月と池
パーティー会場は熱気に包まれ、庭園の池に浮かぶ満月がほてりをさましてくれているようだ。
麗奈はかなりの酒豪のようで、飲み比べを始めてしまった。
そんな私は下戸である。
顔はうっすら色づく程度で赤くはならないのだが、意識が朦朧として来てしまうのだ。
少し足元もふらついているかもしれない。
周りの男性陣からすると何とも介抱したいと思う対象である事には本人は気づいていない。
「あんたって罪な女よね。」とよく麗奈に言われている。
そんな火照った身体を醒まそうと1人外に出る。
桃のお酒1杯なら大丈夫かと思ったが、それが間違いであった。
同じように酔いを醒ましているのかちらほら人影が見受けられる。
「あ、鯉がいる。」
回廊から池の中を覗くと赤や白の大きな鯉が悠悠自適に泳いでいる。
気持ちよさそう、なんて思っていると向こう側から数人が歩いてやってくる。
中国の、学生、ではなさそうである。
「What do you do alone in a young lady, such a place?
Do you not have another drink together if good?」
月明かりで、しかも逆光の為顔ははっきり見えないが肌は白く、髪は金色の様だ。
えっ、と驚きの声を上げて立ち上がるとともに、視界が揺れる。
すると目の前の男性に手を取られ、腰に手を回される。
「Oops! Dangerous!
The fair hand of the young lady becomes so cold.
Let's take a break a little there together.」
男慣れしていない彼女は頭の中がパニックであった。
「ちょっと、や・・やめてください!」
それがいけなかった。
全力で手を振り払い、体をよじったその先にあったのは、月が浮かぶ湖面であった。