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月の通(みち)
冷たい水の中
わずかにさすは
月明かりのみ
池に体が浮上すると共に目に入ってきたのは、沢山の人。
沈む意識の中、手を伸ばすが、虚空を掴む。
ああ、なんて月が綺麗なんだろう…
さっきまでこんなに明るく見えていただろうか……
そこからの記憶は途切れた。
「……ん…。」
見慣れない天井
静かに揺れる橙
身体は濡れてはいないようだが、やけに重く気怠い。
身体を少しよじってみるが、ベッドにしてはやけに固い。
身体に掛けてあるものも布団ではなさそうである。
明凛はゆっくりと体を起こした。
結い上げていたはずの髪は降ろされており、さらりと垂れてきた。
「……衣?」
手に取ったそれは日本でいう袿のようなものであった。
「それに、何で私こんな恰好を?」
日本でいう処の、襦袢、単姿ではないか。
訳が分からず部屋の中を見回していると、部屋の引き戸が開いて誰かが入ってくる。
麗奈が心配してきてくれたのかと想い見やるが、見知った顔ではない。
私よりいくらか年上の女性で、先ほどまで麗奈が着ていたような服装をしている。
そしてその女性は言った。
「お目覚めでございますか、明凛様。」