見回り、探索、囮役。なんでもどーぞ
初投稿作品です。良かったら見ていって下さい。
僕がまだ幼い頃、ずっと一緒に遊んでいた友達がいた。
僕は生まれた時から不治の病にかかっていて、もう何年もない命だったから遊ぶのはいつも家の中だったけれど友達は楽しげに付き合ってくれた。僕の名前をカール、友達は名前をフー君と言った。
何年かして、僕が寝床から動けなくなってからもフー君は家に来てくれた。
「死んじゃだめだよ」フー君の力のこもる声に僕も「死ぬもんか」と冷や汗を流しながらも笑顔で応えた。
しばらくして、僕の病状は急に回復した。
フー君の姿が見えなくなったのはそれと同時だった。
「おはよう」
目の前に現れたその顔は鳥類そのものであった。具体的に言うならばペンギンが最も近いだろうか。貴婦人のような帽子をかぶり、燕尾服を纏うその姿はもはや動物のそれではないのだが。
「随分長く寝てたね。いい夢見れたかい」
「ええ、おかげさまで。そんな寝てましたか僕は」
時計を見ると正午過ぎ、昨日の昼から数えて半日ほど寝ていた計算になる。ペンギンは少し呆れ顔だ。
「ま、起きたばかりですまないがカールくん、君に依頼が来てるんだ。午後からだそうだからしっかり身支度してから行っておいでね」
そう言って一枚の紙を手渡してくる。
【派遣依頼 ボークープギルド様 囮役一名希望 ○月○日】
派遣ギルド「ボークープ」僕の所属しているギルド。そしてギルドの顔とも言えるギルド長がこのペンギン面である。
派遣ギルドとはその名の通り人材を派遣するギルドのことで、パーティの補完、敵地の偵察などそれぞれの分野に適した人材が派遣される。まあつまりこの囮役とは僕のことを指している。
「囮役ってなんだかなあ、護衛とかもっと格好いい名前にして欲しいですよ」
「ま、着飾ってなくていいじゃないか。君みたいなのはこのぐらい泥臭い名前の方が似合ってると思うけど」
辛辣な言葉だがぐうの音も出ない、元はと言えば依頼者が囮役と言い出したのだ。さらに言えば、護衛よりも言葉の重さが違うのか、依頼者が増えた。全部過酷だけど。
午後ーー
依頼者は二名の学者。地下迷宮三階層の生態調査らしい。
世界各地にある地下迷宮は深さや内部構造など様々で、大抵魔物が巣食っている。
「今回も宜しくお願いします。いい仕事期待してますよ」
この二人の学者はうちのギルドの常連さんで、度々生態調査の名目で連れ回される。勉強させてもらうことも多い。
「こちらこそ宜しくお願いします。囮役として頑張らせていただきます」
地下迷宮でも開拓済みの場所は人の手により整備されている。しかし当然のことながら魔物は湧いてくる。
僕を先頭に、迷宮に潜り始めて数分。突如として正面に現れた骨の騎士が手にした長剣で腹部をズブリと突き刺す。
「痛ったぁ!」
その悲痛な叫びに気づいた後ろにいた二人がすかさず呪文を唱える。放たれた火球はカールもろとも骨の騎士を焼き尽くした。
骨の騎士はカラカラと音を立て崩れ落ち、一方のカールはむくりと起き上がり腹部に突き刺さったままの長剣を引き抜く。
「平気か、カールくん」
学者たちが駆け寄りながら訊ねる。
「平気ですよ。それよりこの剣良いですね。持ち帰ってギルドの倉庫にでも保管しましょう」
「いやはや、毎回驚かされるな。君の不死身の肉体。と言うか傷も塞がってるから超再生か」
「驚く?冗談でしょ、思いっきり火の玉ぶつけてきたくせに」
「まあ。慣れたからね」
しれっと言うな、こっちは慣れてないし痛いんじゃ。
「じゃあこの調子でどんどん頼むよ」
それからは囮役のショータイムだった。斬られ、殴られ、刺され、背後から火球をぶつけられ。戦闘が終わると魔物の装備していた剣や防具を押収し、迷宮を出る頃には弁慶のような姿になっていた。とはいっても剥き身の状態の剣を十数本腰回りに括り付けてるだけなのだが。歩くたびに出血しているのは言うまでもない。
「疲れた」
げっそりとしながら帰路に着く。今日も寝るかな、半日くらい。
後書き
サブタイとか付け方よくわかんないんです。
初投稿作品です。宜しくお願いします。
読んでくれてありがとうございます。よろしければ感想などなど。読み辛いところ指摘して下さるとありがたいです…!