いけど次のエクスタシーレッドのオーディションをお前に黙って勝手にはじめさせてもらってるよ。既にでっかい小説の新人賞にも負けないくらい応募者が殺到してるぜ?」と口角を上げてみせる。
「…………」
あきれた。
どうやら俺の退路は断たれたらしい。
もう作家一本でいくしかないらしい。
うれしい。
「でもいいのか? 俺がいない間に巨大怪獣が暴れまわったら、五体合体ブリリアントエクスタシーになれないんだぞ?」
リアルに再現した超合金モデルを全国のおもちゃ屋さんや各ECショップで絶賛発売中。メーカー希望小売価格24500円。
「ではおぬしの作品の力でどうにかしてみせてはどうかな?」
古風な喋り方。だがその声は若い。この声は!
「ダークかぐや!」
俺は宿敵の名を叫ぶ。
秘密基地に設置されている100インチのモニターいっぱいに月と同じ色の髪をした美しい少女が映し出される。
その可憐さに目を奪われた結果、この子になら地球を奪われてもかまなわないだとか『超かぐや姫!』の続編にぜひ出演させてほしいと署名を集める不届き者も少なからずいるという。まったく世も末だ。
「レッドよ、こんな話を知っておるか?」
「どんな話だ?」
「地球のいたるところがそうであるように、このイギリスの地にも犯罪の多発している地区がいくつもある。だが1998年から2007年の夏のひとときだけ、なぜか犯罪数が激減していた。なぜだかわかるか?」
「……わからない」
クイズの答えも質問の意図も。
美しい闇の少女は言った。
「ハリー・ポッターの新作の発売日だったんじゃよ」嫌になるくらい見惚れてしまう笑顔で少女はつづける。「げにおそろしきは物語の力よ。『悪いことなんてしている場合じゃない』と悪人に思わせてしまうんじゃからのう」ほほほと笑い、かぐやはさらにつづける。「ちなみに妾、最近バンプオブチキンの曲を嗜んでおるぞ」
「おいお前、なに『超かぐや姫!』に出たがってんだよ」
ダークかぐやは余裕たっぷりに告げる。「LOVE PHANTOMなら歌詞を見なくても歌えるようになったぞ」
「──それバンプの曲じゃねえよ。あと異星人がそれ歌ったら、超かぐや姫じゃなくてXファイルになっちまうだろ!」
俺の叫びもむなしく、ダークかぐやは、えんだあああいやあああと最早バンプでもなければB'zでもない歌をどこかの民謡みたいなリズムで口ずさみながらモニターから消えた。
「まあ、そういうことだ」とブルーは俺の肩に手をおいた。
「どういうことだよ」
本当にどういうことだよ。
「まわりがどうとか、他人と比べてどうかなんて気にするな。それに中途半端にくすぶってるやつになんて、地球だって守られたくはないだろ? そうだろ?」
地球「ああ、同感だ」
「……地球」
防衛対象にまで言われると、世話ないな。
俺は理由もなくため息をつく。
一つだけわかったのは、俺はどうしようもなくバカで、最高に恵まれているということだけ。あ、これじゃ二つだ。
よし、決めた!
「みんな!」俺は立ち上がり、エクスタシーアースの仲間の一人一人に目を向けたあとで「──今まで本当にありがとう!」
地球にも礼をするように大きく頭を下げて、秘密基地から飛び出した。
湿っぽいのはらしくない。
次に会うときは、本屋さんで。
俺の作品を手にとってくれたら、嬉しい。
「──いっちまったな」
ブルーはさびしそうにつぶやいた。
「本当は一緒にいたかったんじゃないの? ──作家をやりながらでも地球は守れるだろ、みたいなセリフの練習してたでしょ」
ホワイトの言葉にブルーは「あ、あれは、今度出演する映画のセリフだ!」と手をばたばたさせながら反論する。
そんな二人を微笑ましく見守りながら、グリーンはあることに気づく。
「あれ? ピンクはどこいった?」
地球が喋ったのは我ながらおもしろいと思います。




