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Prik Kee Noo  作者: ムトウ
22/23

22.深夜

 千里が目を覚ましたのは深夜だった。

 常夜灯の薄い明かりで照らされた、見慣れない部屋。


 ここ、どこ?

 …………そっか。ハルの部屋だ。

 

 次いで、晴彦の腕の中にすっぽり抱き込まれている自分の状況を認識した。

 自分以外の体温に包まれ、シャツの布地越しに彼の腕の感触を感じる。ひょろっと細くみえるけど、意外としっかりしてて。やっぱり男の人なんだなあ。と、実感する。

 静かな呼吸につれて、ゆるく胸が上下している。間近に、彼の寝顔。睫毛とか頬骨あたりのほくろとか薄めの唇とか、つい、まじまじと見つめてしまう。なんだか急に照れくさくなった。


 …………いま何時だろ?

 もぞもぞと頭をもたげる。深夜、3時になるところ。

 明日じゃなくて、もう今日の予定、店のシフトは遅番だったっけ。

 メイクも落とさないまま寝入ってしまった。それに、昨日は夕食を摂っていないことを思い出し、急に空腹を覚えた。


 起こさないように、そっと抜け出そうとして。

「きゃっ」

 肩を掴まれ、引き戻された。再び晴彦の腕の中にしっかり抱き込まれ、

「……どこ行くの?」

 もそもそと寝ぼけたような声音で問いただされる。

「えっと……、ちょっと、コンビニ行こうかな、って」

「……何言ってんの。ダメだよ」

 半眠り状態というか、今にも眠り込んでしまいそうなボーッとした風情ながら、しっかりがっちり千里を逃がすまい、と布団に引きずり込む。

「あの、ハル? ねえ、離して?」

「やだ」

 もそもそ声で返ってくる。

「……目が覚めて、君が、いなくなってたときの俺の気持ち、わかる?」

 いやだいやだ、と、千里にしがみついて、ぐりぐり頭を押しつけてくる。


 子どもみたい。

 彼女は呆れつつも、晴彦の頭を抱え込み、よしよし、と撫でた。

「ちゃんと帰ってくるし。コンビニ行くだけだから」

「ダメ」

 ……ていうか、何が欲しいの。

 ボーッと眠そうな声のまま、尋ねてくる。深夜だから、ということもあるけれど、晴彦は寝起きが悪いタイプらしい。

 千里を睡眠の沼に引きずり込むべく、むにゃむにゃと不明瞭な声で甘え、全然離してくれない。


「メイク落としとか化粧水とか、持ってきてないんだもの」

「……あるよ」

「……なんであるの?」

「ハロウィンか、なんか…のときに、ゾンビメイクして…………そのときのやつ」

 今にも寝入ってしまいそうに途切れ途切れの寝ぼけ声。

「妹に、クレンジングはちゃんとしろ、とか……言われて……そこそこいいやつ、らしいよ」


「……着替えもないし」

「…俺のを着なよ」

「サイズ合わないよ」

「それがいいんじゃん…………」


「……お腹、すいちゃったの」

「………………」

「昨日、晩ごはん食べてないし。緊張して何も食べらんなかったから」

「…………そっか。……いま、何時?」

 千里のウェストにまわした手はそのままに、器用に片腕だけで伸びをする。


「3時くらいか……。確かに、小腹空く時間かもね」

 起き上がって、目元をこすり、軽く頭を振った。



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